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EightPrincessOneBoy  作者: ぽちょむ菌
第一部『真一郎と八人の姫』
26/38

24話 『決戦中央砦 前夜祭その一』

どーもです!

今回もちぃっと間あいちった。




 迫り来る敵を見据え、大門に立つ真一郎。周りには武器を構えた兵が戦いの時を待っていた。

「殿下、どーするケロ?インセクター相手じゃいきなり魔法で先制攻撃もあんま意味ないケロよ」

「だよね……」

 腕を組み、目の前の地面を見つめていた真一郎は、何か閃いたように指示を出す。

「よし。ベッベグ、魔法で地面に穴開けられる?大きくなくていいから、数を沢山」

「もちろんできるケロ。土属性使えば楽勝ケロ」

 ちなみに、ベッベグが使えるのは水風土闇らしい。

「それが出来るのは?」

「自分とパクティケロ」

 そう言ってベッベグが指差したのは、黄色いカエル少女だ。

「うん、あと回復が得意なのは?」

「それならペペケロ」

 今度は黄緑色で細身の若いカエル男子を指すベッベグ。

「分かった。じゃあベッベグとその二人を残して他は上の階へ行って。窓からでも屋上からでもいいから敵の後続に魔法で攻撃する準備してて」

「「「承知しましたケロ!」」」

 声を合わせ了解したフロッグル達は階段へ消えていった。

「誰か!フロッグル達と一緒に行って上から状況確認を!敵がどれくらいか見てきて!」

「はい!」

 真一郎の声に答えた数人がフロッグル達を追いかけて行った。


「殿下、穴はもう作るケロ?」

「時間かかる?」

「ご命令があれば一瞬で出来るケロ」

「ならまだ早い。ギリギリまで近づけてからだ」

「はいケロ。パクティ、いつでもやれるようにするケロ」

「ラジャーケロ」



 ベッベグ達に指示を出した真一郎は、ミラ達ファング隊に目を向けた。

「ミラ、ファングの皆には敵に突っ込んでもらうよ。いける?」

「もちろんですわ。殿下のご指示でいつでも」

「ありがと、思いっきり暴れてもらうからね」

「喜んで!」

 真一郎に敬礼し笑顔のファング隊。


(はぁやっぱ殿下ステキですわ……ここでいい所見せてアピールしないと!)

ミラの頑張る理由がだいぶ自分とズレてる事になんかもちろん気付かない真一郎だった。



「殿下、他の兵はいかがいたしますか?」

 ゾーイの問いに振り返った真一郎の目には三十人くらいの兵達が武器を手に指示を待ってた。

「みんなはここで待機。ファング隊から逃れて砦に入ってきた敵を各個撃破。ここが最終防衛ラインだ、誰一人としてここから先には通すな!」

「「「「ハッ!!!」」」

 始めて見る真一郎の真剣で凛々しい態度に一同は声を揃えて答えた。


(かー殿下、かっけ~な~)

(子供追いかけ回すよりこっちの方が絶対目立つ!出世も夢じゃない!)

(あ~ミラさん可愛いなぁ、やっぱこっちきて正解だわ)


 ミラ同様不純な思いばっかなのはこの際ほっとこう……


(ミラ達がいくら頑張ってくれてもこっちに抜けてくる敵が結構いるはずだ、もう少しこっちも数が欲しいけど贅沢言えないか……)

 今は少しでも人数が欲しい真一郎。そんな彼の元に思わぬ助け船が現れた。


「若殿、拙者にも何かお手伝いをさせて下さい」

「ジュウベイ!」

 兵をかき分け現れたのは和装のドーベルマン、ジュウベイ。

「ジュリからこちらに行くように言われましてな。何なりとお申し付け下さい」

「ありがと、心強いよ」

 

 ジュウベイの眼に映った真一郎は、朝食堂で会った時と明らかに違う何かを感じさせた。


(ほぅ、若殿もこんな顔するのだな……指揮を任せるとか泣ついてくるかとも思ったが、ジュリの予想の方が正解か。これもフォレイティアスの血筋だな……)


 フォレイティアス王族は、戦の中でこそその真価を発揮してきた。皆を率いて敵を討つ事こそが王族としての務めなのだ。その責務を無意識にしょい込む真一郎は自分でも知らないうちに王族として成長し始めているのだ。



「殿下!ご報告します」

 ジュウベイが真一郎に感心していると、先ほどフロッグル達と上に行った兵が戻ってきた。

「上から見てどおだった?」

 真一郎の問いに姿勢をただし兵は報告をした。

「ハッ!上から見える限りでは敵の数はおよそ四百、インセクターは前の方だけです。その後ろにイプピアーラとオーガが居ます」


「ご苦労様。やっぱり後ろはインセクターじゃないか……」

 報告を聞いた真一郎は自分の策を実行するべきか否か迷っていた。


(うまく行けばこちらの被害を最小限に抑えて戦える。だけど、結構えげつない作戦だもんな……)


 真一郎の作戦は、待ち構えて魔法で上から攻撃すると言うものだ。インセクターはファングにまかせるつもりだし、他の後続を魔法で一網打尽にすれば、後は残ってる者を確固撃破していけばいいだけだ。 


(ああ!ダメだ、ダメだ!もう迷わないって決めたばっかじゃんか!今は戦って勝つことに集中しよう……)


「よし、予定通り上から後続に魔法攻撃をするように伝えて。タイミングは敵の先頭がこっちの罠にはまったらすぐね。思いっきり打ちまくって、一旦止めるように、その後は戦況見ながら上から攻撃、それと、くれぐれも味方には当てないようにって」

「了解しました!」

 敬礼をし階段に消えてゆく兵。

 真一郎が指示を出している最中も、敵の脚は止まることなく、大きな足音を立て大門へ向け進んでいた。





 今まさに敵との戦が始まる頃、大門の兵の様子が見渡せる二階部分の窓から、ジュリエッタは息子の初陣を見守っていた。

「ふっ、なかなか様になってるじゃないか」

 テキパキと部下に指示を出す真一郎は、普段より少しだけ立派に見えた。

「母様、やはり私たちも合流した方がいいのでは?」

「レイラ、いくら真一郎が心配でもダメだ。せっかくあの真一郎がやる気になってるんだぞ、邪魔しちゃいかんだろ。それに記念すべき初陣だ、カッコつけさせてやろうじゃないか」

「はぁ、でも不測の事態に陥ったら助けに行くんですよね?」

「よっぽどの事があればな。大体、ジュウベイとファング達が居る時点で負ける訳ないだろーしな。ロロイもそう思うだろ?」

 丁度お茶の支度中のウサ耳ロリロロイは、カップに紅茶を注ぎながら答える。

「レイラちゃん、ジュリ母様のおっしゃる通りだと思うよ。ジュウベイ先生は騎士団の男じゃ一番強いんだし、ミラちゃん達の強さだって知ってるでしょ?」

「それはそーですが……」

 

 ジュウベイは王国兵ならば誰もが知る有名人だ。新兵教育機関である騎士団訓練所の教官を長年務めており、更に第三師団の副詞団長までこなしている。名実ともに王国にはなくてはならない存在なのだ。

「でもジュリ母様もしんちゃんには甘いですね。本番の戦は明日なのにファング隊を使っちゃうなんて」

「ん?ファング隊使って何か問題か?」

「だって、いくらあの娘達だって二日連続でなんて獣化できないでしょ?って事は、明日の本番はファング隊抜きって事になるでしょ?」





「…………あ…………」

 義娘の言葉に固まるジュリエッタ母さん。





「あって何ですか、あって!母様!まさか考えて無かったでしょ!!」

「バ、バカな事言うな!まさか考えてないわけないだろ!……う、ロ、ロロイ、なぜそんな目で見る……」

 ジト目でジュリエッタを見つめるウサ耳ロリのロロイ姉さん。

「まぁジュリ母様ならそんな事もあるかもなって思ってましたけど……」

「母様、ファング隊無しで明日大丈夫なんですか?」

「う……で、でもまだ三人残ってるしな!大丈夫だろ!いざとなったら私が暴れればいいんだしな!はははは」


「「ジーーーー」」


「なっ!なんだ二人してその目は!私が暴れればファングなんぞいなくても十分だろ!」


「「ジーーーー」」


「…………う……あ!ほら二人とも、下で動きがあるみたいだぞ、真一郎の勇士をしっかりと見てやらないとな!」

 娘二人の非難の目線に耐えられなくなったジュリエッタは真一郎観察に戻るためそそくさと窓際に陣取ってしまった。


「はぁ……」

 母の後ろ姿を見ながら深いため息をもらすレイラ。

「レイラちゃんも大変ね」

「ロロイ姉様、他人事みたいに言わないでください」

「ふふ、まぁいざとなったら私も戦うから安心して」

「ロロイ姉様に戦って頂くのは、本当に最後の手段ですよ」

 ロロイの耳はウサギだが、獣化の姿が可愛いウサギとは限らないのが獣人だ。仮にも騎士団の精鋭で構成されているの第一師団の副師団長をしているのだ。見た目少女の彼女が並大抵の力では無い事は誰でもわかる。

「レイラちゃん、私も騎士団なんだからね。戦うときは迷わないわよ」

「分かってますって。まぁどーせ母様が暴れればすぐ終わりますし、姉様は気楽に待っててくださいね」

 元々戦う事自体あまり好きではないロロイ。

 彼女を気遣い発したレイラの言葉に、にっこりと笑い「ありがとう」と答えるロロイだった。

「おーい二人とも!早く来い」

「はいはい、さ、姉様も」

「ええ、しんちゃんの勇姿を見ないとね」

 姉妹は楽しそうに、手招きする母の元へと向かったのだった。










「殿下、まだケロ?」

「まだもうちょっと……」

 真一郎は、静かに立ち、目の前に迫り来る敵をじっと見つめていた。次第に近づくその姿は、はっきりと認識できる距離まで来ていた。

(まだ早い……できるだけちかづいてからだ)



「殿下まだケロ?」

「まだ」


「もう来ちゃうケロ」

「あとちょっと」


「もうちょっと」



「…………」



「…………」



「よし、ベッベグ!」

「待ってましたケロ!パクティ!」

「ラジャーケロ!」


「「ランドメイク!ホール!」」


 ベッベグとパクティの掛け声と共に、次々に現れる直径1mほどの穴。

 最前列で走るインセクターの数歩先に空いた穴に、全力で走る彼らも気付きはすれど、急には止まれず、次々と穴にはまっていった。

 更に、前方以外にも、次々とあっちこっちにあく穴のせいであちらこちらで転倒が続き、将棋倒しのように後続も巻き込んでの大事故状態に陥った。



「アイスニードル!」

「サンダーボルト!」

「ファイヤーボール!」

「ウインドカッター!」

「メテオ!」




 追い打ちをかけるべく降り注ぐ魔法攻撃の嵐。氷の礫が、雷が火球が、切り裂く風が、隕石が次々に闇の軍勢にふりそそいだ。

 転倒者続出の彼らは、なすすべなくその攻撃の嵐の餌食となる。



「グギャァァァ」

「ガァァァァァ」

「グオォォォォ」

 

 

 悲痛な叫びとも、咆哮とも取れる声がこだまする中、戦場はみるみる土埃に隠れて行った。

「これは……思ったよりもひどいな……」

 自分で考えた作戦ではあったが、ここまで敵が思うようにはまってくれると思ってなかったため、真一郎の予想以上の戦果を挙げる結果となった。

「殿下、私達の出番はまだですか~?」

 喜々とした表情のファング隊が自分達の出陣を今か今かと待ちわびている。

「んー、まさかこんなうまく行くと思ってなかったもんでさ。ちょっと待ってね、魔法攻撃が収まって向こうがどれくらい残ってるかにもよるからさ」

「殿下のお見事な作戦ですから、私達の出る幕なんてないかもしれませんわね」

 嬉しそうに腕に抱きつくミラ、見た目通りのぱいんぱいんにはさまれた腕をそれとなくはずし、土埃が立ち込める平原側へ目をこらす真一郎。

 


「なんだあれ……」

 収まりつつある土埃の中、ゆっくりとこちらへ歩を進める影がいくつも現れた。しかし、その敵の姿の異様さは、インセクターを始めて見る真一郎の目にも明らかにおかしかった。

「皆……あれって普通なの?」

「まさか……あんなのどう見ても異常ですわ」

 真一郎の目に映るのは、先ほどまでとは違い目を真っ赤に光らせてこちらに歩いてくる一団。

 インセクターも、イプピアーラもオーがも皆が目をルビーの様に真っ赤に光らせ、ゆらゆらとまるで幽霊の様に進む敵。ある者は腕が千切れ、ある者は体の半分以上が焦げている、足が無く這ってきている者までいた。

 魔法攻撃により半数近くが傷を負い、満足に戦闘など出来ぬはずが、自分達の状態などまるで分かって無いように、いや気にしていない様に進む一団。

「まるでゾンビだ……」

「確かに、まるでアンテッドの群れを目の前にしている様ですな」

 ゾーイが言うアンテッドとは、ゾンビやスカル、ゴーストなどと言われるいわゆる死後の生物の姿をした魔獣の事だ。皆さんもゲームなどで知っているこれらは、もれなくフォレイティアス王国でも認識されているのだ。

「誰か、あんな状態の敵見た事ある?」

 真一郎の声に皆首を横に振り答えた。

「さて、どうするケロ?あいつらどう見ても普通じゃないケロ、さっさとトドメ刺しておかないとヤバそうケロよ」

「あっちの状況がどうなってるのか、分からない状態で攻撃するのは危ない気もするけど……今はそんな事いってられないね」

 ゆらゆらとこちらに向かって来る敵は、もう目の前まで迫っていた。

「殿下、とにかくあれを止めないと。私達はいつでも行けますわよ」

 そう言うミラ達はいつでも準備おっけーと言わんばかりに、準備運動なんかしていた。 

「ミラ、それに皆、頼める?」

「もちろんですわ。私達の牙は、今は貴方様の物ですもの」

 真一郎の前に跪き指示を待つファング隊。

「皆ありがとう……それじゃ、ファング隊戦闘準備を!」


「「「ハイッ!!」」」


 掛け声と共に次々と獣化していくミラ達五人。

「すごいなこれ……」


 真一郎の前に現れたのは、黄金色の体毛に九本の尾をはためかせる狐と、真っ赤な巨熊、白く輝く狼に同じく白黒模様の虎、そして一番大きな体躯の黒い山羊。五匹は綺麗に目の前でおすわりをして尻尾をピョコピョコ降っていた。


「えっと……」

 五匹の視線を一身に受ける真一郎。

「皆!出撃!」


「クーン!」

 代表するようにキツネのミラが返事をし、敵に向かって走り去る獣軍団。

 ゆらゆらと歩く集団に、勢いよく飛びかかりその牙で、次々と敵を噛み砕いて行くその姿は獣そのものだ。牙が無い黒山羊は、その角で敵を薙ぎ払い、蹄で敵をつぶしながら進む。

 明らかに優位に見えたファング隊だが、時間がたつにつれその状況は一変してきた。


「……何か変じゃない?」

 噛みついても、蹄で踏みつぶしても、その傷ついた体ですぐに起き上がり、ミラ達の体に群がっていく敵達。最初はすぐに振り払っていた彼女達も、その敵の数に次第に抵抗の力が弱くなってきた。

 次々に群がる集団にミラの黄金色の体毛がどんどん見えなくなっていった。


「ありゃまずいケロ!」

「ミラ!!」

「若殿!拙者が!」

 刀を手に走り出す真一郎を制止しジュウベイが走った。

「右近、左近出番だぞ!」

 ジュウベイが腰に差した二本の刀を解き放つと、刀身に禍々しい魔力を纏う刀達は歓喜の声を挙げる。


「ヒャハハハ!敵敵敵敵敵敵!喰わせろ喰わせろ喰わせろ喰わせろ喰わせろ!!!ジュウベイ!あいつらぜーんぶ喰っちまっていいんだよな!」


 刀から聞こえるその声は、狂ったように笑いながらも、実に楽しそうだ。

「落ち着け右近。今日の敵はインセクターとイプピアーラにオーガだ、間違っても味方は喰らうなよ」

「へへへへ!任せとけって!残らず喰らってやるからよ!」

「右近はん、あんさんあんまジュウベイはんを困らせんとき。ウチらが暴れてこまるんはジュウベイはんなんやさかいなぁ」

 もう一本の刀から聞こえるのは先ほどとは対象的な落ち着き間延びした声。

「ヒヒハハ!かてぇー事言うなよ左近!こちとら狂犬ジュウベイ様だぞ!近付くモンは敵だろうと味方だろうと、喰っちまわねぇと狂犬の名が泣くぜ!」

「ははは、確かに狂犬の名を汚す訳にはいきまへんな。ジュウベイはん、ウチらしっかり敵喰いますさかい、多少味方喰っちまってもご愛嬌って事で」

「拙者が握る手を勝手に動かさなければ問題ない。くれぐれも勝手に動かすなよ」

「へいへい、わーってるって」

「ささ、ジュウベイはん、まいりましょか」


 両手に刀を携え、敵陣へと駆けて行くジュウベイ。奇声を上げながら敵を切り倒すその刀達は、目の前の敵を手当たり斬りまくりながら、その斬った敵の血をすすり力にするという性質を持っていた。

「かー!何だこいつらの血の味は!」

「ほんまや、まずくって吸えたもんじゃないですわ」

「こやつら何か盛られているのか?」

 明らかに普通じゃない敵。少し考えれば、魔法か薬か、とにかく何かでこの状況になっていると分かる。

「あー魔法じゃねぇな。全然魔力とかそっち系の力は感じねぇぞ」

「なんや死体の血すすってるみたいな味ですわ」

「死体の血…………おい、近くにアンテッドの気配はないか?」

「あん?んー……いや、特に感じねぇがな。左近は?」

「ウチも何も感じまへんな」

「そうか……よし、まずはミラ達を助けるのが先か。お前達、血は変でも力になるか?」

「まかせとけ!死体だろーが何だろーが血に変わりわねぇからな!」

「もう少し吸えば力解放できるさかい、それまで頑張ってなジュウベイはん」

「言われんでも、目の前で教え子が殺されるとこなんぞ見たくないからな!」

 さっきまでミラが居た所まで来たジュウベイは、その刀で山の様に群がる敵たちを薙ぎ払う。

「アンテッドなら頭をつぶせばいい。とりあえずその方法を試すぞ!」

「おーよ!」

「はいな!」

 刀を振るい、次々と群がる敵の頭を切り落とすジュウベイ。頭を切り落とされた体はさすがに動くことはなく、バタバタと地面へと倒れて行った。

「ミラ!無事か!」

「キューン……」

 敵の山から現れた狐はすでにボロボロになっており、ジュウベイの姿を確認すると安心したように光に包まれミラの姿へと戻って行った。

「ヒヒヒ、こりゃまた眼福ってやつだな」

「これ右近さん、怪我した女子を見てなんちゅーこと言いますの!ジュウベイはんもぼっけーっとしとらんで、上着でもかけてやりんさい」

 左近に言われ慌てて自分の上着を裸のミラにかけるジュウベイ。

「さて、ひとまず大門まで戻るか……」

 ミラを背中にしょい、大門に目をやったジュウベイだったが、その先にはわらわらと敵が寄ってきていた。

「お前達、しっかり働けよ」

 短く愛刀に檄を飛ばし走り始めるジュウベイ。

「ヒャハハハ!こちとらまだまだ殺したりねぇーんだよ!もっと斬らせろ!」

「まったく右近はんは楽しいそうやね」

 ジュウベイと刀達は、駆けつけた時と同じように奇声を上げながら、大門への道を進むのだった。




「ゾーイ、俺たちも行くよ」

 ジュウベイがミラの元へ駆けたすぐ後、他のファング隊もミラと同じような状況に陥り、真一郎は一番近くの白虎を助けるため走ろうとした。

「殿下はここに、ワタシが行きますので」

 真一郎を止め、戦場へ飛び出すゾーイ。その腕を力強くつかんだ真一郎。

「殿下?」

「ゾーイ、俺決めたんだ。目の前にある自分のできることを精一杯やるって。今は戦う事しかできないけど、その先に俺の望む未来が見えてくるようにね。戦がフォレイティアス 王国の姿なら、それを知った上で変えてかなきゃダメなんだ、だから、だから俺は戦かわないとダメなんだ。

 信念を宿したその目はゾーイが普段知る優しげな青年ではなく、戦う男のものだった。

「殿下……」

「ゾーイ、俺を守ってくれるのは嬉しいけど、これからは俺の前じゃなくて、後ろを守って欲しいんだ」

 自分をしっかりと見つめ、まっすぐな言葉を出す真一郎。


(殿下、何か答えを見つけたようですな……)

 真一郎が、自分がどうすればいいか分からなかった事を、そして戦いを止めたいとも思っている事をゾーイは知っている。しかし、今目の前にいる主君の瞳は何かを見つけ、その何か目的のために、歩き始めようとした物だとすぐに分かった。

「殿下のお気持ちよーく分かりました。殿下がどのような道を切り開くか、ワタシは殿下の背中をお守りしながらしっかりと見させて頂きます」

 その場に跪き、今までの守役ではなく、戦友として仕える事での忠誠を硬く誓ったゾーイ。

「ありがと。さ、行くよ!」

「ハッ!お供します」

 真一郎とゾーイは最前線へと走り出した。






 ジュウベイがミラを救った頃、大門前を観察していたジュリエッタ達も、その戦場の異変に気付いていた。

「スキーリング、状況は分かったか?」

 今いる場所からは門の外は見えないため、現状がはっきり分からない。

「はい、はっきり言ってかなりまずいですよ。インセクターもイプピアーラもオーガも、まるでアンテッドみたいに怪我してもお構いなしに攻めて来てます。おまけに目の色も赤くなってわらわら群がってくる始末。ファング隊もやられたっぽいですよ」

「な!ミラ達がやられたのか!」

 スキーリングの報告を聞き、レイラは思わず立ち上がった。

「幸いミラちゃんはジュウベイ先生が助けてました。他も殿下やフロッグル達が助けに向かったので何とかなると思いますが、状況が怪しすぎますね」

「むぅ。普段しない夜襲に、ゾンビの様な敵軍……やつら一体何を考えてるんだ?」

 ジュリエッタとレイラ、そしてスキーリングが考え込む中、突然部屋のドアがノックされた。


「誰だ?入っていいぞ」

「失礼します!!」

 そこには大慌てのアフリィが居た。

「アフリィ、何かあったか?これ以上はあんま事態をややこしくしたくないんだがな」

「ハァハァ。ジュ、ジュリエッタ様!大変です!平原の空に無数の敵影を確認。まだ姿ははっきり見えてませんが、かなりの数です!ついでにそいつらの後方になにか巨大な物がくっついてくるように移動してます!」

「なにぃ!!」

 それまで冷静を装っていたジュリエッタも思わずその場に立ち上がった。

「ハァハァ。敵の速度は速いです。空の奴らはすぐにでもこちらに到着する勢いです!」

「くそぉ!次から次に何だってんだ!皆、大門に行くぞ!」

 ジュリエッタの声で、まだ座ったままのロロイも腰をあげ、皆が部屋を後にしようと廊下に出た。が、そこには思いもよらぬ先客が居た。


「そんなに慌ててどこいくの?」

 廊下の壁に背中をつけ、腕組みしながらこっちに笑いかける少年。

「小僧、お前だな、まだ捕まってない子供ってのは」

「そうだね。僕以外はみーんな捕まっちゃったからね。ねぇ、せっかく会えたんだ、遊んでよおばちゃん」

「お、おばちゃんだと…… 

 あろう事か、ジュリエッタにむかい禁断の言葉を発した少年。

「母様、ここは私が、母様達は先に大門へ」

 ジュリエッタの前に出ようとしたレイラをジュリエッタ本人が止めた。

「こいつは私が相手をしよう。なーにすぐ終わるさ」

「おばちゃん武器はいいの?」

 素手を構え少年の前に立つジュリエッタ。

「子供相手に武器なんているか!この拳で十分だ」

「はは、甘く見ないでよね!僕はそんなに弱くないよ!」

 言葉より早くその場を動いた少年は、門番を一瞬で切り殺した何かで襲いかかる。

「こんな子供だましきくか!」

 神速のごとき速い何かをがっしりと手で捕まえたジュリエッタ。

「な!離せよ!」

「ふん、離すかバカが」

 ジュリエッタが握っていたのは、少年のおしりのあたりから伸びた長い尻尾だ。鋭くとがった刃物のような先を持つ尻尾を握りしめジュリエッタは続ける。

「小僧、人から与えられた力なんかに頼っても何の役にも立たないぞ。自分を磨けるのは自分だけだ」

「うるさい!僕は特別だってリヴ先生だって言ってたんだ!他の子よりもずっと強いんだから!」

「まったく世間知らずは困るな。いいか、世の中上には上がいるもんなんだよ!」

 そう言って、思いっきり尻尾を引き、少年を自分の方に飛ばしたジュリエッタ。

「うわぁぁ」

 ひっぱられた少年はそのままジュリエッタの元へ飛んできて、強烈なパンチをくらった。

「ぐはっ!」

 パンチをくらい体をくの字に曲げ、少年はそのまま廊下へと落ちた。

「痛いだろ、それが戦うって事だ。痛みを知らない者は強くなれない。痛みを知り、理解し、同じ過ちを繰り返さないために自分を磨くんだ。それが強くなるって事だ」

「くっ……」 

その場にしゃがみ込みながらジュリエッタを睨みつける少年の頭に、誰かの声が響いた。


「…………」

「リヴ先生……うん、こっちは大丈夫。成功だよ」


「…………」

「え?皆もう逝ったの?そっか……」


「…………」

「うん、大丈夫。皆の所に僕も行くよ……」


 何かと会話していた少年は、服から小瓶を取り出し一気に飲み干した。

「おい!お前何してる!」

「ふふ、僕たちの役目は終わったんだって。……もうすぐここに死をまき散らす怪物が来る。おばちゃん達、せいぜい頑張ってね」

 小瓶の液体を飲み干した少年の体は、みるみるうちに黒く変色し、まるで銅像の様に姿を変えて行った。


「バカが!こんな子供に自害させるなんてどんな神経してるんだ!悪趣味にもほどがあるぞ!どっかで見てるなら出てこい!コソコソと子供操って何をたくらんでる!」

 ジュリエッタは見えない敵に向かって罵声の言葉を連呼し、その怒りをぶつけた。

「母様!大門に行きましょう、最後の言葉も気になりますし。他にも敵が来るかもしれません」

「ジュリ母様、レイラちゃんの言う通りです。すぐに大門へ」

「分かってる!スキーリング!砦中の兵を動かすぞ!家で寝てる者も全部たたき起こせ!戦はもう始まってるとな!」

「承知しましたよ」

 ジュリエッタから指示を受けたスキーリングは、廊下に消えて行った。

「私達も行くぞ。さすがにもう真一郎だけには任せておけん!」

「「「はい!」」」

 ジュリエッタを先頭にレイラがロロイがアフリィが全速力で駆けて行く。

 

 

 廊下を走り去る四人を、少年は静かに見送っていた。

(ふふふ、せいぜい頑張ってね。もし今夜勝てても、明日の朝にはもっと絶望できるからね……)


 少年の声はそれっきり、誰にも聞こえなくなった。 





毎度ありがとうございます。

しばらくは戦いが続くと思われます。


砦の構造がわかりにくくないですか?脳内の図を、できたら書いて挿絵にしたいと思ってまーす。

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