32話 『戦いの終結』
どーもです!
また時間空いちゃった。
「グギャァァァァァ」
悲痛な叫びを上げ絶命した巨大な魔獣ベヒーモス。
陸上魔獣最強と言われるその姿は、長い体毛に象の様な長い鼻、両腕を着いて歩く姿は、簡単に表現すれば、ゴリラやチンパンジーと同じ姿勢で歩くでっかいマンモスだ。
ただ、皆が知っているマンモスとの違いは二足歩行だけではない。その長い鼻の両側には計四本の牙が生えており、両腕も熊の様に鋭い爪を持つ五本指だ。
見た目通りの怪力に、見た目以上のスピード。数こそ多くないが、戦況を左右するのには十分過ぎる存在だ。
「グギャァァァァァ」
その巨体が叫び声と共に地に倒れた。あちこちを刀で切られ、茶色い体毛は血で染まっている。
「はぁはぁ、まったく、何匹来てるんだ……」
肩で息をするほどに疲労を隠せないキキ。すでに倒したベヒーモスは今ので三体目だった。
「団長、大丈夫ですか?」
刀を納めながら来たのはキキと同じような袴姿で、黒髪ストレートロングな犬耳女性。
「ユキノか、問題無い。そっちは片付いたか?」
「はい、何とか。とりあえず最初に確認したベヒーモスは全部倒したと思いますよ」
キキの周りに集まり出した第一師団の面々。彼らは砦から少し離れた場所で敵の第一陣を食い止めていた。
現在中央砦には第一師団の兵が二十人近く居る。元々の兵数が少ない第一師団のため、配置されている数は少ないが、一人一人の技量は他の師団員の比ではない。
いくら精鋭部隊とはいえ、少数で押さえきるにも限界がある。敵先頭部隊はベヒーモスを中心とした大型魔獣達だ。様々な容姿のでっかい魔獣を相手に奮闘している第一師団だが、疲労の色は隠せない。
「団長!あれを!」
兵の声に振り向いたキキは最も見たくない相手を見つけてしまった。
「あれは、色無しだと!?」
目の前の敵軍をかき分け現れた四匹のベヒーモス。それまでの奴らが子供かと思えるくらいの大きさのそれらは、体毛も他とは違い黒色が一匹に、赤色が二匹。更にキキが色無しと呼んだ一番大きなベヒーモスは、真っ白な体毛だ。
ベヒーモスに限らず、魔獣や亜人には普通と違う体色を持つ者が生まれる事がある。
色付きや色無しと呼ばれるそれらは、普通の個体よりも身体能力や
魔力が優れている事が多く、王国でも闇の軍勢でも非常に重要視されている。
ちなみに王国の色付きで有名なのは、ガルルートだ。元々リザードマンは青や緑がほとんどで、それ以外だと、茶色系の少数部族が居るくらいだ。
「色無し相手じゃ分が悪すぎるな……」
ベヒーモス達を睨みつけながら、キキは自分の右手首にある数珠をつかんだ。
(この状況だ、母上達と姉上も許して下さるだろう……)
キキの手首にある数珠は一種の魔道具だ。
彼女の隠された力を抑える為にはめてあるそれは、王国魔道具研究のトップであるクレイルが特別に造り出した物で、本当の緊急時以外外す事を禁じられている。
「……」
無言で数珠を見つめるキキ。それを外した時の危険性は自分が一番よく知っている。
「ふぅ……」
ゆっくりと呼吸を整え、数珠を外すための合い言葉を唱える。
「我が魂朽ちるとも、我がか……」
「団長!あれ!」
「へ?」
結構な決心をして数珠を外そうとしていた所に、突如かかった部下の大声。
思わずまぬけな声で答えてしまったキキ。
「なっ!」
部下の指す空を見上げたキキの目に映ったのは、悠々と空を翔ける八体のドラゴンだった。
「そうか、ドレイクが動いたか!」
ドラゴンの一団は、見た事ある顔ばかりだ。
(ドレイクに乗ってるのは、まさか真一郎か!?)
ドラゴン達の中でも一際大きなドレイク。
その背中に誰かが乗っているが、キキの居る場所からは誰かまでは判別出来ない。
しかし、並の者ならまずドラゴンに触れる事すら出来ない。更に彼らは自分達が認めた者しか乗せない。そして何より、その誰かを乗せているのはドレイクだ。ドラゴンの長である彼が盟友と認める者などフォレイティアスの王以外にはあり得ないのだ。
(真一郎が来たという事は……)
真一郎がドレイクに騎乗している事の意味を、この場の誰よりも理解しているキキ。
「キキ様。ドレイク殿に騎乗してらっしゃるのって真一郎様ですよね?」
「ああ、多分な」
「と言う事は、真一郎様が王位を?」
「さすがに王位継承はまだだろ。おそらく姉上が代理を下りたんだろう。さて、我々も続きを始めるぞ!」
キキの号令に答えて第一師団の兵達は一斉に武器を持ち直した。
「いくぞ!」
「おぉぉぉぉ!」
駆けだした兵達の上を飛びながら抜いて行くドラゴン達。
「キキ姉さん達は止まって!」
ドレイクの上から下を走る兵達に叫ぶ真一郎。
「え?」
「団長、どうします?」
「真一郎に何か考えでもあるんだろ。よし、皆止まれ!」
キキの号令でスピードを落とし歩き始めた兵達。
そんな彼らを後ろにして、ドレイクに騎乗する真一郎は、闇の軍勢と中央砦の中間に降り立った。
「グルギャァァァァ!」
進み始めようとする闇の軍勢に向かい、威嚇の咆哮を上げるドラゴン達。
陸上最強と言われるベヒーモスでさえ、その迫力にたじろいでしまう。
「ドレイク、皆を下がらせて」
「ん?しかしだな……」
「お願い」
自分を真っ直ぐ見つめる瞳には、さすがのドレイクも逆らえない。
「むぅ、仕方ないの。すぐ近くにおるからな」
そう言って少し後ろに下がったドラゴン達。
そこにキキや第一師団に面々も加わり、真一郎を見つめていた。
「ふっー……」
深く深呼吸をし、腹の底から声を出す。
「自分はフォレイティアス王国、王位継承第一位、佐山真一郎です!そちらの大将と話がしたい!」
両軍にざわめきが広がる中、真一郎の少し先に黒い影の様な物が現れた。
「殿下のご指名では仕方ありませんね」
「イミナス……」
綺麗なお辞儀と共に影から現れたイミナス。戦場には似つかわしくない黒スーツ姿で、顔も包帯でぐるぐる巻きにはなっていない。
「殿下自ら先陣を切って、しかもドラゴンに騎乗してのご登場とは、お勇ましいかぎりですねぇ」
「イミナス、君が今回の大将?」
「ええ、そうですよ」
普通に答えたイミナスだが、内心穏やかではなかった。以前会った時とは違う何かを、真一郎に感じたのだ。
「イミナス、戦をもうやめにしない?」
「やめに……ですか。つまり降伏しろとおっしゃるので?」
イミナスの言葉に首を横に降り答える真一郎。
「違うよ。降伏とかじゃなくてさ、もお終わりにしない?」
「終わりって……」
真一郎の言葉が意味する事は分かる。しかし彼が口にしている言葉は今まで誰も触れなかった禁句の様なものだ。
「殿下、ご自分の言葉の意味をお分かりで?王国と闇の軍勢が今までどれだけの時間を戦に費やしてきたかご存知ですよね?それを今更勝者も決めぬまま終わらせようと?」
正直イミナスは王国が勝とうが、闇の軍勢が勝とうがどっちでもいい。主からの命でとりあえず闇の軍勢に加担しているものの、彼らの事など駒程度にしか考えていない。
第三者として両軍を見れればこそ、真一郎がどれだけバカげてる事を言っているのかが分かる。
「長く続いてるから止められないんじゃなくて、これ以上続けないために、止めたいだ。どっちかの勝利じゃなくて、お互い話し合ってさ」
「今更無理でしょう。それにその話王国側にだって反対する者が出ますよ。何たってフォレイティアスの歴史は、戦いの歴史なんですからね」
「分かってる。その歴史も俺が終わらせる」
イミナスが覗き込んだ真一郎の目は、真実を語っていた。心から戦が勝利以外の形で終わること願っていると。
「ふふふ、あははははは!」
真一郎の顔を見て突然笑い出したイミナス。
「イミナス?」
「ふふふ、いや、失礼。殿下のお人好しも筋金入りですね。ですが現実問題、無理ですね。あり得ませんよ」
「あり得ないかどうか、それはアゲハ様って方に会って決めたいんだ」
「え?」
真一郎の口から出た予想外の名前に驚きを隠せないイミナス。
「イミナスお願い、アゲハ様って方に会わせてくれない?」
(確かカブラギやショウジョウが名乗ったと言ってましたが、奴らアゲハの存在まで明かしてたんですか・・・)
「会ってどうするのです?」
「停戦を申し出る」
「停戦ですか……」
(これは、絶対に会わせるべきじゃないですね)
真一郎が停戦なんぞ持ち出したら、アゲハは部下の反対を押し切ってでも了承するだろう。しかしそれは、イミナス達の主の意図する物とは正反対の結果だ。
「会うだけでもだめ?」
「ふふふ、無理にもほどがありますよ。大体、私はただの協力者ですよ?部外者の私に言われてもどーにも出来ませんよ」
「でも今回の大将はイミナスなんでしょ?それってそこそこ発言力あるって事だよね?」
「まぁ確かに……」
「ね、お願い」
「いやいや、無理ですよ」
「頼むよ~」
「無理ですって」
「ちょっとでいいからさ」
「ダメです」
(と言うか、冷静に考えたら何で私はこのヒトと話しこんでいるんだ?さっとさらってしまえばいいのに)
イミナスがやっと会話の不毛さに気付いた時既事態は最悪な方向に動いていた。
(ん?下に何かいる?)
イミナスが異変に気付き自分の足元を見つめると、突然、真一郎の足元から土煙が上がり彼の姿を隠してしまった。
「ちぃっ!誰が!」
たった今自分が捕らえてしまおうと思っていたのに先を越された。そんな感情からか、すぐに土煙に飛び込もうとしたが、それを止める声がした。
「イミナス殿、注意を引きつけて頂きご苦労。おかげで敵の大将を打ち取れました。さ、本陣にお戻り下さい」
真一郎が土煙に消え、代わりにイミナスの背後に小柄なインセクターが現れた。
「地虫、誰の許可があってこんな事を」
「勘違いされては困る。我々はショウジョ様より王族を討てる機会あらば即実行との命を受けておる。貴殿の命に従う義理はないわ」
「確かに。まぁあなた方に入れ知恵をした者など、大体見当は付きますがね」
「ふんっ。さ、早く本陣に戻られよ」
「仕方ありませんね。私は戻りますが、あなた方も早く逃げた方がいいですよ。あちらはだいぶご立腹の様ですよ」
見れば真一郎の居た場所に駆け寄る数人を追い越し、怒りをあらわにしたドラゴン達が向かって来ていた。
「ついでだ、他の王族も討ち取ってくれるわ」
「はは、頼もしい事で。では後は頼みましたよ」
そう言うとイミナスは自分の影に消えて行った。
「ふんっ半端者の分際で」
吐き捨てる様につぶやいた地虫も、土煙をあげ地面へ消えていった。
「「真一郎!」」
ドレイクとキキが、すぐさま土煙に隠れた真一郎の元へ駆け寄り、真一郎とイミナスが話してる最中にキキ達に合流したシャールイもその後を追う。
「貴様らぁぁぁ!」
後ろから怒りMAX状態で彼女達を追い抜き敵陣へと突っ込んで行くドラゴン達。
敵陣前方で待機していたベヒーモス達に、次々と魔法を打ち込みながら喰らいついて行くその様に、敵陣には恐怖の声が上がり始めていた。
すぐに駆けつけたドレイクの羽ばたきで、土煙が晴れた後には小柄なインセクターに囲まれた無残な姿の真一郎が居た。
「貴様ら!真一郎から離れろ!」
キキの一括に驚き、地面へ潜り逃げようとするインセクター達。
「させるかよ!」
それを見た巨漢の第一師団員が、その極太の腕を地面に叩きつける。
地震かと思う様な揺れが辺りを襲い、潜ったインセクター達を地面から叩き出した。
「ユキノ!」
「任せろ!」
巨漢からの掛け声で突風の如く駆けるユキノ。叩き出され空中でバタバタするインセクター達をその刀で瞬時に亡き者とした。
「真一郎!真一郎!」
地面に血だらけで倒れる真一郎を起こし、必死に呼びかけるキキ。腕の中の弟は身体中を刺され、顔には左目の上から口元までのびる刀傷まであった。
「くそっ!姉上早く!」
「しんちゃん!」
キキの元へ滑り込むように突っ込んできたシャールイ。
「ゴホッ……グッ……ご、ごめん二人共……」
「喋っちゃダメよ!」
真一郎を黙らせ、治癒魔法を詠唱するシャールイ。しかし真一郎の力により魔法はその効果を全く発揮できていない。
「やっぱりダメ。しんちゃんお願いだからアンチシールドをしまって!」
シャールイの声にも意識が朦朧として答えられない真一郎。
「うぅ……っぐ!」
身体中を走る痛みに既に体力は限界に達していた。
「仕方ないわ。キキちゃん、私の腕でも脚でもいいから切って!」
「え!?無理ですよ!」
「お願い!私の血液と一緒に治癒魔法を直接しんちゃんの体内に送るわ!血液も補給出来るから、早く!」
「そんな無茶苦茶な!」
「無茶でもやるの!」
服をまくりキキに腕を出すシャールイ。
「し、しかし……」
さすがのキキでも姉の腕を切るなんて出来るわけない。
「ええいどけ!」
二人のやり取りを遮り、ドレイクが割って入ってきた。
「ワシのを使え!」
そう言って自分の左肩に右手を突き刺すドレイク。
肩から引きずり出したのは血まみれの光球だ。
「魔力結晶……」
「心配するな。ワシらは体内にいくつも結晶を分散して持っておる。一つくらいくれてやっても死にはせん」
「ドレイク、ありがとう!」
「いいから早くせい」
ドレイクが差し出した光球を受け取り、真一郎の口元へ運ぶシャールイ。
「んぐっ、ぐはっげほげほっ」
「しんちゃん、さ、頑張って」
無理矢理真一郎の口にドレイクの魔力結晶をそそぎ込む。
「ん!ぐあぁぁぁぁ!」
ドレイクの魔力結晶を取り込み、悶絶する真一郎。体のあちこちから光がもれ、みるみるうちに体の傷が消えていった。
「…………ぅぅ」
光がおさまり寝息を立てる真一郎。目立った傷も残ることなく綺麗になっていた。
「よかった。さすがドラゴンの魔力結晶ね」
「これで一安心じゃな。リューセニア!」
「はい」
「急いで真一郎を王都に連れて行け」
「分からいましたわお父様。さ、若様まいりますよ」
真一郎を優しく抱きかかえ飛び立つリューセニア。
「許せないわ……」
「あ、姉上?」
リューセニアが飛び去った空を眺め、怒りをあらわにするシャールイ。
「しんちゃんにあんな傷を負わせて……」
「姉上、お怒りは分かります。ですがお優しい姉上が戦場に立たずとも、う……あ、あの」
話をするキキをシャールイの無言の視線が止めた。
「例え主神レイズ様がお許しになっても、私の怒りは収まらないわ」
溢れ出る魔力によって、風もないのにフワフワと揺れるシャールイの金髪。今にも額から角でも出てきそうな表情の姉。百戦錬磨のキキでさえ冷や汗が出てきた。
「ほぅ、こりゃ久々に小さな狂戦士のおでましかい」
楽しそうに笑うドレイクだったが、キキは気が気じゃなかった。
「ドレイク殿、あまり楽しそうにしないで下さい。私より貴方の方が"あの姉上"の怖さを知ってるんでしょう?」
「まぁ、知ってはいるがな。いいじゃないか怒るくらい。坊主があんな目に合わされたのだ、こんな時くらい怒らにゃ、シャールイ嬢もやってられんだろうって」
「そんな無責任な……」
『小さな狂戦士』とはシャールイが持つ二つ名だ。
二十年前、まだ十歳にも満たなかったシャールイがある事をきっかけにプッツンして、当時の第一師団を全滅一歩手前まで追い込んだとされる事件からついた二つ名だ。
その当時の第一師団のプライドを砕き、恐怖を植え付けたシャールイは、己の感情をうまくコントロールする事を学ぶため、母達の勧めもあり神に仕える道に進んだのだ。
「我は求める!汝は答えよ!」
シャールイの声に答え、空一面にいくつもの光輝く魔方陣が現れた。光属性の紋章をたたえたそれらは輝きながら命令の時を待っている。
「ライトニングレイン」
右手を掲げ、静かに魔法を呼び出すシャールイ。
光の魔方陣からは次々に光で出来た槍の様な物が現れ、敵陣にふりそそぐ。
「あはははは!ねぇ!綺麗でしょこの光の雨!さぁさぁさぁ!皆もっと踊って頂戴!神様が貴方達の踊りをまっているわよ!」
逃げ惑う闇の軍勢を次々に光の槍が襲う。
頭上から、背後から、光の槍にめった刺しにされ絶命してゆくゴブリンやオーク達。インセクターはその魔法に強い外骨格もあり、多少はダメージが弱くなっている様だが、それでも空一面をおおう光の槍からは逃れきれず、徐々にその数を減らしていった。
「あはははは!」
普段は絶対に見れないシャールイの高笑いが戦場にこだましていた。
「あちゃー、完全に切れてますねあれ……」
「スキーリング、遅かったな……」
王国側の面々が、ぽかーんと口を開けて今まで見た事も無いシャールイを眺めていると、どこからともなく現れたスキーリングがいつの間にかキキの隣にいた。
「団長はいいんですか?」
「姉上があーだぞ?私まで切れたら誰が収拾つけるんだ」
「ははは、そりゃそーですね。さて、とりあえずご報告を、北の砦がかなり危ないそうです」
「なに、本当か?」
「ええ、ドラゴンの助けもありますが、例のアンデッドロードが出てきたそうです」
「報告にあったここを襲ったって言うヤツか……」
キキは前回中央砦が攻められた時の記録を思い出した。
「それが、どうも前より厄介になってるみたいですよ」
「と言うと?」
「今回北に攻めて来てるヤツは首が三つだそうです。そのうち一つは犬族の顔だそうで」
「なんだと?それってまさか……」
「ええ、実際見た兵によればジュウベイ先生にそっくりだったとか……」
前回闇の軍勢に捕えられたジュウベイ。必死の捜索なども続けられていたが、その足取りは一向につかめていなかった。
「……その話、母上には報告を?」
「ジュリ様はもう王都を出発してるそうで、話は聞いてないかもですね。いちおシルフ様には伝えてあるそうですよ」
「そうか……」
魔獣に吸収されると言うのはそれほど珍しい物ではない。不定形魔獣(代表的な物はスライムなど)は他の生物を吸収し、その体に擬態する事もある。今回はかなりイレギュラーな存在ではあるが、あの規格外のアンデットならば、ジュウベイを吸収したと言う話も納得できるような気もする。
「で、北に援軍は?」
「もう向かってますが、間に合わないかもですね。最悪の場合は砦を放棄との命令も行ってるみたいなんで、全滅にはならないでしょうがね」
「あいつら、まさか最初から北を落とす気だったのか?」
北の砦は今回の戦で一番被害が大きかった。それを修復の終わっていないうちに攻めれば、今度こそ落ちる可能性の方が大きい。
「北が落ちるのは避けたいな……よし、ドラゴン達に行ってもらうか」
シャールイと共に敵陣を蹂躙しているドラゴン達。彼らに行ってもらうにはまず話をしないといけなかった。
「団長、頑張ってくださいね」
「随分他人事だなスキーリング。仕方ない、行ってくる」
ため息交じりに地獄絵図が広がる敵陣へと向かうキキだった。
フォレイティアス王国
北の砦陥落
その報が王国を走り回ったのはそれから数時間後の事だった。
EightPrincessOneBoy
第一部『真一郎と八人の姫』完
毎度ありがとうございます。
今回で第一部完です。
次回から第二部開始予定ですのでまたよろしくお願いします!




