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EightPrincessOneBoy  作者: ぽちょむ菌
第一部『真一郎と八人の姫』
10/38

9話 『真一郎殿下御帰還パレード』

こんばんわ!

誤字の訂正を初めていただきました。

なんか初めて「ああ、本当に読んでる人いるんだ……」

なんて思っちゃったよ!

でも、たぶんほかにもかなりの数誤字脱字あるはず。

これからも精進いたします。



 

 真一郎お披露目会前夜

 王都の裏路地にある酒場にて。

 

 今日も客で賑わう酒場の奥に汚れたマントをはおり、フードを目深に被った一団が居た。足元には長旅用のリュックなどがある事からおそらく旅人だろう。

「で、どうじゃった?やはり予定通りか?」

 ヒソヒソと問いかけるその声は老人のようだった。

「問題なさそうじゃ、殿下お披露目のパレードは予定通り明日の正午からじゃ」 

 こちらは老婆の様な声だ。

「よし。ならば打ち合わせ通りに事を運ぼう」

「成功するかのぉ」

 一番小柄なマント姿が肩をすぼめ言った。彼もおそらく老人だろう。

「元より成功の確率なんぞ0に近いんじゃ。成功するわ神頼みじゃろう。それでもワシらはやらにゃならんじゃ」

「殿下に俺たちの声を届けるだけでいいんだ。失敗したら仲良く死罪だろうが、なぁに老い先短い身だ、人生最後の大博打、勝ってみようじゃねぇか。なぁ!がははは」

 大柄な男は豪快に笑っていた。

「お前さんの博打は負けてばっかりじゃろうが」

 老婆のため息交じりの言葉に「ちげえねぇ」などと他のマント姿からも笑がもれた。

「確かに俺は負ける事が多いがな、だからこそ今回のために、神さんが運をとっといてくれたと考えてーんだ」

「ほぅ。お前さんにしちゃー随分洒落た事を言うじゃないかい。ふっまぁいいさ、その運とやらにかけてみようじゃないか」

 老婆の言葉に答えるように周囲からも「かけてみるか」などと聞こえてきた。そんな様子を見ながら最初に話したリーダーのような男は語る。

「明日、事がうまくいけば全てが変わる。わしらはそれを信じてここまで来たんじゃ。皆の衆よろしくたのむぞ」

 老人の問いかけに仲間達は静かな闘志を燃やしていた。







同時刻、王宮内王族専用食堂にて。


「ねぇしんちゃん、本当に制服でいいの?」

 夕食中、明日のお披露目パレードについて相談中だった。

「うーん。できればあの衣装はヤダなぁ。マントは羽織るからそれでいいにしない?」

「ママせっかく用意したのにぃ」

 いじける母が作ったパレード用の衣装は、煌びやかな宝石をあちこちにあしらった白と金色を基調にした服と白タイツという王子様スタイルだった。

(さすがにあんなもん着れないって)

 趣味の悪い舞台衣装みたいな服を着て街中をパレードなんて、どう考えたって晒し者だ。

「母上、真一郎は私と同じ様にシンプルなモノが好きなようですから今回は諦めて、またの機会にでももっと煌びやかな衣装を用意すればいいでわないですか」

 助け船になってるようでなってないキキの言葉だ。

「えぇーキキちゃんまでそんな事言うのー。もぅ仕方ないわね、今回はしんちゃんに譲るとして、次の機会にはちゃんとママが用意した衣装着てね」

「はーい」

(とりあえず今回は逃げられたけど、次の時どうかわすかも考えとかないとなぁ)

「真一郎、特訓の方は順調なのか?」

 お気に入りのメイプルパスタを食べながらジゼルが聞いてきた。

 ちなみこのパスタ、超甘党のジゼル以外は誰も食べようとしないレアレシピで、クリームパスタにこれでもかってくらいのメイプルシロップをかけた一品だ。さっき味見した真一郎は「甘すぎて口が痛い」と言っていた。

「まだ始めたばっかだから何とも言えないね。ヴィラントはイメージが大事って言ってたけど、その感覚がいまいち分からないんだよねー」

 真一郎は魔力測定の日の夜、クレイルから自分の力の問題点などを聞かされた。

 さらに一緒にいたヴィラントがアンチマジック能力がある事を聞かされ、今日は午後からさっそく特訓をしていたのだ。

 ヴィラントがなぜアンチマジック能力があるかについては「昔王国の実験の被験者になりその結果長寿と能力を得た」と言うかなりオブラートに包んだ説明を受けていた。

「あれ?能力あるのって俺だけって言わなかったけ?」と真一郎は聞いたが

「実験自体が極秘だったので私の能力は非公式な力なんです。お教えできなくて申し訳ありませんでした」と言われた。

 まだ何か隠している気がしたが、本人が言いたくない事なら無理に聞くもんじゃないなと「それじゃ仕方ないか、気にしなくていいよ」とだけ言っておいたのだった。



「ふぁほぅみはいひはまえふぉふへれはひひんはなじ?」

 ミーが口の中いっぱいに何か詰めて何か言ってきた。

「ミーちゃんお行儀悪いわよ」「ほふはほふごっごほぐほ!」

「ほらほら大丈夫?」

 案の定喉をつまらせかけたミーの背中をシャールイが優しくさすっていた。

「クー、ミーが今何て言ったかわかる?」

「たぶん、魔法みたいに名前つければいいって言ったんだと思うよ」

「げっほげほ。クー正解」ミーがグーとした。

「おぉーさすが双子!そうか名前かー、いいかもね、ヴィラントにも相談してみるよ。ありがとミー」

「いえいえ、お兄様のために助言するのが妹の勤めだからね」

「ははは、いやー頼りになる妹がいてよかったよ」

「えへへへ」

「そーいえば明日のパレードってみんなはどこに乗るの?俺の馬車は俺だけって言われたんだけど」

「私たちはしんちゃんの後ろの方の馬車に乗るのよ。しんちゃんが寂しいって言うならママが一緒に乗ってあげてもいいわよ?」

 満面の笑みのシルフォーネ母さん。

「いや、一人で大丈夫だと思う。ゾーイも近くに居てくれるって言ってたしね。」

「やーい、母様また兄様にふられってる~」

「えーんえーん」

 泣きながら隣のジュリエッタにもたれかかるシルフォーネ。

「シルフ、邪魔で飯がくいづらいぞ。そうだ真一郎パレード中はライオネルがお前の警護の責任者だ。何かあったらあれの指示に従ってくれよ」

 真一郎は昨日あったザ・王子を思い出した。

「りょーかい。まぁ何もないと思うけどね」

「油断は禁物だ。いいか、お前も王族なんだ、自分がいつ狙われてもおかしくないって実感をもって行動しろよ」

 酒をぐびぐび飲みながらジュリエッタのお説教が始まりそうだった。

「大体お前はだな、緊張感という物にかけているぞ、自分がどうゆう立場の人間かちゃんと理解してないだろ?王国だって一見平和そうに見えるが、裏の方では貴族たちの結構えげつない勢力あらそいだってあるんだ。それにだな……」

「兄様、ジュリ母様の話たぶん長くなるから、早めに逃げた方がいいよ」

「そうそう、ほら、敵が来るって砦の増員とかいろいろ始まったでしょ?ジュリ母様部屋に缶詰で書類仕事ばっかで早くもストレス溜まってるぽいからね」

「なるほど、二人ともさんきゅね」

「うぉい!真一郎聞いているのか!?」

「あ、はい。あ、そうだ!俺、明日のために今日は早めに休もうと思ってたんだった。ジュリエッタ母さんの有り難いお話はまた次の機会に聞かせて頂きますので、今日はこの辺で失礼します!」

 そう言うとそそくさと食堂を後にしていった。

「こらぁ!真一郎まてー!」

 食堂から廊下に響く義母の声はとりあえず無視しといた。









 真一郎お披露目パレード当日

 パレードは王宮を出発し、王都の中を一周してまた王宮に戻ってくるルートだ。

 先頭に真一郎の乗るオープンカーのような馬車。その後ろを母や姉妹が乗る馬車が続く形になっている。

「殿下の馬車の周りは私達がお守りいたしますのでご安心を」

 ライオネルとガルルート、ゾーイとえんじぇるちゃんが真一郎の馬車を護衛するらしい。

「殿下、何かあったらすぐ私の胸に飛び込んで来ていいのよぉん」

 相変わらずクネクネしてるえんじぇるちゃん。本日の衣装は某恋愛ゲームのピンクの制服プラス緑のショートカットのカツラだ。なんでも式典用らしい。

(この衣装で人前に出れる勇気はすごいなぁ)

「えんじぇるちゃんもよろしくね。何かあったら頼りにしてますよ」

「いやぁん、分かったわ!私が全力でお守りするわよん」

 そう言いながらお得意のハートウインク&投げキッスをかましてクネクネと自分の持ち場に戻っていくえんじぇるちゃんだった。かなりの奇抜な団長なのに周囲の兵はもうなれっこのようで特にきにもせず出発前の最終確認をしていた。

「どうだ真一郎、緊張してるか?」

「あぁ、ジゼル姉さんか、緊張はしてないかなぁ~。とりあえず乗っかって手降ってればいいんでしょ?」

「うむ。だがそれだけでわダメだぞ。しっかりと皆の顔を見ながらやるんだ。心無くただの作業の様に手を振るのでは民の心はつかめんぞ」

「了解。じゃあ心をこめてみんなに顔覚えてもらうようにするよ」

「うむ。頑張れよ」

「お二人とも、間もなくお時間になります。ご準備を」

 係りの兵が出発を告げに来た

「分かった。じゃあ真一郎しっかりな」

「はーい」

 そう言うとジゼルは自分が乗る馬車に向かった。

「でわ殿下、こちらに」

 そう言われて真一郎は自分の乗る馬車に向かった。

 真一郎が乗る馬車は2頭の白馬が引く白いオープン馬車だった。車体の横にはでっかくフォレイティアス家の紋章があり、あちこちにキラキラした宝石があしらわれたそれはまさに王の馬車だった。

(こりゃまたすごい馬車だなぁ)

 衣装といいこの馬車といいこの国の王族はけっこう派手好きなのかもしれない。真一郎が馬車に乗ると馬車の中もそれはまた豪華なものだった。見えない所の細部まで細かく装飾はなされていた。今回は座る予定はないが備え付けられたソファも見ただけでふわっふわ分かると物だった。

 馬車から下を見れば前方の左右にライオネルとえんじぇるちゃん。後方左右にガルルートとゾーイが控えており、その周囲をさらに兵が囲んでいた。前方には王国旗をもった兵や、重厚な鎧を身に纏った兵、美しいビロードのローブを身に纏った魔法使いの一団、さらに騎士団一の巨躯をほこるミノタウロス数人が巨大な大剣の柄を顔と同じ位置に両手でささえて歩き、その後方を鎧を着た兵が百人ほど列をなしていた。真一郎の後方、少し離れた所にW義母とジゼルが乗る馬車、そのさらに後方に残りの姉妹が乗る馬車がいる。本来なら師団長として列に並ぶはずのキキは今日は王族としての出席なので姉妹達とともに馬車に乗っていた。(ちなみにクレイルは案の定欠席)

「それでは出発しますよ」

 ライオネルがそういうと前方からラッパの音が響き、どこからともなく賑やかな音楽も聞こえてきた。

「おぉー、この音楽どこから?」

「これはマリステア嬢の魔法ですよ。方々に散らばせた魔法の玉から音楽が流れるようになっているそうです」

「へー。結構なんでもありなんだね魔法って」

「使い方次第ではなんでも出来ると言う方もおりますからね」

 ちなみにその魔法を使うためマリステアは城でお留守番中だ。

 そしてパレードは進んでいく。ゆっくりとゆっくりと。



「おぉーそういえばこっち来て街に出たのって初めてか。なんかヨーロッパっぽいなぁ」

 真一郎の目に飛び込んできたのは様々な色のレンガで造られた街並みだった。ところどころには日本風の建物も見える。その街中の中心を走る道は、日本で表すなら四車線ほどの幅があり、その中心をパレードが進んでいく。その沿道には数えきれないほどの民が、皆一目真一郎を視ようと押し寄せていた。

「すげ~これ一体何人いるんだ?」

 王都の人口は正確には把握されていないが十万人前後と言われている。沿道を見れば様々な種族が見えた。もっとも多いのはヒトだが、それ以外にも慣れ親しんだリザードマンやケットシー。オオカミの頭を持つものやイノシシの様な顔の者、まだ真一郎があった事のない種族ばかりだった。

「おぉぉぉなんだあの種族!?なんだあれ!?すげー!すげー!」 

 一人馬車の上でテンションが急上昇中の真一郎だった。

「んん!殿下、そろそろ手をふったほうがよろしいですよ」

 前方のライオネルがヒソヒソと教えてくれた。

「あ、そっか、どもども~どもども~」

 真一郎は満面の笑みで沿道の民に手を振っていた。




「来たな」

 列が進んでほどなくして真一郎の馬車を見つめるマント姿が二人。

「合図があるまで待てよ」

「わかっとるわい、しかし見事な馬車だのぉ、同じ王国内でこんなにも差があるもんか……」

「それを正すためにワシらは来たんじゃないか。さて予定の場所にうつるぞ」

「はいよ」

 そう言うと二人のマント姿は人ごみに消えていった。



 異変が起きたのは列が街の中心街を抜けた頃だった。とつぜん前方の方で大きな音をたてて花火が上がったのだ。

「おー花火だ、すげー外国の祭りでこういうのあったなぁ」

「殿下、おかしいです、このような催し予定にはありません」

 ライオネルがそう言って馬車に近づいてきた時だった。突然地面からごごごごごごごっとすさまじい音が鳴り響き、真一郎の後ろになにかが現れた。

「うぉお!なんだこれ!?」

 後ろをふりむいた真一郎の目には先ほどまでいた後続の列はなく、道いっぱいに広がり高さは十メートル以上はありそうな巨大な土壁があった

「殿下!緊急事態です!こちらへ!」

 ライオネルに促され馬車から降りる真一郎。

「まずいわねぇ後ろと完全に切り離されたわよぉ」

「ゾーイ!沿道の建物を通って後ろに行けないか確かめてくれ」

「承知した!」

 ライオネルにそう言われゾーイは沿道の人ごみに消えていった。沿道の人達は突然現れた土壁に、最初は何かの催しかと思っていた様だったが、この騎士団のあわてぶりをみて何か不測の事態が起きたた理解したらしくざわざわと騒いでいた。

「ガルルート、前の兵達の所へ行き状況説明を。それと沿道の安全の確保を。パレードはいったん中止だ」

「分かったわ。殿下をたのむぞ」

「まかせておけ」

 ガルルートが走り去ってすぐ真一郎は目の前に不思議なものが浮かんでいるのに気が付いた。

「シャボン玉?」

 そこには真一郎達や前方の兵を取り囲む様に大量のシャボン玉が次々に浮かび上がってきていた。

「まずいわ!これスリープ魔法よ!耐性ない兵はすぐに散って!」

 えんじぇるちゃんの声は前方の兵たちにも届いたようだったが、時すでに遅し。次々にはじけるシャボン玉。そして次々にその場に眠り込む前方の兵達。

「うむ、どうやらかなり計画された仕業のようですね」

 冷静に判断するライオネルに

「俺は大丈夫だけどライオネル達は魔法で眠っちゃわないの?」

 状況が状況なのになんだか妙に冷静な真一郎の声がした。

「私やジルドはこのような状態異常系の魔法に対抗するため、特別な魔道具を装備しているのでちょっとやそっと大丈夫ですよ。それより殿下気をつけて下さい。列を分断して、さらにはスリープで兵を眠らせ、なのに民衆はそのまま。今回の相手の目的がいまいちわかりかねます」

「そぉんなの簡単よぉ。民衆まで眠っちゃたら観客がいなくなっちゃうじゃない。敵さんが何するか分からないけど、殿下に何かするならば目撃者を作っておいて自分たちがやったって言いたいのよきっと」

「そう単純だといいのだがね」

 そう言いながら腰の剣を構えるライオネル。青白く輝くその刀身は魔法の力がこめられた魔剣と呼ばれるものだ。一方臨戦態勢に入ったえんじぇるちゃんは自らの魔法を自身の拳に唱えた。魔法をまとった拳はまるで炎のグローブをはめたように赤く輝いていた。彼の戦闘スタイルは魔道武術、己の拳や肉体に魔法の効果を付与し、その身一つで敵陣へとつっこんでいくまさに漢の戦闘スタイルである。

 二人と馬車の間に立ち真一郎はつぶやいた。

「これたぶん敵じゃないよ」

「え?殿下その根拠は?」

「私も聞きたいわぁ」

 未だ臨戦態勢を解かない二人に自分の考えを話始めた。

「まず第一に誰も傷つけてない。あんなでかい土壁作れるならさっさとこっちに魔法でも打ってくればいいのにそうしてないじゃん。次に混乱が始まってるのにあちらさんが一向に俺の前に出てこない、俺を狙ってるなら皆が寝たらすぐ来るはず」

「確かに……しかしそれが作戦という考えも、暗殺や殿下のみを狙っているという考えが浮かびますが」

「それこそ変だよ。俺一人狙うならこんな大がかりな事しなくても王城に忍び込めばいい。ここまでの事できるんだ、さっきのスリープとか使えば結構簡単に侵入できると思うよ」

 真一郎のいう事は一理あった。真一郎本人や命を狙うならばこんな大がかりな目立つ仕掛けする必要はないのだ。

(しかし、この状況を一瞬で判断される殿下、これは思ったよりも胆がすわってらっしゃる)

 正直ライオネルの真一郎の評価はあまりよくなかった。世間知らずのお坊ちゃん的な感じで、優しく誰にでも平等で一見するととてもいい王になりそうだが、彼には決定的に威厳と言うか王としての風格が足りないのだ。そこへくると現在王代理として職務を全うしているジゼルは、女だてらに国王代行などしているだけあって実に威厳と風格に満ちているヒトだった。

「たぶん俺に何か聞いて欲しいんじゃないかな?」

「何かとは?」

「さすがにそこまでは、でも王族に頼まないと解決できない何かってのを抱えてて、その為に俺の元に来たって考えもできるでしょ?」

「た、確かにそう考えられなくもありませんが……」

「二人ともお喋りはそこまでよぉん!」

 見ると前の方に薄汚れたマントを羽織った集団が立っていた。全部で八人。皆マントを羽織りフードを目深にかぶっていた。

「何者だ!真一郎殿下の御前と知っての狼藉か!」

 ライオネルの威嚇にも動じずじりじりとこちらに近づいてくる。

「殿下、私のそばはなれないでねぇん」

 一歩前へ出たライオネルの代わりにえんじぇるちゃんがぴったりと真一郎の前をガードした。次の瞬間、真一郎は信じられないものを見た。集団の中で一番体格のよかったマント姿がいきなり咆哮をあげ見る見るうちに巨大な熊へと変身していったのだ。

「グォゥゥゥゥゥゥォォ!」

「なっ!獣化だと!!」

 一瞬戸惑ったライオネル目がけて全速力で突進してくる巨熊。

「ちぃ!」

 瞬時に地面を蹴り加速したライオネルの剣が正確に熊の左肩へとめり込んだ。

「グヲォォォォォォ!」

「手ごたえあった!」

 痛みに耐えかねてか後ろによろける巨熊。しかしその後方から残りの集団が走って来たのを目にすると、すぐさま体勢を立て直しライオネルに向かっていった。巨熊がライオネルに向かっていったのを確認すると、残りの集団はその横を走り去り一直線に真一郎の元へと向かった。

「ふぅ。どうやら私の出番のようね!」

 力いっぱい張り切るえんじぇるだが、真一郎は冷静に告げた。

「えんじぇるちゃんは手出さないで。俺に任せて」

 そう言うと真一郎はえんじぇるを手で静止し、あろう事か自分から前に出て行こうとした。

「ちょ!殿下!危ないからさがって!」

「大丈夫だから、俺に任せて。ね?」

 そう言った真一郎を見てえんじぇるは在りし日のグラインを思い出した。

(同じだ、グラインちゃんと同じ誰も逆らえない目をしている)えんじぇるはその場で初めて彼があの人の子であると理解した。誰も逆らうことができないであろう威厳と風格の中に寂しさを宿した目を持つものを彼はグライン以外に知らなかっただから。(この子思ったよりもずーっと面白そうね)

「分かりました。殿下のお心のままに」そう言うとえんじぇるは真一郎のすぐ後ろに控えた。

「よろしい。さーて、お客さんをむかえますか」



「くそっ!なかなかねばるじゃないか!」

 巨熊は腕の傷など無いかのように暴れまわった。その巨体からは想像もできない俊敏な動きで、ライオネルの剣先を紙一重で交わしながらだんだんと真一郎の馬車から離れていくのだ。

(このベアーは獣化したのに意思をしっかりと持っている!これほどの手練れがなぜ?それに馬車からだんだん遠ざけられている、どうやら相手の作戦に乗せられているか?私を殿下から離すつもりだな)チラッと馬車の方を見れば、向かってくるマント集団を前になぜかえんじぇるが真一郎の後ろに控えていた。(何がおきたんだ!?なぜ殿下が前に!?)何か不測の事態が起きたことを悟ったライオネルは自分の魔力を魔剣に流し込む。魔力を受け取った魔剣はより一層の輝きを見せた。

「君がどれほどの使命を持ってこの場に来たかは分からない、しかし私も王国騎士だ!殿下をお守りるため悪いが君の命、絶たせてたせてもらう!」

 先ほど以上のスピードで巨熊に向かっていくライオネル。巨熊のふりかざす右腕の巨大な爪をかわし、その場で一回転したライオネルは思いっきり地面を蹴って巨熊の首筋に剣を滑り込ませた。

「もらった!」

 ライオネルの剣がまさに巨熊の首を切り落とそうとした時だった。

「まったぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 その場に居る者全員に届くような大声で真一郎がライオネルを止めた!

「なっ!」

 即座に真一郎の声だと判断した彼は、剣先を巨熊の首から自分の方へもどしたが、勢いそのままに巨熊につっこみ、巨熊もそれを抱きかかえるように二人で地面に倒れこんだ。




「いててて、おい大丈夫かい騎士どの?」

「あ、ああ。って!獣化しても言葉が喋れるのか!!」

「ふぉっふぉっふぉ。これも年の功さ、長年こんな体でいるといろいろと慣れてくるもんだ」

 そう言った巨熊の声は老人の様だった。

「どうやら俺の仲間がうまくいったようだな」

「その様だな、まったく殿下は何を考えているのやら」

 さっきまで死闘を繰り広げていたのが嘘の様な会話だった。そんな二人を真一郎が手招きして呼んでいたので、ライオネルと巨熊は真一郎の元へと急いだ。

「さてこれでそろったね」

 七人のマント姿と一匹の巨熊が真一郎の前にひざまずいていた。真一郎の後ろにはライオネルとえんじぇるが控え目の前の集団を睨みつけていた。

「とりあえず顔みせてくれる?」

 真一郎に言われフードを取ったその姿は七人皆が老人か老婆だった。

「ふぅ、みんな随分遠いところから来たんじゃない?靴もボロボロだし、あっちこっち傷だらけじゃん。そうまでして俺に何か伝えたい事があったの?」

 その場にしゃがみ込み集団の目線になって真一郎は話しかけた。

「真一郎殿下、ワシらは皆、北のパラメア領にある村の住人です」

 王国の北側には山脈が広がっておりその山脈のふもとにあるのがパラメア領だ。王国最北端の領土のため王都まで来るのに十日以上はかかるはずだ。

「パラメア領、確か最北端の領土だったね。王都まで来る時間を考えたら、別に会うのは俺じゃなくてもよかったの?」

 王国に真一郎の帰還が知らされたのは彼が到着した日だ。まだ王国滞在四日目の真一郎に会いに来たにしては計算が合わない。

「はい、正直王族の方ならばどのお方でも、声さえとどけばよいと王都に来ました。来たはいいが一向に王族の方にお会いできる糸口がつかめないでいた時に、殿下のご帰還パレードの話を聞きました」

 長旅をしてきたわりに無計画な気もするが、彼らはそれだけせっぱつまっていた。

「で、何を俺たちに言いたかったの?」

 真一郎が真相を聞き出そうとした時突然後方からとてつもない音がした。それと同時に崩れ落ちる土壁。

「「「真一郎無事か!」」」「「しんちゃん大丈夫!」」「「兄様無事!?」」

 見れば義母や姉達がそれぞれ武器を携えてかけよってきた。

「まったくアホみたいに魔力込めた土壁だったもんで壊すのに時間がかかちまったぞ!」

 巨大な刀を肩にかけて歩くジュリエッタ。

「おまけに周りの建物にまで結界張られてたから苦労したわよ。あらその人達が賊?」

 こちらは巨大なハルバートを抱えたシルフォーネ。

 王国最強の二人をしても壊すのに時間がかかった壁。正確にはこの壁にも結界が張られており、あらゆる攻撃を吸収するようになっている。が、さすがの二人の攻撃では吸収しきれずについには崩れ去ったようだ。

「賊って言うかお客さんかな?丁度良かった。シャールイ姉さんいる?」

「ここに居ますよ」

 義母達の間をかき分けてシャールイが顔をだした。

「この人たち怪我してるんだ、悪いんだけど治療してあげてもらってもいい?」

「え?でもこの人達ってしんちゃんを襲った方じゃないの?」

「ん~まだ何も傷つけられてないし、ダメかな?」

「いいわ、しんちゃんの頼みなら断れないもの」

 そういうと集団の前に歩み寄るシャールイ

「めっそうもない!ただの平民の俺らが大司教様に治癒魔法をかけてもらうなど!こんなもんつばつけときゃなおりますから!!」

 巨熊がめっちゃ慌ててた。

「ほう、獣化しても喋れるなんてめずらしいな」

 巨熊を品定めするようにジュリエッタが見つめていた。

「いいのよ、これも私の役目ですもの。傷ついた人に王族も平民もないわ」

 そういうと魔法の詠唱を始めた。

 集団を包み込むように緑と青が混ざったような温かい光が地面からあふれてきた。その光の中でみるみると癒えていく自分たちの体に皆涙を流して喜んだ。

「これでよし」

「ありがと姉さん。それとジゼル姉さん」

「ここにいるぞ」

 姉妹の中でも背が小さい方のジゼルがキキの後ろから出てきた。

「たぶん姉さんも一緒に聞いた方がいい話だと思う」

「分かるのか?」

「なんとなくね、さ、みんな話してもらっていい?」

 

 そして老人達は話始める……




話の切るタイミングがつかめなかったため、こんな形になりました。

戦闘シーンが……。自分のイメージを文にする難しさに改めて文を書く事の難しさを知りました。


さて次回の『はちぷり』は!

老人たちの目的と、それを聞いた真一郎のとった行動とは!


まだまだ先になりそうだけどお笑い要素のみの別タイトルとして

「はちぷりっ!」計画進行中です。


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