闇夜に浮かぶ月。
作:尖角 担当:紅葉
主人公「新井隆司」 彼女「伊藤瑠菜」
病気の症状等、 一部正しくないとは思いますが、
あまり症状等には気にせずお読みいただきたいです;
なにゆえ、作者の知識が少ないので; では、どうぞ。
【 なぁ、明日って予定ある? 】
俺は土曜日の昼過ぎ、一通のメールを送る。
それから約1分後。 君から返信がきた。
【 明日は大丈夫だよ♪ 】
だから、俺はすぐに返信を打った。
【 じゃあ、明日の9時、家に行くから待ってて 】
すると、今度は数十秒で、君から返信がきた。
【 了解、待ってる(^-^) 】
>君は、俺の最愛の人だった。
夏も終盤、8月25日 土曜日。
俺は、車で君の家まで迎えに行った。
免許を取って約2年。 大学3年の夏だった。
俺は車に君を乗せて、何気ない会話をする。
「調子どう?」 「暑くない?」
「少し暑いなら、エアコンかけようか?」
「ん? なら、窓 もうちょこっと開けるね」
そんなことを言って、出発し始めた俺等2人。
「ホント? 前、そんなことがあったんだ」
「うんうん、 それはよかったじゃんか!」
俺は君の話に耳を傾ける。 何気ないことだ。
いつも通り。 いつもと、何一つ変わりはしない。
そんな会話も10時13分、 海に到着して終了。
君は、1週間前までアメリカに短期留学していたから、
俺は君の言った『海に行きたい』という願いを叶えてあげることができなかった。
数日前の話。
「なぁ、夏も終わりだから、 泳げないよ?」
俺はそうやって言った。
――どうせクラゲがいるから。
すると、それを聞いて、君は笑った。
「そのくらい、わかってるよ!」
「だけど、行きたいんだから、仕方ないでしょ?」
>俺は、そんな風に笑う君の笑顔が好きだった。
そうして、連れ出すことになった今日。
君はあの時と同じ笑顔で俺を見ている。
「なぁ、この後 どうする?」
俺は、裸足になって海ではしゃぐ君に言った。
「別になんだっていいよ!」
「ってか隆司はさ、 何がしたい?」
「いやっ、 せっかくだから隆司も海に入りなよ!」
君はそう言って、俺を手招きして呼んだ。
「わかったよ」
本当は濡れたくなかったけど、 他の誰かではなく君の頼みだ。
『断る』の選択肢はあり得ない。 だから、俺は裸足になった。
そして、瑠奈の手を取り、渚を走る。
まるで、どこかの馬鹿げた恋愛ドラマのように。
だけど、それでも俺は心から君との幸せを感じていた。
+ + + + + + +
海に入って濡れてしまったズボンを適当に乾かした後、
俺等は再び車に乗って、 近くのレストランに入った。
別にオシャレでもなんでもない、普通のファミレス。
俺はそこでハンバーグランチを。 君はカルボナーラを頼む。
別に、ここまでは、いつもと代り映えしない日だった。
だけど、この日は俺等の人生を一変させる日となった。
ファミレスから出て、 車に乗り込もうと駐車場を歩いている時。
君は建物から出てすぐのためか、日光を眩しそうに感じた。
手を空へとかざす。 日光を遮るため、細目にもした君。
そして、言った。 「うぅ、 痛い・・・」
それだけを俺に伝えて、君は地面へと倒れ込んだ。
焦る俺。 どうしていいのか、わからない。
とりあえず、近くを見回してみる。
駐車場には誰もいない。 いるのは店内だけ。
しかし、駐車場を気にしている人なんか誰もいない。
こう思うと、人間とは実に冷たい生き物だと思う。
周りのことなど気にせず、おしゃべりしている人ばかり。
俺は、急なことで、どうしていいかわからず、
とりあえず、救急車を呼ぶためにスマホを取り出す。
もちろん、ポケットからスマホを出す時間、
もちろん、スマホで119の番号を打つ時間、
俺は必死に「瑠菜! 瑠菜!」と叫びながら体を揺すった。
しかし、ピクリとも反応しない。
息をしているのは間違いないと思うが、
どういった状況なのかは判断できない。
そう思っていると、電話が繋がった。
だから、俺は電話の相手に場所を伝えようとする。
しかし、地元じゃないから正確な場所がわからない。
だが、ファミレスの店名ならわかる。
俺はそれを伝え、 救急隊の到着を待つことになった。
約3分後、サイレンを鳴らして救急隊が到着。
俺は手を振って「こっちだ」と合図する。
すると、救急隊は走って俺等のとこに駆け寄った。
2人のうち、1人がしゃがんで、脈などを確認。
そして、もう1人に対し頷いてから、「運ぶぞ」と一言。
担架に瑠菜を乗せて、救急車へと運び出す。
だから、俺は「どうすれば…」と訊いた。
すると、「お知り合いの方ですか?」と言われたため、
「はい、そうです」と、震えた声で答えた。
すると、「連絡したのはあなたですね?」と。
だから、俺はそれにも「はい、そうです」と答える。
「では、一緒に救急車に乗ってください」と俺に言う救急隊員。
そうして、俺は救急車に乗ることとなった。
瑠菜の容体を知りたくて救急隊に訊く俺。
だが、しかし、救急隊も詳しくはわからないらしく、
『要検査』として、病院で検査することになった。
瑠奈の検査中、俺は地獄のような時間を味わった。
『これから、瑠菜はどうなるのか?』
『もしかして、瑠菜は死んでしまうのか?』
『俺は瑠菜に何をしてあげれるんだ?』
『これから先も一緒にいれるのか?』
『大丈夫なのか? 瑠菜は……』
俺の中で、様々な言葉が繰り返された。
どう想像したって、現実は一つだと言うのに。
+ + + + + + +
とても長く感じた検査の時間が終わって、
俺は検査結果を聞くために医者に呼ばれた。
どうやら、検査の途中で瑠奈が目覚めたらしく、
呼び出された部屋に入ると、瑠奈はすでに座っていた。
俺が瑠奈の隣に腰を掛けると、
ある程度の事情を聞かされたからか、
「迷惑かけてごめんね」って瑠奈が言った。
「迷惑だなんて思ってないよ」
俺は泣きそうになったのを堪えながら、そう答える。
俺は、瑠奈に『迷惑』だって言われて悲しかった。
だって、そうだろう?
俺は瑠奈の全てを受け止めたいと思っているのに。
だが、この想いを瑠奈に言ったって仕方がない。
瑠奈は瑠奈で、今のこの現状を受け止めきれてないんだ。
だって、当たり前だろ?
急に倒れたんだ。 違和感なく倒れたんだ。
今までに、あからさまな前兆があったわけじゃない。
俺も、本人も、 全く病気に気付けてなかったんだ。
なのに、すぐに現状を受け入れられるはずがない。
だから、俺は瑠奈に「大丈夫だよ」って言った。
そして、それが俺の口から出せる精一杯の一言だった。
+ + + + + + +
医者は、まずはじめに、
「落ち着いて聞いてください」と言った。
そして、「結論から言いますと、瑠奈さんは……」
「瑠奈さんの寿命は、長くてあと1年だと思います」と。
俺と瑠奈は、同時に「え?」と言った。
そして、目を丸くして、今聞いた言葉を『嘘』だと願う。
『まさか、そんなはずは……』と、俺は思った。
きっと、同じようなことを瑠奈も思っただろう。
だが、それが真実だということは、医者の真剣な顔を見れば一目瞭然。
だから、俺は悟った。 『瑠奈を幸せにしなければいけない』と。
----- ----- ----- -----
だが、別に 今までが不幸だったわけじゃない。
少なくとも、俺は瑠奈と一緒にいる時間が、
一緒に笑って泣いて過ごせる時間が好きだった。
お前とだから、一緒にいたいと思った。
お前だからこそ、護りたいとも思った。
だが、結果、俺はお前を護ることができなかった。
そりゃあ、病気を回避するなんて、
俺が超能力者か他の何かでもない限り無理だ。
だけど、俺は護れなかった。 それだけは事実。
だったら、俺は何をしなきゃいけないのか?
せめて、あと少しの時間を一生分の、
濃い、ものすごく濃い時間にしてあげたい。
俺にそんなことができるのかはわからないけど、
精一杯のことをして、瑠奈を見送ってやりたい。
できることなら、最低でも半年は。 いや、1年は。
いや、2年,3年と、 限界まで長生きしてほしい。
俺がお前を大好きだからこそ、 決めた覚悟。
----- ----- ----- -----
「なぁ、瑠奈……」
俺は病院を出て、瑠奈に言った。
すると、少し潤んだ眼で「んっ?」と返事をする。
久々に見た。 瑠奈の泣きそうな顔を。
俺にとって、瑠奈はとても強い印象がある。
それが強がりなのかはわからないけど、
少しもブレない瑠奈は、カッコよかった。
だが、そんな瑠奈が目に涙を浮かべている。
本当は辛いんだろう。 本当は悲しんだろう。
当たり前なんだろうけど、それでも瑠奈は我慢していた。
だから、俺は静かに瑠奈の頭に手をやって、
「怖いよな」と言いながら、頭を撫でた。
>俺にはお前の痛みを半減させることしかできないから。
すると、瑠奈は今まで目に溜めていた涙を一気に溢れさせた。
「それでいいんだよ」 「俺だって、怖いんだから……」
そして、俺は それに続けて言った。
「なぁ、急な提案なんだけど、 引っ越そうよ」
「今、 俺は実家にいて、お前は1人暮らしじゃん?」
「一緒に暮らそうよ」 「……駄目かな??」
それを聞いて、とても驚いた顔をする瑠奈。
瑠奈はその想いを、呆れながらそのまま口にした。
「ねぇ、ちゃんと聞いてた?」
「医者が言ってたじゃん……」
「私の寿命はあと1年だって」
「私はもう長く生きられないって」
「そんな女と一緒にいて何が楽しいの?」
「さすがの隆司だって嫌でしょ?」
「早死にするってわかってる女なんて」
「だから、無理しなくていいんだよ?」
「私に気を遣わなくてもいいんだよ?」
「私は……私は……大丈夫だから……」
そう言って、俺から視線を逸らす。
「何言ってるんだ、一人で背負うなよ」
「お前には俺がいるだろ? それとも何か?」
「俺じゃ駄目だっていうのか? どうなんだよ!」
俺は、そうやって、瑠奈に怒鳴るように力強く言った。
だけど、それが俺の本音だったから。 俺は本気だったから。
だから、瑠奈に俺の本当の気持ちを聞いてほしくて叫んだ。
すると、瑠奈は言った。
「そういうことじゃない……」
「けど、隆司には幸せになってほしいから」
「私は…私は……、長く生きることができないけど……」
「隆司には……、隆司にはその分、長生きしてほしいから…」
「私が見れなかった世界」
「私が感じる事のできなかったこと」
「私が長く生きるはずだった時間」
「私が生きたかった分、隆司にはもっと……」
「もっと、もっと幸せになってほしいから……」
「だから、私なんかと一緒にいてほしくない」
「そんなんじゃ、隆司は笑えないでしょ?」
「すぐに死ぬ私とじゃ、幸せになれないでしょ?」
瑠奈は、涙で顔をぐちゃぐちゃにして言った。
だが、そんな瑠奈の本気の訴えを俺は遮る。
「なぁ、なんで一緒だと幸せになれない訳?」
「誰が決めたの? 俺とお前は一緒だと不幸になるって」
「俺は幸せだと思うよ?」
「だって、少なくても、俺は瑠奈と一緒にいたい」
「瑠奈が、あと少ししか生きれないなら、より一層一緒にいたい」
「だけど、瑠奈が俺との最期は嫌だって言うなら別だ」
「けどな…… これだけは言わせてくれよ」
「俺は大学を卒業したら、お前と結婚するつもりだった」
「そして、子供作って、俺は仕事して、お前は家事をして、
そして、死ぬまで一緒に笑って、辛い時は一緒に泣いて、
それで、俺の最期をお前に看取ってもらう予定だった」
「男は早死にするってのが普通だからな……」
「だから、俺の最期には、お前が隣にいてほしかった」
「だけど、お前が“病気だ”って知って、その予定は狂った」
「少しだけだけど、本来の予定とは狂っちまった……」
「だけど、 それでも、全然 大したことはないよ?」
「別に、俺にとって死ぬまで一緒って予定は変わらないし、
確かに、子供は無理かもだけど、 苦労は増えるかもだけど、
大きな変化はお前が看取るか、俺が看取るかだけだと思う」
「なぁ、俺じゃ駄目かな?」
「俺はお前とだから一緒にいたいんだ」
「この人生で、一番好きなのがお前だし」
「この人生で、一番幸せを感じるのはお前の隣だ」
「だから、俺のことを好きでいてくれるなら、
ずっとずっと、お前の隣にいさせてくれよ」
そして、俺は少し間をおいて、続けた。
「瑠奈、お前さえよければ結婚しよう」
「愛してる」 「俺にはお前が必要なんだ」
「お前が病気だろうと、 例え 長生きできなくとも、
俺はお前と一緒がいい。 これからも一緒にいよう!」
俺は、そうやって本気の想いを瑠奈にぶつけた。
すると、瑠奈は、泣きながら、
「うん、 ありがとう、 結婚……しよ…」
っと、 今までにない満面の笑みで応えてくれた。
* * * * * * *
瑠奈が倒れてから2日後の月曜日。
俺は、大学に“休学届”を出してきた。
いつか、遅くなったとしても、大学は出た方がいいと思ったから。
それに、 もしかしたら、医学の進歩で瑠奈の病気が治るかもしれない。
そんなに早く医学が進歩するとは思えないけど、 俺はそう信じたい。
だから、俺は退学届ではなく、休学届を提出してきた。
そして、俺は今までのバイトで貯めた貯金代と、
瑠奈が働いてきた2年ちょっと、 大学に進学せずに、
高校卒業してから、瑠奈が一生懸命働いてきた分……、
その2人のお金で、 山の別荘を借りる契約を交わした。
正直、買いたかったのだが、買うにはお金が足りなかった。
だから、お金が貯まり次第、買い上げようと思う。
さて、そういうことで、山に移り住むことになった俺等。
なぜ、山かというと、都会だと身体に負担がかかるから。
一昨日瑠奈を診てくれた医者が言うには、
「長生きするなら空気が綺麗な方がより良い」とのこと。
だから、「引っ越すなら、山にしよう」と俺から提案した。
そうして、山への引っ越しの準備をする。
ちなみに、引っ越しについて、
いや、そもそも結婚について、 俺の親に反対されたが、
「悪いが、もう21だから人生を指図されるつもりはない」
と、無理やり反対を押し切って、 家を飛び出してきた。
まぁ、今まで育ててくれたことには感謝している。
どれだけ感謝しても足りないくらい感謝しているが、
誰が何と言おうと、 瑠奈の為に、これだけは譲れない。
だから、俺は家を飛び出してきた。
そして、今は瑠奈の家を片付けている。
両親が亡くなってから、瑠奈が独りで生きてきた部屋。
『今まで、沢山苦労したんだろうな』って思うと、
『もう、ここに瑠奈が戻ることはないんだ』って思うと、
少しだけ悲しくなってきたが、 もう大丈夫。
これからは、一人じゃない。 瑠奈の隣には俺がいるから。
だから、俺は一呼吸おいてから、瑠奈の目を見て言った。
「婚姻届、 この段ボール詰めの作業が終わったら出しに行こうな?」って。
+ + + + + + +
引っ越しが完了してから、ちょうど3か月。
言い換えれば、婚姻届書を提出してからちょうど3か月。
今日は、11月27日。 本格的に寒くなってきた。
最近、瑠奈は身体を崩し始め、寝込む日が多くなってきた。
だが、それでも元気。 今日も相変わらず笑っている。
「次第に動きが鈍くなり、立ち上がることもできなくなるだろう」と医者は言っていた。
思うに、きっと その日は近い。
ずっと隣にいるから、俺には分かる。
だけど、それはすでに覚悟の上。
わかってて、瑠奈と別れなかった。
わかってて、瑠奈と結婚をした。
だから、俺は日に日に弱っていく瑠奈を、
今日も「好きだよ」と言って、隣で見守る。
そして、瑠奈は最近、車いすでの移動が多くなってきた。
別にまだ、完全に歩けなくなったわけではないが、
近頃はうまく歩けず、躓くことが増えてきている。
だから、今はできるだけ車いすを使って生活している。
そんなこんなで瑠奈の移動には、俺が必要になった。
だから、今の生活を少しでも支えるために……
そう思って、こっちで始めたバイトにも行けていない。
>もう、本当に瑠奈は長くないと思うから……。
そういうわけで、俺は今日もあるはずだったバイトを休んで、瑠奈を外に連れ出す。
なぜなら、家に引きこもっているのは身体に毒だというし、気分転換にもなると思ったから。
「今日も散歩に行くかい?」
俺は、そうやって瑠奈に声をかけた。
すると、瑠奈は笑顔を作って言った。
「うん、 お願い……」
俺は車いすを押して、瑠奈と一緒に散歩に出かける。
+ + + + + + +
「あっ、また葉っぱが赤くなってる」
瑠奈は、後ろに向かって完全には振り向けないものの、
それでも少し首を動かして、俺の方を見て言った。
「綺麗だね」
「昨日よりもまた、赤くなってる」
「明日は明日で、もっと赤くなるのかな?」
「私さ……」
「正直、隆司が山に移ろうって言ったときは少し驚いた」
「急にどうしたんだろ?って……」
「別に、山に移り住んだところで何も変わらないだろうって」
「だけどね」
「ここに来て、わかったことがあるの」
「それは、“少なくても都会よりは生きやすい”ってこと」
「ここではね……、 そうだなぁ………」
「きっと、健康だったら気付けなかったんだろうけど、
ここでは、空気を自然に受け入れることができるんだよ」
「まぁ、向こうでも普通に息はしてたけどね///」
瑠奈は、そこで笑った。
うまく、瑠奈は言葉に表せていないけれど、
俺は、瑠奈にとって山は過ごしやすい環境なのだと…、
病気と素直に向き合うことのできる場所なのだと感じた。
だから、俺は瑠奈に言った。
「そうか、なら俺の提案は間違ってなかったってことだよな?」
「瑠奈がここを過ごしやすく感じたなら、
少しでも身体に無理なく過ごせると思ったなら、
俺はここに引っ越してきてよかったって思うよ?」
「来年も、絶対に見ような? 紅葉……」
「約束だぞ? 絶対、2人で見ような??」
+ + + + + + + + +
しかし、俺等の約束は、実現することなく終わってしまった。
12月22日。 あの日は雪だった。
時期的に赤く染まった綺麗な葉っぱも落ちてしまい、
雪の重みで木の枝もずっしりと垂れ下がっていた日。
瑠奈が静かに息を引き取ったのは、そんな日だった。
その日の2日前の、12月20日。
瑠奈の容体は、さらに悪化した。
瑠奈は、俺の手を借りても起き上がれなくなり、
「身体が重い……もう私、駄目かもしれない……」
瑠奈が、声にならない声で呟いた一言。
乾いてかすれた声。 今も耳から離れることはない。
俺は、ただひたすら力なく咳き込む瑠奈を見て、
“頑張れ” “頑張って生きろ”としか言えなかった。
しかし、瑠奈は最期、 何も食べなくなってしまった。
空を見上げると、 そこには寂しげに、
ただ一つ、ただ一つ、 月だけが浮かんでいた。
それは、まるで俺等を想い、泣いているかのように。
俺はお前といて、幸せだったよ?
お前は俺なんかといて、幸せだったかい?
少しは苦しまずに、楽に死ねたかな?
少しは痛みを和らげてあげられたかな?
何を訊いても、返事がないのは知っている。
何を言っても、君に届かないのも知っている。
だけど、俺の気持ちはいつまでも変わらない。
お前といた時間は、最高の時間だった。
他にはない、 間違いなく最高な時間だった。
お前の隣に最期までいれたこと。
俺は、今も、これからも後悔なんかしない。
ありがとう。 これからは1人だけど。
その隣にはお前がいるって信じてる。
大好きだよ。
どんな結果であれ、好きな人と最期まで一緒にいたい。
そんな想いを込めて書きました。
>>ちょっと重かったですかね(笑)?
次の人、宜しくお願いします^^