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EightPrincessOneBoy  作者: ぽちょむ菌
第一部『真一郎と八人の姫』
27/38

25話 『決戦中央砦 前夜祭その二』

どーもです!





 大門前で、敵に囲まれるファング隊救出のために走る真一郎とゾーイ。目の前に見えたのは、群がる敵を必死に追い払う白く大きな虎だ。

「ヒナタ、大丈夫!」

 足の自由を奪われたように、その場に座り込みながらも、よって来る敵に噛みつき前足で応戦する大きな白虎のヒナタ。

「殿下、危険です。獣化中は獣そのもの。むやみに近づけばこちらに攻撃してきます」

 ゾーイの静止がなければ真一郎は一直線にヒナタの元へ駆け寄っていただろう。

「でもこのままじゃ……」

 吹き飛ばされてはまた群がるを繰り返す敵達に、ヒナタの体力だっていつまでもつか分からない。一刻も早く助け出さなければ危険な事は誰だって分かる状況だった。

「殿下!」

「ん?」

 ヒナタに気を取られていた真一郎は、敵の接近に全く気が付いていなかった。

「ギギギギ!」

「うお!ちょっ!」

 振り下ろされた斧を間一髪でよけた真一郎。自分を呼んだ声の方をちらっとみるとゾーイもすでに三匹のオーガに囲まれていた。

「ゾーイ!」

「ワタシは大丈夫です!誰か!殿下をお守りしろ!」

「ハイ!」

 真一郎とゾーイの後を追ってきていた数人の兵が真一郎を囲むように展開し、目の前のアントマの首を切り落とすと、周囲に警戒の目を向けた。

「皆、俺の事はいいからファング隊の皆を助けて!」

「しかし殿下……」

「殿下のお守りは自分が引き受けるケロ」

 少し遅れて後を追ってきたベッベグがパクティと共に駆けよってきた。

「ベッベグもパクティも、皆と一緒に行って!ヒナタは何とかするからサリーを!」

 真一郎がさした方向には、足に群がる敵を、必死に振り払う山羊がいた。

「む、確かにあっちも危ないケロ。殿下一人で大丈夫ケロ?」

「大丈夫じゃないけど頑張るさ。ベッベグお願いできる?」

 現状で、真一郎一人を置いていくことの危険さはベッベグにも十分に分かっていた。しかし、サリーはすぐにでも助けなければ手遅れになりかねない状況だ。じっと見つめる真一郎の目をのぞきベッベグは……


(まったく、無鉄砲さは親にそっくりケロね。何の根拠も無いけど、何故か信じたくなる、罪な血筋だケロ)


 ベッベグはこれでも十七年も騎士団員をしている。もちろんグラインや香織の事も知っているので、真一郎がまさにあの二人の子供だと改めて実感した。

「分かったケロ。殿下が大丈夫って言うなら大丈夫ケロ。さ!みんな、サリー嬢救出に向かうケロ!」

「ベッベグさん、いいんですか?」

 兵の一人が困ったように聞いてきた。

「ん。殿下のご命令ケロ。我々はサリー嬢を救出しないといけないケロ。さ!行った行った!」

「ラジャーケロ!」 

 兵とパクティを先に走らせ、ベッベグは真一郎に今一度目を向けた。

「殿下、気を付けて下さいケロ」

「ああ、分かってる。ベッベグも、あっちはよろしくね」

「お安い御用だケロ!」

 そう言って走り出すベッベグ。走りながらもすでに魔法を詠唱し、サリーに群がるイプピアーラに攻撃をあびせていた。



「よし!」

 気合を入れ、ヒナタの方に振り返ると、すでに力もあまり無いようで、さっきより明らかに抵抗が弱くなっていた。

「まずいな!」

 すぐに走り出した真一郎。横を見るとゾーイが、オーガの一体の首を落とした所だった。

「殿下!お待ちを!」

 こちらに気付いたゾーイが後を追ってこようとしたが、残りのオーガに阻まれ、うまく身動き取れないようだ。

「こっちは大丈夫だから!」

 それだけ叫ぶと目の前のアントマに切りかかる真一郎。


「うりゃぁぁぁ!」

 背後から日本刀で首を狙って思いっきり刀をふった。が、「ガキーン」と金属音の様な音を上げ、跳ね返されてしまった。

「って~。なんちゅー硬さだ……」

 インセクター種は、どれも強固な外骨格に覆われた体をしている。もちろん弱点もあり、関節部分はその構造上、比較的やわらかく斬りやすくなっている。ただ、素人ではそのピンポイントを狙うのは難しく、多少は剣道の心得がある真一郎でも、はずしてくしまうくらいなのだ。

「グギギギギ」

 真一郎からの攻撃で思いっきり気付かれ、こっちをゆっくりと見るアントマ。

「もういっちょだ!」

 振り向くアントマに向かい刀を突きたてる真一郎。

「うりゃぁぁ!」

 真一郎がまっすぐに出した突きは、アントマの目へと直撃した。

「グギャアアアア!」

 左目を押さえ、悶絶するアントマ。やる気になった真一郎はその一瞬のスキを見逃さなかった。

「そこっ!」

 目の前のアントマの首筋に刀を突きたてた真一郎。肉を貫く独特の感触が伝わり、痙攣しその場に倒れこむアントマを見下ろし真一郎は手を合わせた。

「ごめんな……」

「殿下!!」

 ゾーイの声に目を開けると、目の前では先ほどとは違うアントマが斧を振り上げていた。

「うぉ!」

 とっさに後ずさりし刀を構える真一郎。

「殿下、戦ってる最中によそ見はなりませんぞ」

 自分に群がるオーガを倒し、すぐにこちらに駆け付けたゾーイからの助言だ。

「ゴメン、もう大丈夫だから」

 ゾーイと並び敵を見据える真一郎。

「ゾーイ、行くよ!」

「ハッ」

 目の前の敵に向かって走る真一郎。再び振り上げられたアントマの斧をかわし、横っ腹の外骨格が比較的薄い部分へ刀を突き刺す。

「ギギャァァァ」

 けたたましい声を上げその場に倒れるアントマの首をゾーイが落とし、さらに先へと進む二人。

「ヒナタァァ!」

 先ほどより少し離れてしまったが、目的の白虎に駆け寄る真一郎。その後ろでは群がるイプピアーラの首を落とすゾーイが何も言わずにこちらを見守っていた。


「ヒナタ!」


「グルルルルル」


 獣化により野性の本能だけで戦うヒナタは、自由が利かなくなった下半身をだらんと伸ばしながら、真一郎へむかって威嚇の声を上げた。

「大丈夫。さ、いったん砦に戻ろう。怪我も見ないと」

 ヒナタの体はあちこちが傷つけられ、白い体のあちこちが赤く染まっていた。

「グルルルルル」


「大丈夫だよ」


 威嚇の声を緩めないヒナタに、刀を納め、無防備な状態で近づく真一郎。彼にはもう迷いなど無いように見えた。

「グルァァァァ」

 一際大きく、真一郎にむかって吠えたヒナタの声にも動じず、ゆっくりと近づき彼女の前足に触る真一郎。

「ほら、大丈夫でしょ?さ、一緒に戻ろう」

 ヒナタの前足をゆっくりとなでながら微笑む真一郎の手を、いつのまにか威嚇の声をやめたヒナタがペロリと舐めた。

「うん、もう大丈夫。さ、姿を戻して。行こう」

 真一郎の手を舐めながらヒナタは光に包まれ、次の瞬間、そこにはボロボロになりながらも真一郎に跪く全裸の少女の姿があった。

「で、殿下……」

 真一郎の顔を見て、そのまま安心したように倒れこむヒナタをそっと抱きよせ、自分の上着をかけた真一郎。

「ゾーイ!いったん戻るよ!」

「ハッ!」

 二人の周りで敵の首を切り続けていたゾーイは、一度振り返り二人のの安否を確認すると、すぐに前方に向き直り道を造るべく敵を蹴散らし始めた。

「殿下、誰か来ます」

 周囲の敵をゾーイがあらかた片づけた頃、二人の目には、砦からこちらに走ってくる数人の人影が見え。


「若殿!」

「おお、ジュウベイ!」

 一度砦にミラを届け戻ったジュウベイは、数人の兵と共に真一郎の前に戻ってきた。

「ご無事でなによりです」

「そっちもうまく行ったみたいだね」

「はい、何とか。これお前達、殿下からヒナタを、すぐに医務班の元へ届けるのだ」

「ハイ!」

 数人の兵は真一郎から慎重にヒナタを受け取ると、持ってきた担架の様な板に寝かせ、えっさほいさと運んで行った。

「ふぅ……それにしても、だいぶ減ったかな」

 自分の周りに転がる首無しの死体を見回し、真一郎は膝に手をついた。他のファング達も救助され、先ほどまでいた敵達もほとんどが首のない死体へと姿を変えていた。


(……これが、戦か……)


 夢中で敵を斬り続けたせいで、せっかく綺麗にしてもらった戦闘服はまたも返り血で紅く染まっている。


「ウッ!オェェ!ゲホッゲホッ」

「殿下どうされました!?まさか、敵の毒に!」

「ゲホッゲホッ、だ、大丈夫。ちょっと血の匂いで気持ち悪くなっただけだから」

 周囲に立ち込める、血とホコリが混ざった様な戦場の匂いに耐えきれず嘔吐してしまった真一郎。

「若殿は始めて戦場に立ったのですからな。この匂いに気分が悪くなっても仕方ありません。誰しも一度は通る道ですな」

「ッウ……ふぅ、そんなもんなの?そうだジュウベイ、ミラは?」

「そんなもんですな。ミラ達は無事です。毒自体はありふれた物らしく解毒も直ぐに可能だそうです。ただ、獣化での疲労もありますからしばらくは動けないかもしれませんな」

 戦いの最中に気づいた事だが、敵の牙や爪には毒が仕込まれている様で、噛まれたりひっかかれた兵は体が痺れ手足の自由を奪われたりしていた。ミラがあっさりと敵にやられた原因も、ヒナタの下半身がいう事を聞かなかったのもそのせいなのだろう。

「そっか。それならよかったね」

 ヴィラントに注入された毒ほど強力な物なら、ミラ達の命にかかわったが、今回はなんとかそこまでひどくはならないようだ。


「殿下~。ご無事ケロ?」

 他のファング救助に向かったベッベグ達も、仕事を終え真一郎の元へやって来た。

「ベッベグ、ご苦労様。そっちもけが人は無かった?」

「大丈夫ケロ。ただ、サリー嬢がちっとも言う事聞いてくれなかったから眠らせちゃったケロ」

 真一郎のような芸当だれでもできる物じゃないのだ。彼の魔力が他の動物にモテモテな色だからこそ出来る事なのだ。

「それもしょうがないね。しかしこれで一安心かな……」

 その場に座り込み、ベッベグと共に走ってきたパクティが持ってきてくれた水筒から、水をぐびぐび飲む真一郎だったが、まだまだ安心はできないようだ。


「殿下、あんま安心できないっぽいケロ。あれ見るケロ」

「ん?…………なっ……」

 ベッベグに言われ、彼が指差す東の空を見る真一郎達。

 先ほどまで星空が見えていたはずの空は、夜空よりも真っ黒な影と、おびただしい数の紅い小さな点に覆われていた。

「なんだあれ……パクティ!明かりで照らして!」

「ラジャーケロ!」

 真一郎に言われ、光球を作り出したパクティは東の空にそれを飛ばした。

 まるで花火のように空で爆発した光球が照らしたのは、数えきれない程の夜空をバサバサと飛行する敵だった。


「あれは……エイプか!?」

 自前の小型望遠鏡で敵を見たゾーイ。彼の驚き方を見れば、これが非常事態だと真一郎にも分かった。

「ゾーイ、いちお確認するけどエイプって空は?」

「飛べません。そもそもエイプに翼などありません」

「そうか……」

 バサバサという羽音と、サルの鳴き声の様なギャーギャーという奇妙な声がどんどん近付いてきていた。

「殿下どーするケロ?」

「ベッベグ、それにパクティも、すぐに上の部隊と合流して。魔法攻撃で敵を撃ち落として」

「簡単に言うけど、あの数全部をフロッグ隊だけじゃ無理ケロよ」

 万能に思える魔法だが、魔力を使いきってしまえばもちろん使えなくなる。そればかりか体内の魔力を使い切ってしまうと、普段は生命活動に魔力を使わないヒトであっても、めまいや倦怠感、酷いモノは失神する場合もあるらしい。

「分かってるよ。さすがにこれ以上俺たちだけじゃ無理だよ。ゾーイ、ジュリエッタ母さん探して援軍を大至急頼んできて!」

「ハッ」

 ゾーイがすぐにその場を離れようと振り返ると、丁度レイラとロロイが現れた。

「ゾーイ、母様は探さなくても大丈夫だ」

「レイラ、どゆこと?」


「真一郎、母様からの伝言だ。『今この時を持って中央砦に居る全ての兵をお前に託す!』だ、そうだ」


「……はい?」


 レイラの言った意味が分からず、間抜けな声を出し聞き返してしまった真一郎。

「だーかーら、砦の兵の指揮権は今を持って全てお前にまかせるそうだ。しっかりな!」

「なっ!この状況分かってる?俺なんかよりもっと経験豊富な人が指揮した方が絶対いいって!」

「そんな事私に言われても困る。母様の決定を私がどうこうできるはずがないだろ」

「マジか……」

「マジだ。母様はあんなだが考え無に行動する事はまずない。何かお考えがあっての事だろうさ。それより、お前達、飛んでる奴らの後ろのデカブツには気付いてるのか?」

「え?」

 レイラに言われて目を凝らせば、確かにエイプ達の後ろで不自然な闇が動いていた。

「まさか、あんなデッカいのが敵なの!!」

 はっきり姿は分からないが、少なくとも10m以上の大きさはあるだろう。

「皆、あれ何か分かる?」

「大きさから見てかなりの物でしょうが、ここからではさすがに姿がはっきり見えないですからな……」

「同じく、しかし若殿、あれよりも先に来るエイプ共の対策も早くせねばなりませんぞ」

「だよね……はぁ……」

 エイプだけでも問題なのに、その後ろにはさらなる脅威が迫っていた。

「しんちゃん、心配ご無用だよ。今ジュリ母様が超強力な助っ人を呼びに行ってるからね」

「へ?助っ人?」

「そ。だよねレイラちゃん?」

「え!?あー、そうですね。そんな感じですねははは」

 すんごいドギマギしたレイラ。

「レイラ、何その微妙な反応」

「うるさい、気にするな!お前は指揮する事だけ考えてればいいんだ」

「むぅ。気になるじゃん助っ人」

「しんちゃん、後でのお楽しみだよ。さ、皆に指示を」

 真一郎の周りにはゾーイを始め、指示を待つ兵が集まっていた。


「はぁ、どーなっても知らないよ……」

「殿下でしたら大丈夫ですよ」

 根拠のない確信をもつゾーイの言葉。

「お前の好きなようにやれ。私たちはそれに従うから」

「レイラ……」

「若殿ならば大丈夫です」

「そそ、殿下結構頭いいからイケるケロよ」


「覚悟決めるしかないんだね……よしっ!ベッベグ、屋上に魔法得意な兵を集めるから、指揮をお願い。思いっきり魔法打ちまくって、敵を全部落としてきて!」

「ラジャーケロ!」

「レイラ、ジュウベイ、ロロイ姉さんは集まって来る兵の指揮を、レイラとジュウベイの部隊はここに、ロロイ姉さんは門の前で待機。みんなよろしく!」


「「「ハッ!!」」」


 真一郎の指示で散って行く皆。

 彼らの背中を見送り、真一郎はじっと東の空を見つめた。

「一難去ってまた一難ってまさにこの事だね。ゾーイ、どお思う?次の敵で最後かな?」

「どうですかな。殿下はまだ来るとお考えで?」

「うーん、どうだろ?この夜襲の目的さ、考えられるのは戦力の消耗だと思うんだ。いくら強い騎士団だってろくに寝ないで戦い続ければ疲れるし、魔力も消耗する。敵の狙いがそれなら朝まで攻められ続ける可能性もあるんだよね……」

 できれば避けたい事態だが、あちらの兵の数を考えれば出来ない事もない作戦だ。


「ちなみに日の出までは3時間くらいですよ」

「ああ、スキーリング。ご苦労様」

 真一郎とゾーイの横にいつの間にかスキーリングが現れていた。

「殿下、全兵への通達完了しましたよっ。それと、うちのを何人か偵察に向かわせたので、後ろのデカブツの正体もすぐに分かると思いますよ」

「ありがと、スキーリング。ついでにもう一つお願いあるんだけど、いいかな?」

「はいはい、なんなりと」

「アリシアさん呼んできてもらっていい?」

「へ?お嬢をですか?」

 ちなみに、この時アリシアは招集命令を完璧に無視し自室で爆睡中だった。

「うん。ちょっと頼みたい事あってさ。大至急お願い」

「はぁ了解しました」

 真一郎の考えが何なのか、さっぱり理解できないスキーリング。


(まぁ殿下なら面白い事考えてるんだろうけどな)


 アリシアを使って真一郎が何をするのか楽しみだが、正直、寝起きの悪いアリシアを起こしに行くのは、かなり気が乗らないスキーリングは足取り重く砦に消えて行った。


「殿下、何をお考えで?」

「ナイショ。さ、俺たちも行こう。だんだん兵も集まってきたしね」

 周りではレイラとジュウベイ中心に兵が集まり始めていた。

「よし。やれる限りはやってみよう」

「お供しますよ殿下」

 東の空をじっと見据え、刀を地面に付き刺す真一郎。

 その横で跪き、ゾーイは戦いの時を待っていた。







 こちら砦屋上魔法部隊。


「隊長、魔法特化の兵が集まって来ましたが、大丈夫ケロか?」

「なんとかするしかないケロ。殿下にお願いされちゃったから、敵を全部落とさなきゃかっこつかないケロ」

 ベッベグの周りにはカエル軍団。そして魔法特化の第二師団の他の面々や、第三師団の中でも魔法が得意な者が集まっていた。

「とりあえず、魔力の残量が多いヒトがド派手に撃って数を減らすケロ。後はそれぞれ撃ち落とす方向ケロ。とりあえず翼をダメにしちゃえばよさそうだし。最初以外はそんな大きな魔法じゃなくても大丈夫だと思うケロ」

「まぁ第二師団の魔法使いの皆さんは、俺らとちがって魔力が切れたらなーんも出来ないですからね~」

 嫌味な感じで話すのは第三師団所属の兵だ。第二と第三はあまり仲が良くないらしい。 

「君たちみたいな脳筋と一緒にしないで欲しいケロ。大体、魔法無しでどうやって明日を乗り越えるケロ?まさか2万の敵に剣だけで戦いを挑むほど第三師団は無謀な輩ばっかケロか?」

 

 いくら第二師団の魔法特化部隊であれど、魔力が切れれば無力になってしまう。普段肉弾戦を得意とする他の部隊にくらべ、魔法攻撃主体で戦う第二師団にとっては魔力量の維持こそが戦いの鍵となる。

 しかし、普段から肉弾戦を得意とする第三師団の面々からすれば、魔力がなくなれば普通に武器で戦えば良いと、真逆の発想になってしまうのだ。


「なんだと!誰が脳筋だ!」

「脳筋は脳筋でしょーケロ。魔法なんてお情け程度に使えるくせに威張るなケロ!」

「このカエルがぁ!」

「あ!カエルって言ったケロね!フロッグルに対してそれがどんな侮辱の言葉か分かってるケロ!!」

 言い合いをする二人を中心に、一触即発の雰囲気のその場にベッベグの活が飛んだ。


「いい加減にするケロ!!我々の使命は敵を地上に撃ち落とす事ケロ!つまらん事で言い合いなんてしてないで協力するケロ!」

「うるせー!大体、千人隊長でもないアンタがなんで仕切ってるんだ!」

 真一郎に近いベッベグが指揮を任されたが、この場には普通の階級で言えばベッベグより上の第三師団の百人隊長などもいるのだ。不満がでて当然でもあった。

「そ、それは殿下が……」

「へっ!ちっと殿下に気に入られてるからっていい気になるなよ!」

「お前達!うちの隊長にケチつけるなケロ!」

「たかが部族隊長のくせに偉そうに前に出るから悪いんだろうが!」

「なにを!その言葉はフロッグル族を侮辱するのと一緒ケロ!」

「だったらどーすんだ!」

「勝負だケロ!」

 売り言葉に買い言葉で、どんどん泥沼化していく屋上部隊。

 すでに戦闘モードへ入りつつある彼らの喧嘩の声は、突如聞こえてきた大音量の音楽によってかき消された。


「なんだケロ!?」


 止めるに止められない状況だったが、この聞きなれた音楽が聞こえた時、なんとかなると思えたベッベグ。


「「「この音楽は!!」」」

 下から聞こえる音楽に、屋上から身を乗り出した兵達の前を何かが猛スピードで上昇していった。


「「うおぉぉぉぉぉ!」」


 その正体を確認したとたんに砦全体から沸き起こる大歓声。

 その声に答えるように空中を旋回する姿は巨大な鷲。

 足には音楽をガンガン流すスピーカーの様な箱をぶら下げ、背中には誰かが乗っていた。


「王国騎士団のみんなぁ~!戦の準備はできてる~!?」


「うおぉぉぉぉぉ!!」

「アリシアちゃーーーん!!」


 大歓声の中、颯爽と現れたのは王国最強アイドル、アリシア・マッケンリー。

 ちなみに、彼女が乗っている大鷲はファングの一人だったりする。



「今日は私も一緒に戦うから!みんな、張り切って行くよぉぉ~!!」


「うおぉぉぉぉぉぉ!!」


「よーしよし!気合十分だね!みんなで力を合わせて、砦を守るよ!いいね!」


「うおぉぉぉぉぉ!」


「それじゃあ行くよ!サウンドチェンジ!」

 アリシアの掛け声と共に現れた魔法陣が鷲の持つスピーカーを包み、それまで黒くシンプルだった姿をピンクの花やら星やらがついたゴテゴテしたものへ変えていった。

 さらに、アリシア自身も魔法陣に包まれ、それまで黒基調の軍服スタイルだった彼女を、黄色いふわっふわのステージ衣装へと変化させた。


「我は求める!汝は答えよ!」


「うおぉぉぉぉぉ!」


 アリシアの声と共に、彼女の周りには無数の小さな魔法陣が現れた。


「シューティングスター!」


 大音量のサウンドと共に魔法陣からは、まるっこいPOPな星が無数に溢れてきた。


「みんなも続いて!行くよ!フォレイティアス騎士団!!」



「うおぉぉぉぉ!」

「野郎ども!やっちまうケロォォォ!!」

「うおぉぉぉぉ!」


 先ほどまでの喧嘩なんて嘘の様に、声を揃えて魔法を詠唱する屋上の面々。


(殿下のお陰ケロ……さすがケロ)

 いくら真一郎でも、屋上で喧嘩が起こってるなんてことは予想していない。ただ、彼がとった策がその場の全員を、一気に一つにしたことに変わりは無かった。


 アリシアの歌声と共にエイプ達めがけ飛んで行く大量の攻撃魔法。

 夜空を覆う星くずと、炎やら氷塊やら雷やらが混ざったPOPな殺人魔法群は空を舞うエイプを次々と地上へ落として行った。

 ギャーギャーと声を上げ、なすすべなく魔法の餌食になり落ちていくエイプ達は、空中の数をどんどん減らしている。




「はっはっはっは!さすが殿下のお考えですな」

 上空の様子を見ながら大笑いするゾーイの横で、真一郎も笑みをこぼしていた。

「気に入ってもらえて良かったよ」

「これぞまさに我々の戦に相応しいですな」

「さ、ゾーイ。下に落ちてきたのは予想通りこっちに来るね。俺たちも行こうか」

「ハッ」

 あらかじめ予想していた通り、地面に落ちたエイプ達は、魔法攻撃や落下によってできた自身の怪我など気にもせず、瞳を赤く光らせこちらに向かってきていた。


「地上部隊!準備は良いか!?」


 真一郎の問いに、それまで上空を見ながら歓声を上げていた地上部隊は一斉に真一郎の方に向き、了解の意を唱えた。


「よし!地上部隊進軍開始!!くれぐれも落ちてくる敵に当たらないように!!」


「うおぉぉぉぉぉ!」


 真一郎の声に答えたのか、それとも、曲目が変わりまたも衣装が変わったアリシアに答えたのか分からない声が響き、騎士団地上部隊は、落ちてきた敵殲滅のために動き出した。












 同時刻

 後方デカブツ周辺


「なんなんだこれは……」

 黒ずくめの装束を見にまとった数人の兵が木の影からデカブツを偵察していた。

「隊長!すぐに若に報告を!」

「そうだな。よし、二人報告に迎え!残りは敵の情報を集めるぞ!」


「「「ハッ!」」」


 報告のためスキーリングの元へ戻ろうとした二人だったが、走り出そうとしたその足は何かにつかまれた。

「なっ!!」

 足元に目をやれば、白い骨の手が自分達の足をつかんでいる。

「これは、スケルトン!?」

「大丈夫か!?」

 二人に駆け寄る隊長だったが彼の足元にも手が伸びていた。

「隊長!下です!!」

「クッ!」

 兵の声でとっさに木の上にジャンプした隊長。しかし、彼以外の兵は二人と隊長の状況に気を取られ、白骨の手でがっしりとつかまれていた

「くそっ!なんだこれ!」

 白骨の手が出ている地面は、どんどんと泥沼の様にやわらかくなり、兵達を足から飲みこみはじめていた。

「大丈夫か!?」

 一人難をのがれ木の上に居る隊長は、部下を救うべく下におりようとした。


「うへへ。あー、隊長さん。下りない方が身のためですねぇ」


 木の上の自分の後方から聞こえた声に、とっさに武器を構える隊長。

「貴様……ハイクラスか!」

 彼の目の前には、子供くらいの身長で小太りなおじさんが小さめの羽をパタパタと動かし浮かんでいた。


「うへへ。いかにも私はインセクターのハイクラスですよ。はいはい、お仲間はこのまま頂きますが、貴方はどうあがきますかねぇ?」


 隊長が地上に目を向ければ、すだに部下の体は胸のあたりまで沼につかっていた。


「部下を目の前で奪われて何もしない訳に行くか!」

 言葉と同時に木から飛び出し、小太りおじさんに飛びかかる隊長。

「うへへ。生憎と、男に抱きつかれる趣味は無いですよ。はいはい、このまま落ちて下さいねぇ」

 ひらりと隊長をよけた小太りおじさんのせいで、そのまま地面へ落ちる隊長。空中で一回転し綺麗に着地をし、未だ頭上をパタパタ飛んでいる彼を睨みつけた。


「うへへ、おー怖い怖い。そんなに睨まないでくださいね。はいはい。その装束、王国の隠密でしょ?色々と聞きたいですねぇ」

 いやらしい笑顔を造り、手をすりすりとこすりながら空中を飛び回る小太りおじさん。それにむかって魔法を放とうとした隊長。


「我は求める!汝、ぐぁぁぁ!」


 突如腹部に走った猛烈な痛みにより、詠唱を中断した隊長。その腹を見れば、背中から虫の足の様な物が腹を貫通している。


「な、こ、これは……ぐあぁぁぁ」

 腹の虫の足が少し動き、彼を内側から絶命させた。

 すでに事切れた隊長から足を抜き、背後に居た者は空を飛び回る小太りおじさんに告げた。


「まったく、いつまでこんな所で遊んでるんですか?早く足を進めてくださいよショウジョウさん」

 そこに居たのは頭に包帯をまいたコートの男。

「うへへ、イミナス君。折角楽しんでたのに邪魔しないでもらいたいですねぇ。はいはい、この子は順調に育ってます。このまま進めば問題ないですねぇ」

 ショウジョウと呼ばれた小太りおじさんは、デカブツを見上げ満面の笑みを浮かべた。

「そうですか、まぁ順調ならいいんですけど。くれぐれも慎重に、なんせあちらには赤獅子が居ますからね」

「うへへ、分かってますよ。でも、この子も戦場へ到着すればそこにある死体を食べてもっと強くなれますからね。まぁ倒すのは無理でも、朝まで騎士団を引き付けるくらいはできるはずですねぇ」

 パタパタ飛び回り嬉しそうなショウジョウ。

「では、ここは任せて大丈夫ですね?私は明日の準備もありますので戻りますよ」

「うへへ。大丈夫ですよ。はいはい、お任せくださいですねぇ」

 一度デカブツへ目を向けたイミナスは、にやりと笑い影に消えて行った。


「さーて可愛い坊や。もっとおいしい餌があるところに行きましょうねぇ」

 デカブツの周りをくるくる回りながら、誘導するように移動をうながすショウジョウ。

「うへへ、この子を見た時の騎士団の顔が楽しみですねぇ。はいはい、きっと絶望するでしょうねぇ」

 相変わらず楽しそうに満面の笑みで、パタパタと飛び回るショウジョウ。



 しかし、ショウジョウは気が付いていなかった。絶命したはずの隊長にかすかにだが動きがあった事に。


(……は、早く……知らせなければ……)

 最後の力を振り絞り、小さな魔法陣を呼んだ隊長。そこから現れたイタチの様な獣に全てを託すと、残りの力を使い切った彼は今度こそ静かに眠った。

「キューン」

 主の亡骸をヒト舐めし、獣は中央砦に向かい走り始めたのだった。





ええ、すみませんね。

ただ単に超時空要塞的なノリで戦闘してみたかったんです。

はい、難しいです。全然うまく書けてないですね。


アリシアのCVはぜひ水樹さんがいいですな。

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