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EightPrincessOneBoy  作者: ぽちょむ菌
第一部『真一郎と八人の姫』
17/38

15話 『姉さん怖いです』

どーもです!

最近仕事が忙しくて全然書けなかった!(+_+)

 

投稿ペース落ちるかもですが、これからもよろしくお願いします!





「イミナス!今回の失敗どうしてくれるんだ!」

 王都内のとある貴族邸にてイミナスはその館の主人へ今回の報告をしていたが、どうやら彼はかなりご立腹らしい。

「大丈夫ですよ、シルトレイ卿。今回の失敗は私の詰めの甘さが原因ですから、マスターから責めを負うのは私でしょうしね」

 自分に怒鳴り散らす初老の貴族をなだめるようにイミナスが言った。

「お主の事などどうでもよいわ!問題はカポネロ達が捕まった事だ!あれがもしワシの事を喋ればお前達とて危うくなるのだぞ!」

「あぁ、その点でしたらご心配なく。すでに手を打ってあるので問題ありません」

「本当だろうな?」

 疑り深くイミナスを睨むシルトレイ。

「ええ、よく言うじゃないですか。死人に口無しとね」

 包帯で隠れているイミナスは、明らかに笑っていた。

「そ、それはまさか殺したという事か?」

「その辺はあまりお聞きにならない方が得策かとおもいますよ」

「そ、そうか、だったらいいんだ。相変わらず仕事が早いな」

 そう言いながらシルトレイはドサっと音を立ててソファーに腰掛け、イミナスは彼の前で姿勢を崩すことなく続けた。

「貴方を失うのは我々としても痛手ですのでね」

 そう言いながらチラッと時計を見たイミナス。すでに時刻は夜の八時を過ぎていた。

「さて、報告もすみましたので私はこれで。しばらくは砦遠征で忙しくなりそうですし、また進展がありましたらご報告にうかがいますね」

(相変わらず不気味な奴だ。腹の中がさっぱり探れんわ……)

 部屋を出るイミナスをシルトレイは無言で見送った。


 イミナスがシルトレイ邸から出てくると、出迎えるかように一匹のコウモリが飛んできた。

「おや、サクヤの使いですか?」

「ショウシューショウシュー」

 イミナスの頭上をくるくると周りながらコウモリがかすれた声を出していた。

「ふむ、次の任務ですかね。場所はいつもの館ですか?」

「イツモノーイツモノー」

 そう言って飛び去ってゆくコウモリを見送り、イミナスは裏道へと消えて行った。







 カポーーン



「あぁぁぁぁきもちぃぃぃぃ」

 王宮内の王族専用の大浴場。綺麗なタイル張りの床にまるで温泉宿の温泉の様な、大人が二十人以上入れそうな浴槽、その浴槽に湯を流しいれるライオンの像。

 スーパー銭湯を独り占めするような状況で真一郎は疲れ切った体を伸ばし、長く濃密だった今日一日を振り返っていた。

(今日は色々ありすぎたなぁ。ヴィラントはなんとか大丈夫みたいだけど、砦行きはヴィラント無しか。まぁあんまり前線に出なきゃ大丈夫だとは思うけど、いざ戦場へってなるとやっぱり乗り気はしないよなぁ)

 

 イミナスとの戦いの後、急いで王宮へ運ばれたヴィラントは、王国でも最高の癒し手であるシャールイの魔法での治療を受けた。姉の話では、脇腹の傷はすぐに塞がり治癒できたものの、体内に入り込んだ毒は体の奥深くまで染み込み、解毒の魔法では取り出す事が出来なかったと言う。

「毒が強力過ぎて魔法では無理なの。幸いヴィラントにはドラゴンの超回復の力が備わっているから、彼の生命力に賭けて、彼自身が毒を体内で分解するのを待つしかないわね。しばらくは体力を全て解毒と、毒に侵された肉体の回復に回すと思うから、眠り続ける事になると思うけど心配ないわ。」

 そう教えてくれたシャールイだったが、あの苦しみを目の前で見ていた真一郎にはとても大丈夫には思えなかった。

(俺が勝手に王都散策なんてしたから、こうなったようなもんだしなぁ……)

 城に帰った真一郎を誰一人として攻めなかった。誰かが「お前のせいでヴィラントは傷をおった!」と言ってくれた方が、逆に気持ちが楽な気がした。

(はぁ、みんなして俺が無事でよかった、ヴィラントよくやった!だもんなぁ。嬉しいっちゃ嬉しいけど過保護すぎるっていうか、なんか、俺一人じゃ何もできないって、言われてるような気がするんだよねぇ)

 実際この王国で真一郎が独立することは不可能だろう。まずできる事がないのだ。手に職があるわけでもなく、魔法が使えるわけでもない。一般人の中ではそこそこ強い方かもしれないが、しっかりと鍛錬をつんだ騎士団などには到底かなわないだろう。

(俺、何しにここに来たんだろ……)

 日本からこちらへ来るときは胸が躍っていた。こっちに来れば何かあると思っていた。最近になり王族として生きいく覚悟みたいなものが出来た気がしてたが、目の前で自分を庇って傷ついた人がいて、初めて自分が守られてここに居ると思った。自分は一人では何もできないのかもしれないと思ったのだ。

 しかし、戦は待ってはくれない。王族として生きると決めた以上、民を守るために避けては通れぬ道なのだ。沢山の生死を目の前で目撃する事になるだろう。これまで日本で、生死なんてものにこれっぽちも触れていなかった真一郎は、戦場で冷静でいられるのか、誰か知り合いの兵が傷つかないか、そんな事ばかり考えていた。

(あぁぁぁぁ~。なんで戦なんてあるんだろ。みんなで仲良くしてりゃそれでいいじゃんね)

 日本人の若者は戦争を知らない。自分の国の中に外国人がいても特に気にしない。決まった宗教を持つ人も少なく、逆に多種多様な宗教の行事を当たり前のようにこなしている。

 そんな彼らからすれば、土地や宗教、意見の違いで戦争をするなんてとても考えられないはずだ。

 平和ボケと言えばそうだが、その平和ボケこそが日本のこれからを考えていく上で大切な気がする。 真一郎も例外なくその平和ボケした日本人なのだ。闇の軍勢は残虐非道で王国の土地を犯してくる侵略者だ。皆の話をきいてそれは分かるが、話あった事があるのだろうか?なければなぜその場を設けないのかなどと考え初めてしまうくらいだ。

(ハイクラスは普通に会話もできるし知能も高いって聞いたしな。できればそのハイクラスと話して友好条約とかむすべれば一番なんだけどなぁ。誰だって戦争なんてしたくないはずなのに……)

 真一郎の中で少しずつパズルが出来上がるように、自分の目指す王族としての仕事がわかりつつあった。

 覚悟はできたつもりだ、だが自分がどのような王族になるべきか、できれば他国や闇の軍勢とも戦争なんてしないですむ方法を考えたくなってきた。今までの王が一度も至らなかった平和への新しい道。 そしてそれは平和ボケした日本人だからこそできる発想だったが、当の本人は(なんで今までの王様は話し合いとかしてなかったんだろ?)などと、自分の考えが、王国には発想自体ありえない考えだと気付きはしなかった。









「真一郎、一緒にいいか?」

「へ?」

 真一郎が自問自答を繰り返し、目指すべき王族像を固めつつあった時、脱衣所から聞きなれた姉の声がした。

「なっ!!!!ちょっとまってすぐ出るから!」」

「別にそんな急いで逃げなくてもいいだろう。たまには姉弟仲良く風呂もいいだろ?」

 そう言いながら入り口から入ってきたのは一糸まとわぬ全裸の国王代理。小柄な体型ながら出るとこはちゃんと出ていた。

 そしてその後ろから黒髪が目までかかっている、白い裸体の幽霊みたいな姉までやってきた。長身でスレンダーなその体は余分な贅肉などなく、いわゆるモデル体型だった。全裸でスタスタと歩いてくる国王代理の姉とタオルを体の前にかけている幽霊みたいな姉。

 二人の姿を顔の前に桶をかざし見ないようにしながら真一郎は浴槽を出ようとしたが、ここから出て脱衣所へ行くにはあの姉達とすれ違わなければならない。それはそれで恥ずかしく、風呂からでるタイミングを完全に失ってしまった。

「なんだ恥ずかしいのか?」

 思いっきり困った真一郎を見て楽しんでる姿は、娘をからかって遊ぶ母にそっくりだった。

「いや、さすがにお風呂はまずいって」

「なにがまずいんだ?姉弟で裸の付き合いもいいじゃないか!自慢じゃないが、私は風呂は必ず姉上と一緒だぞ」

 エッヘン!と言いたそうに浴槽の淵で全裸で仁王立ちをかますジゼル。

「ジゼルは髪洗ってくれるのが一番うまいから」

 クレイルも真一郎に裸を見られるのが全然平気なように、静かに浴槽に沈んできて「ジゼル、風邪ひくよ」などといって妹を浴槽へと誘っていた。

「姉上、まずは体を洗ってからですよ」

 そう言いながら洗い場にスタスタ歩いて行くジゼルを「そーだった」などとつぶやきながらクレイルが追って行った。



「そう言えば、あのサクラとか言う娘も大丈夫だとシャールイ姉様が言ってたぞ」

 クレイルの髪をごしごしと洗いながらジゼルが教えてくれた。

「うん。俺もさっきシルフォーネ母さんに聞いたよ。サクラさん、俺を助けに来てくれてあんな怪我させられたんだ。治るまでここで治療してて良いって母さん達も言ってたみたいだし、何かお礼しなきゃな」

「真一郎、お前って本当に罪な男だな」

「へ?何それ?」

「あのサクラって娘は、お前を心配して、獣化までして助けに来たんだぞ。そこんとこちゃんと考えてやれよ。王国では側室に特に制限はないからな、私達姉妹もお前を想う娘なら大歓迎だぞ」

「な、何を言っているのですかねお姉さま?」

 二人がいる洗い場へ背中を向けたまま、姉の言っている意味が分かるような分かりたくないような真一郎。

「あ~でもレイラ辺りは嫉妬するかもな。サクラとかいう娘、いい身体してたからなぁ。レイラは結構自分の体形がコンプレックスらしいから、その辺のフォローはちゃんとしとけよ?」

「イヤイヤイヤイヤ。なんか話がとんでもない方向行ってるけど。だいたいこないだの結婚話だって皆ふざけてただけでしょ?」

 真一郎君は他のハーレム主人公同様鈍感なんです。

「私はふざけてなかったよ」

 ジゼルに髪を洗ってもらいザバーっとお湯で流してもらったクレイルはタオルで顔を拭きながら小さな声で答えた。

「私も別にふざけてなかったぞ?まさかお前、あれだけの事を言っておいて今更結婚しないなんてのはなしだぞ?」

「あれだけの事って?」

「しんちゃんは王国から日本に行く時に『次に帰ってきたらみんなをお嫁さんにしてあげる!』って言って行ったのよ。覚えてないの?」

「ナンデスッテ……」

「前に母様達がレイラとの話をしてただろ?あれには続きがあって、お前、私達姉妹全員に結婚しようって言ってたんだぞ。ミーとクーとチャーリーはおまけみたいなもんだが、私達は嫁に貰ってもらう気まんまんだぞ?」

「何であの結婚どーとかの話の時に教えてくれなかったの?俺てっきりみんなふざけてるんだと。それに子供の頃の約束なんて……」

「しんちゃん。女の子の一途な想いを裏切るような男にはならないでね」

「そーだそーだ」

 めずらしくイタズラっぽい笑顔のクレイルに賛同してそーだそーだとふざけるジゼル(やっぱりジゼル姉さんはジュリエッタ母さんの娘だ……)母にそっくりなあの笑顔。レイラの気持ちが初めて分かった真一郎だった。



「で、難しい顔して唸って、何を考えてたんだ?」

 二人は体を洗い、真一郎と並ぶように浴槽に肩まで沈んでいた。

「え?見てたの?」

「ああ。真一郎が居ることに服を脱いでから気付いてな。しばらく入ろうかどうするかと観察しながら考えてたんだ。しかし姉上が寒いと言いだしので入ってきてしまったのさ」

(だったらその時そのまま服着て出直してよ……)

 言いたかったが、絶対に反撃されるので言わなかった。

「で、何を考えてたんだ?どーせヴィラントの怪我は俺のせいだとか、砦遠征怖いなとかだろ?」

 ニカっと笑いながら横からつついてくる姉。

「ん~ヴィラントの事も確かに考えたけど、正直さ、なんで戦するのか分からないんだよね」

「何を言ってるんだ?あいつらが攻めてくるから防衛してるだけじゃないか」

 当たり前の様に言い返すジゼル。真一郎だってそれくらい分かってるんだ。

「それはそうなんだけどね。あっちにもあっちの理由があるのかなってさ。ハイクラスって結構頭いいんでしょ?だったら一回くら話合ってお互いどうすればいいかとか考えられないかなぁって」

「お前……それはちょっとお人よしすぎるぞ。奴らはこの王国の土地を奪うために来るんだ。領地を奪われ民が苦しめられてるのにのんきに話合いなどできるか?」

「そもそも、そんなに領地広げてどーすんの?」

「なっ……あのな、領地が広がれば畑や放牧をして、そこに人が集まり村や町を造る。新しい土地を開拓してどんどん広がって、そうやって国は大きくなるんだぞ」

「それ、たぶん闇の軍勢も同じ事をしてるだけなんだよ」

「それは違うぞ!奴らは侵略者だ、我らの土地と民を傷つける悪なんだ」

「善悪の区別なんて、立ってる場所が違えば全然意味が違ってくるよ。我らの土地って言ったって、実際ここが王国の土地だって主張してるのは王国と周辺国だけでしょ?たぶん闇の軍勢からしたら、俺たち王国の方が彼らの土地をうばった侵略者なのかもよ」


「!!!」

 真一郎の発言にジゼルは驚きと怒りのいりまざった不思議な感情に襲われた。

「しんちゃんのいう事も一理ある。けど戦はもう始まってしまった。何年も何十年も何百年も続いてるこの戦を止めるのはそんなに簡単じゃないよ?しんちゃんはそれでも止めたいと思うの?」

「うん。ジゼル姉さんの言葉で今はっきり分かった。俺はこの戦いを止めたい。どんなに時間がかかっても、俺は平和な王国をつくりたい!」

「しんちゃんがそれを望むなら、私たちは応援するわ。でもその話、他の子達にはしばらく黙ってた方がいい。特にお母様達は長年戦い続けてきたの、今更和平なんて絶対反対するわ。でもしんちゃが自分で行動をおこして何か変わってくればお母様達だってきっと納得してくれるはずよ」

「クレイル姉さんありがと、そうだね。とりあえずもっと色々と準備とかしてから他の人には報告しようかな。まぁはっきり言って何すればいいかなんて全然分からないけどね」

 はははと笑う真一郎。その隣でジゼルは必死に考えていた。


(真一郎のいう事も一理あるのか?そもそも奴らが王国に攻めてき始めた理由もはっきりわからないんだよな。歴史書にも詳しくは書いてないし。もし王国側に何かしらの非があったならば我等が信じてきた正義は何だったんだ………まったく!真一郎が来てから余計な事ばかり考えなっくちゃいけなくなったぞ!)

「ジゼル姉さん、姉さんをちゃんと納得させることは今は無理かもしれないけど、俺頑張って分かってもらえるように努力するよ」

「ふむ。正直今までの考えをここまで否定されると、どうしていいか分からなくなるな。しかしお前の考えも一理あるのかもしれない。あくまでかもだがな。その上でお前がお前なりの戦の解決策を見つけたら、是非教えてくれ。王国のためになるなら私は喜んで協力するからな」



「ありがとう姉さん。……それとなんでそんな近いの?」

 気が付けばジゼルは真一郎の真横にぴったりとくっついていた。

「いや、お前がなんだか大人に見えたのでな。他の姉妹に先をこされぬようちょっと積極的になろうかと……」

 顔を赤らめて頬に手をやり「いっちゃった」などとささやく姉。

「いやいや、てゆーかこの話の流れでよくそんな発想できるね……」

「それは褒めてるんだよな?フォレイティアス国民はあまり深く考えず悩まないのが長所だ。お前の考えはそれはそれ、そんな立派になりつつあるお前に想いを伝えるのはこれはこれ。つまりそうゆう事だ」

「……えーっとそんなもんなの……?」

「そんなもんだ」

 姉がぴったりとくっついた右側。

(ヤバいヤバいヤバい!この状況はヤバいぞ!どーしよう……できれば逃げたいんだけどなぁ。なんか嫌な予感しかしないんだけど……)

「しんちゃん、私も仲間に入れて」

 困り果てた真一郎。ジゼルとは反対側にクレイルがくっついてきた。

「いや、ちょ……」

「私もしんちゃんおお嫁さんになるんだから。公平にあつかってね」

 そう言いながらこっちもぴったりとくっついてきた。両腕を裸の姉にだきつかれ中央で困り果てる真一郎。

 

 この状況、やっぱり神様は見逃さなかったらしい。

「ジゼル姉様とクレイル姉様~私も入ってもいいですか~?」

(な!!!!!やっぱりこのパターンか!)

 扉を開けて入ってきたのは全裸のレイラ。湯気で曇っておりこちらを確認できない様子で、目を細めながらこちらに近づいてきた。

「おーレイラか、いいぞいいぞ一緒に入ろうな」

 ニヤニヤしながら手招きするジゼル。

「ちょ!ジゼル姉さん、クレイル姉さんもとりあえず離して!これはまずいから!」

 小声で訴える真一郎だったが、姉二人にがっちりと腕をつかまれ身動きとれない状態になっていた。

「ふぅ、まったく真一郎が報告した極龍会とかってのを捕まえに行ってましたが、やつら思いっきり逃げちゃって追いかけるの苦労したんですよ。汗びっしょなっちゃって、やっとお風呂に入れる」

 そう言いながら浴槽のお湯を体にかけようと近づいてきたレイラが見た光景は……

「し……真一郎?」

「や、やあレイラ姉さん。あ、あはははは」

 裸でがっちり両サイドに姉をはべらせた弟の姿だった。

「何でお前が!!!と言うか姉様達もなんでそんな姿でくっついて!」

「レイラ、お前だって裸じゃないか。真一郎にばっちり見られたな!」

 グーサインのジゼル。

「ひぃ!!!見るな!この変態!なんでいるんだ!」

 思いっきりぱにくってその場に座りこんでしまったレイラ。なんだかかわいそうになり、真一郎は桶で顔を隠しながら

「見てない見てない!全然見てない!俺今すぐ出てくから!ちょっとまってて」

 そう言って姉から無理やり脱出しようとしたが、姉達がひっぱったせいで体制をくずし思いっきり浴槽の淵でこけた。

 さて、皆さんお分かりですね。神様はとことんいじわるだって。

「いてて。ごめんレイラ大丈夫?」

 こけた拍子に目の前にいたレイラに覆いかぶさってしまった。全裸でレイラに覆いかぶさる形の真一郎。目線の先には今にも泣き出しそうなレイラ。

「のわ!ゴメン!すぐどく!」

 あせったせいでさらに手が滑り、おもいっきりレイラの胸へ顔をうずめる形になってしまった。

「んむ!ゴメン!ゴメン!」

 すぐに飛びのき風呂場のタイルの上で土下座をする真一郎。恥ずかしさを通りこして怒りしかないレイラは手に風呂桶を持っていた。

「真一郎。お前はここでしねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

 振り下ろされる風呂桶。(木製の桶の角って結構痛いんだ)そう思いながらまたもや意識が遠のいていく真一郎だった。










 王都の片隅の洋館の一室に四人の怪しげな影があった。

 一人はあのイミナス。真一郎に初めて会ったときの様に黒いコートに包帯姿だった。

 イミナスの横には、床にあぐらをかいて座っている大男が居た。座った状態でイミナスと同じくらいの背丈がある事から、立ち姿の巨大さが想像できる。

 もう一人は銀髪を短く刈りそろえたスーツ姿の男だ。服装に反して攻撃的なブルーの瞳の彼は、イミナスと同じような背丈ではあるが、その頭には青と銀色を混ぜたような色の犬のような耳があり、腰のあたりかはフサフサのしっぽが出ていた。おそらく犬系の獣人なのだろう。

 最後の一人は女性だ。群青色の髪を腰のあたりまで伸ばし、黒色の飾り気の少ないドレスを着ている。切れ長の青い瞳に、薄めの唇。彼女の白い顔の左ほほには、魚の鱗のようなものが数枚ついていた。

「イミナス、ヴィラントはどうだったの?」

 イミナスへ部屋の女性が話しかけた。

「まあまあと言ったところですかね。さすがにドラゴンの力を持ってるだけあって、私の毒をくらっても生きてましたよ」

「貴方の毒で死なないなんてすごいわね。それで、私達の事も話したの?」

「私の自己紹介をしただけですよ。他の実験体はどうなったか知らないと言ってあるので、大丈夫でしょう」

「そう、それならよかった。私達は隠れて行動する事が多いから、あまり詮索されると動きにくくなるしね」

「しかし、これからは実験体のその後などを調べ始めると思うので、注意だけはしといてくださいね」

「分かってるわ。私達は王国の影ですからね」

 楽しそうに微笑む女性。二人の会話を聞きながら他の二人は興味無いようにそれぞれ暇をつぶしていた。


「失礼いたします」

 二人の会話が終わったと同時に、メイド姿の少女が現れた。小柄の黒髪の少女の頭には、同じく、黒く毛の少ないつるっとした、よく見る葉っぱの形に似ている耳が付いていた。

「お待たせいたしました。皆様にマスターからのご伝言をお伝えします」

 四人はその場で特に姿勢を正す訳でもなく、早くしろという目線のみを送っていた。

「まず、イミナス様。今回はご苦労様でした。残念ながらカポネロ達は捕えられ、あの土地を手に入れるためには別の手段が必要になりましたが、マスターは別の作戦も用意済みとの事です。『次は無いから気をつけろ』との事ですので、次の任務はくれぐれも失敗なきようにお願いいたします」

「ハイハイ、分かってますよ。で、次の任務はやはり中央砦ですかね?」

「その通りです。イミナス様にはビーゴート様と共に樹林へ赴いていただき、虫たちの援護をお願いいたします。『くれぐれも王国側に我々の行動を気付かれるな』と、マスターからの伝言です」

「兄者といっしょ。おれうれしいぞ」

 床であぐらをかいていた大男が嬉しそうにイミナスへ語りかけた、当のイミナスは「そうですね」などと適当に返事をしていた。イミナスを兄者と呼ぶのは彼もヴィラントと同じイミナスの異母兄弟だからだろう。

「ビーゴードと一緒で目立つなと言う方が無理ですが、まぁ善処しますよ」

 この巨体は戦場で非常に目立つ。しかし今回イミナス達が味方する闇の軍勢には、彼よりも巨大な巨人系の亜人もふくまれている。そのあたりの一団に彼をまぜれば、なんとかごまかしながら、戦力としても使えるかもしれない。などと考えるイミナスだった。

「続いてリヴ様。リヴ様にはマスターじきじきに頼みたい事があるそうなので、後程お屋敷へ一緒に来ていただきます」

「わかった」

 短く返事をしたのはリヴと呼ばれた女性だった。

「最後にフロイド様。フロイド様には引き続き貴族達の囲い込をお願いいたします。マスターの望みを成就させるために必要な、土地の確保を最優先にお願いいたします。今回失敗に終わった周辺の土地をどうするかも、おってマスターから連絡が行くことになってますので、それまでは今まで通りの任務をお願いします」

「また貴族相手かよ!あいつらめんどくせーから嫌いなんだよなぁ。いっそ殺して権利だけ奪うとかじゃダメなのか?」

 スーツをビシッと決めた犬耳青年は、そのクールそうな見た目に反して、ヤンキー口調だった。

「マスターは、慎重に慎重を重ねての行動をお望みです。そのためには手駒が多数必要となり、その手駒にうってつけの貴族達は決して無駄にするな、とのお考えです。よって殺しての権利はく奪などは絶対に避けてくださいね」

「ふんっ。わーってるよそんな事。確認しただけだよ、か・く・に・ん!大体貴族相手ならイミナスの方が向いてるだろーがよ!俺だって戦場で暴れたいんだぞ!」

 フロイドと呼ばれた犬耳君は、見た目に反しての喋り方同様、性格も好戦的なようだ。

「私だって貴族相手なんてゴメンですよ。戦場へ立ち、敵を殺していた方がよっぽど楽しいですって」

 包帯で顔は見えないが、おそらくあの残忍な笑顔を浮かべているイミナスだった。

「イミナス様は早い段階で虫達との仲介役をこなし、女王と虫達の信頼を得ています。一度行っただけで乱闘騒ぎになったフロイド様では到底虫たちの信頼などえられないでしょうし、彼らをうまく動かすためにもイミナス様以上の適任はいないでしょうね」

「ヘイヘイ。どーせ俺は短気ですよ。しっかし、オレもイミナスみたいに、女王にうまくこび売っときゃよかったなぁ」

「別に私は特別こびを売るなんてしてませんよ」

 フロイドの発言に少々苛立ちながらも、平静を装って答えたイミナス。

「どーだかね。お得意の話術と毒とか使って女王をたぶらかしたんじゃねーのか?」

 笑い半分のフロイドは尻尾をフリフリしながら「すっけこまし~」などとからかっていた。

「フロイド、貴方のその態度、私の毒でも治せるかどうか……いっそ試してみますか?」

 そう言って腰からあの虫の足を出したイミナス。

「へっ!やるってのか?」

 対するフロイドも戦闘態勢に入るかの様に、その場で拳を構えた。緊迫した雰囲気の部屋の中で、メイド少女のサクヤは冷静に告げた。

「では私は他にも用事を任されていますのでこれで。イミナス様もフロイド様も喧嘩は自由ですが、全てマスターへ報告させていただく事をお忘れなき様に。喧嘩で怪我して任務に行けないなんて無様な姿、私に報告させないで下さいね。それから、ここの物は、それはそれは高価な調度品ばかりです。壊したら各自弁償していただきますからね」

 サクヤは要点だけ伝えてさっさと部屋を去って行ってしまった。

「フロイド、私は構いませんが、貴方確か前回壊した物の支払いで、しばらく給金無しじゃなかったでしたっけ?」

「けっ!余計なお世話だ!金なんぞその辺の奴からかっぱらえばいいんだからな!」

「マスター目立つなって言ってた。それに兄者とけんかするなら、おれ兄者の味方するぞ」

 のそりとその場に立ったビーゴートは、3メートル近くある高い天井に頭が付きそうだった。

「いいぞいいぞ!お前等二人まとめてぶっ潰しでががっがががががががが!!!」

 やる気まんまんのフロイドに急に電流が流れ、その場で痙攣しながら倒れてしまった。

「フロイド、喧嘩はマスターが許した時だけって言ったでしょ」

 フロイドの背後にいつの間にか居たリヴが、電流を流した様だった。

「あ、あ、姉貴!いきなり電流はやめろって!……ちょ!分かった、分かったからその周りの雷しまえって!」

 見ればリヴの周囲には黄色く光る雷の球が数個浮かんでおり、今にもフロイドに打ち込まれそうだった。

「イミナスも、今日はこの辺にしといて、任務に戻りましょう。貴方達は遠くまで行くのだから、すぐにでも出発した方がいいでしょ?」

「それもそうですね。危うく時間を無駄にする所でしたよ。リヴ、次に会う時までに弟君がもう少しましな大人になっている事を願いますよ」

「私もそれは願ってるのだけどね。イミナスもビーゴートも気を付けてね」

「わかった。リヴも気をつけろよ。兄者さきにいくぞ」

 のっしのっしと、かがみながら部屋を後にするビーゴート、それに続くイミナス。二人を見送り残った二人は彼らが出て行った扉をじっと見つめていた。

「姉貴、イミナスの野郎本当に大丈夫なのか?あいつ随分と虫の女王に入れ込んでるぜ」

「大丈夫よ、彼は私の大事な愛しい人。今さら虫女なんかに渡せるもんですか」

 リヴの胸の内には、狂気的までなイミナスへの想いがあった。それを知る弟だからこそ、彼が自分達を裏切った時の事など想像したくなかった。

「まぁ姉貴が大丈夫って言うならいいんだけどさ。でも、あいつが裏切りでもしたら、そんときゃ分かってるよな?」

「もしも彼が裏切ったら、私が殺すから大丈夫。そうなったら彼は一生私の物ですもの。逆にそれを願う時さえあるくらいよ」

 フフフフと不気味な笑顔を浮かべる姉に(女ってこえーな)などと思う弟だった。








敵って言ったらやっぱ四天王だよね!

相変わらずキャラ出てきてすんません。。


さて次回の「はちぷり」は!

ついに中央砦へと向かう真一郎。彼はこの戦いで自分の理想に近づけるのか!


次回もよろしくお願いします!

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