33話 『マザシェイプの森で』
今回より第二部開始
若干短めです
フォレイティアス王国北東部
エディオーン領
東の端に北の砦を構えるこの土地にはエルフ達が住む森がある。
西隣のパラミア領との境目にあるマザシェイプの森と呼ばれるそこは、王国に住むエルフ達の最もよく聞く出身地だ。
森の中に幾つか点在する集落の中に、森と同様のマザシェイプと呼ばれる集落がある。
エルフ達の女王が居を構えるこの集落では、各集落の長や長老達が集まり緊急会議が開かれていた。
場所は集落の中でも一番大きなテント風建物。
女王ミシュリアが住むこのテント内にある会議室は、重苦しい雰囲気に包まれていた。
「北の砦が落とされ二ヶ月、ヤツらは着実に数を増やしています。いつこの地に侵攻してきてもおかしくない状況です」
現在闇の軍勢に奪われた北の砦と、このマザシェイプの森の間には平原以外何もない。
少し南に下れば王国民の住む村や町もあるが、それらを攻めるよりも、王国北側に連なる山脈に沿って進み、このマザシェイプの森に敵が来る確率の方が高いと予想されていた。
「この森は資源も豊富だし、王都からも遠い。森の特別な力も奴らには何の効果も無い。闇の軍勢がこの地を奪おうとするのは必然だろう。もちろん、王国としてもそんな事にならないように最善は尽くす。だが、万一に備えこの地に兵の駐留を許可して頂きたいんだ」
ツェルドに続き、室内のエルフ達に力説するジゼル。
彼女は今回王都からの特使として、王都に住むエルフの代表でもあるツェルドと共にこの地に来ていた。
国王代理が自ら赴く事で、この案件の重要性をエルフ達に伝えるためだという真一郎の考えだったが、そう思う様には話が進んでいないみたいだ。
「お話は理解した。兵ならばいくらでも出そう。しかし、この地に王国の兵を置くとなると話は別だ」
毅然とした態度で発言したのは、現女王の長男ランツェル。
肩の辺りで切りそろえるられた金髪に切れ長な瞳。まるでランウェイを歩くハイブランド御用達のアジア系モデルの様な美男子だ。
絵画から抜け出た様な白い肌の彼が言うように、エルフ達はマザシェイプの森に他者が入る事を極端に嫌う。
そもそも、エルフ達と王国の関係は古く、王国が今の形になった三百年前よりもさらに昔から、同盟相手として共に戦ってきた歴史がある。
その功績をたたえ建国時にマザシェイプの森をエルフ達の特別自治領とし、王国民と言うより、王国内部にある同盟を組んだ独立国に近い扱いを与えた。
その際の取り決めとして、森へ許可無く一般人が入る事を禁止する法律を王国側が作ったのだ。
「ジゼルちゃん、私としては全然オッケーなのよ。でも、お婆ちゃん達がね……」
息子に負けない美貌を持つ女王ミシュリア。息子同様、金髪に切れ長の瞳。一見クールに見えるが、口を開けば顔に似合わない甘々ボイスの持ち主である。
彼女の言う〈お婆ちゃん達〉とは三百年前のフォレイティアス王国建国時に第一線で活躍していたエルフ兵の生き残りの長老達だ。
中でも最長老と呼ばれる老エルフ、イェンローは、例え女王であっても逆らうことが出来ないほどの発言力を持っている。
「そもそも、森への他者の侵入を拒むのにもそれなりの理由があるのはご存知ですよね?」
並んで座る老エルフの中の一人が静かに語る。
「この森は毒性の高い瘴気が満ちている場所がいくつも有ります。毒を生成する力を持つ植物の仕業なのですが、それらに触れれば、毒の瘴気が体内に侵入し精神を蝕み、人格が変わったように凶暴化する。我らエルフは耐性があるし、ここや他の集落は古い結界に守られているから大丈夫ですが、普通のヒトや亜人なんぞ植物に触れんでも二日も森にいれば気が狂ってしまいますよ」
王国建国時にはこの森にも駐屯地があったらしい。エルフ特製の結界に守られていたが、ある時不注意からある獣人が結界の外で夜を明かした。その結果、毒の瘴気にあたり凶暴化、獣化までしてエルフの村を襲い子供が数人犠牲になってしまうという大惨事が起きてしまった。
それ以来、王国側も兵を置く事を自分達で禁止したのだ。
「瘴気についてはこちらにも対策はある。大昔と違い魔導具の性能も向上しているしな。もちろん有事以外は結界で守られた敷地の外には出ない事を約束する」
ジゼルの言う魔導具とは、魔法を宿した特別な石が内蔵されているマスクで、顔に装着することで体内への瘴気の侵入を防ぐのだ。まぁようするにガスマスクみたいなものだ。
「しかしその様な物信じられませんな……」
「それに、駐屯地を作るとなればそれなりの土地が必要になるしな。木々を切って土地を広げるなど賛成できわ」
「確かに」
「そうだな、森を侵す事は許しがたいな」
「だが万一敵が来た時どうする!?我々では数が足りな過ぎるぞ!」
「その通りだ!敵に備えるのは当たり前じゃないか!」
口々に語られる拒否する理由と、賛成の声。
(やれやれ、簡単に引き受けたが失敗だったかな……)
自分そっちのけで次々飛び交うエルフ達の声に、少しでも混ざろうとしたが、賛成派と反対派に別れヒートアップする彼らにジゼルは完璧な置いてけぼりをくらっていた。
「みんな落ち着いて話し合いましょ」
ミシュリアの声も聞こえないようだ。
「チリンチリン」
ますますヒートアップする周囲の声を止めたのは小さな鈴の音だった。
「静まれわっぱ共」
静かに、それでいて部屋全体に響く声で話すイェンロー。
小さな体に真っ白い髪。置物の人形みたいな彼女は静かになった部屋をゆっくりと見渡した。
「よろしい」
「イェンロー様、騒がしくて申し訳ありません」
「ミシュリア、気にするでない。皆が森を思っての事じゃからな。しかし、お主は王としての威厳にまだまだ欠けておるの。これくらいの騒ぎ女王の一喝でとめるべきだぞ」
「私の力不足です。申し訳ございません」
「ふむ、以後気を付けるのじゃぞ。さて、姫王よそなたに一つ尋ねるがの」
「は、なんなりとお答え致します」
「そなた弟君をどお思う?」
「真一郎ですか?」
「さよう、王に相応しい人物かい?」
思わぬ質問に困惑するジゼルだが、相手はエルフ達の中で最も発言力のある最長老だ。自分の答え次第で、今の状況をどうにかできる物だとすぐに分かった。
(私の答え次第なのか?下手におだてても見破られてしまうだろうしな……
「王として相応しいかどうか、私にはそこまで先見の明はございませんのでお答えしかねますね……ただ、個人的にはアレは王になるべき者であると思っています」
「ほう、なるべきか……」
「剣も弱く、魔法もろくに使えない。戦士としては欠陥だらけですが、皆を惹きつけるものを持っています。何より、国を平和へ導こうとする心は本物です」
真っ直ぐと正直な自分の言葉を述べるジゼル。
「剣や魔法の強さではなく、心で兵を動かすか……親子揃って厄介な奴らじゃ」
呆れた様に、でもなんだか心地よい笑顔を見せるイェンロー。グラインに始めて会ったのは、かれこれ三十年以上前だ。三百年を生きた彼女にはごく最近の様に思えるが、時代は確実に動いている。
「真の王とは、血筋では無い。なりたくてなる物でもない。なるべくしてなる物じゃ。かつて王国を作った初代フォレイティアス国王は元々平民じゃった。時代に、世界に争った彼は、まさに真の王と呼ぶに相応しいお方だったわい……」
今でも鮮明に思い出すかつての戦友。真面目でよく笑い、よく泣き、先の時代を共に夢見た。
そして彼とは正反対なちゃらんぽらんな性格ながら、彼以上に民の指示を受けていたグライン。その息子は日本でどのように成長したのか……
「……一度会ってみたいの」
「機会があれば是非。真一郎も喜びます」
「ふむ、機会があればな。……さて、ミシュリア、どうじゃ?話を受けるのか?」
「ええ、私はいいと思いますわ。イェンロー様さえよければ問題ありませんわ」
「ふふ、こんな老いぼれの意見など聞かんでも、女王のお主が決めればいいでわないか」
「イェンロー様のお言葉が有るのと無いのでは違うのですよ。とにかくこれで、正式にお話をお受けできるわね」
にっこり微笑むミシュリア。室内の半数ほどは、まだまだ言いたりないようでしかめっ面を崩していないが、流石にイェンローにまで文句を言える者はいなかった。
「さて、それじゃ詳しい話に移りましょうか。ランツェル、兵の事なんだけど……」
ミシュリアの声で部屋の中は軍事会議へと姿を変えた。
「それじゃ、後は若いのにまかせて、私は先に失礼させてもらうよ」
イェンローが退室の意を伝えると、室内の全員がその場に立った。
「お疲れ様でした」
「うむ。ミシュリア、頑張るのじゃぞ」
「はい」
満面の笑みで答えるミシュリア。
「さて、ツェルド少し付き合え」
「はい。ジゼル様、少し行ってきますね」
「ああ、こちらは任せておけ」
「でわ皆の衆、またな」
そう言ってツェルドを連れて部屋を後にするイェンロー。部屋から続く長い廊下を歩きながら彼女は隣を歩くツェルドに話しかけた。
「ツェルド、お主から見てどうじゃ?」
「……真一郎様の事ですか?」
「ああ、先の戦で力の一端を見せたと聞くぞ」
ツェルドの方を見ずに話すイェンロー。その口調は少しだけ厳しいような気がする。
「確かにイフリートを出したと聞いてます」
「ふむ。同時に随分な珍客も来たそうだが」
「ええ、今回は幸いにも香織様がいらっしゃたので何とかなりましたが、次にもしあれが現れるとなるとこちらもそれなりの対策を練りませんと。どちらにしても、近々真一郎様にはあれの話をしようと思っています」
「……そうか。若君がどこまで運命に逆らえるか楽しみじゃな」
イェンローは幼い真一郎に会った事があった。朗らかい笑う幼い少年は無邪気そのものだったが、彼に後々降りかかる様々な運命はすでにその時始まっていたのだ。
「香織も見事に育てた様じゃな……」
十二年前、真一郎を連れて日本へ帰るよう香織に提案したのはイェンローだ。真一郎自身のためにも、王国のためにもそれが最善の策と思われた。
「イェンロー様、心配には及びません。真一郎様は己の力に溺れるような方ではありませんよ」
「ふむ。まぁその辺はお主がしっかりと気配りをしてくれるじゃろうしな。頼んだぞ」
「ええ、私はその為に王都にいるのですから。しっかりと務めを果たしますよ」
イェンローの言葉に決意を新たにするツェルド。
(真一郎様に、世界を壊させたりなんかさせませんよ……)
彼と一部の者のみが知る真一郎の本当の力。エルフ達に伝わる〈神殺し〉と呼ばれるそれは世界そのものをどうにかできる力らしい……
「運命の子とはよく言ったもんじゃな……そんな面白い事があるのだ。私もまだまだ逝けないな」
「ご冗談を、イェンロー様にはまだまだ元気でいてもらわないと」
「ははっあまり老体をいたぶるなよ」
笑いながら歩く二人。
そんな二人が歩く廊下を、向こうの方から全力ダッシュして来る誰かが居た。
「なんじゃ騒々しい」
全力ダッシュで走って来たのはエルフのメイドさん。彼女は二人の姿を確認すると、ピタっと止まり優雅に挨拶をして見せた。
「イェンロー様、ツェルドニクス様。申し訳ございません急ぎ陛下にお伝えしなければならない事がありまして」
「姉上に?」
「はい、ですので失礼いたします!」
深々と頭を下げ廊下を走り去るメイドさん。
「ツェルド、見送りはここらでいいから、あっちの様子を見てくるといい」
「そうですか、ではお言葉に甘えて」
そう言ってメイドさんを追いかけるツェルド。
「ありゃ確かエルスタのメイドじゃったな。やれやれ、あのお転婆、また逃げ出しおったか」
一人廊下を歩きながらニヤニヤ笑うイェンローだった。
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「し、失礼します!」
軍事会議中の部屋に大慌てで入ってきたのはメイド服をまとった若いエルフだ。その後にイェンローに付いて行ったツェルドも戻り、部屋の椅子へ腰かけた。
「どうかしたの?」
ミシュリアの一人娘エルスタの専属メイドの彼女は、室内の人物達をなるべく見ないようにしながら言葉を続けた。
「陛下に至急お知らせしたい事がございます」
「あら、何かしら?」
「えっと、ここではちょっと……」
室内に居るのはエルフの重役達。それに付け加え、フォレイティアスの国王代理までいるのだ。
おまけにちょっとピリピリ感漂う彼らを前に、自分の持って来た話を切り出していいものなのかと迷っていると、ミシュリアから催促の声がかかった。
「そんなに硬くならなくても良いのよ。さ、話してちょうだい」
にっこりいつも通りの笑顔を見せてくれたミシュリアに対し、恐縮しながら彼女は話した。
「はい、エルスタ姫様がまたご勝手に外出をされまして……」
彼女の言葉を聞き、周囲からは「またか」とか「まぁ飽きもせずお元気で」などと失笑交じりの小声が聞こえてきた。
「まったくあの子ったら」
周囲の反応に少し恥ずかしそうに笑うミシュリア。
古くから女王が国のトップになるエルフ族。現在の女王ミシュリアには三人の男子と末っ子女子のエルスタが居る。
本来ならばエルスタが次代の女王候補なのだが、聡明で思慮深く寛大と、教科書に出てくるお手本みたいな兄達に比べ、自由奔放でお気楽過ぎる性格のためか、しょっちゅう勉強や鍛錬から逃げ出し、あっちこっちの集落で子供と遊んだり、農作業をしてたりしている。
そのため民には好かれているものの、エルフの一族を任せるには余りに自由すぎる性格だと重役や長老達などからは〈お転婆姫〉などと呼ばれている。
「で、今回はどこに行ったか見当はついてるのか?」
少々呆れ気味の長男ランツェル。
「まーたどっかの馬のお産にでも付き合ってるんじゃないか?」
次男のアンナルは短い金髪をポリポリかきながら笑っている。
兄同様の美男子は、細身の兄とは違い、エルフにしては体格がいい方だ。
「はは、エルは動物が好きですからね~」
兄達につられて笑うのは三男スリティア。
少しウェーブがかかった金髪に白い肌。上の二人よりも小柄な彼は、ぱっと見、フランス人形みたいに見える青年だ。
「それが、今回はずいぶん様子が違うようでして」
そう言ってメイドさんは一枚の紙切れをミシュリアに手渡した。
「あら、お手紙ね」
紙を広げるミシュリア。そこには見慣れた娘の文字で
「ちょっと王都へ行ってきます」
と書かれていた。
「…………」
「母上?」
固まるミシュリアの手元を覗き込んだランツェル。
「なっ!!!」
「どーした兄貴?」
母と同じように固まりかかった兄を覗き込むアンナル。
そんな彼に自分の持つ紙を渡しながらランツェルは静かに告げた。
「エルが王都に向かったようだ……」
「なんだとっ!本当か!」
紙をガバっと取り上げ見つめるアンナル。
「ちょっと王都へ行ってきます。って!ちょっとですむ距離じゃないだろ!」
「アンナル、早急に兵をまとめるんだ。エルを探しに行くぞ」
「ああ!スリティア、お前は犬を集めてこい!匂いで後を追うぞ!」
「分かったよアン兄さん!森中の犬を集めてくる!」
慌てる三兄弟。
この三兄弟、見目麗しく性格も申し分ないが、一つだけ大きな欠点があるのだ。
「母上!我々はエルを追います!」
急いで母に告げ、部屋を出ようとする三兄弟。
「三人共少し落ち着いた方がいいですよ」
見兼ねたツェルドが止めに入った。
「叔父上!これが落ち着いていられますか!?ここから王都までどれだけかかると!」
森から王都までは一番近道をしても、片道十日以上かかる。
ちなみに、ジゼルとツェルドは今回特別な乗り物で来ため、半分くらいの移動時間ですんでいる。
「そうだぜ!エルにもしもの事があったらどうするんだ!」
「叔父様、兄さんたちの言う通りですよ。あぁ、かわいそうなエル、迷子にでもなってしまったらどうしよぅ……」
「スリティアが言う様に迷子にでもなったら……いかん、いかんぞ!」
オーバーに嘆き、わなわなする三兄弟。
彼らの唯一の欠点とは、妹を超がつくくらい溺愛している事だ。そりゃもう病的にまで溺愛している妹が王都になんぞ行くと言えば彼らは森の全兵を護衛にでもつけそうだ。だからこそエルは一人で王都に向かったのだろう。
「……ふぅ。エルちゃんたら困った子ね」
正気に戻ったミシュリアはわなわな慌てる息子達を「まぁまぁ」と言って座らせた。
「かわいい子には旅をさせろ。日本にはこんな言葉があるそうよ」
妹命の三兄弟に比べ、比較的放任主義なミシュリア。さすがに王都に向かったと聞けば固まってしまったが、それでもエルなら大丈夫な気がしていた。
「大丈夫よ、エルちゃんはしっかりしてるし。それにあの子、真一郎殿下に会いたいって言ってたしね」
「母上、何をのんきな事を!真一郎殿下はあの最強色魔の息子ですよ!もしもエルに手出しなどしたらどうしますか!」
思わず叫んだ長男ランツェル。彼はこの場にその色魔の娘が居る事を忘れているようだ。
「ランツェル、いちお私もその色魔の娘なんだが……」
「う……ジ、ジゼル様には申し訳ないが、噂では真一郎殿下はご姉妹と将来の約束をしているばかりか、メイドや騎士団にまで手をだしているそうではありませんか。そんな男があの可愛いエルを放っておくとは思いませんな」
「それはだいぶ間違った情報ですよ。確かに真一郎様に想いを寄せる方々は大勢いますが、まだ誰にも手を出してはいませんから」
ツェルドの言葉になぜか赤くなるジゼル。
「オジキ、そんなに言い寄ってくる女が居るのに手出さないって、真一郎殿下は男色なのか?」
「……違いますよ?」
アンナルの問いに、若干の間となぜか疑問系のツェルドは困ったようにジゼルを見た。
「んな訳あるか!あれはただ奥手で紳士なだけだ。あまり変な事を言うな!」
真っ赤になりながら怒るジゼル。
「そうゆう男の人を日本じゃ草食系って言うらしいわよ」
そんなジゼルを気遣っていちおフォローするミシュリア。
「とにかく、我々はエルを追います!」
「でもどの道を通ったのか分かるの?」
「う……それは……」
一口に王都への道と行っても様々なルートがある。どこを通ったか分からなければ追いつくなんて無理なのだ。まぁ最終的には二本の大きなの街道のどちらかに全部がつながってる訳だが、その二つの街道はかなり離れており、どっちか分からないと出会える確率はかなり落ちる。ただでさ道によっては遠回りしたり近くなったりとかなりの差がある。安全面なのか時間なのかどこを優先したかによってもどっちの街道にたどり着くか分かれてしまうのだ。
「あ……」
三兄弟が頭を抱ええていると、隣のジゼルが小さい声を出したのをツェルドは聞いた。
「どうかしましたか?」
「え?いや、なんでもないぞ。ははは」
明らかに何かあるように笑うジゼル。
(そう言えば、ここに来てすぐエルにどうやって来たか聞かれたな……まさかあいつ……)
集落に到着してまず出迎えてくれたのは、何年たっても全然変わらないエルだった。
彼女は再会の挨拶も早々に済ませ、ジゼル達の移動手段を聞いてきたのだ。
(って事は私達が行くまであそこで足止めか……ランツェル達には悪いが黙ってた方が面白そうだな)
悪そうな笑顔を浮かべるジゼル。
「ジゼル様、お考えは分かりますけど、甥達をあまりいじめないでやって下さいね」
エルが移動手段を聞いてきた時ツェルドも居たのだ。彼もジゼルと同じ考えに至ったらしい。
「だったらツェルドが言ってやればいいじゃないか」
「はは、それは遠慮します。エルに後々恨まれたくありませんからね」
にっこり笑うツェルド
「ははは、自分だって甥をいじめてるじゃないか」
「私はただ姪っ子をかばってるだけですよ」
未だ騒ぎまくってる三兄弟に隠れて、黒い笑いをもらす二人だった。
お待たせしました!
若干更新が遅くなると思いますが、これからもよろしくお願いします。




