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EightPrincessOneBoy  作者: ぽちょむ菌
第一部『真一郎と八人の姫』
12/38

11話 『人生楽しんだもん勝ち』

どーもです!

今回は真一郎VSブルザック!

駄文ではございますがどうぞよろしく!

 フォレイティアス王国 『決闘法』 概要

一つ 決闘は両者の同意の元、一対一で行う事。(武器や魔法の制限は無し)

一つ 決闘は王国に申請の後、王国から派遣される立会人の立会のもと公の場で行う事。

一つ 勝者は敗者より、希望した戦利品を得る事が出来る(地位や家族は除外)敗者はこれを拒否出来ない。

補足 勝者が財産などを望む場合は、敗者の財産の一定の割合までとする。さらに敗者の家族が己の意思で戦利品として名乗りを挙げる場合は、立会人の審議によって許可するか否かを決める。






王都の北側には巨大なスタジアムがある。各種スポーツの大会や、式典なども行われるその場所は、本日満員御礼だった。

まるで何かの祭りのような賑やかさで、客席では物売りが酒やツマミや弁当を売り歩いており、スタジアムの周囲には露店が並び、街のあちこちにある巨大魔道鏡の前には、スタジアムに入ることのできなかった者達で溢れかえっていた。


「おーい!ケラ!」

満員御礼の客席の間を、人ごみに紛れながら、何とか進んで来たでぶっちょでオーバーオールを着たケットシーが、我が子を見つけて叫んでいた。ケットシーは大体身長が100cmくらいなため、満員御礼の客席はまさに人の森のようだった。

「あ、父さん!こっちこっちー」

娘が手招きして誘う席は、スタジアムを中央から見渡せる王属専用の最前列の四列後ろの席だった。ど真ん中の前から五列目、並の者では到底座れない特等席だ。

「いやはや、凄い人ごみだなー。お前が席取ってくれて助かったわい。おーいラルク、ミレイ、早くこーい」

そう呼ばれて後ろから人ごみをかき分けて来たのは、ケラと同じ三毛猫だが、ケラよりも長身で、メガネをかけこれまたオーバーオールを着たケットシーと、同じく長身のロシアンブルーの様なケットシー、こちらはワンピース姿だ。二人は少々息を切らせながら示された自分達の席へと滑り込む様に座った。

「兄さん、義姉さん、お疲れ様。お茶でもどうぞ」

そう言うとケラは、持っていた水筒を手渡した。

「ごくごくごく。っぷはー。さんきゅーな。ミレイも飲むか?」

そう言うと、ケラ兄はロシアンブルーの方にも水筒をまわした。

「ごくごく。はー美味しいわ。ケラちゃんありがとね」

そういうとケラの義理の姉のミレイが水筒を返してきた。

「いやーしっかし、こんないい席なんて凄いな。さすが貿易部長殿だな!兄として初めてお前を見直したぞ。はははは」

「初めてってねぇ、まぁ、今回はたまたま運がよかっただけだよ。今朝シルフォーネ様と王宮でばったり会って、私も見に行くって言ったらここのチケットもらえたんだ」

 今回の催しはかなり急に決まったため、今ケラ達がいる中央席以外はほとんどが先着順でチケットが買える仕組みだ。中央席は基本王族や、王国の国政に直接かかわるような重役の指定席となっている。それ以外の席は、普段だと何日か前から販売が始まる。最初はチケット交換券という番号と記号が入ったものを無料でもらい、前日までに発表される当選番号に当たっていれば、はれて交換券と交換でチケットを購入できるのだ。今日の催しの国民の注目度は高く、昨日の夜に街中に催しが知らされると、夜にもかかわらず、すぐさまスタジアムのチケット売り場には、長蛇の列ができていたそうだ。


「おー、ケラっちだー」

「あ、ミー様クー様」

 ケラの姿を見つけて駆け寄ってくる双子姫。亜人や獣人を「かわいい」と言ってなでまわすこの二人は、王国の亜人、獣人達の間でも色々と有名だ。

「おー、相変わらず良い毛並だねぇ」

 ぐしゃぐしゃぐしゃぐしゃ

「私もー」

 ぐしゃぐしゃぐしゃぐしゃ

 ケラを発見し、すぐさまなでまわしモードに突入した双子姫。

「ひ、姫様方、そんなになでないでくださぃ。っちょ、そ、そこは、な、なでないで……あぅぅ」

「ふっふっふ、ここでしょ?この耳の裏っかわでしょ?ふふふ」

「んじゃクーもこっちを」 こしょこしょこしょ

「ぁ、ちょっ、お二人とも……ぁぁ」

 双子の姫に耳の裏やらあっちこちをこしょこしょされて悶えまくるケラ。ケラを雌と認識している人たちからすれば、かなり危ない光景だった。

「ふふふ、ケラっちのなでられてる時の声はたまりませんなぁ」

「もーミーは変態だね。でもクーも悶えるケラっちは愛おしくてたまらないなぁ」

 こしょこしょこしょこしょ

「ぁ、っちょ、……ぁぅぅぅ」

 二人の変態に翻弄されまくるケラだっが、思わぬ形で助け舟が現れた。

「ふぅ。まったく双子姫様は相変わらずだのぉ」

 おもわず声をもらしたコーラルの方を向き、目がキラーンと輝く姫二人。

「げっ……」

「「ふっふっふっふ」」

「ちょ、姫様方、こんなおじさんケットシーいじらんでも、ほ、ほら、こっちにも若いのがいますぞ!」

 息子夫婦を引っ張りだして双子姫の前に出すが、すでに彼女達の目はコーラルのそのぽよんぽよんのお腹しか、見てなかった。

「「ぽよんぽよーん」」

「ひぃ……」

 その後、十分ほどひたすら腹をぽよぽよされたケラ父のコーラルは、ほんの少しだけ痩せたように見えた。



「で、ケラ、お前はどっちに賭けたんだ?」

 双子姫が去り、自分の席でぐったりする父を横目にケラ兄のラルクは、妹に今回の勝者予想を聞いてみた。

「もちろん真一郎様に決まってるでしょ!悪徳領主をこてんぱにのしちゃう方に十万F賭けましたよ」

「じゅ、十万か!こりゃまた随分奮発したなぁ、しっかしそんだけ出せるって事は、さすが王宮で働いているだけあって高給取りなんだな」

 ちなみにフォレイティアス王国の通貨の単位はフロン1Fが1円と同じくらいの価値だ。ただ、紙幣がないこの国では千と五千Fが銀貨、一万Fが金貨となっている。それ以下の一、五、十、五十、百、五百は全て銅貨にそれぞれの数字が書いてある物となっている。

「これでもちまちま貯金とかはしてるんですよ。ただ、出すときは金を出せって、父さんの教えですからね。今回は真一郎様にがんばってもらうためにも願掛けをかねて、奮発したんだ」

「そうかー、まあ俺も殿下に五万出したがな、でもな、親父はブルザック卿に金を出したんだぞ」

「えー!父さんどーゆー事ですか!あんな悪徳領主が王族になってもいいと!」

 椅子にぐったりと腰かけていた父をゆっさゆっさと揺らしながら抗議したケラ。

「うぅぅ、ま、待て待て。ふぅ、いいか、殿下にはぜひ勝っていただきたいし、ブルザック卿が王族に仲間入りなど勘弁してもらいたい事態だ」

「じゃあなんで!」

「考えてもみろ、つい数日前まで日本で暮らし、戦闘経験など無いであろう殿下と、第二師団で副団長補佐にまでなったブルザック卿。どう考えたってどっちが有利かは一目瞭然だろ?現にさっきの賭け予想ではブルザック卿に賭けている人数の方が多かったんだぞ」

 副団長補佐とは、実質その師団の三番目に強いという事だ。魔法特化の第二師団でそこまで上り詰めたからには、魔法に関してはそれなりの力があるという事になる。

(そーか、そういえば皆、真一郎様のお力の事は知らないんだ)真一郎に初めて会って以来、彼はケラを王宮で見かけるたびに声をかけて色々と話をしてくれた。もちろん真一郎のアンチマジックの力もケラは知っている。だからこそ魔法主体で戦うブルザックに勝ち目はないとケラは思っていた。

「ふっふっふっふ。父さん、まさか真一郎様が何の策もなしに、決闘を申し込んだと?」

「む、なんだその何か隠しているような感じは、さてはお前何か知っているな」

「秘密です。いやーそうかそうか、今現在は悪徳領主殿の方が上ですか。って事は今回私は結構勝たせてもらえる事になりそうですね」

 不敵な笑みを浮かべ父に笑いかける娘。

「むぅ、お前のその自信。おそらく相当な策があるんだろうなぁ、あぁ、どうしよ、今から変えてこようかな……」

 ちなみにコーラルは二十万ほどかけている。王国きっての大商人なのだから、二十万くらいどうって事ないはずだが、やはり損をするのは嫌らしい。

「親父、今から行っても遅いとおもうぜ。大体あの人ごみをまた戻るのか?」

 ラルクが指さした先には、ごったがえした人ごみの中、かすかに見える客席出口だった。

「うぅ。あれじゃ着くころには賭け販売が終了してしまうわい。まぁいい、真一郎様が勝つ事を祈りながら、できれば負けてもらえるようにとも祈ろう」

「父さん、神様はそんな不純な願い聞いてくれませんよ」

 頭を抱える父をなんとも言えない表情で見つめるケラだった。

「なぁケラ、殿下にはどんな秘策があるんだ?俺は殿下に賭けてるんだし教えてくれよ」

「兄さんにも内緒です。始まってからの楽しみにとっといてください」

「なんだよケチ。まっ、勝ってそうなれそれでいいか」

 ケラ達が話している間にもどんどんと周りの席が埋まっていった。この中央エリアには、ケラ達以外には各師団長、それに高官と言われる政治の中心人物達、まさにそうそうたる顔ぶれだった。もちろん最前列には八姫と義母達もそろっており、真一郎の登場を今か今かと待ちわびていた。






 スタジアム内にある控室と書かれたロッカールームで真一郎は静かに時を待っていた。スタジアムの熱気や賑わいなどまったく彼の耳には入っておらず、決闘前と言う日本にいた頃には考えられなかった状況の自分に静かに問いかけていた。

(ふぅ。落ち着け落ち着け。カラテとかの試合だと思えばいいんだ。なーに相手は魔法しか能がないでぶっちょおやじだ、これでも色々と試合経験だけはあるし、格闘技も一通りいける。日本で元気な友達に絡まれてると思えば何て事ないさ……あぁでも、もし負けたら国がえらい事になりかねない……やっぱ他の策の方がよかったかなぁ……)ひたすらに自問自答を繰り返す真一郎にふいに声がかかった。

「真一郎様、決闘前にお食事でもどうですか?腹が減ってはなんとやらですよ」

 そう言いながらミミットさんがサンドイッチを出してくれた。柄にもなく緊張してたせいで、朝食を食べていない真一郎を思っての事だった。

「あぁ、ありがと。そーだね、ちょっと腹に入れておこうかなぁ」

 見れば色とりどりの具が入ったサンドイッチは実においしそうだった。とりあえず好物のハムタマゴサンドを口に頬張ってみたが、やはり緊張のせいかあまり美味しく感じられなかった。

「はぁ。やっぱ俺、緊張してるなぁ」

「真一郎様は普段試合前などはどうやって緊張をほぐされてるのですか?」

 ヴィラントが紅茶を淹れながら聞いてきた。

「そ~だな~。正直俺、あんま緊張したことないんだよね。今回は初めての経験ってのもあるけど、それ以上に負けた時の事考えると特にね……」

「確かに、今回の決闘、負ければブルザック卿の王族加入が確実ですしね。でも真一郎様なら大丈夫だと思いますよ」

「ホントに?」

「ええ、アンチマジックがあれば彼の魔法は無効になりますし、あの体系ではたいして動けないと思いますしね。若い分真一郎様の方がスタミナもあるでしょうから、相手を翻弄し疲れた所にトドメを刺すなんていかがですか?」

(前々から思ってたけど、ヴィラントは結構黒いトコロがあるんだよね。まぁこっちの戦いの先輩からのアドバイスは素直に受け取るべきかな)

「あーそれもアリかもね。とりあえずはメーメスさんの指示通りの事もしなきゃいけないから、その後はヴィラントのアドバイスも考えながらやってみるよ」

 メーメスの策の一番のポイントは戦闘中にある。このポイントを押さえなければヤツを牢屋へは入れられないため、ほぼ完成した策の最後のポイントを必ず成功させる事こそが、今回の決闘において真一郎が最も重要視するべきところなのだ。

「お役に立てて光栄です。そうだ、真一郎様、気分転換にスタジアムの様子でもご覧になりますか?」

 どーにも緊張がほぐれない真一郎を思ってかヴィラントがそう切り出してくれた。

「スタジアムの様子?決闘以外にも何かやってるの?」

「ええ、決闘前の余興があるんですよ。少々お待ちを、魔道鏡を準備いたしますので」

 そう言うとヴィラントは、ロッカールームに備え付けられていたテレビの様な四角い鏡に近づくと、自分の魔力をそそいだ。

 ヴィラントの魔力を受け取った魔道鏡にはだんだんとテレビ映像のようなものが映り始めた。

「おぉーこれってテレビみたいなもん?」

「あちらのテレビに似ている物ですね。この魔道鏡(マドウキョウ)は離れた場所の映像を見る事ができます。スタジアムの方に魔道鏡とリンクした使い魔がおり、その使い魔が見 たものがこちらに映る仕組みです。ただテレビと違うのは、映像の保存などが出来ない事ですね」

「へー。結構便利だね」

「魔道鏡はとても高価な物のため、一般家庭にはまだまだ普及はしておりませんが、街中のあちこちに設置されているので、皆そこに集まって観ている事が多いようですね」

「なんかテレビが売り出されたばっかの日本みたいだねー。魔道鏡っていっつも何か映ってるの?」

「大体が今回のような決闘中継や各種式典などを映す目的で街に設置されてますので普段から映ってる訳ではないんですよ」

 ボンヤリと映し出された映像をなんとなく眺めていた真一郎だったが、魔道鏡がだんだんとハッキリ映像を映し出し、スタジアムの現場を目にし絶句した。

「な、なんじゃこりゃ……」

 これまで王国で沢山の驚きに出会ったが、今回のもまた特大の驚きだった。

「エート……ヴィラントサン、コレハナニカナ?」

 片言で聞く真一郎にヴィラントはさも当たり前の様に答えた。

「こちらは決闘の余興ライブです。今回は真一郎様の決闘という事もあり、今、王国で最も有名な歌姫、アリシア・マッケンリー嬢に歌って頂く事になったそうですよ」

 真一郎が目にした魔道鏡の映像では、今まさにその歌姫が登場した所だった。



「さぁー!!フォレイティアス王国のみんなぁ!準備はいいかな~!?」

「うおぉぉぉぉぉぉ!!」

 大歓声の中、様々に輝く光と煙。何処から出てるか不明なレーザーやら客席に輝くサイリウムが決闘の舞台と言うよりは、アイドルのコンサートそのものだった。

 そしてステージに立つのは、長い金髪をツインテールにし、ピンクのふわふわでひらひらなロリータ服に身を包んだ猫耳美少女だった。

「こらこらぁ~まだまだ声がちいさいゾ☆みんな?!準備はい~い~!?」

「うおぉぉぉぉぉおおお!!!」

 歓声よりも怒声に近い声にアリシアは満足気に笑った。

「よーし!さ~みんなぁ!真一郎殿下の決闘楽しみか~い!?」

「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!」

「でも!アタシの歌も聞きたいか~い!」

「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!」

「そんなにアタシの歌がききたいか~!!」

「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!」

「仕方ないわねぇ。それじゃあみんな!」

 アリシアは思いっきり息を吸い込み、お決まりの掛け声を叫んだ。

「「「アタシの歌をきけぇぇぇ!!」」」

 会場が一体となって同じフレーズを叫び、地響きのような歓声の中で歌姫の歌声が響き始めた。



「……これって余興なんだよね?」

「はい、そうですよ」

 何か問題でも?みたいな顔でこっちを見るヴィラントに「あ、うん、いいんだ、何でもないから」とぎこちなく笑い、再び魔道鏡に見入る真一郎だったが(これ明らかに俺の決闘よりこの余興がメインだろ……特にあのお揃いの服の集団なんて絶対歌姫目当てじゃん……)

 魔道鏡の中には熱狂する客席が映っており、その一角には、お揃いの裾が長い白い学ランの様な服を着た集団が、周りの目線など気にせずサイリウムを両手に持ちながら踊り狂っていた。

「今回は確かサプライズで歌姫が登場したらしいですが、やはり熱心なファンは事前に情報も持っていたようですね」

 ヴィラントが白学ラン集団を見ながら教えてくれた。

「そーなんだ~。ねぇ、ヴィラント、なんか王国の人達ってさ、お祭りとか騒ぐの好きだよね~」

「そうですね、基本的に暗い事でも明るく乗り切る感じはありますね。そうだ真一郎様、以前グライン様に教えていただいた言葉があるんですが、今の真一郎様にも是非聞いておいて頂きたいのですが」

「父さんから?どんなの?」

「『人生楽しんだもん勝ちだ』です」

「そ、そりゃまた随分ポジティブな考え方だなぁ」

「私自身、この言葉に救われたのは事実です。それまであまり人とかかわりなどもなく、自分の殻にこもって戦いに明け暮れていた私に、新しい可能性という光を与えてくれたのがこの言葉です」

 あれはかれこれ三十年前、グラインとの戦いの末、彼に敗れたヴィラントに笑いながら彼が教えてくれた言葉。


「いいか、ヴィラント、どーせお前はまだまだ生きるんだ。一度きりの人生だぞ、もっと楽しめ!そうだ、俺らの国には昔から伝わる言葉があってな、『人生楽しんだもん勝ち』って言葉だ。いい言葉だろ!せっかくの人生だ楽しんでいこうぜ!」


「グライン様の言葉は深く私を癒してくださいました。真一郎様、我らフォレイティアス国民はこの言葉を胸に日々を過ごしています。一度きりの人生を思いっきり楽しむべきだと思いませんか?」

 ヴィラントの過去に何があったかはまだあまり詳しく聞いていない。でも今の彼の表情を見れば何があったにせよ、自分の父の言葉で彼は救われたのだ。

「そっか、確かに、どーせなら楽しんだ方がいいもんね。でも、いいのかな?ほら、パラメアの人の事とかあるのに楽しんじゃって……」

「それは考え方次第ですね。確かに彼らはひどい仕打ちをうけ、困難をのりこえ王都まで来ました。彼らが今まで通ってきた道のりを考えれば、とても笑って済まされるものではないでしょう、しかしグライン様だったらそういった時こそ笑ってましたよ。どんなに苦しくてもつらくても笑っていればいい事がある、そして自分が笑えば周りの皆は安心してられるとおっしゃっていましたよ」

「苦しい時にこそ笑えって事?」

「ええ、その通りです。実際に私は、グライン様の苦しみに満ちた顔など見た事がありませんでした」

「父さんてそんな人だったのか……」

 母からもあまり父の事は聞いたことがなかった。王国に来てからは色々な人にすごい人だとは聞いていたが、実際に父がどんな人か聞いたのかは今回が初めてだった気がする。

「そうか、笑う門には福来るってやつかな。俺はさすがにいつも笑ってはいられないかもだけど、楽しめる時には楽しんだ方がいいって事だよね」

「ええ、その通りですよ。なんたって今回は悪者退治ですよ。思いっきり派手に楽しんでいいと思いますよ」

 めずらしくウインクなんかしてるヴィラント。さすがイケメンだけあってめっちゃ様になってた。

「ヴィラントのおかげで、なんかだいぶ気持ちが落ち着いてきたや」

 気が付けば緊張なんてものはどっかに行ってしまっていた。父の様にはなれなくても、父に近づきたい、父が育った国で、父のように笑って過ごせれば、きっといつか父の様な誰からも愛される人になれる気がする。正直王国に来て、誰もが父に似ているとか、父の様に立派になれとか言ってくるのはプレッシャー以外の何物でもなかった。でもそれは父の事を自分があまり知らなかったせいなのかもしれない。父の言葉を聞き、父の考え方を聞いた今、父への自分の認識というか考え方、それまでぼんやりだったそれらが、少しづつ形あるものへと変わり始めた。ただ珍しいもの見たさで王国に来たとも言える自分が、少しづつ変わってきていた。



 いつの間にかアリシアのライブも終了し、いよいよ真一郎が決闘へ赴く時になっていた。

「はぁ、なんかあの余興の後に出てくのすごい嫌なんだけど……」

 真一郎は闘技場へ続く扉の前に控えていた。

「心配なんて不要ですよ。皆真一郎様のご活躍を楽しみに来てるのですから。存分にお力を見せつけて来てくださいね」

「はいはい。どうせなら思いっきり楽しんでくるよ」

「そのいきですよ」

 にっこり微笑むヴィラント。(さっきからの会話といい、たぶん元気づけてくれてるんだよね)その気持ちが分からないほど鈍感じゃない真一郎は「ありがと」と短くつぶやき扉を開けて進んだ。





「さー!ご来場の皆様!長らくお待たせ致しました!これより本日のメーンイベント、真一郎殿下対ブルザック・ノートン卿の決闘を開始いたします!」

 先ほどまでのライブ会場はどこへ消えたのか?そう思わせるスタジアムの中心には、闘技場の様なスペースが現れていた。サッカーコートくらいの大きさの線が引いてあるが、これはあくまで目安らしい。ちなみに、客席の方には特別な魔方陣での防御壁があり、これが疑似アンチマジック効果を発揮しているため、戦闘中にもし魔法などが客席に飛んできても大丈夫な仕組みになっているらしい。

「今回も決闘実況中継はこのスキーリング・タリオカがお送りします!さて、まずは今回の立会人のご紹介です」

 そう言って闘技場中央に立つスキーリングは客席から一部飛び出した形で宙に浮いている部屋を指さした。ちなみにスキーリングは第一師団所属のれっきとした王国騎士だ。

「今回の立会人は、我がフォレイティアス王国の法の番人!法務省長官にして裁判所最高責任者であらせられる、メーメス・ゴート氏でございます!」

 スキーリングの紹介に手をふって答えるメーメスだった。

「そして、お隣には今回の解説者、第四師団師団長ライオネル・ファスコ氏です!」

 ライオネルがメーメスと同じように皆に手をふると、明らかにさっきと違う黄色い声がこだましていた。

「いやー相変わらずの女子人気ですね。うらやましい!さて、みなさんもう待ちきれませんか?そーでしょそーでしょ!私だって待ちきれませんよ!」

 スキーリングの問いかけに皆が「そうだそうだ」「早くはじめろ!」などとヤジを飛ばしていた。

「分かってます。分かってますって。でわ!いよいよ本日の主役の方々に登場して頂きましょう!まずは西のゲートよりご入場!元第二師団副師団長補佐にして現在はパラメア領領主!黒い噂が絶えないグレーゾーン貴族!ブルザック・ノーーートン!!」

 スキーリングの過剰なる紹介と同時に西側の扉が開き、ブルザックが堂々たる入場をしてきた。全身煌びやかなベルベットのローブを羽織り、手には短めの杖、腰にはレイピアを差していた。入場と同時に会場中からおこったブーイグなどどこ吹く風でそのまま堂々と闘技場へ進んでいった。

「さて、続いては!皆様お待ちかね!我らがフォレイティアス王国王位継承権第一位!十二年ぶりに王国へ帰郷なさるやいなやこの騒ぎ!昨日のパレードでの堂々たるお姿はすでに王者の風格!さーみんな!心してお迎えしてくれ!真一郎殿下のご登場だぁぁぁぁぁぁ!」

 鳴り止まぬ歓声と拍手喝采。皆が真一郎の名を口々に叫ぶ中、彼はゆっくりと扉から現れた。グラインにどこか似ている顔立ち、昨日と同じ制服姿に手に木刀を持ち現れた彼は客席をぐるりと見回すと笑顔で手を振っていた。



(うおぉぉ、何だこの大歓声、凄いなぁ、とりあえず手ふっとこうかな)

 扉を出る前から聞こえていた大歓声が、開けた瞬間さらに大きくなり真一郎の鼓膜を刺激した。皆が呼ぶのは自分の名前。ほとんど知らない人なのに皆は自分の事を知って、おそらくこれから起こる事に期待しているのだろう。

(さて、やるだけの事はやろう。それとなるべく笑顔はたやさずにか)

 闘技場の中央まで来ると、先に登場したブルザックが待ち構えていた。相変わらず趣味の悪い装飾だらけのベルベットのローブを羽織ってた彼を見て(なんか大阪のおばちゃんに見えてきたぞ……)なんて思えるのも心に余裕ができたからだろうか。

「殿下、随分と軽装ですが、よろしいのですかな?それにその木の刀、それで本当に戦うつもりで?」

 ブルザックの明らかにバカにしている視線も今はもう全然気にならなかった。

「ああ、あんた相手ならこれで十分さ。正直素手でもいいくらいだけどさ、さすがに素手の若者にぼっこぼこにされたんじゃ、あんたもカッコつかないと思ってさ」

 あくまで冷静にそれでいて相手を怒らせるように。なるべく彼から平常心を取り除き怒りで我を忘れさせたかった。

「ほっほっほ、中々の自身ですな。その自信が仇とならぬよう祈っておりますよ」

(まったく、どこまで行ってもワシをバカにする気か!まぁいいさ、開始と同時に終わらせてやるさ)

「それでは両者とも!準備はよろしいですか?」

「もちろんだとも」

「いつでもいいよ」

 二人に確認にしたスキーリングは片手を高らかと掲げた。

「ならばいざ尋常に!フォレイティアス王国、第387回決闘をこれより開始いたします!両者とも!はじめぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 会場に響き渡る開始の合図とともに先ずはブルザックが動いた。素早い詠唱を済ませた彼の周りには数十個の火の玉が現れていた。

「おっっと!これはブルザック氏、いきなりのファイヤーボールの多重詠唱だ!ざっと数えて五十近くあるぞ!殿下はどう乗り切るのか!」

 会場中が注目した真一郎はその場を一歩も動くことなく、いや一歩どころか微動だにしていなかった。が、彼はうっすらと笑っていた。

「おやおや殿下、何もしなくてもよろしいので?この魔法だけで勝負がついてしまいますよ?」

「俺の事は気にしなくていいからさ、ブルザック、どんどん打ってきていいよ?」

「ほほぅ。よほどの秘策でもありますかな。でわ遠慮なく!!」

 ブルザックが振り上げた片手を思い切り振りおろすと、それを合図に彼の周囲にあった火球が勢いよく真一郎めがけて飛んで行った。

(どんな策があるかは知らんが、あの数を全てさばききれる訳がない。多少はさばけてもその後はスキだらけ、どれ今のうちに次の詠唱を始めておくか)

 ブルザックが次の魔法の詠唱をひそかに行っている最中も火球は次々に真一郎に命中していった。いくつかが地面にぶつかったせいか、すさまじい土煙と爆炎により真一郎の姿は確認できなかった。会場中が静まり返り土煙のはれるのを見ていた。

「おぉぉっと!これは大丈夫なのか!殿下のお姿はどこへ!」

 実況しながらも真一郎の姿を探すスキーリングは土煙の向こうに人影を見つけた。

「いました!殿下は無事です!」

 彼の言葉の後でだんだんと納まってゆく土煙の中、何事もなかったように先ほどとまったく同じところで、にこやかな笑顔で立っている真一郎がいた。

「うおぉぉぉぉぉ!」「殿下ぁぁぁぁぁぁ!」

 あちこちから真一郎の無事を祈る声と称賛する声が飛び交っていた。

「ば、ばかな、傷一つないだと……」

 多少なりとも火球によってダメージを期待していたブルザックが困惑の表情を浮かべていた。

「な、ならばこれで!」

 ブルザックは、すでに詠唱を済ませてある自分の最高火力の魔法をその場に体現させた。

「サンダードラゴン!」

 詠唱と共に彼の前に現れたのは、まさに雷のドラゴン。バチバチと辺りに放電しながらかろうじてその姿がドラゴンの様に見える雷の塊だった。

「これは精霊の力を最大限に引き出す精霊獣召喚!私の魔力をもってすればこのように雷のドラゴンすら呼び出せるのです!」

 精霊獣はいわば精霊の塊だ。その塊に魔力をそそぎ己の自由な形や攻撃にに変える事ができる。今ブルザックが出したドラゴンはドレイクとはまったく違い、自分の意思もなくただ形をドラゴンに固定させただけの精霊と魔力の集合体だ。ある意味もっとも原始的な魔法とも言えるそれは、姿通りの凶悪な威力を秘めている。

 そして雷のドラゴンはゆっくりと真一郎を見据えた。

「行け!サンダードラゴン!その小僧を黒焦げにするんだ!」

 その声と共に雷のドラゴンは空高く飛翔し、急旋回、真一郎の元へと一直線につっこんでいった。その姿はまさに振りそそぐ一本の巨大な雷そのものだった。

 対する真一郎はというと、最初は雷のドラゴンに驚いていた様だったが、今はすでに上空の雷をしっかりと見据えて、右手をその雷が落ちてくる空にかざした。

 とどろく雷鳴、けたたましくバチバチと音をならしながら周囲の空気まで感電させるようなその巨大な雷に、客席はすでに静まり返り、瞬き一つしない瞳で闘技場を見据えていた。そして、巨大な雷は真一郎のかざした手に触れるか触れないかの所で、あっけなく、本当に一瞬でその姿を瞬時に虚空へ消してしまった。

「な、なんだと……」

「な!なんとぉぉぉ!ブルザック卿のはなった精霊獣が一瞬で消えました!これは一体何が起こったのでしょか!一体殿下は何をしたのでしょうか!?解説のライオネルさん!どーいう事ですか!」

 ざわめきが広がるスタジアム内、今真一郎が見せた光景は理解不能だった。現状精霊獣での攻撃は上級魔法のさらに上、限りなく超級魔法に近い、凡人には到底到達できない高みの攻撃だ。それを一瞬で消してしまった真一郎の姿を目にした皆が、事情を知っているであろうライオネルの説明を求めていた。

「解説させていただきます。すでにお気付きの方もいらっしゃるかも知れませんが、殿下は前国王グライン様と同じアンチマジック能力をお持ちです」

 端的に伝えたライオネル。本当はグラインとは似て非なる能力だと彼も知っていたが、そこまで話す必要はないと判断したらしい。

「な!なんと!!!真一郎殿下がまさかのアンチマジック能力者!これはおどろきです!いや、しかしグライン様のご子息ならば当然と言えば当然!まさに獅子の子は獅子と言ったところでしょうか!」

 シーンと静まり返ったスタジアム内にスキーリングの声が響くと同時に、これまで以上の歓声が響き渡った。



「ケラ、お前殿下の能力知ってたな……」

 恨めしそうに娘をにらむコーラルに

「だから殿下が勝つって言ったじゃないですか」

 満面の笑みで答えるケラだった。



「バカな!アンチマジックだと!あのバカ王だけでなく息子の貴様までそんな物を!神はどこまでおろかなんだ!」

 すでに真一郎を王族とも思わない発言で攻め立て、さらには前国王まで侮辱し始めたブルザックは神の愚行を嘆いていた。自分には人より多めの魔力や魔法の才を与えたくれた神だが、それ以上の物をよりにもよってあの男とその息子に分け与えた。ブルザックの怒りはもう納まる事ができないでいた。

「さて、ブルザック。俺の力があればアンタのお得意の魔法は全部無意味だ。それでもまだ戦いを続けるのか?」

「ふ!ふざけるな!魔法など無くとも貴様の様な小僧一人、この剣で貫いてくれるわ!」

 半狂乱になりながら腰のレイピアを抜き、真一郎へと一直線に突撃してくるブルザック。誰しもがこんな攻撃よけれると思い安心していたが、真一郎はまたもその場から一歩も動かずブルザックの刃を自分の左肩に受けた。

「グハッ……さすがに痛いわこれ」

 真一郎の左肩にささるブルザックのレイピアからは体を伝って真一郎の血が滴り落ちていた。場内はいつのまにか先ほどの歓声がうその様に静まり返っていた。

「ハァハァ、こ、小僧、なぜよけなかった」

 自分の刃が刺さった事で多少は冷静さを取り戻したブルザックは、自らレイピアを真一郎の肩から抜き、自分をまっすぐに睨みつける真一郎に問いかけた。

「正直、あんたがここまでバカで助かったわ。結構痛いけど、レイピアってでっかい針みたいなもんだからね、それにいちお肩のとこに仕掛けも仕込んであるしね」

 そう言いながら真一郎は肩から粘土の塊を取り出した。この粘土のおかげでレイピアで受けた傷は最小限に抑えられた。とはいっても極太の針で刺されたのだ、出血もそれなりにあり、周りからみれば結構な手傷に見える。

「い、一体何を考えている!」

「ふふん。秘密だよ」

 そう言いながらブルザックを見据える真一郎の目は、あのグラインも及ばぬほどの冷徹な笑みを浮かべていた。

「さて、俺がやるべきことは終わった。じゃあブルザック、悪いが負けてもらうよ」

 そう言うと真一郎は右手に持っていた木刀を正眼の構えに持ち直し、精神を集中させブルザックへと打ち込んだ。

「ひぃ!」

 真一郎の気迫がこもった木刀は真剣並みの剣気をはなち、次々にブルザックへと打ち込まれていく。魔法主体での戦闘に慣れたブルザックは痛みにも、相手の気迫にも慣れていない。すでに初手でレイピアをたたき落とされた彼は、ただただ打ち込まれながらも必死にその刃から逃れようと地面を這いずり回っていた。

「さて、なんかこれ以上やると弱いものいじめみたいだしな、これで終わりにするよ!」

 逃げる力も失い地面に転がり込むブルザックに真一郎が最後の一撃を振り下ろそうとした時

「まった!わかった!ワシの負けだ!」

 痛みと恐怖に負けたブルザックは体をふるえながら自身の負けを認めた。

「な!なんとぉ!ブルザック卿がまさかの負け宣言だ!!この勝負、真一郎殿下の見事な勝利だぁぁ!!」

 それまで静まりかえっていた会場に、試合終了の声がかかり、瞬間会場中から響き渡る大歓声。皆がそれぞれ思い思いの真一郎への労いを叫んでいた。

「ふぅ、なんとかうまくいったかな」

未だ地面にころがるブルザック。その姿に多少は憐れみを覚えるものの、自身の領民への仕打ちを考えれば当然の事とも思えた。

「勝者、真一郎殿下への盛大な拍手を!」

 スキーリングはそう言いながら真一郎の元へ来ると、その場で跪いた。

「殿下!見事な勝利おめでとうございます!」

「あ、いいよいいよ、そんなかしこまんないで」

「殿下の勝利は我等騎士団の勝利も同じこと。そのお方に礼をつくすわ騎士団として当然の事です」

 実況中の少年の様なイメージと全然違うスキーリング。

「え?スキーリングさんて騎士団なの?」

「はい、第一師団に所属させていただいております」

(確か第一師団て少数精鋭だよね?この人は実況なんてやってていいのか?)

「殿下の仰りたい事は分かります。精鋭部隊の第一師団がなぜ実況などを?ですよね。」

「あ、うん。わかっちゃった?」

「実はこの実況は、私の趣味です」

「へ?それだけ?」

「はい!趣味は大事ですよ。人生楽しむためには好きな事を精一杯やる事も重要ですからね」

 そう言ったスキーリングは、先ほど実況してた時のような少年の様な笑顔に戻っていた。



「しんちゃぁぁぁぁぁぁん!」

 シルフォーネが飛びついてきたのはその後すぐだった。

「しんちゃん大丈夫?肩痛くない?」 

 そう言いながらも背中に抱きつく義母の重みと、ぷにぷに感触に耐えながら周りを見渡せば、いつの間にか客席から降りてきたジュリエッタや姉妹、各師団長がその場に勢ぞろいしていた。

「えーっと。とりあえず終わったよ」

 シルフォーネを背中に抱えながら家族達に笑いかける真一郎。

「うむ。よくやったな真一郎!」

 ジュリエッタが満面の笑みでそれに応え、姉妹たちもみな真一郎へ労いの言葉をかけた。

「ふぇっふぇっふぇ。殿下、立会人として正式に殿下の勝利を宣言させていただきますぞ」

 そう言いながらやってきたメーメス。なんとか離れたシルフォーネを双子に預けてメーメスとスキーリング、そして家族達と一緒に未だ地面にうなだれるブルザックの元へと向かった。

「でわ!ここで真一郎殿下よりブルザック卿へ勝者の品の要求をお願いします」

 スキーリングにマイクをもらいブルザックを見据えて真一郎は言った。

「ブルザック、今回の報酬として、アンタの領地を貰う事にするよ」

 真一郎の声が響き渡り、客席におこるざわめき。

「な!ば、ばかな!領地をよこせだと!そんなバカげた話が通るわけないだろう!」

 地面にうなだれていたブルザックは、真一郎の要求を聞くとさすがに抵抗する気が起きたらしく、痛む体を奮い立たせた。

「ふぇっふぇっふぇ。それが可能なのですよ。決闘法には領地を戦利品にしてはならぬなどとは一言も書いていませんので」

「な………」

「そーゆー事だよブルザック。アンタの領地はこれから俺が管理する。さすがに爵位はとれないからそのままだけどね」

 勝利に満ちた真一郎の顔に対してブルザックは怒りでみるみる赤面していった。

「ふざけた事を!いいか!いつか必ず領地など取り返してみせる!ワシを怒らせた事を絶対に後悔させてやるからな!!」

 ふらつきながらもその場を去ろうとするブルザックを鎧を着た衛兵が前に現れ引き留めた。

「なんだお前たちは!そこをどけ!」

「生憎だが、そこを通す訳にはいかないんだ」

 ライオネルを始め団長達がブルザックに迫った。

「ブルザック卿、貴方を逮捕します」

「な!何の罪でだ!ワシは何も罪など犯してはおらんぞ!」

「罪状はね、王族への反逆よん。貴方、殿下に手傷を追わせたでしょう」

 青いミニスカートのチャイナドレスにトゲ付きのブレスレットをはめて、網タイツをはいてるえんじぇるちゃんが答えた。

「は、反逆だと!わしはただ決闘をしただけじゃないか!」

「フォレイティアス王国の法律にはこうあります。国民は何があろうと王族に刃をむけるにあらず。もしも刃を向ける国民あらば王族への反逆とし、極刑をもって罪を償うべし。とね」

 ライオネルが告げたその法は、王族へなにがあっても戦いを挑むなというものだった。逆らうのも反論するのも自由。ただ、戦いを挑んだ時点でその者は国民ではなく敵になるのだ。戦いの中で造り上げられたフォレイティアス王国のもっとも最初にできた法律だと言う。

「ば、ばかな……ワシが反逆罪だと……」

「ふぉっふぉっふぉ。決闘法にも王族に刃をむける事を許すとは書いてませんのでな。法は変えられませんぞ」

  追い打ちをかけたメーメスの言葉でブルザックはその場に崩れ落ちた。

「衛兵、この罪人を牢へ!」

 ライオネルの言葉で控えていた衛兵がブルザックをずるずると引きずって消えていった。

「殿下、皆に何かお言葉を」

 ブルザックが消え、スキーリングにそう言われ真一郎はマイクを持った。

「えーと何を言えばいいのか分からないけど、今回はなんとかうまくいきました。俺これからも王族として頑張っていくので、みんなよろしくお願いします!」

 そう言いながらその場でお辞儀をした真一郎。

 客席は一人また一人とその場に立ち上がり拍手が沸き起こっていった。拍手にまざり聞こえてくる真一郎をたたえる声、その声に必ず答えなければいけないと真一郎は心に決めた。


「よーし、一回これ言ってみたかったんだよね」

 そう言うと息をすいこみ笑顔で叫んだ。



「これにて!一件落着!」



 スタジアムは鳴り止まない拍手が続いていた。

今回結構長い気がしますね。


次回からはまたドタバタしますので!

今後ともよろしくお願いします!

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