表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
EightPrincessOneBoy  作者: ぽちょむ菌
第一部『真一郎と八人の姫』
15/38

13話 『ミツクニ君の王都散策 その二』

どーもです!

まだまだつづく王都散策。おもっきし遊んでます。



 真一郎がケラと共に楽しく王都散策をしている頃、王城の会議室には、W義母始め、姉達と師団長達、貴族数人などが集まっていた。

「皆、集まったな。では今回の砦遠征についての会議を開始するぞ」

 まとめ役は王国騎士団の最高責任者のジュリエッタだ。

「まずは影からの報告により分かっている、敵戦力の報告からだ。ライオネル頼めるか?」

「かいこまりました。ではまず確認されている敵戦力についてですか、南北中央それぞれに進攻すると思われる敵戦力は、それぞれ二万ほどと予想されます。その内訳はゴブリンが各部隊一万ほど、後はオーク、エイプ、オーガ、トロール、その他魔獣各種と、いつもの顔ぶれですね。後はハイクラスが産まれたと思われるインセクター。各部隊に隊長の様な個体が居るのが分かっています。それと、もう一つ気になる報告としては、今まで見たこともない装置を運用しているとのことです」

「見た事のない装置?」

 ライオネルの隣でガルルートが不思議そうな顔をしていた。

「ええ、どうやら異世界側ではそこそこ知られている装置らしく、投石機と言う物らしいです。そのままの意味で巨大な石を発射する装置らしいです」

「石ねぇ。石なんか飛ばしてどうすんだ?」

「ジュリエッタ様、投石機は石だけでなく、石や砂利の詰まった袋を飛ばして城門などを攻撃したり、火のついた藁や火薬をとばせば城内に火災を起こさせたりできますし、異世界の運用方では他に、汚物や動物の死骸を飛ばして敵の志気を下げたり、疫病をはやらせるなどの使用もされていたらしいです。さらには敵陣形に向かって打てばその陣形をたやすく崩すことも出来るのです。これらは日本で知識を得た方々からの報告ですので、注意するに越したことはないと思われます」

 その実用性の高さと簡単に城門などを攻撃できることから皆の世界では紀元前から使用されているとの記述もある。ちなみに日本では応仁の乱などで使用されたと歴史書が語っているらしい。

「なるほど、確かに石で城門とか壁を攻撃されるのは避けたいな。何か対策はあるのか?」

 ジュリエッタがペンを指先でくるくるとまわしながら聞いてきた。

「魔法での投石機本体への攻撃が一番効果的と思います。見つけたら確固魔法で撃破の形でよろしいかと」

 ライオネルは知らないらしいが、投石機の射程範囲は大型のもので数百メートルもあるそうだ。魔法の射程範囲外から攻撃されてもおかしくない距離なのだが、王国側はそこまでは把握していないらしい。

「じゃあ、ワシんとこのもんにそのトウセキキとやらを最優先で破壊するように伝えておくかの」

 そう言ったのは銀髪のロリババァのマリステア第二師団長だった。

「そのようにお願いします。あとは各師団の配属ですが、ジュリエッタ様、これについてはどおお考えで?」

「うむ。まず北の砦にはライオネル、第四師団を連れて行け。南にはガルルートの第五師団。中央には第三師団を送るが、今回は私が総大将として同行するため、ジルドには王都の留守を任せたい。後は第一と第二の精鋭をそれぞれの砦に派遣する形でどうかと思うのだが」

「えぇぇぇぇ~なぁんで私だけお留守番なのよ~ん」

 くねくねと自分の配属に文句たらたらのえんじぇるちゃん。ちなみに本日のご衣裳は、ピンクの軍服に白いズボン、髪型は金髪のカツラをしている。軍会議だからだそうだ。

「まぁまぁ、今回の敵は最近いなかったハイクラスまでいる。何が起こるかわからん限りは隠し玉は王都で温存しておきたいんだよ。な、ジルド、王都を守れるのはお前だけだ!」

 ガッツリとえんじぇるちゃんの手を握りしめて熱のこもった視線を送るジュリエッタ。

「ジュリちゃんがそんなに言うならいいけど。本当に私、隠し玉なのよね?まさか、ただ単に殿下と私を離したいだけじゃないわよね?」

「えんじぇるちゃん、そんな訳ないじゃない。ね、私と一緒に王都を守ってほしいわぁ」

 えんじぇるちゃんの鋭利なつっこみにシルフォーネが本心を隠して対応していた。まぁ、ぶっちゃけW義母的に、かわいい息子を、この変態からなるべく遠ざけたいだけだったりもする。

「まぁ、いいわん皆の留守は私が守ってあげるわん。ところで今日は殿下はいないの?砦に同行するって聞いたから、てっきり会議にも出ると思ったのだけど」

「あぁ、あのバカ息子は現在王都を散策中だそうだ」

 ジュリエッタが少々呆れ気味に答えたところで、今まで黙っていた貴族集団の一人から声が上がった。

「ほほぅ。このような大事な会議を放りだして王都散策ですか、中々どうして胆が据わってると言うか、さすがグラインさまのご子息ですなぁ」

 発言をしたのはサニエル・ファーロイと言う貴族だ。ちなみに彼はヒトではあるが、細身で顔も面長のため蛇の様だとよくたとえられる。

「サニエル、すまないな、あれも色々と考えあっての事だ、大目にみてもらいな」

「ジュリエッタ様がそうおっしゃるならば、殿下にも何かお考えがあるのかも知れませんな。しかし、殿下は今や時の人。昨日のブルザック卿との戦いのおかげで人気上昇中とか、よからぬ輩に連れさられぬよう、ご注意するべきですぞ」

「その点は心配ない、ヴィラントがついてるのでな」

「ほう、あのドラゴニュートですか、あれも正直そこまで信頼に足る人物ですかね、何と言っても元々は王国の敵ですからな」

 サニエルは明らかにヴィラントを見下した様な発言でジュリエッタを挑発していた。ジュリエッタとて、相手がサニエルでなければとっくにキレている所だが、彼は反ジゼル派のトップとも言われている人物だ、王国の目の上のたんこぶを下手に刺激はしたくないと思っていた。が、実際には腹の底から嫌っている相手なので少々トゲがある発言になってしまう。気づけばジュリエッタとサニエルはテーブルを挟んで睨み合っていた。

「はぁ、サニエル卿、それに母様も、今は軍議中だ、出来ればそういったのは外でやってくれないか?」

 二人が同時に振り向き声の主であるジゼルを睨んでいた。

「お二人とも、文句がおありか?」

 少々イラついたジゼルの声にサニエルが先に答えた。

「はっはっは、ジゼル様が仰るならば私めは黙りましょう。しかし、殿下の事だけは用心なさいますように。王都でも砦でも、何が起こるかわかりませんからな」

「そんなのは百も承知だ。ジゼル、すまなかったな、会議を続けるとしようか」

「そうですね。ではサニエル卿、貴族側からの支援は通常通りと考えてよろしいか?」

「はい、我等貴族も精一杯お手伝いさせていただきますよ」

 ニヤリといやらしい笑いを浮かべるサニエルだった。

 王国の貴族達は基本的に兵を持っていない。中には私兵部隊などを造り、自らが戦場へ赴く物好きもいるが、ほとんどが食糧や砦で使う日用品などの手配、砦が壊れた時の修理用の人員の提供など後方支援ばかりだ。

 そもそもこの国の貴族は元々、各街や村の長などが、その街周辺の土地の権利を得た事が始まりだ。日本で言えば、世襲制の県知事や都知事のような物なのだ。それぞれ領地が与えられているが、一度与えられれば、よっぽどの事が無い限り、永久的にその領地が自分達の家の物なのだ。

 しかし、これらの法の改革に乗り出したのがグラインだった。名ばかりの領主を撤廃し、本当に民を任せられる人物を選定し、それに領地をまかせるといった考えを発表した結果、ほとんどの貴族から嫌われる結果になった。実際には法が定められる前にグラインが亡くなってしまったので、現在も完全世襲制だが、ジゼルがグラインの後を継ぎ、その法を現実のものとしようとしている事から、反ジゼル派などという派閥が生まれたのだ。

 「貴族たちの後方支援があれば問題ないな。さて、皆、今回の戦いは、恐らく今までに無い新しい戦になるかも知れん。しかし、我々は負けるわけにはいかない!闇の軍勢共を樹林へ押し返し、二度と王国の土地を、踏む気が起きないようにしようでわないか!皆の奮闘を期待しているぞ」

 ジゼルがその場に立ち上がり、鼓舞するように皆を見つめた。その言葉を受け、その場に立ち上がると皆深々と頭を下げた。

「「「「我らがフォレイティアス王国のために!」」」」

 皆で一斉に気合を入れて軍議は解散となった。




 団長や貴族たちが部屋を後にして、現在会議室にはW義母と姉達が居た。

「で、母上、真一郎は本当に大丈夫なのですか?」

「ああ、ヴィラントがついてるんだ、さすがに王都内なら安全だろうさ」

「あ、いえ、確かに今日の事も心配ですが、私は砦行きの方が心配で」

「キキの言う通りです。あれが砦へ行って無事帰ってこれるでしょうか?」

 キキとジゼルの問いかけにジュリエッタは笑いながら答えた。

「はっはっは。大丈夫さ、そのために私も一緒に行くんだしな。何より砦行きは、あいつが自分で決めた事だ。男が腹をくくったら女はそれを黙って助けるもんだぞ」

 昨日の夕食時に、真一郎は自分から砦行きを申し出た。当然姉妹達からは反対の声も上がったが、彼はどうやら父親と同じく、一度決めたら自分の意思は曲げない性格らしい、どんな言葉もきかず、結局中央砦へ行く事が決まったのだった。

「姉上、中央へは私も一緒に行きます。足手まといなら問答無用で、王都に送り返しますのでご安心を」

 レイラなりの真一郎への愛情表現の様だった。

「まったくレイラは素直じゃないなぁ。はっきりと、心配だから危なくなったら帰すって言えばいいもんを」

 相変わらずジュリエッタはレイラをからかうのが好きらしい。

「母様!べ!別に私はあんな変態の事など、心配してませんよ!ただ、あれに死なれたらミーやクーとかチャーリーが悲しみますので、私は妹達のために、あれを生かしてやろうと言ってるのです」

「ふふふふ、素直じゃないわね、そこがレイラちゃんの可愛いとこなんだけどね。でもね、時には正直に思いを伝える事も大事よ」

 シルフォーネが満面の笑みで近づいてきた。

「シルフ母様まで!わ、私は、べ、別に、本当にこれっぽちもあいつの事なんて想ってませんから!」

 抱きつこうとするシルフォーネをサっとよけてレイラは部屋から逃げて行った。

「まったく、どうして母様達はそうやってすぐレイラをからかうのですか」

「だって、可愛いじゃないか」

「そうね、あの困った顔が最高にかわいいわね」

 W義母のドS発言に深いため息をもらすジゼルだった。

「そう言えば、真一郎は王都のどの辺を散策してるのですかね?」

 まったくもって空気を読んでいないキキは自分の疑問のみをその場の家族に問いかけた。

「さー?どうだろな、ケラが案内してるらしいから、朝市とか見て東通りをぶらぶらとかじゃないか?」

「むぅ。東通りですか、厄介ごとに巻き込まれなければいいのですが」

「何かあるのキキちゃん?」

「ええ、ジルドに聞いたのですが、東通りから行ける居住区で、最近ヤクザの抗争が激しい場所があるらしいんです」

「ほう、穏やかじゃないな。母様達はご存じで?」

「いや、初めて聞いたな」「私もよ」

「なんでも、ここ一年ほどで出来た組が、そのあたりの土地を買い占めているいるらしく、その地上げに反対している市民と、その市民側についた古くからある組が抗争中とかって話だったと思います。市民から悪質な地上げに困ってると、第三師団も一度相談を受け現場に向かったそうですが、新しい方のヤクザ共の後ろに、貴族がいるとかで下手に手出しできなかったそうですよ」

「ほう、ヤクザの後ろに貴族ねぇ。なんだかきな臭い話だな。どーせろくでも無い事を考えてるんだろうが、よし、私の方でも調べさせてみよう」

「でもさすがにしんちゃんも、それに巻き込まれてなんかないわよね~」

「真一郎とてそこまで能天気じゃないでしょう。危険な場所はケラも承知して近づかないと思いますし、いざとなればヴィラントもいますしね」

「しかし、真一郎って結構お人よしで、なんでも首つっこむ感じですよ」

 キキの言葉で皆一瞬固まったが、「まさかね~」と息子にふりかかりそうな危険を否定していた。







 時を同じくして、真一郎改めミツクニ君は、母達や姉達の、ある意味期待通りと言っていいくらいに、やっかい事に見事に巻き込まれていた。正確には自分から突っ込んだのだんだけどね。

「小僧、なかなかやるじゃねぇか」

 ミツクニ君の前には、今まさにその手に持つ巨大な斧を振り下ろそうとする、身の丈2mほどの黒いサイの顔をした亜人が、残忍な笑顔で近づいてきていた。

(やばいなぁ。さすがにこんな巨体相手は無理かも……)

「今度は俺の相手をしてくれや!」

 そう言いながら持っていた巨大な斧を振り下ろした!

「でんっ!じゃない!ミツクニさん!」

(やばいやばい!殿下が危ない!あぁやっぱさっき止めておけばよかった……)

 ケラは目の前の光景を見つめながら、つい数分前の自分の行動力の無さを、激しく後悔していた。




 事の起こりは十分ほど前……

 ガッツオの店を後にし、昼食をどこでするかと二人で話ながら、東通りの、一本奥の道を歩いていると不意にミツクニ君が立ち止まった。

「ミツクニさん、また気になる店でも見つけましたか?」

 ケラがミツクニ君の視線の先に目をやると、あからさまに怪しいガラの悪い風の亜人とヒトが、建物と建物の間の狭い路地を塞いで、周囲を通る通行人に睨みをきかせながら立っていた。

(あれは関わらない方がいい)ケラの野生のカンがそう告げていた。が、どうやらミツクニ君は興味しんしんらしく、迷う事無く彼等の所へ向かって行こうとしていた。

「ちょ!どこ行くくですか!?」

「なんかアレ怪しくない?絶対ろくでもない事してるよ彼等」

「だったら何で行くんですか~!殿下に何かあったらどーするんですか!?」

「大丈夫大丈夫。それに、誰かがヒドイ事されてるかもだよ?」

「だったら騎士団に通報しましょ!詰所に行けば誰かいるはずですから」

 騎士団の詰所とは、街のあちこちにある交番みたいな物で、常に数人の騎士が常駐している。

「そんなの呼んでたら間に合わないかもじゃん。それにいちお俺も騎士だしね~」

 現在真一郎は第三師団所属の立派な騎士だ。

「それわそうですけど~」

 腕につかまって必死に止めようとするケラをズルズルと引きずりながらミツクニ君は目的の二人の前までやって来た。



「あのーちょっといいですか?」

「ん?なんだ坊主、ここは今立ち入り禁止だ、さっさとどっかいきな」

 ミツクニ君の前に立ちふさがるのはノーマルなヒトと、ハイエナっぽい亜人だ。

「でもこの道通らないと友達の家に行けないんですけど、通っちゃダメですか?」

「ダメだって言ってんだろが!あんましつけーと痛い目みるぞ」

 スゴむハイエナさん。ヒトの方は後ろでニヤついていた。

「ミ、ミツクニさん、この方達の言うとおに遠回りしましょ、ね?」

 ケラがミツクニ君を引っ張ってその場を離れようとした時、路地の奥から男の怒鳴り声と少女の様な声の口論が聞こえてきた。

「あんた達、やっぱりなんか悪い事してるだろ」

 目の前の二人をにらみつけるミツクニ君。

「だからてめーにゃ関係無いって言ってんだろが!」

 ハイエナの方がミツクニ君を掴みかかろうと手を伸ばした瞬間、ミツクニ君はハイエナの懐へ潜り込み襟元をつかんだ、そしてそのままハイエナに自分の背中を押し付けて、豪快な背負い投げを決めた。

「がはっ」

 硬い地面に叩きつけられ悶絶するハイエナ。

「なっ!て、てめぇふざけやがって!ぶっ殺すぞ!」

 それまでニヤついていたヒトは、腰のあたりからナイフを取り出してミツクニ君に向かってきた。

 向かって来る男を半歩右へずれてよけたミツクニ君はすぐに男の背後から腰の辺りを両手で抱き込むようにつかんだ。

「なっ!離しやがれ!!」

「そーゆー三下の台詞は・・・」

 男をガッチリと腕で捕まえたまま「死亡フラグなんだよぉ!」と掛け声と共に、男ごと自分の体を後方へ反らせ、そのまま男を後ろに積んであった木箱の山へ頭から叩きつけた。

 男は崩れた木箱の山へ上半身をうずめ、足を天高く上げる犬神家スタイルで気絶し、更に先ほど投げたハイエナも、背中の痛みのせいで未だ地面をのたうっていた。

(うわぁ殿下もお強いんだ、やっぱ血筋かなぁ)ケラはバカみたいに強くて、個性的すぎる彼の家族を思い出した。

「よし、さ、ケラ行くよ」

 ケラからの高感度が、グングン上がっているなんて全然気付かず、そう言ってさっさと先へ行くミツクニ君。

「ちょ、ちょっと待って下さいよ~」

 その後ろをピョコピョコと走って追いかけるケラだった。



路地を進むと、すぐに問題の現場が見えた。確認できるのは、ヒトの男三人と、かなり大きい亜人が一人、計四人がかりで小学生くらいの獣人ぽい女の子を囲んでいた。

「まったくてまぁ取らせやがって。さて、ポップ、お前のそのちんまい耳の一つでもお前のお袋に送れば、さすがにこっちの脅しにも応じるだろうさ。とっととあの店を出てけってな」

「ボ、ボクはお前達なんかコワくないんだぞ!それにボクに酷い事したら、サクラ姉ちゃんがだまってないぞ!」

 壁を背にして四人の強面に包囲されながらも、少女は泣く事なく言い返していた。

「けっ、あのじゃじゃ馬にこれ以上邪魔されてたまるかってんだよ。さて、おい、お前等押さえろ」

 じりじりと、にじりよる悪役四人。悪役Aの手が少女をつかもうとした時「うおぉりゃぁぁぁぁ!」という掛け声とともに、誰かがすごい勢いでぶつかって来た。

「ぐおっ!なんだっ!」

 そのまま前に倒れこむ悪役A。

「ふぅ。お嬢ちゃん大丈夫?」

 ぶつかてきた本人はそのまま地面を転がり少女の前に横たわりながら問いかけた。

「えーっと。お兄ちゃんも大丈夫?」

「あははは、カッコ悪い登場でゴメンね。さて、悪役さん達。俺とこの娘を、このまま帰してなんてはくれないよね?」

「ぶもぉぉぉぉぉ!て、てめぇ!どこのどいつか知らないがいい度胸じゃねぇか!」

 後ろからは確認できなかったが、どうやら彼はサイの亜人らしい。しかも黒いサイだ。

「また兄貴に怒られちまうじゃねぇか!」

 ぶもーぶもーと怒りで鼻息が荒くなるサイ男。倒れた悪役Aも起き上がり、四人そろってミツクニ君たちに襲いかかってくる勢いだ。

「ミツクニさん!これをっ!」

 悪役達の後ろからケラがその辺で拾った木の棒を投げてよこした。

「よっと、サンキュ~ケラ!さて、ちっと心もとないけど、お相手しますかね」

 木の棒を構え悪役と向き合うミツクニ君。

「ひゃはっはっは、そんな棒っきれでどうしようってんだ!おい、やっちまえ!」

「うりゃぁ!」

 掛け声と共におそいかかる悪役A、B、C。

 ミツクニ目がけAが振り下ろした剣をその場でかわした彼は、持っていた木の棒を思いっきりAの目を目がけて突き出した。

「ぐあぁぁぁぁ!」

 眼球を思いっきり木で突かれたAはその場で、血が滴る目を押さえながらのたうった。

「てめぇぇぇ」

 これで残りのBとCの怒り指数を上昇させたらしく、二人同時に襲いかかってきた。木の棒を捨て素早くAの落とした剣を拾い上げると、Bの繰り出す剣を拾った剣ではじきながら隙をうかがった。

(うわぁやっぱ本物の剣って重いぞ。両手で持つのが精いっぱいだ。さて、これからどうしようかなぁ……)

「おらおらどうした!」

 ガキンガキンと路地裏に響く金属音。防戦一方かと思われたミツクニが動いたのは、悪役二人が調子に乗ってきた頃だった。悪役Bが大降りに振り下した剣を交わしたミツクニは、目の前に見えた悪役Bの顔面を、手にしていた剣の腹の部分で思いっきりぶっ叩いた。「ゴキッ」という鈍い音と共にBの鼻がつぶれ彼はその場にのた打ち回った。

「この野郎!」

 残りの悪役Cが乱れた剣で迫ってくるが、その怒りで剣は、ミツクニから見ればただ子供が振り回している棒の様にしか見えなかった。下段から思いっきり振り上げた剣でCの剣をはじき飛ばすと、またも剣の腹で今度はCの腹部を思いっきりぶっ叩いた。

「ぐはっっ」

 その場にのたうち悪役C。残ったのは黒いサイ男だけだった。




「小僧、なかなかやるじゃねぇか」

 三人の手下がみな痛みでのたうちまわっているのを気にも止めず、黒サイ男はゆっくりとミツクニへと近づいてきた。

(やばいなぁ、さすがにこんな巨体相手は無理かも……)

「さて、今度は俺の相手をしてくれや!」

 そう言いながら持っていた巨大な斧を振り下ろした!

「で、じゃないミツクニさん!!」

 ケラがミツクニを心配そうに見守る。

「こんなもん受けれるか!」

 さすがにこれは受けられないと、慌ててよけたミツクニだったが、黒サイ男はよけた彼を逃さまいと、直ぐに斧を横に振りなおしミツクニへ迫った。

「うおっ。まずいぞこりゃ」

 見た目に似合わず、すごい速さで振り回される巨大斧。ミツクニは縦横斜め変幻自在にくりだされる斧をよけるので精一杯だった。

「おにいちゃん頑張って!」

 後ろで見ていた少女からかかった声に「が、がんばってるよぉ」などと力ない声を上げながらも(頑張るって言ってもこれどーすりゃいいんだ!?)などとけっこう困っていた。

「おらおらおら!」

 黒サイの斧はさらに速度を上げていった。上から降ろされた斧をかろうじてかわしたが、その直後に下から振り上げられた斧により持っていた剣を弾き飛ばされてしまった。

「やっべぇ……」

「さて、どうする小僧」

 黒サイがニヤリと笑いながら無防備なミツクニへとにじり寄る。ミツクニは後ろにいた少女を庇いながらも一歩も引いていない。

「これで終わりだ!」

 黒サイが最後の一撃のため、振り上げた瞬間「シュッ!」と小さい風切音と共に、黒サイ男の手にカンザシの様な物が突き刺さった。

「いてっ。なんだこりゃぁ」

 振り下ろした斧をその場に落とし、手にささったカンザシを抜きながら、後ろを振り返る黒サイの顔面に、強烈なドロップキックが直撃した。



「ぶへっ」

 変な声を上げて倒れる黒サイ。ドロップキックをかました本人は空中でくるくると回転し、綺麗にその場に着地して

「ルチアーノ!今度この子に手出したら、ただじゃすまないってこの前言ったはずだよな?」

 黒サイに向かって、びしっと人差し指をさすトラ耳少女がそこに居た。

「サ、サクラァァ。てめぇよくも!」

「ルチアーノ、それ以上はやめた方がいいぜ」

 いつの間にか路地の入口から数人のガタイのいい男達が入ってきて黒サイを包囲しつつあった。

「今すぐ逃げるか、それともいっそここでアタイに喰われるか、アンタみたいな不味そうなの喰いたかないが、場合によっちゃ骨も残さず喰らってやるよ?」

 凄むトラ耳少女に、黒サイ、ルチアーノの額からは汗が流れていた。

「けっ。こんなとこでくたばったら兄貴に何言われるかわかんねぇ。今回は引いてやるよ」

 そう言うと斧を担ぎ、まわりでまだのたうってる手下どもを蹴り飛ばし「行くぞ!」などと言ってさっさとその場を去っていった。

「サクラ姉ちゃん!」

 そう叫びながら少女がトラ耳少女へとかけて行った。

「ポップ大丈夫だったかい?」

「うん!あのお兄ちゃんが助けてくれたから」

 そう言いながらミツクニを指さす少女ポップ。サクラの視線の先に映るその人は金髪にメガネをかけた育ちのよさそうな青年だった。

「あぁ。あいつにも礼を言わなきゃな」

 そう言いながらミツクニへ近づく桜の横を、一匹のケットシーが凄いスピードで駆け抜けていった。

「ミツクニさぁぁぁぁぁぁぁん!」

 がしっと青年に抱きついたケットシーは「もう!どうなる事かと思いましたよ!」とか「次は絶対危ない事しないで下さいよ!」などと心配してるんだか怒ってるんだか分からない感じだ。言われている本人の方は「あはは、悪かったって。でもほら、大丈夫でしょ?」などと笑ってごまかしていた。

「なぁ、あんた、ポップを助けてくれたんだってな。ありがとよ」そう言ってミツクニへ手を差し出すトラ耳少女。

 ケラが抱きつき半べそをかいているのをなだめながら、ミツクニはその手を取ってケラを抱えながら立ち上がった。

「最後は結構ピンチだったから、助けられたのは俺の方かな?えっと、サクラさんだっけ?ありがと」

 そう言うと微笑むミツクニ。本人は分かってないようだが、この微笑み、普通の女子なら一瞬でその気になってしまうだろう悪魔の微笑みなのだ。

「え?あっ、そ、そっか、まぁお互い様って事だな!ははははは」

 そう言いながら顔を真っ赤にしながら、片手で頭をかく少女。えんじ色の髪の毛にトラ耳、服装はズボンにシャツ、その上になぜか着物をコートの様に羽織っていた。

「アタイはこの辺りを仕切ってる『白虎会』会長の娘でサクラってんだ。あんたは?」

「えちごのちりめん問屋の息子でミツクニって言います。えちごってのは日本の地名で、俺は今こっちに勉強しにきてるんだ」

「へぇ日本からか!アタイの曾婆さんは日本人なんだよ!アタイも親父も日本にゃ行ったことないが、日本人は大歓迎さ!」

 そう言いながらバシバシとミツクニの背中をたたくサクラ。そんな時ミツクニの腕に抱かれていたケラの腹が「ぐぅ~」と鳴った。

「あぅ。私とした事がお恥ずかしい……」

 赤面して真っ赤になるケラ。それを見て「はっはっは!腹が減るのは元気の証拠さ!」などと実に楽しそうに笑うサクラ。

「どうだい?ポップも助けてもらった事だし、アタイが昼飯でもおごってやろうか?」

「え?いいの?」

「いいさいいさ、そうだ、ポップのお袋さんはこの近くで料理屋をやってるんだ、そこ行って食おうじゃないか」

「うん!お兄ちゃんたちの事、お母さんにも紹介したいから来て来て!」

 その場でぴょんぴょんはねるポップ。ケラとミツクニは顔を見合わせて「じゃぁお言葉に甘えますか」などと言ってサクラにおごってもらう事にした。

「よし、そいじゃ行こうか。お前等!この事親父に報告しといてくれ『極龍会』のバカ弟がまたバカしたってな。

「「「わかりやした!」」」

 男達は声を揃えて了解すると、ぞろぞろとその場を去って行った。男達の後を追うようにミツクニ達もその場を後にしたのだった。










「このバッカもんがぁぁぁぁ!!!」

 ミツクニにやられ、サクラに追い払われた黒サイ男と手下達は、ここ極龍会の自宅兼事務所で、組長であるアロルドに激しく攻め立てられていた。

「ご、ごめんよ兄貴!でもサクラのやつの強さは兄貴だって知ってるだろ!あんな化けモン相手に俺だけじゃ無理だって~」

 半分泣きながらルチアーノが許しを求めていた。

「けっ!それでのこのこ逃げ帰るお前みたいなバカが居るから、白虎会になめられるんだぞ!」

 なおも杖で殴りつづけるアロルド。そんな彼に後ろから声がかかった。

「まぁまぁ組長サン。一人しかいない家族でしょ?その辺で許してやんなさいって」

 長身で黒いコート、顔には包帯をぐるぐる巻きにした、声からするにおそらく男と思われる。

「アンタは黙っててくれ、こりゃ家族の問題だ」

「そうは行きませんよ。こっちも仕事でね、内輪もめしてもらっちゃ困るんですよ。時にオッケルさん、貴方、魔力を視る事ができましたよね?」

 オッケルと呼ばれたのはあのハイエナ男だった。

「え、あ、はい、見れますが」

 恐る恐る答えるオッケル。

「その金髪の小僧とやらは何色でした?」

「そ、それがよく分からないんで、水に浮いた油みたいにゆらゆらいろんな色が出てて……」

「ほほう、それは虹色って事で?」

「うーん、俺の眼じゃそこまでハッキリとは、ただ虹色っぽいっちゃ、ぽかったかも……」

「なるほど。よろしい。組長さん、その金髪君、私の主人が求めている人物の様なんですが」

「ほう、旦那がねぇ。その金髪何もんだ?」

「それはお答えできませんね」

 そう言うと人差し指を顔に近づけシーっとした包帯男。

「まぁ、旦那がそいつに会いてえってんなら、さらうのくらい手伝うが?」

 テーブルに置いてあった酒をぐびぐびと飲みながらアロルドは包帯男に提案した。

「いや、彼は私がさらってきます。……そうだ、いい事を考えましたよ。あの横丁を組長さん達の手中におさめ、なおかつ金髪君を私がさらってくるのに最高の手をね」

 包帯で表情は読み取れないがおそらく彼は笑っている。それもとびきり楽しそうに。

「ほう、で、どんな策で?」

「横丁に火を放ちます」

 その答えを聞いたアロルドは思いっきり酒を噴出した。

「ぶーー!げほっげほ。よ、横丁に火をつけるだと!そんなもんばれたらどーすんだ!」

 王都においての放火は重罪だ。住宅が密集している横丁へ火をつければどうなるかなんて誰でも想像はできる。ちなみに日本の江戸時代も放火は重罪だった。木造住宅が乱立する場所での放火は街全体を火の海につつむ可能性もあるため、例外なく極刑をもって罰せられた。

「大丈夫ですよ。私が特別な方法で、必要なところだけ燃えるようにしてみせます。貴方がたは、私の言った通りに動いてくれさえすれば、何も問題なくあの横丁を手に入れられますよ」

 残忍でどこか楽しげな包帯男の声。自分のパトロンから預けられた彼の、素顔も素性も知らないアロルドだが、彼が危険な男である事は分かっている。

「アンタがそう言うなら、まぁ乗ってやってもいいが。でもいいか!俺たちが捕まるような事には絶対にするなよ!」

「分かってますよ。主人からもあなた方を大切に扱えと言われてますのでね。ささ、早く作戦を始めましょう。事はさっさとすませた方がいいですよ」

 そう言うと包帯男はその場に居た者達に自分の作戦を説明し始めたのだった。






いやーWikiって便利だね♪

今回も駄文を読んでいただきありがとうございます。

さて、12話で真一郎の髪の色を変えたのが、ミミットさんの魔法となってましたが、これを染料に変えました。

だって真一郎って魔法効かないはずじゃんね!今日読み直して気づいたよ!

ふぅ。ま、直したからいっかw


さて次回の「はちぷり」は!

闇にうごめく悪の策略!ミツクニは本家光圀のように悪をさばけるのか!

またよろしくね!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ