4話 『家族に敬語は不要です』
姉妹登場!!なんか夢中で書いてたら時間めっちゃたってた・・・
宮廷メイド長、シノ・ヤマシタは今年で七十八歳になる。王都に住むヒトの中では三番目に高齢だ。彼女の実家は長崎で貿易商を営なむ裕福な家庭で、第二次大戦中に王国に疎開という形で訪れた。その後当時の国王(真一郎の祖父にあたる)に見初められ第二王妃となり王国への永住を決めた。
国王との間には女児を一人授かったが、まだ幼い頃不慮の事故によりこの世を去ってしまう。その事故により第一王妃も亡くなったため、当時まだ幼かったグラインやその姉にはシノが母親となり教育を施した。王国と日本との橋渡し役を長年勤めたが、夫である国王の死後、グラインが国王に即位すると表舞台から姿を消した。それ以後歴史上には彼女の名前はほとんど出てはこないが、グライン即位の翌年周囲の反応を押し切って自らメイド長の職に就き、王国を影から支えることに自分の残りの人生をささげる事にした。
そんなシノは今、義理の孫、真一郎の姿に目を見張った。グラインにも似ているがシノは若き日の自分が出会ったばかりの愛する人の面影を見た。さらに真一郎から漏れる魔力は七色に輝きを放っていた。
一般的に魔力の色は個人の魔法の適正などで決まってくる。鍛錬次第では他人の色を見る事もできる。それが七色ともなるとおそらく全ての属性の魔法が使えるであろう。グラインも魔法の才に秀でていたが、それよりも上のかの”銀翼の魔女”の血を引いているのだ、当たり前といえば当たり前の結果だった。いつまでも様子をうかがっている訳にもいかず、今だ兄を観察中の双子をともなって真一郎の元にむかった。
「お帰りなさいませ、真一郎様。お待たせしてしまって申し訳ありません」
ケラが仕事に戻ってすぐ真一郎達に声をかけてきた女性はこの異世界ではありえないと思う和服を着ていた。
「あ、えっと、ただいまです。すみません、どちら様でしょうか?」
「これは失礼を、私、王宮でメイド長を仰せつかっておりますシノ・ヤマシタと申します」
彼女の名前に驚きながら、確か母がシノさんなる名前を言っていたことを思い出した。
「えっと、母さんからお名前はうかがってます。何か困ったらシノさんに聞けって。変な質問ですがシノさんて日本人の方ですよね?」
「ええ、生まれは長崎です。訳あってこちらでお世話になっております。真一郎様がお分かりにならないのも無理ありませんわ、最後に会ったのは真一郎様が五歳の時ですからね。ご立派になられましたね」
穏やかな笑顔で自分の質問に答えた彼女に真一郎の緊張も少しづつほどけていった。シノはぱっとみ上品なお婆ちゃんだ。薄紫色の着物をピシっと着ており、髪はお団子ヘアーだった。シノの日本のお袋スタイルも気になるが、そのさほど大きくないシノの後ろに少女が二人無理やり隠れているのに気が付いた。
「はは、育ってるのは身長だけですよ。母さんにはまだまだ子供扱いされてますしね。シノさんそちらのお二人わ?なんか見え隠れしてすごい気になるんですが」
シノさんの後ろでビクッ!と二人が飛び上がった。
「こちらのお二人は真一郎様の妹君でございますよ。まったく、お二人ともいつまでも隠れていないで、お兄様にご挨拶されてはいかがですか?」
あぁやっぱりそうかと心で思いながら真一郎はできるだけ穏やかな笑顔で二人に語りかけた。
「二人とも初めまして。俺は真一郎と言います。どっちがクーニャでどっちがミーニャかな?」
事前に妹達の情報をヴィラントから聞いておいたので名前は分かったが、さすが双子だけあって全然見分けがつかない。今は髪の縛り方が左右で違うので見分けられるが、髪を下せば違いなんてまったく分からない気がした。
「ハイ!私がミーニャでこっちがクーニャです!」
元気に飛び出してきた右で髪を留めている方がミーニャらしい。右がミーニャで左がクーニャ、できれば自分なりの違いが分かるまで髪の縛り方はそのままでお願いしようかな。なんて真一郎が考えていると、二人がやっとシノの前に出てきて姿勢を正した。お互いに合図もなしにぴったり息の合ったお辞儀をしてみせた。
「「真一郎お兄様、お初にお目にかかります。ミーナスティカとクーニャミリアでございます」」
二人でハモりながらの自己紹介だった。ちなみに二人は十三歳で、真一郎が日本に行く時はまだ一歳だったため他の姉達に比べて真一郎の記憶はまったくなかった。
「「お兄様をおむかえに上がりました!」」
元気に二人でニコっとしてきた妹達はすぐに真一郎の手を取り「ささ、まいりましょうお兄様」「ささ、こちらでございます」などと言いながら王宮の中へと案内していった。
「なんか堅苦しいのもめんどくさいからさ、普通に二人で喋ってるみたいに話してくれていいんだよ?」
二人に連れられて王宮内を歩きながら適当に会話していたが、どーにも二人から敬語で話される事にむずがゆさを感じ提案してみた。ヴィラントや他の者からの敬語は仕方ないとヴィラント本人に諭されたのでなんとか我慢するが、実の妹にまで敬語で話されてはすっごい他人行儀な気がして嫌だった。
「「ホントに?」」
上目づかいで二人が見つめてきたので「ホントホント」と答えてみた。
「ふぁ~よかったぁ~。こんな堅苦しい話し方正直なれてなくて疲れちゃったよ」
「アタシもアタシも。お兄様話の解るヒトでよかったわぁ~」
「まぁ兄妹で敬語ってのもなんかヤダしね。あのさ、聞きたいんだけど、やっぱお姉さん達にも敬語で喋るの?俺もそうするべき?」
会ったばかりでは姉達にたいして敬語も仕方ないが、普段全然使っていないしゃべり方ではすぐボロが出るし正直疲れる。できる限り敬語なんて使わずにすごしたいのだが、この妹達の反応を見るとそうも行かない様な気がしてきた。
「ん~お姉様達は公の場以外だったら別に敬語でなくてもいいと思うよ。アタシ達だって普通に喋ってるしね」
ミーの言葉で少し不安が取れた真一郎は姉達についても聞いてみることにした。
「あのさ、お姉さん達ってどんな感じ?俺昔の事とか全然覚えてないもんでさ」
「いいよ!んじゃまずは長女のシャールイ姉様からかな。シャールイ姉さまはね、とにかく優しい。アタシ達が何かイタズラしても笑って許してくれて、次からはダメよとか人に迷惑かけちゃだめよくらいしか言わないの」
「それにとってもお料理がお上手なんだよぉ」
ミーの言葉に続いてクーが補足をしていた。さっきから思っていたがどうやらこの二人ではミーの方がお喋りで、クーの方が控えめらしい。
「んで、次女のクレイル姉様はね、無口で暗いけど優しいの。普段は研究室にこもってばっかだからろくに顔見ないけど、夕食で会った時は勉強の話とか聞いてくれるし、アタシ達が何かイタズラしてもあんま怒らないんだ。むしろもっといい方法があるって教えてくるの。あ、でも勝手に研究室に入って中のモノいじると怒られるから注意してね」
「それにとっても女の子なんだよぉ。お部屋もかわいいお人形とかいっぱいあるしねぇ」
無口で暗いって姉の評価としてどうなんだ?
「んでもってジゼル姉様。姉様は今は国王代理だから忙しくてあまり相手にしてくれないけどお父様が元気な時はよく遊んでくれたんだ。強くてかっこいいお姉様だよ。でも、アタシ達がイタズラすると結構怒って怖いんだ」
「でもたまにこっそりお菓子くれたりするんだよぉ」
「そっかそっか~。あのさ、さっきから気になってたんだけどさ、二人はそんなイタズラばっかなの?」
なんか姉達の説明に必ず自分たちがイタズラした時の対応がもりこまれていたので気になった。
「う……そ、そんなにはしないけどさ、たまにイタズラで困らせたりはするかも」
「大体いっつもミーが言い出す事が多いの。私がダメって言っても聞かないんだから、それで私も一緒に怒られるからやんなっちゃうのぉ」
それだけで何となく二人の普段の感じが想像できた真一郎は苦笑いをもらした。
「そっかそっか。まぁ楽しい事したいのは子供の特権だしね。どんな事してるかは解らないけどほどほどにね」
真一郎は大したイタズラはしていないだろうと思っていたが、実際彼女達のイタズラはかなり派手である。以前王宮の壁全面に魔法効果のついたペンキ(普通の水でわ落ちない)で落書きをしたせいで王都の魔道師がかなりの人数、徹夜で落書きを消すはめになった。さすがにその時は姉全員からおしかりを受けたが、そんな時でも長女シャールイは優しく二人を諭してくれた。
「ちなみにイタズラして一番怒るのはアタシ達のすぐ上のレイラ姉ね。普段から何かあるとすぐ怒るんだ」
「でも年も近いから昔から一番私達の面倒みてくれたの。私達の事いっつも心配して怒ってるからしょうがないのぉ」
ミーよりもクーの方が少し大人らしい。
「でもさー怒るとすぐゲンコツだよ!まったく誰に似ればあんなに怒りっぽくなるのかな」
ちなみに八人の姉妹達は母親がそれぞれ違う。長女と双子(六、七女)が母親が同じで、次女と四女と八女が同じ母親、三女と五女が同じ母親である。それぞれ母親達の髪の色をうけついでいるので見ればすぐ解る。二、四、八女の母はすでにこの世にいないが他の二人の母はまだ元気だし、母達は血のつながりがなかろうと娘たちに同じように接してきたため母娘関係は全体的に良好だった。
「ちなみにレイラ姉はお兄様と同い年だよ」
「あー確かその話聞いたな~。同い年のこもいるって。でもあっちの方が一ヶ月くらい生まれが早いからお姉さんになるんだよね~。俺もあんまり怒られないように頑張るよ」
「あはは、さすがのレイラ姉もお兄様にゲンコツはないでしょ~」
まだ見ぬ姉の鉄拳制裁をこれから一番くらう事になる事を真一郎はまだ知らない……
三兄妹の会話を少し離れて歩きながらシノとヴィラントは静かに会話していた。
「ご苦労様でしたね、ヴィラント。わざわざ貴方に出向いてもらって」
「いえいえ、私は真一郎様の執事ですからね。彼を見守るとグラインと約束しましたし、これからは常に影から見守るつもりですよ」
「貴方に見守られるほど安心できる事はありませんね」
イタズラっぽく笑うシノ。ヴィラントは少し困ったように続けた。
「私はあくまで執事ですよ。ただ、真一郎様に何かあればおしみなく力は使いますが、できればそんな事にはならないで欲しいですね」
「かつての貴方を知っていれば、今の穏やかなな貴方は想像もできないほどですよ。王国広しといえども、貴方に対抗できるのは三戦姫くらいですからね。真一郎に害をなそうとする者に同情してしまいますわ」
三戦姫とは真一郎の母香織を始め、他の姉妹の母である二人を合わせた王国最強戦力と言われる母達だ。一人だけで国を一つ軽く落とせるほどの戦力をもつ彼女達でしか相手をできないのはヴィラントの真の姿に関係している。しかし、彼は前国王グラインに敗れてからは忠誠を誓っており、グラインの遺言により真一郎を守る役目についている。王国最強戦力でしか相手ができない様なヒトが守ってるとは知らずに真一郎は双子とただ楽しそうに話していた。
しばらく長い廊下を歩き続け、目的の扉の前まで来てミーとクーは姿勢を正した。
「お兄様、覚悟はよろしくて?」
若干緊張しながらミーが聞いてきた。
「うん。覚悟ってほどのモノはないけど、まあ行儀よくするから大丈夫だよ」
「ならよかった。んじゃクー行こうか」
「うん」
短く返事をしたクーが扉をノックした。
「「失礼いたします。ミーナスティカにクーニャミリカです。真一郎お兄様をお連れいたしました」」
二人の声が綺麗に廊下にこだました。中からは「よろしい。お入りなさい」と返答がきた。二人がゆっくりと扉を開けると中は広々としたサロンのような雰囲気だった。中央にはテーブルとソファがあり、ソファには二人の女性と一人の女の子。一人は燃えるような赤髪ロングヘアーで、もう一人は緩やかなウェーブのかかった金髪ロングヘアーだ。間に座る少女は黒髪のウェーブがかかったロングヘアーだ。
奥の方のベランダへ通じる大窓にはこれまた二人の女性。一人はソファに座っている女性と同じ赤髪だが、こちらはその髪を短く切りそろえてあった。一緒にいるのは見た感じ大和撫子を自で行っているような女性。黒髪ストレートを一つに結び弓道などで使う袴を着用していた。ソファの女性がドレス風なのに対して彼女だけが妙に浮いている。
「お姉様方、真一郎お兄様をお連れいたしました」
二人が道を開けて後ろからおそるおそるあらわれた真一郎。正直このどこぞの絵画の様な光景に思った以上にどぎもを抜かれていた。
「真一郎、ただいま戻りました」
ヴィラントから教えられた通りに挨拶し、同じく教えられた通りにお辞儀をした
「おかえりなさい、しんちゃん」
いつの間にかソファから立ち上がっていた金髪の女性が真一郎の手をとり、目には少し涙を浮かべていた。
「えっと、シャールイ姉さんですよね?」
ヴィラントと双子から聞いていた姉達の特徴に照らし合わせながら、恐る恐る聞いてみた。
「ええ。長女のシャールイよ。立派になったわね、お父様にそっくりだわ。お姉ちゃん感動して涙がでちゃう」
ハンカチで目じりを抑えながらシャールイに後ろから声がかかった。
「姉上、いきなり目の前で泣かれては真一郎も困るでしょうに。真一郎もよく戻ったな。お前の成長ぶり、楽しみにしていたんだぞ」
赤髪ロングの姉上がシャールイをなだめるように続けた。
「ささ、みんな一度席につこうでわないか。つもる話もあるだろうしな。キキとレイラも座りなさい。それとクレイル姉様もいつまでも隠れてないで、出てきてソファに座ってください」
赤髪ロング姉さんに促されるように窓側の二人もテーブルを挟んで反対側のソファに腰かけた。双子はどこからか椅子を持ってきてソファの後ろに座っている。真一郎はテーブルのいわゆるお誕生日席にある一人がけの椅子に腰かけた。
真一郎が座ると同時くらいに部屋の隅から何かがガサガサと音を立ててテーブルに近づいてきた。
「姉上こちらに」
袴姿の姫が隅から出てきた誰かを自分の隣に座らせた。見れば同じ黒髪でこちらはウェーブがかかったロングヘアーで前髪に隠れて表情は見えないものの、かなり真一郎を凝視しているのは分かった。
「さて、じゃあまずは自己紹介ね。しちゃんも最後に会ったのは五歳の時なんだから私たちの事よく分からないでしょ?」
「ええ、お恥ずかしながら記憶があいまいで、正直ヴィラントやミーやクーに聞いてなんとか名前がわかる程度なので」
実の姉達といってももう一二年も会ってないのだ。わからなくて当然である。
「いいのよ気にしないで。まず私は長女のシャールイよ。気軽にお姉ちゃんでも姉様でも好きなようによんでね」
とびっきりの笑顔で微笑むシャールイ、世の男性たちにはかなりの破壊力がありそうだ。
「はい。よろしくお願いしますシャールイ姉さん」
長女の自己紹介の後はおそらく次女。見た感じあきらかにあの人なんだけど、全然喋ろうともしないい。そんな状況をみかねて隣に座っていた袴姫が救いの手をさしのべた。
「姉上どうぞ」
袴姫にうながされて暗い方の姫が話し出した。
「…………次女のクレイル…………しんちゃんおかえり」
うん。大体予想はできてたがやっぱし引きこもり気味の姉さんか。でもなんか嫌われてはいなさそうだな。
「クレイル姉さん、ただいまです」
とりあえず満点の笑顔で返してみたら、なんか一瞬ビクッとしてフフフフと少々怖い笑顔を浮かべていた。
「次は私だ。三女のジゼルハインだ、気軽にジゼル姉さんとでも呼べ。現在は国王代理の任をおおせつかっているが、いずれお前が王となれるようしっかり教育していく。覚悟しておけよ」
ジゼル姉さんはグレー叔父さんの様な親指立ててグー&ウインクをしてきた。なんか想像してたより気さくそうでよかった。
「はい、ジゼル姉さん。色々とご指導お願いします」
同じようにグーとしながら答えたら「ハッハッハのりがよくていいぞ」などとやけに上機嫌に答えてくれた。
次に続いたのは袴姿の姫
「四女のキキだ。王国騎士団で第一師団長を務めている。武芸方面にかんしては私が君を鍛える。日本である程度経験をつんだようだが、こちらではより実践的な武術を身に付けてもらうからな」
「キキ姉さん、俺が経験を積んだっていっても、所詮習い事程度ですよ。こちらに来たからには自分の身くらい守れるように精進します」
「ふむ。よい心がけだ。君も騎士団を率いて戦う身。自分の身くらい守るのは最低限の役目だからな。まかせろ、私が立派な騎士に育ててみせる」
なんかスイッチ入ったように拳を突き上げながら使命感に燃えていた。
「ふんっ。せいぜい死なないように頑張りなさい」
ふいに出たキキの隣に座っていた赤髪ショートの発言で、双子が笑いこらえようとプルプルしていた。
「あ、ああ。うん。せいぜい死なないように頑張るよ。レイラ姉さんもよろしくね」
ゲンコツ姉さんらしいドSな初めての会話にいちお平静を保ったつもりで答えた。(まさかいきなりこんな攻撃されるなんて)双子から聞いてはいたが、さすがに最初は普通だろうと思っていた真一郎のダメージは結構でかい。
「ふんっ。年は一緒なんだ別に姉さんなんて付けなくていい。…………レイラでぃぃ」
最後の方かなり小さくて聞き取れなかったがとりあえず同い年って感じで接していいて事かな?てかこれはまさか噂のツンでれってやつなのか?マンガやテレビでは見るけど本物は初めてみた。思ったより仲良くなるのに時間はかからないかなと、少し胸をなでおろした。
「私達の紹介はすませてあるから、最後はチャーリーだよ」
シャールイとジゼルの間に座る少女の肩に手をのせてミーが自己紹介を促した。
「あ、ハイ!初めまして真一郎お兄様。チャリオットです。皆からはチャーリーって呼ばれてるので、お兄様もそう呼んでくれるとうれしいです」
もじもじしながらの末妹の自己紹介にその場にいた全員が癒された。
「よろしくチャーリー。俺の事は好きに呼んでいいからね」
顔を覗き込むように少女に提案したところ「じゃ、じゃあお兄ちゃんでもいい?」などと上目づかいで言われた。この少女の言うことなら全部聞いてしまいそうな破壊力満点の視線に(将来はすげー美人になりそうだ)などとさっそく兄バカを炸裂させながら「いいよ。チャーリーの好きなようにね」などと笑顔を返しておいた。
「よしこれで一通り自己紹介は済んだな。私は公務が残っているのでこれで失礼するが、皆はどうする?」
本当に自己紹介だけ済ませてジゼルは部屋を後にしようとしていた。
「私とレイラは騎士団の方で雑務がありますのでそちらに。姉上は教会にお戻りで?」
「ええ、そうね。とりあえず教会に戻ろうかしら。しんちゃんはどうするの?夕食に皆でまた集まるまでは自由にしてていいわよ?」
現在時刻は午後の二時を少し過ぎたところ。夕食は七時と決まっているそうなので五時間近くの空き時間ができた。
「とりあえず、父さんのお墓まいりに行きたいんですけど」
真一郎は王国にきてまず父の墓参りをすることを日本にいた時から決めていた。ヴィラントに聞いたところ、国王は代々王都の裏側にある、山というか丘の頂上にお墓があるらしい。たしか王都からなら一時間もあれば付くって言っていたはずだ。
「そうね、まずはお父様にご報告するべきですもんね。しんちゃんはいい子ね」
そういうとシャールイは頭をなでてくれた。十七にもなって頭なでられるとかなり恥ずかしい。
「真一郎、いい心がけだぞ。王たる者先人の偉業を正しく理解し敬うべきだからな。そうだ、ミーとクーはどうせ暇なんだろ?お前達も一緒について行ってあげるといい」
ジゼルの提案に双子は元気よく「「いくいくー」」と声を揃えて言ってきた。
「お兄ちゃん、私もいきたいなぁ~」
後ろから洋服の裾を引っ張るようにチャーリーがお願いしてきた。かわいいな!妹!
「こらこら、チャーリーはまだ早いって言ってるでしょ。お墓参りは七つになってからってお約束があるの忘れた?」
シャールイがなだめるようにチャーリーを抱きかかえながら言い聞かせた。
「うう。じゃぁ明日は遊んでくれる?」
「うん、予定が空いたら絶対遊ぼうね」
真一郎はチャーリーに小指を出してみせた
「指切りってしってる?」
「うん!前にお姉様に教えてもらったの。指切りしたら約束は絶対守る。破ったらベヒーモスの餌になっちゃうんだって」
なんだその物騒すぎる指切りわ。ベヒーモスって確かゲームとかで出てくる結構強い系だぞ。同じかどうか分からないけど、針千本よりは確実に死ねる感じなんだろうと思った。
「そ、それは約束破れないね」
それじゃと小指をからませて
「「ゆ~びきげ~んまん、うっそついたらベヒモスにたっべられる~、ゆびきった!」」
二人のその約束を周りの姉達はほほえましく眺めていた。
「でわ真一郎、夕食には母上達も来る、遅れずに戻るんだぞ」
ジゼルはそう言うと部屋を後にしていった。
「そうそう、お墓には墓守のドレイクさんがいらっしゃるから、くれぐれもお行儀よくね」
シャールイはそう言うとジゼルの後を追うように部屋を後にした。
「「「はーい」」」
三人でそろって返事をして他の姉妹たちにも別れをつげ、父の墓へ行くために外で待っていたヴィラントに声をかけた。
「ヴィラント、父さんのお墓参りに行こうと思うんだけど、一緒に来てくれる?」
正直双子と自分の三人では不安だった。主に双子が何かするんじゃないかと。
「ええ、よろこんでお供させていただきます。少々支度もありますので10分ほどお時間をいただいても?それに、お三人様も歩きやすい恰好の方がよろしいかと、一度お部屋へお戻りになられて支度なさっていて下さい。すぐに私がおむかえにあがりますので」
一時間ほどのハイキングをするのだ、たしかに今履いている革靴では足が痛くなってしまうだろう。
「了解じゃあ支度したら迎えきてね。二人ともまたあとでね」
「「はいはーい」」
そういいながら四人は解散していった。
「ねぇクー、お兄様ってドレイク爺さん見たら驚くかな?」
「そりゃあ驚くでしょねぇ?ミーちゃん本当は驚いたお兄様見たいだけでしょ?」
「あ、ばれた?」
「ばればれ~って、私もそうだけどねぇ」
双子はきゃっきゃきゃきゃ言いながら部屋へと戻っていった。
アニメだったらこんな声がいいなって事で自分的に姉妹のCVが決まってたりします。キキの声は絶対川澄さんがいい。
次回お墓参りへ!ファンタジーにはかかせないヤツが登場しますよ!