8話 『人は見かけで判断しちゃダメ』
どーもです。
今回は団長紹介のため短めです。
フォレイティアス王国には第一師団から第五師団までの五つの騎士団がある。それぞれに役目が決められており、第一師団は精鋭部隊。個人個人の技量が最も高く、単騎で魔獣との戦いや少人数での敵砦の攻略など特殊な役目を持っている。少数精鋭を誇るため、師団の名はあれどその人数は百人に満たないと言う。
第二師団は主に魔法特化の部隊だ。第一師団同様さほど人数は多くないが、最低でも三精霊以上との契約が求められ、魔力の量なども規定値を越さなければ入団を許されない。
第一、第二がエリート部隊に対して、残りの部隊は入団に時に各部隊長や師団長などの面接がある以外は特に規制なく入れる部隊となっている。
細かく分けると第三師団は主に王国内の警察機構として機能している。通常時は王都や他の街や村に駐屯しその場その場の厄介ごとの解決や、賊や魔獣退治などなんでもあれだ。そのため人数も多く登録されているだけで三千人ほどがいる。更に、その中でまた細かい部隊などに区別されている。
第四と第五師団は主に砦防衛戦力として機能している。第四師団の中には王城の警護(王城も砦の一つとみなされているため)のため常に王城に駐屯している部隊もいるが、そのほとんどが各地の砦や駐屯地にちらばっている。
砦と駐屯地の説明としては、現在闇の軍勢の拠点となっている、王国の東側をおおうザンブルード樹林。その樹林と王都の間には闇の軍勢の進行を阻むための防衛網が展開されている。大きな三つの防衛拠点の砦とその砦と砦の間を補うように拠点よりも小さな駐屯地が複数ある。王都と樹林を隔てるその見えない壁によって樹林からの闇の軍勢の進攻を防いできたのだ。
「で、ガルルート、殿下はどうじゃった?」
今現在各師団の団長格と副団長、さらにはその下に位置する各部隊の部隊長(任務中のため来れる者のみ)が集められたのは王宮の王への謁見の間。玉座を前に十五名ほどが整列していた。
「どうと言われても、とても穏やかで、お優しそうな方でしたよ」
整列している列の先頭で十歳ほどの少女に質問されたガルルートは素直に真一郎の感想をのべた。
「ふんっ。あのバカ娘の子供じゃぞ、一筋縄ではいかん曲者にきまっておる」
腕を組んですごい鼻息の少女は過去に香織にさんざんな目に合わされてきた。香織が王国に来て魔法の才能が有ると分かってからは、彼女マリステアが香織の教官になったのだがそこが受難の始まりだった。
あっという間に自分以上の魔法をポンポン打てるようになった香織に最初は関心したものの、それはすぐに嫉妬にかわり、何度も挑んでみたものの毎回余裕であちらが勝ってしまう。そのくせあの能天気な笑顔でひっついてくるわ、毎度毎度無理難題を抱え込んで自分が飽きると人に任せっぱなしにするわ、さらには人を着せ替え人形のように扱うわでもう香織の存在自体を消すためだけに悪魔に魂を売ってもいいと思ったくらいだ。
「殿下はそんなに腹黒くはないと思いますが、まぁ、マリ殿が香織様からうけた数々の所業は私も聞いているので同情はしますが、香織様と殿下はまったく別人ですからね。親子だからといって必ず似ている訳でもないでしょう」
「えーい!貴様ごときに何がわかる!あの耐え難い屈辱の日々!あのバカ娘の子供なぞ信じられるか!」
マリステアはさらにぶつぶつと呪詛の念を唱え続けていた。
「まぁまぁマリ殿、殿下がガルルート嬢の言葉通りのお方なら我々も安心して国王としてお迎えできるかも知れませんよ。さすがにお人柄がどのような方か、確かめるまで忠誠は誓いがたいですが、私は他の方々の話を聞く限り大丈夫だと思っていますよ」
そうマリステアをなだめたのは第四師団師団長ライオネル・ファスコ。長身で見目麗しく、輝く金髪をなびかせるザ・王子。実際はさほど大きくない領土を持つ貴族の二男坊だが、騎士団に入団後、鍛錬をかさね数々の困難を乗り越えてこの師団長という位までのぼりつめた苦労人である。彼の騎士道はつねに民のためにある事。元々実家の領土でも領民にまざり農作業などをする両親を見て育った彼は、民こそ国の命という事をしっかりと分かっている数少ない貴族なのだ。
「ふんっ!まあいいわい、あのバカ娘のバカ息子がどれほどの者かワシがしっかりと見定めてやる。ダメなら次の門が開く時に日本にたたき返してやるわい」
そういってまたいっそう鼻息をあらくしたマリステアだった。
「皆待たせたな」
そう言って第一師団長のキキが入ってきたのはそれから十分ほどたってからだった。
「ん?ジルドルジュはまだか?」
「はっ。もう間もなく来ると思いますが」答えたのは第三師団の千人隊長だった。
「ふむ。何か事件でもあったか?」
「いえ。その、なんと言いますか……」
「なんだはっきりしないな、何かまずい事でもあったのか?」
「えーとですね、自分が呼びに行った時はなんでも服が決まらないとかで……」
「はぁあ?」
「殿下に初めてお会いするので気合を入れた服にしたいのだけど、最終選考で悩んでいると言ってました」
周囲の団長や隊長からは「まぁあの人だからな」などと諦めの声が漏れていた。
「まったく、そろそろ真一郎もこちらに来るころだと言うのに、遅れたら母上達に何言われるかわからんぞ」
ちなみにキキの義理の母の一人ジュリエッタは騎士団総司令官という大層な肩書を持っている。王国の軍事面での実質的な頂点に君臨するのが彼女なのだ。彼女の義理の息子真一郎への愛は真一郎が日本へ行く前から有名で、その息子をないがしろにしたら大目玉をくらうのは目に見えていた。
「真一郎殿下御到着なされました!」
部屋の前で控えていた衛兵が室内に真一郎が来たことを告げた。
「あ……ま、まあいいか」
無責任な様だが義母達のおそろしいお仕置きを知っているキキは心の中でジルドルジュに合掌した。
衛兵の合図とともに室内に入ってきたのはジゼルが先頭を務める一団だった。ジゼルの後ろにW義母が控えその後ろに真一郎。真一郎の斜め後ろをゾーイが巨大な旗を持って続いていた。団長達の列の間を抜けて玉座の前まで来た一団はジゼルと真一郎を中心に団長達に振り返った。
「ほぉ、さすがにバカ娘の息子だけあってこれまたバカみたいな魔力じゃの」
すれ違いざまに真一郎をのぞき見し彼の魔力を視たマリステアは素直に感心していた。
「皆仕事の合間にご苦労!知っての通り我らの弟であり、前国王グラインが残した唯一の男子である真一郎がここフォレイティアスに帰って来た。十二年ぶりの帰還で、ここに居るほとんどの者は初めて会うものばかりのはずだ。まだまだ王族としては至らぬ弟だが是非に皆の力で支えてもらいたい」
ジゼルの発言の後にその場の全員が「ハハー!」とその場に片膝をついて跪き真一郎の言葉を待った。
「えーと、今ご紹介に預かりました、真一郎です。とりあえずみんな顔上げてもらってもいいかな?」
真一郎の言葉にその場の全員が一瞬戸惑ったがすぐに皆その場に起立した。
「ありがとう。これで皆の顔が見えるや。今ジゼル姉さんも言ってた通り俺はこの王国の事はまだまだ知らない事ばかりなんだ。皆に迷惑かけちゃうかもしれないけど、よろしくお願いします。」
そういってあろうことかお辞儀をした真一郎。その場にいた者は自分達が使えるべき相手がとった行動に驚きをかくせないでいた。普通、王族が部下に頭下げるなんてありえないんだ。
「はっはっはっは!さすが真一郎!礼儀正しく挨拶できたじゃないか!」
やけに上機嫌のジュリエッタが真一郎の背中をバシバシ叩きながら笑っていた。
「い、いたいよジュリエッタ母さん。こんなんでよかった?」
「ええ、十分よ。みんなしんちゃんがとってもいい子って分かったはずだから」
そう言ってくれたのは反対側にいたシルフォーネだった。
「まあ、少々威厳にかけるが、お前らしいといえばらしいんじゃないか」
ジゼルは若干あきれぎみだった。
「でわ、これより師団長達の自己紹介をさせてもらいます」
キキの発言で始まった自己紹介タイム。キキは飛ばして第一師団の副団長などが自己紹介し、第二師団の番になった。
「ワシはマリステア・ルルシュ。第二師団で師団長を務めておる。香織とは浅はかならぬ仲だ」
あーこの人かロリババァって。
「あ、どーも。母からお名前はうかがってます。たぶん母さん迷惑かけたんでしょ?すみませんあんなんで」
「え……ま、まあ別に殿下が謝る事でもないからな!気にするな。とにかくあのバカ娘みたいにだけはなってくれるなよ」
どうやら思っていた反応と違う真一郎の反応にびっくりしたようだった。
「あの母さんみたいには俺もなりたくないんで、努力します」
とりあえず満面スマイルを贈ってみたら「分かればいいんだ、分かれば」などと以外にあっけなく静かになってしまった。
「次は第三師団ですが、団長がまだこちらに来ていないので私からでもよろしいですか?」
今だ来ていない団長の代わりに、先ほどキキに団長の遅刻の原因を報告していた彼が自己紹介を始めた時だった。
「自分は第三師団、千人隊長のロィ、、」
「ゴメーーーーン!遅くなっちゃったわぁ!」
玉座の間の扉がバーンと開いて彼が現れた。
「あらヤダ!もう殿下来られてしまってたのねん。ごめんなさい殿下、私ったら殿下にお会いするための衣装選びでこんなに遅刻してしまうなんて!」
そういってクネクネと体をねじらせながら歩いてくるジルドルジュ。
(うわぁ、あれがえんじぇるちゃん。予想通りのヒトだけど予想以上のやばい感じだぞ……)
真一郎が目にしたのは筋骨隆々の黒人の男性だった。しかしその彼の唇には真っ赤な口紅が塗られ、おそらくカツラであろう茶髪のツインテール。装いはと言うと白を基調としたワンピースに同じく白色の丈の短い上着を羽織って、それぞれには青色のラインが走っていた。ワンピースの胸のところには赤いリボンがある。もっとも特徴的なのは手の部分だろう、ひじから下の手の部分には金属でできたパーツが取り付けられ、その部分だけはまるで鎧の様だった。ついでに肩にイタチみたいな人形が乗っかっていた。
(あ、あれはまさかアニメのコスプレか……?)
日本でそこそこアニメを見ていた真一郎にはすぐ分かった。あれは魔法少女だ。たしか設定は小学生だったはずだ。決して黒人のおっさんがやっていいものではいと。
「えっと、えんじぇるさん?」
「んまぁ!殿下が私の名前を知ってくださってるなんて!うれしいわーん。ンフフフフフ」
やばい近づいてきたし、なんか気に入られたっぽい。怖いぞえんじぇるちゃん!てかなんで母さんたちそんなニヤニヤしてるんだ!助けてヘルプミー!
「んまぁ!近くで見ればグライン様のいいところと香織ちゃんのいいところを両方持った、いいとこどりな感じじゃなぁい。ンフフフ」
「あ、あのえんじぇるさん?ちょっと近いかなぁ」
自己紹介を受けるにあたって数段高くなっている玉座から降りて団長達と同じ目線にいた真一郎だがそれが仇となった。いつのまにかえんじぇるさんが自分の目の前まできていた。
「あらーぁん近いとなにかいけないの・か・し・ら?」
なんか昨日も同じセリフ聞いた気がするが、昨日とは種類もレベルも違う危なさだった。
「え、えっと」
「ンフフフフフ」
真っ赤なリップがどんどん迫ってきた。
「ハイストーップ!そこまでよえんじぇるちゃん」
急に二人に割って入ってきたシルフォーネに救われた。
「いやぁんなんで止めるのよぉ」
「ダメよえんじぇるちゃん。しんちゃんがこまっているのは可愛くて見てたいけど、貴方がしんちゃんに何かするのは許しません」
ニコニコとしながら殺気をだすシルフォーネ。
「ふぅ助かった」真一郎が胸をなでおろすとジュリエッタからも援護射撃がきた。
「ジルドよ、真一郎はゆくゆくは王になり、うちの娘達を貰う身だ。その前に汚していいのは私達母にのみ許される。お前にはやれん」
(ちょ!なんか今とんでもなく危ない事言わなかったか!?)
「んもぅ!二人ともずるぃぃぃぃ。私も殿下を汚したいのにぃ」
くねくねと体を揺らしてダダっこみたいになるえんじぇるさん。
「私達に勝てるならいいわよ」
シルフォーネ母さんの笑顔の殺気がさらに濃くなった。
「ああ、そういう話ならいつでも受けて立つぞ」
ジュリエッタ母さんも笑顔の殺気を放っていた。
「んもぅ!私が二人に勝てる訳ないじゃないのよぉん!まぁいいわ、どーせ殿下は私の師団に来るのだからね。これからたっぷり鍛えてあげるわよぉん」
「あははは、いちお王国でもやっていけるように鍛えたいので、程々にお願いします」
いちおは上司になるわけだから礼儀はきちっとしてみた。
「んまぁ!殿下ったら。いいわ、私がきっちり強い男に仕上げてあげるからね」
クネクネクネクネ。(この人じっとしてられないのかな?)えんじぇるちゃんは常にくねくねしているのだ。
「ンフフフ。さて殿下のお顔も見れた事だし私もいちお忙しい身なの。失礼とは思うけどもうおいとまさせて頂くわね」
「なんだジルドそんなにたてこんだ仕事がるのか?」
「んふふジュリちゃん。女はいつも自分磨きのために忙しいの。そのためには仕事なんてさっさと終わらせないとね。それじゃあ殿下まったねぇん」
そう言ってハート付投げキッス&ウインをして部屋を後にしたえんじぇるちゃん。
(あ、帰っちゃった。)できればもう少し話を聞いてみたかったが、引き留めたら引き留めたでめんどくさそうなので部屋から出ていくのを黙って見送った真一郎だった。
「ねぇジュリちゃん。やっぱしんちゃん第三師団にあずけるのやめにしない?」
「んー。しかし真一郎のためには第三師団が適任なのだよな。まあジルド対策でも考えておくか」
W義母の親バカっぷりにその場の全員がため息をついたのは内緒だ。
えんじぇるちゃんが早々に退場したので残りの団長達の自己紹介が続いた。
「第四師団師団長、ライオネル・ファスコです」
見た目バリバリ王子様な青年が綺麗な敬礼と共に挨拶をした。
(おぉーなんだ結構まともな人もいるんじゃん)真一郎の感想も最もだ、今まであったのは一癖も二癖もあるメンツばかりだったのだから。
「ライオネルさんよろしくね」
「ええ、殿下こちらこそ。私は主に王宮警備の任についておりますのでお会いする機会も多いと思います。何か御用がありましたらご遠慮さならずにお申し付け下さい」
そう言うともう一度役者がかったお辞儀をしてみせた。
「ありがとう。正直あんまりまともな人いないから安心したよー」
真一郎が周りの家族に一斉に睨まれたのは言うまでもない。
「しんちゃん、そのまともじゃない人って誰のことかしらね?」
「真一郎、私はまともだよな?」
W義母の何とも言えない視線に「あ、あはははは」と力なく笑う真一郎だった。
団長達と息子の顔合わせもすみ、ジュリエッタとシルフォーネが王宮の廊下を歩いていると不意に何かの気配感じた。
「……何だ影か。どうした?あちらに動きでもあったか?」
ジュリエッタが自分の影に語りかけ、シルフォーネもその影を神妙な顔でながめた。
次の瞬間ジュリエッタの影の中からナニカが出てきた。そのナニカは全身真っ黒な装束を着ており、顔も黒い布で覆われていた。さらにその顔を覆う布からかすかに見える瞳は光を失っており、姿形はヒトではあるが明らかにヒトとは違うモノだと物語っていた。
ジュリエッタとシルフォーネの前まで来るとその場に片膝をつけ跪き己の仕事をこなした。
「ゴ報告イタシマス。樹林ニテ敵部隊ヲ確認。王国領土ヘノ進攻ガアルトオモワレマス」
幾つもの人の声が重なる機械で合成されたような声で答えた影。
「そうか、半年も待たせやがって、やっと来たか」
敵が来るというのにどこ嬉しそうにジュリエッタが答えた。
「あちらの数はまだ分からないのかしら?」
「マダハッキリトワ不明デス。タダ、敵ノ集結地点ガ三カ所ニ分カレテイル事カラ、オソラク南北、中央ノ三砦ヲ同時ニ攻撃ス ルノデワナイカト、主ハ申シテオリマス」
「ほぉう。そんな作戦考えてくるって事は、ハイクラスでも産まれたかな」
ハイクラスとは、亜人や獣人の中に稀に産まれるもので、通常の個体より高い知能や魔力や身体能力有する個体だ。ハイクラスが居ると居ないとでは闇の軍勢の力は天と地ほど離れている。
闇の軍勢にはゴブリンやトロールなど知能の低いものが多い。そんな中、数は少ないが闇の軍勢に属する獣人などは見た目がヒトと大差なく頭脳もそこそこの者も多い。しかし彼らは基本戦闘狂ばかりで、日常的に獣化している者ばかりなのだ。獣化中はよほどの訓練をした者以外は、自我を保っていられず、知能は獣と大差なくなってしまう。そのため作戦などなく力と量で押し切るのが闇の軍勢の策だが、ここにハイクラスが産まれ指揮をとるだけで始めて軍として成り立つのだ。
「ハイクラスがどの種族か見当はついてるのか?」
「ドノ集結地点ニモ『インセクター』ガイルノヲ確認済ミデス。オソラク、ハイクラスガ産マレタノワインセクターダロウト、主ハ申シテオリマス」
インセクターとは、強固な外骨格に守られた人間大の直立歩行する虫達の総称で、簡単に言うと虫人間だ。
「インセクターって普段は樹林のかなり奥地にいるはずよね?それが出てきてるって事から考えてもハイクラスが産まれたのは間違いないかもしれわね」
樹林の亜人や魔獣は奥地に行けば行くほど狂暴性を増していく。インセクターは亜人の中でも最も最深部に近いところに住処がある、よって樹林に住む亜人の中で最も注意すべき相手だ。
「で、どれくらいで来そうなんだ?」
「マダ今ノ段階デワ予想ノ範囲内デスガ、主ハオソラク早ケレバ十日ホドデ敵ノ準備ガトトノウデアロウト申シテオリマス」
「十日か、なんとか間に合いそうだな。ご苦労だったなその報告ジゼルや他の団長には?」
「スデニ国王代行様ニハ報告ヲスマセテアリマス。団長達ニハ王国代行様カラスルノデイイト言ワレマシタ」
「そうか、ご苦労だったな。そうだ、主にたまにはこっちに顔を出せと言っておいてくれ。真一郎も来てる事だしな」
「御意」そう言うとそのままその場で何かブツブツと言っていた。
「主ハ『しんちゃんには会いたいけど今は忙しいのでダメ』ト申シテオリマス」
「そうか、なら今回の件が片付いたら一度王都に戻れそうか?」
またも何かブツブツ言った後「ソレナラ可能ダソウデス」とだけ答えた。
「それはよかった、でわご苦労だったな」
その言葉を受け取ると影はまたジュリエッタの影に消えていった。
「ふぅ。とりあえず送れる増員だけ先発隊として送るとしようか。本隊は真一郎のお披露目会が終わってから出発しても十分間に合うだろうしな」
「ジュリちゃん、しんちゃんは連れて行くの?」
「んーできれば連れて行くのは避けたいが、一度戦場を体験させておくべきって考えもある。とりあえずまだ時間もあるから本人に言って自分で考えさせるのがいいんじゃないか?」
「そうね、しんちゃんが自分の現状を知って、それでも戦場に行くって言うなら連れて行ってあげましょう。ヴィラントが常に一緒にいれば危険も少ないでしょうしね」
「私はジゼルと相談して増員の手配をする。お披露目会はシルフに任せてしまっていいか?」
「ええ、私にまかせといて!思いっきりしんちゃんの好感度を上げるお披露目会を用意するわ」
力いっぱい張り切るシルフォーネに少々不安はあるものの、闇の軍勢が動き出した事でそちらに集中しなくてはならないジュリエッタは任せるしかなかった。
来たるべき日に向け義母達はそれぞれ行動を開始した。
現在の状況
真一郎のお披露目会は二日後
中央砦までの所要移動時間は通常三日
敵の最短侵攻開始は十日後
思ったよりもなんだかシリアス路線に行っちゃいそう。
さて次回の「はちぷり」は!
ついに真一郎を国民にお披露目する「お披露目会」で何かが起こる!
真一郎が王様候補っぽいことを初めてします!