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EightPrincessOneBoy  作者: ぽちょむ菌
第一部『真一郎と八人の姫』
22/38

20話 『中央砦への道 その四』

今回のお話、結構シリアス濃いめです。





 扉の中に入り、二人の目に飛び込んで来たのは、真っ白な壁に囲まれた廊下だった。

「なんか病院みたいだね」

「日本の病院はこんな感じなのか?」

「そーだね、こんな感じ」

 長く続く廊下には、いくつかの扉がある。しかし不思議なのは人の気配がまったくしない事だった。

「誰もいないのかな?」

「確かに、人の気配が全然しないな。すくなくともさっきの魚人辺りは居てもいいはずなんだけどな」

 

 二人は肩を並べ、とぼとぼと歩き始めた。

 

「とりあえずどっか開けてみる?」

「そうだな」

 一番近くにあった扉に手をかけ中を恐る恐る覗いてみた。

 本来なら倉庫だったであろうその部屋は、大きな棚がいくつも並んでいたが、いまはほとんど空っぽの状態だ。

「どお思う?」

 棚に残ったわずかな荷物を漁りながら、真一郎はレイラに問いかけた。

「何とも言えないが、どこかに移動した後みたいだな。たしかイプピアーラが、作業が遅れてるだ何だって言ってただろ?ここの荷物を運びだしてたとかじゃないのか?」

「なるほど、そうなると出口が他にもありそうだね」

 真一郎達はまっすぐ川に沿って魚人を追いかけてきた。この場所から荷物を運び出したりしていれば、絶対にすれ違うはずだ。




「出入り口なら三つあるわよ」

「「え?」」




 不意にかかった声に振り返る二人。

 その先には、倉庫の入り口に背中をもたれさせた、メガネで白衣の女性が立っていた。

「フフフ、いらっしゃい若い騎士様。人の家に勝手に入って物色するなんてなかなか悪趣味な方々ね」

 楽しげに笑う彼女は、長い群青色の髪で顔半分を隠していたが、見えている方の顔は白く透き通るようで、メガネの下は切れ長の細いブルーアイが光っていた。

「勝手に入った事は詫びる。我々は王国騎士団第三師団の者だ。できれば貴方の名前と、この施設の所属と用途をお教え願えるか?」

 レイラは精一杯礼儀よく聞いてみた。

「あはっ。そうね、教えて差し上げたいけど、残念ながら無理なの。私は、王国のとある方から依頼された極秘任務を遂行中よ。いくら騎士団様でも首を突っ込まない方が身のためよ」

「ほう、王国側の人物からの依頼と?」

「ええ、だから私は敵じゃないわ」

「でも、闇の軍勢の魚人がここに入るのを見たんですが」

 それまで黙っていた真一郎の言葉に、彼女は微笑みながら答えた。

「その辺りの話も極秘事項なの。でも安心して、私は王国の味方ですから。そうだ、せっかくだからちょっと見学して行く?引っ越し中でほとんど運び出した後だけど、多少は残ってる物もありますからね」

 そう言ってスタスタと倉庫を出る白衣の女性。


「怪しいな……」

「確かに、でも今はとりあえず従って見学させてもらおう。何かヤバいのがあったら、ジュリエッタ母さんに報告して色々調べてもらおう」

「そうだな。とりあえずはここがどんな施設か調べないとな」


 二人は白衣の女性を追いかけて倉庫を後にした。






「さて、お二人様。この先には今回の引っ越しに連れて行けない、廃棄処分の子達がいるわ」

 楽しげに説明する彼女。場所は先ほどの廊下をまっすぐ進み、突き当りの大きな扉だ。

(廃棄処分の子達……?)

 怪訝な顔の二人をよそに、彼女は扉を開けた。



「なんだこれ……」

 真一郎が目にしたのは、廊下の両側に牢屋のようなものが並んだ廊下の延長とも部屋とも言える場所だった。

 簡単な鉄の格子で、部屋として成り立っているそれは合計四部屋。しかし異様なのはその中にいる者達の姿だった。

「おい!この子供達は何だ!お前達ここで一体何をしてたんだ!」

 声を荒げるレイラ。

 牢屋の中には、大勢の子供が居た。みな粗末な服に身を包み、やせ細り、すすり泣き、絶望感が漂う空間は、誰が見ても悲惨な状況だと一目で分かった。

「そんなに怒らないで、この子達は失敗作よ。人体改造には耐えれたけど、心を捨てる事を拒んだ哀れな子達」

 不気味な笑いを浮かべ彼女は続ける。

「誤解してるみたいだけど、人体改造は王国が、昔から密かに続けてきたことよ。しばらくは封印されてたけど、私の主が王国のためにそれを復活させたの。強い兵を造るためには多少の犠牲は仕方ないわよね」






「ふざけるな!すぐにこの子供達を解放しろ!」

「それは無理な相談ね。彼らはこの施設で行われた実験の貴重なサンプルよ。こちらで廃棄するならいいけど、世に出す訳にはいかないわね」

「俺達には見せても平気なの?」

「フフフ、だって貴方達はここから出れないんですもの」

「なんだと!?」

 その瞬間、ガシャーンと大きな音をたててさっき通ってきた廊下に壁が現れ、退路を断たれた二人。

「そんな事して、貴方も出れないでしょ?」

 真一郎は自分でも驚くほど冷静だ。周りのあまりにも悲惨な状況に、牢屋に目を向ける事が出来ないほどだが、彼女には問いたださなくてはならない事がある。それらを全て聞くまでは冷静さを失ってはならないと自分に言い聞かせていた。

「フフフフ、私の心配までしてくれるなんて、やっぱり殿下はお優しいわね」

(まずい!真一郎の素性がバレてる!)

 レイラは焦った。真一郎の能力はもはや王国中が知るもの。こんなろくでもない研究をしてる連中からみれば、のどから手が出るほど欲しい能力のはずだからだ。

「安心して、私はすぐにここを去るから。でもあなた方はこの子供達と遊んであげて。しばらくごはんをあげてないから、空腹で襲ってくるかも知れないけど、頑張って頂戴ね」

 彼女はその場で手をパチンと鳴らした。それと同時に崩れ落ちた牢屋の鉄格子。

「そうだ、お優しい殿下に一つだけサービスよ。この子達か殿下たち、どちらかが生き残ったら奥の扉を開けてあげる。そこから進めば外にでれるわ。それじゃ、殿下と姫様ご機嫌よう。また会う機会がある事を願ってるわ」

「待て!」

 レイラはつかみかかろうとしたが、彼女の姿はいつの間にか現れた影に消えて行った。







「みんな、大丈夫?」

 牢屋が開け放たれてもなお、誰一人としてその場から動こうとせず、うずくまったり座ったりしている子供たちに真一郎とレイラは必死に語りかけた。


「お母さん……」


「痛いよぉ……」


「助けて……」 


「お腹へったよぉ……」

 

 子供達から聞こえる悲痛な叫び。


 真一郎は、床に横たわる少女を起こして語りかける。

「もう大丈夫だよ。家に帰ろうね」

「本当に?」

「あぁ、俺達が必ずみんなをお父さんやお母さんの所にかえしてあげるから」

「おにいちゃんありがとう……おにいちゃんとってもいい匂いがするね……」

「そう?」

「うん……とっても美味しそう……」

 その瞬間、真一郎の腕の中の少女の顎が二つに割れ顔の下半分が巨大な口へと変貌した。

「なっ!」

 すぐにのけぞり少女から離れた真一郎。

「真一郎!大丈夫か!?」

 すこし離れたところにいたレイラが異変に気づきすぐによってきた。

「ああ、でもあの子……」

 目の前の少女は巨大な口をあけ、二人にじわじわと歩み寄ってきた。

「何で逃げるの?私達を助けてくれるんでしょ?だったら食べさせて、お腹へって死にそうなの……」


「まずいな、完全に正気を失ってるぞ」

 少女から距離を取りながら、周りの子供たちを確認すると、他の子供達もみな真一郎とレイラをじっと見つめていた。




「ボクも、おにいちゃん達を食べたいな」

 一人の少年がそう言って、自分の腕を体には不釣り合いな巨大な物へと変化させた。



「わたしも……」

 少女の背中からは、いくつもの虫の足が生えてきていた。



「食べさせて……」

 一人



「食べさせて……」

 また一人 



「食べさせて……」

 次々に変化していく子供達。



「食べさせて……」

 その言葉がまるで伝染病の様に、全ての子供達を狂わせていく。





「真一郎、覚悟を決めろ」

 横で剣を構えるレイラ。

「レイラ!ダメだよ!相手は子供だよ!殺しちゃダメだ!」

「戦わなければこっちが殺られるぞ!」

「で、でも……」

 目の前に居るのは異形の姿の子供達。その瞳はすでに生者の光を失っている者も居た。

「……俺は、できない……」

「だったらそこで大人しくしていろ!私が全部かたずける!」

 そういって子供達の中へ駆けて行くレイラ。

 彼女が振るうのは愛用の双剣。風きり音と共に、子供たちを次々に斬り殺していく。



「くそぉぉぉぉぉ!」

 半ばやけくそに剣を振るう彼女の眼から、涙があふれているのを真一郎は確かに見た。

「レイラ……」

 その姿を見てなお、その場に立ち尽くすことしかできない真一郎。


「おにいちゃん……」

 

 不意に背後からかかった声。振り向けば先ほどの少女が居た。


「お願い、私を殺して。じゃないとおにいちゃんを食べちゃうから……」


「っ!!!そ、そんな事できないよ……」


「おにいちゃん優しいんだね。でもね私もう疲れたの。はやく楽になりたいの」


「でも、だからって君を殺せない……」


「おにいちゃん泣いてるの?私のために?」



 気付けば真一郎は泣いていた。

 彼女達の不憫さに、自分の不甲斐なさに、こんな事をした者への怒りに、何よりも、こんな少女が、自分を殺せと言ったその言葉の重みに。



「男の子なんだから泣いちゃダメなんだよ。さ、早く殺して。じゃないと私、また自分が自分じゃなくなっちゃうから」


「ごめん、ごめんね……何もしてあげられなくてごめんね……」


「いいんだ。おにいちゃんに会えて、私うれしいいから。このまま、嬉しいまま死なせて」



 今、自分に出来る事は、彼女の望みをかなえてやる事だけだ……

 静かに少女の元へ歩み寄り、彼女をそっと抱き寄せた真一郎。

 

 そして、手に持った刀を静かに彼女の腹部へと沈めた。



「っぅぅ。変だな……あんまり痛くないや……」

 

 腹部から大量の血を流す彼女を、しっかりと抱きしめた真一郎。


「おにいちゃん、そんなにしたら服が血で汚れちゃうよ……」


「いいんだ、そんなの気にしないで。このまま君が眠るまで、俺がそばにいるから……」


「おにいちゃん、ありがとう……あれ?変だな、なんか涙が止まらない……」


 少女は真一郎の腕の中で泣いた。

 ここに連れてこられ、体をいじられ、とっくに枯れ果てたはずの涙は止まる事なくあふれ続ける。


「うぅっぅぇぇぇぇぇん。やっぱ死ぬの怖いよぉぉぉぉ」


「ごめんね……ごめん……」



 泣き続ける彼女を抱きながら、ただただ、ごめんしか言えない真一郎。

 



 ……やがて泣き声も小さくなり、彼女は静かに眠りについた。





「真一郎……大丈夫か?」

「……ああ、大丈夫」


 気が付けば、レイラは全ての子供を殺していた。

 空腹と無理な実験で衰弱していた彼らは、ほとんど抵抗もなく、眠りについていった。



「レイラ……行こう……」

「あぁ……」



 二人は無数に転がる子供達の中を歩く。






 入ってきたのとは反対の廊下は、扉になっていた。その扉に手をかけ二人で力いっぱい押すと、案外簡単に開くことができた。


 そこは広いグラウンドの様な空間だった。

 高い天井に地面は土。地下のはずなのに魔法のせいかとても明るかった。


「……なんだあれ?」


 そのグラウンドの先には何かが居た。

 離れて見ても巨大なその体は、こちらに背中をむけ、地面に腰かけて、何かを一生懸命食べているようだった。

「レイラ、あれって……」

 巨体の、足元に見える何かの死骸を見た真一郎は、愕然とした。


 真一郎に言われ、目をこらして見たレイラの目には、変わり果てたディラノ達の姿が映った。

 更にヤツの周りには、ディラノ達が付けていた装飾が散らばっている。

「あの化け物め!ディラノ達を食ってるのか!?」


 レイラの声に答える様に、ゆっくりとこちらに振り返った怪物の顔は、異様そのものだった。

 一見ヒトの顔の様だが、その口元は大きく歪み、血が滴り落ちるきょうあくな牙が見えた。顔の中央には六つのむき出しの眼球があり、ひっきりなしに動きながらこちらを観察していた。



 二人を見据え、ゆっくりと立ち上がる怪物。

 その背丈はおそらく5m以上あるだろう。

「なんだあの姿は……」

 王国騎士団として、多少は戦の経験があるレイラだったが、こんな怪物は見た事がない。



 怪物には六本の腕があった。

 それが元々全く別の生物の物だと、誰が見ても一瞬でわかるほど不自然な腕だ。


 肩の辺りから出ている一対の腕は、見るからに強固な黒い外骨格で覆われた鋏だ。その外見は蟹のそれよりも蠍の物の様な見た目だ。


 真ん中の一対は一見普通の人の腕のようだが、その指は四本しかなく、それが特徴の巨人族の物だ。


 最後に一番下の腕は、真っ黒な体毛に覆われた獣の腕。指先には、獲物を絶対に逃さないであろう鋭い爪がついていた。


「グォォォォォ!!!」

 真一郎達を睨みつけ、咆哮をあげる怪物。



「来るぞ!」

 レイラの声が真一郎に届いた時にはすでに、怪物が目の前まで迫っていた。

「早い!真一郎!よけろ!!」


 あまりの早さに真一郎は対応できていない。

 怪物の獣の爪が正確に真一郎を捉え、彼の腹をえぐった。そのまま後ろの壁まで飛ばされた真一郎。

「真一郎!!」

 すぐさま駆けつけたレイラだったが、普通なら絶望的な状況だ。

「うぅ、いてぇ~……」

「大丈夫なのか!?」

「ああ、なんとかね。さすが母さんの服。でも衝撃は吸収してくれないや」

 香織作の服は獣の爪さえも通さなかった。壁にぶつかった際の衝撃も多少は和らいでいるが、それでも真一郎の体へのダメージは大きかった。



「グォォォ!!」

 真一郎の無事を知り、再度咆哮をあげる怪物。

「お前は下がってろ」

 レイラは今だ痛みで座り込む真一郎を背に、怪物と向かい合った。



「ふー」

 呼吸を整え、魔法を詠唱した。


「我は求める、汝は答えよ」


「我の敵を斬り捨て、全てを無に還せ」


「こい!NightmareSword!」


 レイラの声に答え、十三個の魔法陣が彼女を取り囲み、その一つ一つから現れたのは真っ黒な剣だった。

「切り刻め!」

 レイラの号令と共に放たれる黒剣。空中を滑る様に駆け真っ直ぐに怪物に向かって行った。

 怪物はその黒剣を目で追ってはいるが、動こうとはしない。

 十三本の黒剣が次々と怪物に降り注ぐ。怪物は、肩から生えた鋏の腕で難なくそれを防いだ。

「ガキンガキン」と鈍い金属音を上げてその全てが弾かれる黒剣。


「なんだと……」

 レイラ自身の中で、最も得意で攻撃力のある攻撃をいとも簡単に弾かれてしまったのだ。


「あの腕を何とかしないとマトモに攻撃が通らないか……」

 レイラは冷静に敵を分析した。自身の攻撃が弾かれた事は忘れ、相手の弱点を探すことに専念していた。

 しかし、怪物はそんなレイラをあざ笑うかのように攻撃体制に入った。


「な!まさか魔法だと!!」


 ブツブツと何かつぶやくと、真ん中の腕に刻まれたタトゥーが鈍く輝き、怪物の頭上には無数の火球が現れた。


「グルゥァァァ!」


 咆哮と共に放たれる無数の火球。


「ちぃ!」

 十三本の剣と自身が持つ剣で火球をさばくが、数が多すぎて何発かは当たってしまった。

「レイラ!!!」

「真一郎!お前は動くな!」


 治癒魔法が効かない真一郎は、わずかな怪我でも命取りになりかねない。それを知るレイラは、決して彼を戦わせようとはしなかった。


「デカブツ、もう終わりか!!」

 服のあちこちを焦がしながらも、ヨロヨロと立つ上がるレイラ。


「グルゥァァ!」


 レイラのその姿が気に入らないのか、さっきよりも大量の火球を出現させた怪物。

 息つく暇もなくその火球を全てレイラへ向けて発射した。


「くそっ!」

 さっきの攻撃で足をやられた。

 このままでは上手くよけられず、全てが自分に降り注ぐ。

 そしてその火球が目の前まで迫った時レイラの前に真一郎が現れた。

「バカ!どけ!」

「魔法だったら俺が何とかする!」

 そう言って両手を広げ、迫り来る火球を無防備な姿で受け止めた真一郎。

 降り注ぐ火球は、彼の能力により次々に無に帰ったのだった。



「!!!」

 驚愕の表情の怪物。

 しかし、見た目によらず頭の回転が早いらしく、すぐさま真一郎目掛けて走り出した。



「真一郎、逃げろ!」

「今俺が逃げたらレイラはどおなる!やれるだけはやってやるさ!」


 向かってくる怪物に対し刀を抜き、静かにかまえる。


「グォォォォォ!!」


 咆哮と共に迫り来る獣の腕。

 下からの攻撃を横っ飛びでかわし、その腕に刀を突き立てた。

 しかし、その獣の剛毛のせいか、刀は弾かれてしまった。

「こっちもこんなに硬いのかよ!」

 弾かれた刀を持ち直し、「だったら!」と、今度は怪物の足元に向かって行く真一郎。

 獣の腕をかわし、目の前に現れた挟の腕をかわそうとした瞬間、両側からいきなり現れた腕に捕まってしまった。

「ぐあぁっ」

「真一郎!!!」


 足を引きずり近づくレイラに容赦無く獣の腕が襲いかかる。

「くそ!邪魔だ!!」

 レイラがいくら真一郎に近づこうとしても、それを許さない怪物の腕。

 全ての腕が、まるで個別に意思を持っているかのごとく、容赦無くレイラを襲う。




「がぁぁぁ!!」

 ギチギチと、自身の骨がきしむ音を聞きながら、真一郎は全身に走る激痛に顔を歪めた。

 目の前に映るのは怪物の実に楽しそうな顔。

(くそぉ……こんなとこじゃ俺は死ねない!)

「うおぉぉぉぉ!」

 必死の抵抗とばかりにもがく真一郎。そのせいか、さっきよりもより強く握られた。

「がぁぁぁ!」

(さすがにヤバイぞ……もうダメなのか……)

 

 抵抗を諦めれば、ある意味楽になれる。痛みのあまり弱気になってきた真一郎、レイラの自分を呼ぶ叫びもだんだんと聞こえなくなってきた。

(俺、死ぬのか……母さんゴメン……)

 一瞬母の顔が浮かび、何とも言えぬ罪悪感に襲われていた真一郎へ、どこからともなく声がかかった。




「諦めちゃダメよ!」




(…………え?)

 聞き覚えのあるその声。しかし、この場では決して聞こえるはずがない声だ。




「諦めたらそこで試合終了よ!」




 今度こそしっかりと響いた声。

 次の瞬間、真一郎の腕がものすごい光を発した。


「ウギャァァ!」

 その光の熱に掌を焼かれ、怪物は真一郎を離し後退した。


 地面に落とされた真一郎に駆け寄るレイラ。

「真一郎!大丈夫か!?」

「う……な、なんとか。でもこれ……」


 真一郎の腕にあるブレスレットからは、眩い光が溢れていた。


「母さんがくれたブレスレット……」


 止めどなく溢れる光は、やがて一つの光輝く金色の魔法陣へと姿を変えた。


「これは、召喚魔法陣?」


 レイラの言葉に答えるように、周囲を照らす光を発した魔法陣からゆっくりとヒトの姿が現れた。


「なっ!」

「あれは……」





「呼ばれて、飛び出てじゃじゃじゃじゃ~ん!」





 その場の空気を一変させた、能天気な掛け声と共に現れたのはワンピース姿の女性。



「か、母さん!?」



 彼女こそ、フォレイティアス王国最強戦力。

 

 銀翼の魔女

 佐山香織その人だった。






今回もお読みいただきありがとうございます!

母さん出てきちゃったよw


さて次回の「はちぷり」は!

ついにベールを脱ぐ王国最強の力!ってかどーやって来たんだ母さん!


次回もご愛読よろしくお願いします!

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