6話 『子供をからかうのは母の特権』
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褒められて伸びるタイプなのでとっても励みになります!
さて今回は、ちょっぴりサービスショット的な感じです。
やっとドタバタ感がでてきましたよ~
「……んん……んぁ?俺寝ちゃったのか?」
窓から差し込む眩しい朝日の中、真一郎は見知らぬベットで目が覚めた。
「あったまいて~……」
外は明るく鳥の声も聞こえるが、ベットに入った記憶がない。
とりあえず起きようと体を起こそうとしたら強烈な頭痛に襲われた。更に若干の吐き気もこみ上げてきた。
「ッウプ。あぁぁ何だこの頭痛と気持ち悪さ、俺どうしたんだっけかなぁ?」
頭痛に顔をしかめ、目を閉じた状態で両手で顔を覆った。
確か昨晩は姉妹や義母と夕食会をしたはずだ、でも何故か記憶が途切れ途切れではっきりしない。
とりあえずヴィラントにでも後で状況を聞けばいいかなと思いながら、頭痛に耐えられず、二度寝に入ろうとした時、自分の隣から「スースー」と寝息が聞こえるのに気が付いた。恐る恐る隣を見た真一郎はありえない人を目にした。
そこで寝ていたのは金髪ロングヘアーの美女。年齢と不釣合いなその美貌は男女問わず魅了されてしまいそうだ。一番上の姉に似ている美女は、ほんわか優しげな姉と違い妖艶さがにじみでいる。
更によく見れば彼女は白く美しい体に下着のみを付けた姿だった。
(なっっ!!!まてまてまてまて!何だこれ何だこれ何だこの状況!!!!!!)
起こしてはマズイ気がして静かに混乱していた真一郎に、追い打ちをかけるように反対側からも寝息が聞こえてきた。
ギギギギギギとブリキのオモチャの様に反対側をむく真一郎。そこにいたのはこれまた下着姿の美女。金髪とは正反対な健康的に日焼けした彼女は、目鼻立ちのキリっとしたカッコいい系。燃える様な赤いショートカットは同い年の姉を思い出すが、明らかに姉より出るとこが出ていた。
(うわぁぁぁぁぁぁ……この状況ってまさか……何しちゃってんだ俺……)
両隣りに下着姿の美女。気付けば自分もパンツ一丁だった。
(ふぅ、お、落ち着け俺。よ、よし。とりあえずここから脱出だ)
意を決し、ベットから這い出るため体を起こした真一郎だが、神様はとことん意地悪だった。
「か~さま~、もう朝ですよ、まだ寝てるんですか~?入りますね」
そういうと部屋の扉が開き同い年の姉レイラが入ってきた。
「母様、もう皆は朝食済ませて……え?」
ありえない光景を目にして固まるレイラ。
「や、やあ。お、おはようレイラ」
下着姿の母達に挟まれてベットに座っている上半身裸の弟。誰がどう見たって怪しすぎる状況だ。
「し、真一郎。お前はそこで何をしている」
明らかに怒っている。声が怖いし顔も怖い、おまけに手がプルプルしてる。
「いや、待て待て!これは違うんだ、俺は何もやってないぞ!!!」
「本当か?」
その眼力だけで子供なら泣き出しそうだ。いや、どっちかと言うと自分が泣きたい。
「多分本当だ、正直記憶が全然ないが、やましいことは何もしてない!……ハズだ!」
必死に誤解を解こうとする真一郎に、思わぬ援護射撃が入った。
「んん~しんちゃぁぁん」
金髪の方が寝ぼけて真一郎に抱きつき足を絡めてきた。
「ちょ!シルフォーネさん!寝ぼけてないで!」
離そうとしたら逆にさっきよりも強くひっつかれた。
「いいじゃないのぉ~ね、昨日みたいにイチャイチャしましょ?」
(この人絶対分かってやってるだろ!!!)
「こ、この」
「まっ!待て!レイラ!落ち着け!とりあえずその手につかんだクマをおこう。なっ」
レイラはすぐ近くにあった木彫りのクマを手につかんでいた。
「こぉぉのぉ!ド変態がぁぁぁぁぁぁ!!!!」
高速で飛んできた木彫りのクマは真一郎の頭部にクリーンヒットした。
「しんちゃん!大丈夫!?」
義母の声を聞きながら、薄れゆく意識の中で昨日の夜を必死に思い出そうとする真一郎だった。
ちっく
たっく
ちっく
たっく
ちっく
たっく
ちーん
話は昨夜の夕食会まで戻る。
父の墓参りから帰った真一郎は、部屋で着替えてをすませ、ヴィラントと食堂へむかった。道すがら改めて王宮の広さと部屋数の凄さを確認した。
「しっかし広いよね~部屋って全部でいくつくらいあるの?」
「本館だけで数えますと、使用人の部屋や倉庫なども合わせて五十近いですね」
今歩いているのは王宮の二階部分、真一郎の部屋は三階にあり他の姉妹達の部屋も二階と三階にそれぞれあるらしい。本館最上階の四階部分は謁見の間や王の居住スペースや教会などがあるが、国王不在の今はどれも使われていない。
本来ならば国王代理のジゼル使うべきなのだが、「自分はあくまで代理だ」と使用を拒否していた。
二階部分の一番端に王族専用の食堂がある。グライン、というより香織の方針でいつの頃からか夕食は家族皆でと決まりができていた。
真一郎が食堂に入るとメイド達がまだ仕度の最中で、皆真一郎に軽く挨拶をしてせっせこ動き回っていた。まだ時間が早いせいで姉妹達はまだ誰も来ていない。
「私もあちらの手伝いをしてきますので」
そう言うとヴィラントは厨房の方へ消えて行った。
手持ち無沙汰な真一郎が壁にかかっている絵画を眺めていると急に背中に衝撃が走った。
「しぃぃんちゃぁぁん」
誰かが後ろから思いっきり抱きついてきたらしい。
「うぉっと。えーっと誰です?」
衝撃でよろけながら背中に柔らかい感触がむにむにしていた。
「とりあえず離れてもらっていいですか?」
「え~つま~んな~い」
自分の記憶にない声に、予想できた人物は二人。ただどっちかが分からなかった。
背中の彼女が離れてくれたので後ろを振り返ると、そこにいたのは長女シャールイによく似た金髪ロングヘアーの美女だった。 ただ、シャールイよりもお色気具合がハンパなかった。(な、なぜにチャイナドレスなんだ・・・・・・)
「ふふふ、こんなに立派になっちゃって。ママとっても会いたかったのよぉ?」
「えっと、シルフォーネさん?」
おそらくシャールイと双子の母であろう彼女、だいぶ思ってたイメージと違う。
「ふふふ、そうよシルフォーネよ。昔みたいにママって呼んでいいのよ」
何故か真一郎の耳を、細い指でいぢりながら艶めかしく近付いて来る。
「さ、さすがにこの歳でママはチョットきついかなぁ」
「んもぅ。まだまだ子供のくせに生意気言っちゃって。そ・れ・と・も・しんちゃんはもう大人なのかしら?」
ふふふふと意味深な笑顔で体を密着させてきた。
(顔が近い!なんかめっちゃいい匂いする!そしていつの間にか壁まで追い込まれた!)
「ちょ!し、シルフォーネさん近いです!」
真一郎も健全な一男子高生だ、今まであったこともないお色気攻撃になど対抗できるはずがない。
「ふふふふ。近いと何かダメなのぉ?」
ちょっと中腰になって下から上目遣いでこちらを見上げる義母(推定五十近いはず)
(なんじゃこの人わ!?俺はどーすりゃいいんだ!?助けて父さん!?御宅の奥さんなんかやゔぁいよ!!)
真一郎の混乱と焦りがMAXになった時、ガヤガヤと話し声を上げながら食堂の扉が開いた。
「でね、クーが言ったらがるるんが顔真っ赤にして照れてたんだ~」
「あのがるるんは可愛かったねぇ」
よく分からない会話をしながら入ってきた双子プラス姉達。
「あまりからかっちゃダメよ」
シャールイが双子に何か諭していた。
「あれ?兄様に母様、何してるの?」
真一郎達に気付いたミーが近付いてきた。
「ふふふ何でもないのよ、何でもね」
そう言うと真一郎から離れシルフォーネはさっさと自分の席についてしまった。
「はぁ助かった……」
真一郎はその場にへなへなと座りこんでしまった。
「兄様、大丈夫?」
「ぁぁ、クーか、シルフォーネさんってなんか色々凄いね」
シルフォーネにくっついて行ったミーとは逆にクーが手を出して起こしてくれた。「ありがと」と言いながら立って服をなおしていると、クーが「ちょっとちょっと」と手招きした。
「ん?なに?」
「耳かして」
内緒話か?と耳をむけると、クーは満面の笑みでこそばゆく話しかける
「お母様の事好きになってもいいけど、てぇ出しちゃダ・メ・ヨ。ふぅ~」最後のは耳に息かけられた。
「へ……?」
予想もしてなかった妹の行動にリアクションがまったくとれない。「ふふふ、さ、お兄様お食事にいたしましょ」
と軽くウインクをしてクーは席へとついた。
「はぁ俺、もしかしてとんでもないトコ来たかなぁ……」
真一郎の独り言は部屋の賑やかさにかき消され誰にも聞こえていなかった。
「はっはっは!そうかそうか香織は元気か!」
豪快に笑うのは最後に食堂へ来たジュリエッタさん。ジゼルとレイラの母だ。見た目的には、こんがり日焼けした赤毛のアマゾネス。健康的な引き締まった体躯はプロアスリートのようだ。
「ジュリエッタさんとシルフォーネさんて母さんと父さんが結婚する前から知り合いだったんですよね?」
確か母が二人を親友だと言っていた。
「真一郎、母さんをつけろ。ジュリエッタ母さんだ。もしくは母上とか母様でもいいがね」
持っていたフォークを真一郎のほうに指してジュリエッタが訂正を求めた。
「え?あ、じゃあジュリエッタ母さん、うちの母さんが二人の事親友って言ってたもんで」
「ええそうよ。私とジュリちゃんと香織、それにもう亡くなってしまったけど、クレイル達の母のタミコ、それにグラインの五人はチームを組んでたの」
ちなみにタミコは日本人と獣人とのクウォーターだった。獣人の力はほとんど持っていなかったそうだ。
「懐かしいなぁ、よく五人で魔獣退治に行ったけなぁ」
「そうねぇ」
思い出話に花が咲く義母達。そこでジュリエッタが「はっ!」と何か思い出したようでニヤニヤと真一郎に話かけた。
「そうだ真一郎、お前は覚えてるか分からんがな、レイラは昔、お前と結婚するって言ってたんだぞ」
「ブーーーーーー!!!」
レイラが思いっきり飲み物を吹き出した。
「ちょっとお姉汚いよ?」
「ぐほっがっ、お、お母様!何を言い出すんですか!」
むせながら母に抗議するレイラ。向かいの席で双子の妹が文句を言ってるのなんて聞いてない。
「なーに照れてんだ。昔っからしんちゃんしんちゃんって真一郎の後ろひっ付いてまわってたくせに。真一郎は覚えてるか?結婚の話」
「ごめん、全部覚えてないや……」
はははは!義母始め周りの姉妹からも笑い声がもれた。さっきまで照れて赤かったレイラの顔は違う意味で赤くなってきた。
「な、なんにもか?約束とかもした覚えないのか?」
「うーん、王国で暮らしてた記憶もあんまないんだよね」
「お兄ちゃん」
隣に座っていたチャーリーから不意に声がかかった。
「どーかした?」
「まったく、こーゆーときは、ウソでも覚えてるって言うのよ。思い出を大切にして、お兄ちゃん帰って来るのイチバン楽しみにしてたレイラお姉ちゃんがバカみたいじゃない」
「チャ!チャーリー!何を言うんだ!私は別に楽しみになんてしてなかったぞ!」
「ウソおっしゃい。伯父様が行ってから、まだかまだかってソワソワしてたじゃない」
シャールイの発言の後「そうだそうだ」と他の姉妹にトドメを刺されたレイラ。
「あのぉ、何かごめんね」
レイラがいたたまれなくなって謝ってみた真一郎。
「別にお前が謝る事じゃない!食事は済んだので先に部屋に帰ります!」
「デザートはいかがいたしますか?」
メイドさんの問いに「いらん!」とだけ言うとレイラはそそくさと食堂を後にした。
「お母様もチャーリーもレイラをからかい過ぎだ」
「ははは、まぁまぁジゼル、そう怒るな。子供をからかうのは母の特権なんだぞ」
「なんですかそれ、聞いた事ありませんよ」
言葉は怒ってるようでもジゼルの口元は笑っていた。
「で、お兄ちゃんはレイラお姉ちゃんと結婚する気あるの?」
チャーリーまだひっぱるのかその話……
「いやー小さい時の約束らしいし、それに姉弟じゃ結婚できないしね」
日本人にしてみれば姉弟の結婚なんてありえない話だ。
「できるぞ」
これまで黙々と食事をしていたキキがそのありえない話を打ち砕いた。
「え??」
「日本じゃダメらしいが、王国じゃ片親が違う姉弟の結婚は法で許されてるんだぞ」
「そうなの!!??」
昔々ある王が妹と愛し合ってしまった。国王とその妹は自分たちの交際を合法的にするために兄妹でも片親が違えば結婚OK!という法律を作ってしまったのだ。
「だから、レイラお姉ちゃんと結婚しないなら私と結婚して」
語尾にハートをつけてテヘッとするおそるべき五歳児。
「チャーリーばっかずるい?!私ももお兄様と結婚する?!」
「私も私もぉ?」
と、ミーとクーが手を上げてもうアピールしてきた。
「いやぁちょっと待ってよぉ」
「三人共、真一郎が困ってるじゃないか。どうだ?真一郎、いっそ私と結婚するか?」
「えぇぇ!?」
思いがけないジゼルの発言に皆が驚いた。
「ま、まさかジゼル姉様まで参戦なんて……」
「強敵すぎるよぉー」
「ジゼル姉様もお兄ちゃんの事好きなの?」
「いや、別に好きとかじゃなくてだな。どっかの馬の骨貴族と結婚するよりは、真一郎の方がましかなと思ってな。はっはっは」
(それ全然嬉しくないんだが……)
「そのような考え方もありますね。でわ私も」
そう言ってキキまで手を上げた。
「じゃぁお姉ちゃんも立候補しようかしら」
「シャールイ姉様までライバルに!」
「……ん」
無言で手を上げるクレイル。
(クレイル姉さんまで!ってか姉さんいつから居たんだ!)
「おぅおぅ大人気だな?!真一郎きっちり決めろよ。優柔不断は嫌われるぞぉ?」
「いやー、ちょっと俺まだ状況について行けてないんですが」
「ふふふ、いいのよ皆ふっちゃて私と結婚するでも」
「あ、それは無理です」
「えぇ~そんな即答しなくてもいぃじゃない。うぅママ泣いちゃう」
シクシクと泣き真似するシルフォーネ。
「やーい母様ふられってる~」
「ミーちゃんまでひどいわぁ」
「ハハハハハハハ」
(こんな賑やかな食事もいいもんだなぁ)と真一郎は新しい家族に感謝していた。
それからしばらくして談笑もおちつき皆がそれぞれ紅茶や酒でまったりしていた。
椅子の上で船をこぎ始めたチャーリーをキキがお姫様抱っこで部屋に連れて行こうとしたので「俺運ぶよと」提案したが「これは私の仕事だ」とやんわり断られた。
「ほらチャーリー行くぞ」
「……んん」
「ミーとクーも一緒に戻るぞ、明日も学校だろ?」
「明日休みたいな~、私達もお兄様のまりょくそくていみたい~」
「見たい見たいぃ」
テーブルに突っ伏してダラけながらダダをこねる双子。
「バカ言うな、皆の手本になるべき王族が学校休んでどーする。ほら、行くぞ行くぞ」
「「やだやだ~」」
なおダダをこねる双子。みかねたシルフォーネが「二人共、お姉ちゃんのいう事は聞くものよ」と言うと。
「「うぅぅ。わかりましたよぉ~、おやすみなさーい」」
と、しぶしぶ部屋を後にする二人の後に続きシャールイも「じゃあ私もこの辺で」と続き、最後にキキが出て行こうとしたが、何か思いだした様に顔だけ出して
「そうだ、真一郎、昼間の話は母上達にしたのか?」
「昼間の話?」
「私はクーに聞いたが、大層な力があると分かったそうじゃないか」
「あぁ、そーいえばヴィラントにも母さん達に話す様にって言われてたっけ」
「大事な事だ、話しておけよ。でわ皆、おやすみ」
そう言うとキキは食堂を後にした。
「それで昼間の話しって何なの?」
「ん、とね……」
今食堂に残っているのはW義母とクレイルとジゼル。
クレイルはテーブルの隅の方でお酒をちびち呑んでおり、ジゼルはそんな姉の髪を「姉上の髪はいつもふわふわですね~」などと言って三つ編みをしたりしてる。
男勝りだと思っていたジゼル姉さんもあんな事するんだ~と眺めていたらW義母からさいそくされた。
「真一郎、昼間の話しって何だ?」
「あぁ、何かねお墓行って分かったんだけど、俺父さんと同じアンチマジックボディて力があるらしいんだ」
「なにぃぃぃ!」
「凄いじゃないしんちゃん!」
二人の驚き方に(やっぱ凄い力なのか)と自分の力に感心した。
「グラインの力を受け継いだんだな!いやーすごいぞ真一郎!」
「まだ全然実感ないんだけどね」
正直自分にそんな凄い力があるなんてまったく実感がなかった。
「しんちゃん」
「え?……ってうおぉ!」
呼ばれ振り返ると、さっきまでテーブルの隅にいたクレイルがすぐ隣にいた。前髪で顔が半分くらい隠れているため近くでみるとかなりホラーだ。
「手……かして。ジゼル前髪お願い」
「はい」
ジゼルは姉に指示された通り前髪を髪どめで留めておでこ丸出し状態にした。
(うぉ、やっぱクレイル姉さんも美人なんだなぁ)初めて見る姉の顔は他の姉妹同様に十分美人の部類に入るものだった。
「しんちゃん、手」
「あ、はい。これでいい?」
恐る恐る出した手をクレイルは自分の手の上に重ね、反対の自分の手を見つめながら何かブツブツ唱えていた。
次の瞬間、クレイルの右手の人差し指の先にロウソクの火ほどの大きさの火が灯った。
「おぉ、これ魔法?」
「うん、ちょっとじっとして、動かないでて」
そう言うとクレイルは自分の指に宿った火を真一郎の手に近付けた。
「え!?」
「大丈夫、じっとしてて」
指先の火が真一郎に触れようとした瞬間、火は音も無く消えてしまった。
「……うん、って事わ……わぁそうか……」
さらに「へぇ」「うわぁ」などと言いながらさっきと同じ作業を繰り返していたクレイル。時々凄く楽しそうにしている。やっと終わったのは10分くらいたった頃、我慢できなくなったジュリエッタがクレイルにつめよった。
「どおなんだクレイル?」
「うん、確かにこれはアンチマジック現象、でもお父様の力とはまったくの別もの」
「へ?そーなの?」
「クレイルちゃん詳しくお願いできる?」
「まだはっきり言えないけど、お父様の力は常に体の周りに魔法を無効にする鎧を着ているみたいなもの、それに対してしんちゃんは、必要なときだけ必要な大きさの盾が勝手に出てくる感じなの」
「それって逆にめんどくさくないか?」
ジュリエッタの意見はもっともだ、いちいち盾を出すより最初から鎧を着ていた方がいいに決まっている。
「鎧は着たらそれっきり、自分で調整できないけど、盾なら強度が足りなければ重ねればいいし、大きくすれば近くの仲間も守れる」
「それって近くの仲間にもアンチマジック効果が出るってことかしら?」
「まだ仮説だけど、しんちゃんの頑張り次第で出来るようになるかもしれないって事」
「「「おぉぉぉぉ!」」」
クレイル以外の三人は感心していたが、真一郎はなんの事かさっぱりだった。
「とりあえず、明日の測定でもっと詳しく分かると思う。うん、私もう部屋に行って明日の支度しなきゃ。じゃあおやすみ」
そう言うとクレイルはそそくさと自室へ帰っていった。
(クレイル姉さんてあんなに喋るんだ……)
残された四人はしばし呆然としていたが最初に動いたのはジゼルだった。
「じゃあ私も部屋へ戻りますよ」
「ああ、おやすみジゼル」
「母上方もあまり飲み過ぎませんようにね」
「ハハハハ分かってるさ」
「でわおやすみなさい」
そう言ってジゼルは部屋を後にした。
「じゃあ俺も」
ジゼルに続いて真一郎も部屋に戻ろうとしたが
「しんちゃんはまだダメよ」
「えぇぇぇぇぇぇ~」
「まぁまぁ真一郎。とりあえず飲め!」
「いやジュリエッタ母さん、俺まだ未成年なんで」
「来年になれば王国じゃ成人だ!問題ないだろう」
「そうよ、ささ、しんちゃん。このお酒 なら飲みやすいから」
そう言われて出された酒はとてもいい匂いがした。
「えっと、飲まないとダメ?」
「ダメだ」「ダメよ」
二人の義母に進められるままとりあえず一口 飲んでみた。
「あ、うまい」
「でしょでしょ~さ、どうぞ」
「でわでわ」
「いい飲みっぷりだな!ハハハハ」
真一郎は知らない。この酒が実はアルコール度20%をこえている事を、そのせいで翌日姉から木彫りのクマを投げられる事になると。
「うまいなぁ~」
「飲め飲め~」
「ふふふふふ」
フィルティアス王国の夜はまだまだ長い。
作者キャラ好感度ランキングでクーが急上昇中!
ご意見ご感想などどしどし募集中。
さて次回の「はちぷり」は!
ついに明かされる真一郎の力の正体!そして噂のえんじぇるちゃん登場!
やっぱりアッチ系なのか!?