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EightPrincessOneBoy  作者: ぽちょむ菌
第一部『真一郎と八人の姫』
28/38

26話 『決戦中央砦 前夜祭その三』

どーもです!

今回もシリアスに耐え切れずふざけます!



 美しい満月の下、竹やぶに囲まれた日本家屋の縁側で、一人の少女が月明かりに照らされ夜空を見つめていた。

 見た感じ十代前半の少女は、何枚も着物を重ねた、いわゆる十二単を着ており、黒く艶やかな腰までのびる髪と陶器の様な白く美しい肌。悲しげな表情のその瞳には満天の星空が映っていた。


「姫様、夜風はお体に差し支えますぞ」

 そう言って長い廊下から現れたのは、がっしりとした体格の鎧武者。

 おでこからカブトムシの角を生やした彼は、少女の隣に立つと満月を見つめた。

「いい月ですなぁ」

 仁王立ちで月を見るカブトムシ武将の横で少女はわずかに涙をうかべている。

「……みんなの魂が昇っていく……」

 自分にしか視えていないであろう天に昇る光を静かに見つめる少女。

 頬に流れる一筋の光が彼女のその白い肌を音もなくつたい、小さな滴となって落ちてゆく。

「姫様……」

「ごめんなさい……戦いを決めた日にもう涙は流さないと決めたのに……私は強くいなければならないのに……」

 皆を統べる少女は、強く気高くあれと自分に言い聞かせていた。

「姫様、ここには誰もおりません。某は月に見惚れて姫様のお顔を覗き込む暇などありませんので、姫様がたとえ泣いていても気にする者はおりませんぞ」

 不器用なりに気を使い、少女の方は向かずただ仁王立ちをするカブトムシ武将を見上げ、少女は涙をこぼしながら微笑んだ。

「ありがとう。でも、大丈夫よ……あんまり泣いていたら、同じ月の下で戦う彼らに笑われてしまうから……」

「左様ですか。ならば笑いましょう!奴ら姫様の笑顔が大好きですからな」

 二カッとするカブトムシ武将につられ少女も笑みをこぼす。

「そうね、みんなが安心して帰って来れるように、笑顔で出迎えなくてはね」

 今まさに激戦を繰り広げている仲間達を思い、またも流れそうになる涙を必死に抑え、彼女は微笑みながら月を見つめた。

 彼女がその理想を共有出来るヒトに会う事が出来るのは、まだまだ先の話になる事だろう。










 美しい満月の下。

 満天に広がる星空になど目もくれず真一郎は必死に目の前の敵の首を落とした。

「ごめん!」

 相変わらず謝罪の言葉をつぶやきながら敵を斬り捨てる彼の周りでは、同じように戦う仲間達が次々と首無しのエイプの死体を量産していた。

 エイプ達の見た目は白いチンパンジーだ。大人になればヒト並の大きさになり、その長くしなやかな手足の爪や鋭い牙で攻撃をしてくる。

 目の前に迫る爪をかわし、後退しながらもゾーイの助言通り敵から目を離さないように見据え、刀を持ち直した真一郎。

 目を真っ赤に光らせ、雄たけびをあげながら迫るエイプの爪を今度は左手の肘から下の部分で受け止めた。

 母特製の戦闘服は全体がかなりの防御力を持っているが、その中でも腕の部分は接近戦などで盾のように使う事を想定して作られている。そのため他の部分より斬撃などに強い作りになっており、エイプの爪程度では傷一つつかない。

 しかし、斬撃自体は防げても真一郎身体能力まではカバー出来ない。

 振り下ろされたエイプの爪を弾いたもののすぐに続いた下からすくい上げるような攻撃で手を弾かれ、その勢いのままバランスをくずし尻もちをついた真一郎。


「いってぇ~。うぉ!やべっ!」


 容赦無く追撃をかけるエイプの爪を地面を転げてよける真一郎。

 ギャーギャーと鳴きながら、それを追うエイプの首を何かが一瞬で斬り落とした。


「も~大丈夫ですか殿下」

「あぁ。ありがとアフリィ」

 真一郎の前に現れたリザードマン娘は、自慢の薙刀を肩にかつぎ片手を真一郎に差し出した。

「ゾーイさんが近くに居ないんですから。あんま無茶しないで下さいよ~」

「あはは、ごめんごめん」


 エイプ達との戦いが始まってすでに一時間以上が経過していた。

 元々指揮官クラスであるゾーイを、いつまでも自分の護衛に使っていてはもったいないと判断した真一郎は、彼に兵を指揮する事を納得させ、自分はアフリィの部隊と合流し足手まといにならないようにと頑張っていた。

「若様、隊長も。ここらの敵はだいたい片付いたみたいだど」

 巨大なトゲ付きの金棒を肩に担いだミノタウロス(二足歩行の牛)を先頭に、三十人くらいの兵が集まってきた。

「ベフさんこっちの被害は?」

 アフリィの問いにベフさんは周りを見回しながら

「ん~擦り傷、切り傷、かすり傷。ほとんど被害なんて無い様なもんだべ」

「うん。良かった良かった。で、これからどうしましょうか?」

 当たり前の様に真一郎に支持をあおぐアフリィに、キョトンとしながら答える真一郎。

「え?俺に聞かれても、アフリィが隊長なんだからアフリィが決めればいいんじゃない?」

「そうは行きませんよ!殿下はいちお総大将なんですから!この戦場で一番なんですよ。そんな方差し置いて指示なんて出来ませんって~」

 手足をばたつかせるアフリィ。

「隊長の言う通りだべ。若様の指示をみんな期待してるだど」

 ベフさんに言われ周りを見れば、亜人が多めのアフリィの部下たちは期待を込めた瞳でこちらをうかがっていた。

「んー。じゃあとりあえずこの辺りは鎮圧完了って事で、砦に戻りながら他の部隊の援護に行く感じでいいかな?」

「いいんじゃないですかね?他の部隊も結構戦闘終わり気味のとこも多いぽいですしね」

「んじゃそんな感じで行こうか。皆移動するよ~」

「「了解でーす」」 

 真一郎の声に軽く答え、武器を手に移動を開始するアフリィ部隊。やけにフランクな感じなのは隊長のせいだろうと思いながらも、その気楽さに少し気持ちが楽になる真一郎だった。

 

 周囲では真一郎達と同じように自分達周辺の敵を倒し、他の援護に向かう者が多くなっていた。そのせいか敵の排除が進み、エイプ達はほとんどが首なしの死体へと変わっていた。


「アフリィ、とりあえず皆集めようか」

「了解です!、みんな他の隊長達を呼んできて!」

「「「了解ッス」」」 

 周囲に敵影が無い事を確認し、真一郎は主だった者達を集め始めた。

 他の面々が来るまでの間、その場に待機していた真一郎だったが、その元へ見知らぬ兵が駆け寄ってきた。

「あ、あのぉ……」

「ん?」

 振り返るとそこには三人の犬耳少女達が立っていた。

「君たちは?」

「あ、はい!私は第三師団所属のアーニャと申します!」

 白いもふもふ耳の、外人風少女が元気に答え

「同じくメルと申します!」

 黒髪の黒耳少女が答えた。

「わ、わたひ、じゃなくて私はハルピと申しまふ!」

 なんだか滑舌悪目の黒髪ショートで茶耳の少女が答えた。

「えーっと、俺に何か用?」

「あ、はいはい!真一郎様、実は私達こんなの拾ったのです!」

 そう言って、元気なもふもふ白耳のアーニャが見せたのは白い小さなサルだった。

「これってエイプの子供……?」

「だと思います。私達の隊長に見せたら殺してしまえと言われましたが、なんだか可愛そうで……」

 他の子より少し大人びた少女がうるうるした目で見つめてきた。

「私達どうしてもこの子を助けたくて、それで真一郎様ならなんとかしてくださると思って来まひた!」

「なるほど……」

 

 このサルがエイプの子供なら、普通は殺せと言うだろう。しかし、手の中の子ザルは、クワルガと同じくらいの大きさのまだまだ子供だ。敵だから殺せと言われて分かりましたと言うのはまだ新兵っぽい彼女達には酷な話だろう。

「しかしなんで子供を戦場に?」

「エイプ族は王の子を戦場に連れて来るものです」

 急に会話に入ってきたのはゾーイ。興味深々に真一郎の手の中の子ザルを見つめた。

「ゾーイ。それじゃこの子、エイプの王の子って事?」

「おそらく。なんでも戦場へ連れて行き、その戦場が激しく厳しいもので、生き残る事が出来れば強い王になれると信じられているようです。私も昔、香織様に教えていただきました」

「へぇー」

「殿下、なりませんよ。エイプの子供など拾っても、のちの憂いとなりましょう」

「う……」

 真一郎の表情を読み、かれの考えを否定したゾーイ。

「でもさ、今から育てれば、大丈夫かもしれないじゃん。エイプとしてじゃなく王国民として育てればきっと役にたつよ」

「いけません」

 かたくななゾーイに、先ほどの犬耳少女達がすがりつく。

「そんなぁゾーイさん!お願いしますよぉ!」

「お願いします!」

「お願いしまふ!」

「ダメだ……」

 かたくななゾーイ。しかし真一郎は知っている。彼が唯一苦手としている者を。

「ゾーイ、頼むよ。ね、もしかしたらエイプとの懸け橋になるかもだしさ。ね、お願い!」

 両手を合わせ、ゾーイの弱点のお願いフェイスでにじり寄る真一郎。

「う……ま、まぁ殿下がそこまでおっしゃるなら……」

「いいの!」

「し、しかし!後でジュリエッタ様に報告し、許可が出たらですよ。ダメと言われたら諦めてください!」

「分かってるって」


「「「やったー!!」」」


 三人で手を取りながらジャンプする犬耳少女達。

「よかったよかった。それじゃとりあえずこの子は三人に預けるよ。ここはまだ戦闘が続くから、砦の中の俺の部屋に連れてって。クワルガが居るから面倒みてくれると思うから

まかせて大丈夫だよ」

 クワルガは頭がいい。子ザルの面倒くらいできるだろう。

「「「了解しました!!」」」

 元気に砦に走り去る三人と入れ替わりに隊長達も到着してきていた。



 

 ジュウベイやレイラ達も集まり、最後にやってきたスキーリング。彼から放たれた言葉は予想外だった。

「殿下、ちょっとまずい事になりました」

 真一郎達の元へ現れたスキーリングの表情からは、いつもの余裕が消えていた。

「結構まずい話?」

「だいぶです。デカブツの偵察に行っていた部隊が全滅したようです」

「え!?」

「今さっき偵察部隊長の使い魔だけが戻って来ました。緊急連絡用の足が速い奴だもんで……おそらく最悪のパターンかと」

「何人いたの?」

「七人です。今副団長に使い魔から話聞いてもらってます」

 神妙なスキーリングの表情の先に、小さなイタチを腕に抱いたロロイが歩いてきた。

「ロロイ姉さんどお?」

「うん。この子が見たのはインセクターのハイクラスと包帯男。インセクターの方はカブトムシじゃなくって別のだって。それと、あの後ろの大きいのは、黒いドロドロで手がいっぱい有るって。周りの草木を枯らしながら来てるんだって」


「はっ!道理でこんな腐った匂いがするわけだ」

 いきなり声を出したジュウベイの腰の刀。そこに全員の視線が集まった。

「左近、お主あれが何か分かるのか?」

 周囲の視線を代表して、自分の刀に尋ねるジュウベイをバカにしながら左近は続ける。

「馬鹿が!そんなんも分からねぇのかよ!今の話とこの腐った匂い。ありゃ間違いなく『腐死者王(アンテッドロード)』だな」


「「「なにぃぃぃ!!」」」


 自分以外のメンバーの反応で、それが危険な奴だとなんとなく分かる真一郎。

「アンテッドロードって何?」

 そんな疑問が出るのは当たり前だ。


「かぁ~!ボンは本当にこっちの事知らねぇな!いいか、アンテッドロードってのはな、その名の通りアンテッドの王様よ。死者を統べ死を撒き散らす厄災。あれが歩いた後にゃ枯草しか残らないんだとよっ」

 刀にバカにされながら聞いた情報はかなりヤバいモノだと理解できる。

「みんな、何か対策は?普段どうやって戦うの?」

「若殿、ここにいる者でアレと戦ったことある者など、ジュリぐらいだと思います」

「え?ジュウベイも戦った事ないの?」

 数多の戦場を蹂躙した狂犬にも未経験の敵がいるのだ。

「はい。そもそもアレはそう簡単に現れるモノでは無いのです。『腐死者喰い(アンテッドイーター)』と呼ばれるモノのさらに成熟したモノを、アンテッドロードと呼んでおります。奴らは生き物の死体と、魂を喰らって大きくなります。しかし、体が不定形なため、外からの攻撃に弱くまともな大きさになる前に獣などに喰われてしまうのです」

「つまり自然であんなに大きくなることはまず無い?」

「あり得ないでしょう。ジュリが以前戦ったと言っていたのもヒトの手で育てられたモノだったそうですから」

「アレも誰かが育てたって事?」

「多分ハイクラスだよ。使い魔君がそいつがアレを操ってるみたいだったって言ってるし」

 ロロイの言葉で大体の状況は見えてきた。

 しかし肝心なアレへの対抗策はサッパリだ。

「レイラ、ジュリエッタ母さんまだかな?」

「さあ?大方一番カッコ良く登場できる場面を待ってるんだと思うけどな」

「なんじゃそれ。まぁ、来てくれるならそれまで俺たちで何とかするしかないか」

 真一郎達が会話している最中もゆっくりと近付くアンテッドロード。近付けば近付くほど分かるその大きさと異臭。


「う、まだ結構離れてるのに酷い臭いだね……」


 鼻につく生き物の腐った臭いは、生ある者ならば誰もが顔を背けたくなるものだ。

「パクティ、明かり出せる?姿をちゃんと見てみたいんだ」

「ラジャーケロ!」

 もはや真一郎専用のサーチライトみたいなパクティの魔法により、ハッキリと見えたその姿はまさに異形そのものだった。

「凄いな……」


 真一郎の目に飛び込んで来たのは無数の黒く長い手だ。

 ヒトの手の様なそれはおそらく何十本もあり、交互に前に出て、後ろの塊を引きずり、また手を伸ばすという地面を這いずる形で進んで来ている。

 そしてその無数の手が引きずっているのは、黒と灰色の混ざり合ったヘドロの様な塊だ。

 その楕円の饅頭の様な塊は、常にドロドロと流動しており、その中に様々な生き物の死体や骨が浮いては沈んでを繰り返している。

 さらに、真一郎達からは見えないが、塊の上、背中部分とでも言える場所には白い石膏でできたような巨大な顔が付いていた。目と口を閉じ、まるでマネキンの顔の様なそれは、ドロドロの流動に巻き込まれる事なく、周囲のドロドロとは別の次元にあるかの如く美しくその場にあった。


「あれがアンテッドロード……」

 アフリィがボソリと呟いた言葉。

「隊長、ビビってるだべか?」

「なっ!誰がビビるもんですか!!」

 緊張感の無いアフリィ達を見て、クスリと笑い真一郎は迫り来る巨体を見据えた。

「さて、どーするかな」

 真一郎が周囲に意見を求め、動き出そうとした時だ、それまで塊を引きずっていた腕の何本かが突然こちらの方に掌を向けた。

「なんだ?」

「こちらに気付いた様ですな」

 ジュウベイの言葉を聞き注意深く手を見る真一郎。

 次の瞬間、掌から目玉が現れ、ギョロギョロと当たりを見回し始めた。


「あれ結構キモいな……」


 周囲を確認し、最後に全ての目がこちらを見つめた。

 次の瞬間、周囲に響いたのは異様な声だ。



「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」



「うっ!なんだこの声!」

 どこからともなく、否、明らかにアンテッドロードの声であろう叫びが周囲に響き渡る。

 何人もの声が混ざった、叫びとも、泣き声とも取れる声に、思わず耳を押さえる兵達。


「耳が!」

「この声やめてくれ!」

「うがぁぁ!」


 何とも言えない声は耳に付き全身に不快感を走らせる。

「ぐ……これキツイな……」

 真一郎も例外なく声に耳を塞いだ。


「うへへへ、喜んでいるのですよ。はいはい、こんなに美味しそうな餌が転がっているんですからねぇ」

 不意にした声に顔を上げると、そこには小柄な太っちょのおじさんが浮かんでいた。

「貴様ハイクラスか!」

「殿下!」

 とっさに真一郎の前に出て武器を構えるジュウベイとゾーイ。


「うへへへ。王国騎士団の皆様、それに真一郎殿下。お初にお目にかかります。はいはい、私めはアゲハ様の四本刀の一人、死人使いのショウジョウと申します」

 空中でお辞儀をするショウジョウ。


「死人使いって事は、貴方がアンテッドロードを?」

 自分の前に立つ二人を控えさせ、真一郎は聞いた。

「うへへへ、さすが殿下、察しがよろしい。そうですあのアンテッドロードは私めが精魂込めて育て上げた力作ですよ。はいはい、アレは中々倒すのに苦労いたしますよ」

 自分の力作を自慢したくてたまらないショウジョウはパタパタと飛び回りながら続ける。

「以前赤獅子殿がアンテッドロードと戦闘の経験があると聞きましたので、資料を集め、その時よりもだいぶ大きくしてみましたよ。はいはい、結構な数の贄が必要で骨が折れましたよ。樹林の獣にも限りがございますからね。少々王国の方を拝借しましたよ」


「なんだとっ!」


 ドロドロをよく見ればショウジョウの言葉通り、騎士団風のヒトや獣人の亡骸が浮いたり沈んだりしていた。


「貴様!!」

 怒りに任せ斬りかかるジュウベイの刀をかわし、ショウジョウは高く飛び上がる。

「私めもみなさんと遊びたいのは山々ですが、はいはい、それはこの子の役目ですからね。私めはゆっくりと見学させてもらいますよ」

 そう言ってアンテッドロードの上の方めがけに飛ぶショウジョウ。彼が何かボソボソと喋ると、それに答える様に数本の腕を天高くかかげるアンテッドロード。するとその先に雷がバチバチと生まれ始めた。

 次第に集まり、バチバチとつながりながら一つの雷の魂が完成し、さらに雷を大きくしていく手達。


「なんちゅーもんを!」

「マズいなあれ」

 スキーリングが、レイラが口々に危険度を知らせる。

「レイラ、あれ魔法だよね?」

「ああ……真一郎、お前変な事考えるなよ。いくらお前の盾でも、アレを一人で受け止めるなんて危険すぎる」

「でもそれが一番じゃ?」

「ダメだ。私が許さない」

 真一郎の服を掴むレイラは真剣な眼差しで真一郎を見つめる。


「でも、だったらどうしたら……」

 今にも打ち出されそうな雷の塊。





 それを見つめる騎士団に今、救世主が舞い降りた。



「ハーハッハッハ!!」



「なんだ?」

 突然聞こえた声に周囲を見渡す真一郎。

「やっと来たか」

「はぁ来てしまった」

 呆れた声のジュウベイやレイラ。それに反して兵達からは歓喜の声が上がった。

「おい!砦の上だ!」

「あれは!」

「うおぉぉ!久々登場だ!」


 兵の声に砦を見た真一郎。

 その屋上部分には確かに人影が立っていた。

「へ?誰?」


「とうっ!」

 掛け声と共に砦から飛び降り、猛ダッシュでこちらに爆走してくる謎のヒト。

 真一郎の前で急ブレーキをかけ、シャキーンとポーズを決めた彼女は、真っ赤なピチピチピッタリなライダースーツに。目元だけ隠したド派手なマスカレードマスクと言うかなり奇抜な格好だ。


「えっと……ジュリエッタ母さん?」


「違う!私の名はレッドママン!」


「へ?れっどままん?」


 ポーズをとって自らの魔法でドバーンと演出するレッドママン。

 そのポージングに周囲の兵からは拍手喝采。身内からはため息がこぼれていた。


「さて、真一郎君。ずいぶんお困りのようだね」

 真一郎の肩に片手を置き、グーサインをしながら尋ねるレッドママン。

「え?ああ、まぁ」


 レッドママンの登場で忘れてるかもしれないが、今まさに特大雷魔法がこちらに飛んでくる所だった。

「あの魔法、確かに驚異だが君なら何とか出来るのだろ?」

 真一郎の両肩をがっしり掴むレッドママン。

「まぁいちお」

「なら行って来い!!」




「へ?」




 次の瞬間、真一郎は空を飛んでいた。

「のわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 正確には投げ飛ばされた真一郎は、そのまま一直線に飛んでくる雷の塊に突っ込んで行った。



「「「な……」」」

 あまりの事態に、まったく反応出来なかった周囲の面々。


「殿下!!!」

「母様!なんてことを!」

「ジュリお主なぁ……」

「殿下はお星さまになってしまった」

「隊長、まだ死んでないだべよ」



 周囲の視線が答えてないのか無視してるのか、レッドママンは満足気だ。

「大丈夫だ!しっかり受け止めるから。それと私はレッドママンだ!」

 そう言って、来た時の様な猛ダッシュで真一郎の落下地点へ向かうレッドママン。


 その間にも真一郎は雷の塊にぶつかり、見事にその魔法を消し去っていた。


「のわぁぁ!落ちる落ちる!死ぬだろこれぇぇぇ!」


 手足をバタつかせ落下して行く真一郎を、猛ダッシュで来たレッドママンがしっかりキャッチ。お姫様抱っこ状態で綺麗に着地した。



「はぁ……死ぬかと思った」

 レッドママンに降ろされ、その場にへなへなと座り込む真一郎にゾーイやレイラ達が急いでやって来た。


「殿下!ご無事ですか!」

「真一郎大丈夫か!」


「あーなんとか大丈夫だよ。それに攻撃も防いだしね」

「ハッハッハッハ!計算通りだな!」


 ほとんど何もして無いのに何故か自慢気なレッドママン。

「まったくもう少し考えて行動しろ」

 後から来たジュウベイに言われ「結果が良ければ問題ない!」と豪語している。



「うへへへへへへへ!傑作ですよ!はいはいはいはい!正直こんなに面白い戦い始めてです!いやぁ実に愉快だ!うへへへ」

 大笑いしながら上から降りて来たショウジョウ。

「うへへへへ!あぁお腹痛い」

 空中で身をよじらせながらケラケラ笑う彼は涙を流している。



「なんか私が笑われてるみたいですごい腹立つんだが……」

 あからさまに機嫌が悪くなるレッドママン。

「うへへ。いやいや失礼。こんな楽しい物を見せてもらったのですから、それなりのお礼をしなくてはですな!それでは気を取り直して行かせて頂きますよ!レッドママンさんうちの子を見事撃ち破ってみてくださいね!!」

「望む所だ!!」



 ショウジョウはまた上に飛んで行き、それまで忘れられていたアンテッドロードがゆっくりと動き出した。



「なんか疲れる……」

「まぁあれだ、後は見てればいいだろ」

 対決するレッドママンとアンテッドロード+ショウジョウ。

 彼らとは真逆のテンションの真一郎達をほったらかし、戦いは火蓋を切った。




今回もありがとござます!

えー犬耳三人は後々サクラさんとからむ予定です。

三人の名前+サクラでお気付きの方は仲良くなれそうです!


さて次回の「はちぷり」は!

レッドママンVSアンテッドロードその結末は!

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