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第二章-決闘-

相変わらずの微妙な文です ごめんなさい

「Aクラスに喧嘩売るとは!!!中々度胸があるじゃねーか!!ワハハハハハ!!!……死ぬなよ?」


あの暑苦しい先生ですら心配している。

俺も不安で心が病んでしまいそうだ。いっそ病んでしまった方がいいのかもしれない。


俺とフィーテリーナの決闘はたちまち学校中の噂になってしまった。ちなみに決闘は今日の放課後である。

遺言を書く暇すらない。


「ぐぐぐぐっ……」


授業もロクに耳に入らず、どうやって許しを請うかで頭の中はいっぱいである。

しかし、どうやっても決闘になるだろう。そして俺は死ぬだろう。

あぁあのとき散歩しようなんて考えるんじゃなかった!……仕方がないのだ。仕方がないのはよくよく分かっているつもりだ。


そんな俺を憐れむような視線で見ているDクラスの皆。もちろんこの人たちに助けを求めるのは間違いだろう。

何故ならまだ入学して二日目。友好関係すらまだない見ず知らずに近い俺を助けようなんて酔狂な奴なんていない。

せいぜい、頑張れよ。とか、死ぬなよ。と言葉をかける程度だ。

泣きたいが、泣けない。


遺言を考える暇もなく、お昼になった。

当然、飯など喉に通らない。


「クリフォ・ジュロドール!」


どこで俺の名前を知ったのだろうか?

今あまり聞きたくない声が教室に響き渡った。

ガラッと教室の扉を開けたのは件の幼女、フィーテリーナ・カーリヴェル。

騒がしかった教室が一瞬にして静まり返る。


「なにこの汚い部屋。吐き気がするわ……あっ、いた」


つかつかと俺の方へ歩いてきた。


「最後の晩餐は済んだ?……って恐怖でご飯も食べられないの?」


クスッと笑う。晩餐は夕食だろ。今は昼だ。


「放課後、逃げないでよね?無様に逃げ惑う犬を狩るのもいいけど、やっぱり嬲って殺したいし?」


「ねぇ、あなたはどんなふうに殺されたい?シンプルに燃やされたいかしら?それともぉ……」


猫撫で声で聞いてくる。

もういい、吹っ切れた。

ぶん殴って世間の厳しさというものを教えてやる。


「はぁくいしばれ」


「えっ?」


「なめんじゃねぇぞぉぉぉぉぉぉぉ!!!」


握りしめた拳を思い切りその頬に叩き込もうと……したが、寸前で止める。


「ひっ!?」


俺の突然の暴行未遂に驚き目を閉じるフィーテリーナ。怖がっているようにも見えなくもない。

……ダメだ。やっぱり女は殴れん。

ゆっくりと拳を下ろす。


「おっ驚かせ……んなっ……!!」


「ん?」


あれ、目がうるうるして……?


「ぜ、ぜぜぜ絶対許さないんだからぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


全力ダッシュで去って行った。


視線を感じて、下のほうを見る。

雪火がこっちを不安そうな目でこっちを見ていた。

大丈夫だ、と呟きながら頭を撫でてやる。

そう、きっとなんとかなる……なんとか……











放課後。







体育館。







「逃げずに来たのは褒めてあげるわ……」


さっきの涙目はどこへやら、相変わらずの強気な態度で腕を組んで立っている。


「この体育館に仕掛けがあるのは知ってる?」


そんな話をどっかで聞いたな。……昨日だっけか。もうかなり前のことのように思える。


「見せてあげるわ」


フィーテリーナが右手を掲げ、パチンと指を弾く。


ゴゴゴ……と地面が揺れ出す。体育館の壁が嘘のように倒れ、箱を開いたように倒れたかと思うと光り出す。


「ぬわっ……」


思わず手で目を覆う……


目を開くと、もうそこに体育館は無かった。


古来より伝わるデスマッチの舞台。


いわゆる、コロシアム。


「なんぞこれ」


フフン、と鼻を鳴らすフィーテリーナ。


「こういうときのためにある特別施設。別名"死の闘技場"!」


その名前絶対今作ったろ。


「さぁ、ショータイムよ!」


どこからか現れた観客がそれに答えるように観客席で歓声を上げる。

死ぬ間際に何を言おう。失敗したとでも言おうかな。


さっそく火球が飛んでくる。大きさは大体バレーボールぐらいか?

って呑気に分析してる場合じゃねぇ!


とっさに右に避ける。避けるというより転んだ。尻餅ついてるし。


「休んでる暇は無いわよ!」


炎を弓の形に変化させ、それを直接片手で掴み、逆の手で炎の矢を形成する。


「ぐぅぅぅっ!!」


起き上がる。そしてすぐに左に全力で走る。

さっきの場所に炎の矢が着弾し、霧散する。


「ほらほらぁ!まだまだ10%も出してないわよ!」


今度は右斜め前方に転がる、さっきの場所に炎の矢が着弾、霧散。こいつわざと遅れて撃ってやがる。なめやがって。

反撃しようにも俺の魔法は戦うために使おうとしても発動も遅い、威力射程もない。触媒もない。

無い無いづくし。背水の陣。逃げて逃げて逃げて、当たったらゲームオーバー。

なんて理不尽なんだ。


「くくくっ、よく逃げるわねぇ!これはどう?」


何をしたか確認もできない。

ただ、本能的に頭を腕で守った。


「っがぁぁぁぁぁ!?」


俺を中心に、無数の炎の矢が降ってきていた。

腕に、肩に、背中に、いくつも矢が着弾する。

矢自体はすぐ消えてくれるが、矢がもたらした熱はそのまま残ったままだった。

着弾した部分の制服がすっかり焦げて穴が開いてしまった。傷は焼けたから血も出ていない。


「ほーらもういっちょ行くわよ!」









「ぐっ……くっ……」


あれから何発も全身に矢をもらってしまった。

痛みでフラフラしながらも、なんとか立つ。立って逃げなければ死ぬのだ。


「次いくわよ!」


空に向け、炎の矢が放たれる。

しばらくして小さな爆発を起こすと同時に、無数の炎の矢が俺に向け降り注ぐ。


「うっ……」


前に向けダイブ。ハリウッドダイブというやつだ。

が、これ結構痛い。鼻とか思い切り擦りむいた。


「へー、そう避けるんだ?」


何度も通用するわけないようだ。地面に手を付き、立ち上がる。


「そろそろ飽きてきたわ……。足を潰したらどう逃げるかしらねぇ?」


「へっ?」


高速で飛んできた2本の炎の矢が、俺の両足のふとももに着弾する!


「うぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!?」


半端じゃない痛みが全身を走った。しかも、これは消えない!刺さったままずっと残っている!


「あっ……あっ……うっ……ああああああ!!」


炎の矢がふとももを内側から焼き尽くしていく。しかも、普通の矢と違って抜くこともできない。

ついに立っていられなくなり、地面に膝をついて倒れ伏せる。


「あらぁ?もう立てないの?」


もう激痛で顔を上げることもできない。

耳で近づいてきているとわかった。


「ほら、顔上げて。……上げなさいよ!」


顔を蹴っ飛ばされる。一発だけじゃない、二発、三発と蹴っ飛ばされる。

ひとしきり顔を蹴った後、つま先で俺の顎を持ち上げる。


「ね、今なら許してあげるわよ?」


「うっせー……チビ」


「っ!! 蹴られたり無いようねっ!!」


どうせ許すつもりなんて無いんだろ。

早く、終わってくれ……

そう願いながらひたすら蹴りに耐える。耐え続ける。視界がどんどん狭まってきた。腫れてるのか?


「ほら……もう嫌でしょう?もう蹴られたくないでしょう?許しを請いなさい!今すぐ!」


「…………後30……cm……身長、伸びたら……考えてやる……」


「こんのぉぉぉぉぉおおおお!!!」


ついにキレたのか、両手を掲げる。スーパーファイアーボール(仮名)か……


「もう、疲れた」


「もう、死なせてくれ」


そんな言葉が出てくる。

こんなのが俺の遺言か……やだなぁ、もっと気の利いた言葉……考えたんだけどなぁ……


「な、なんなのよあんた……」


「頼むよ……」


「どこから入ってきたの!?」


「あるぇ……」


俺じゃない、誰だ。


背中にひんやりとした冷たいものが乗っかる。


「わかった!!……この犬のペットね!?」


雪火か……


「雪火……俺はもう……いいから……故郷にでも帰って……」


「……」


雪火は喋らない。でも言葉はわかるはずだ。


「雪火…俺は……」


「……」


「雪火……」


あぁ、そうか。

俺がなんか困ったことがあったとき、いつも助けてくれてたっけか。

小さなころ、誰かと喧嘩したときも俺に加勢してくれたな……負けたけどさ。

そのときもこんな風に膝をついて言ったけ。


「……助けて、くれ……雪火」


「頼む……一生のお願いだ……」


無様だ。それはわかっている。重々承知だ。

でも、もう俺に手は無い。

だから必死に懇願する。


「助けて……助けて……」


我慢していたものが溢れ出す。恐怖、渇望、絶望、後悔。


「雪火……」


「なんだあいつ。自分のペットに助けを求めてるぜ」


「ハハッ、なら最初っから喧嘩なんて売らなきゃいいのにな」


笑い出す観客。

コロシアムを包み込む笑い声、嘲笑い、中傷。

当然目の前の幼女も。

前のときも同じように笑われたな。


「アハハハハハハ!!自分のペットに助けを求めるなんてねぇ!」


「じゃあペットもろとも、死になさい!!」


スーパーファイアーボール(仮名)がフィーテリーナの両手を離れ、落ちてくる。俺へ。


「雪火……たす…………逃げてくれ!」


もう間に合わない。俺は死ぬ。だが雪火だけでも生き残ってほしい。

そうだ、前の時もこうだったな。

結局俺は自分で立ち上がって、


迫る巨大な火球。


「雪火ぁ……!」


雪火を守るためと、


地面に手を付き、全力で力を込める。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」


立ち上がったじゃないか。


強引に立ち上がったせいか、足に強烈な痛みが走る。がそんなこと知ったことか!


背中からずり落ちた雪火がピョコン、と肩に乗ってきた。


気づけば火球は眼前だ。グッバイ人生。ウェルカム天国。









見事目標に命中した。

最後に立ちあがったが、抵抗も無かったように見えた。

黒煙が辺りに立ち込め、どうなったかはよく見えないが多分炭になっただろう。

多少本気でやってしまったから、もしかすると炭すら残ってないかもしれない。


「お嬢様、お疲れ様です」


執事が背後に立ってガラスのコップに入ったオレンジジュースを手渡してくる。


「ありがとう……ふぅ、なんだか疲れちゃったわ……」


受け取って、飲む。すっきりとした甘さがとても好きなのだ。

観客も帰り始めたようだ。


「俺は……サイダーで……」


「かしこまり……えぇぇぇぇ!?」


「ぶぅぅぅ!!」


黒煙の中、生意気なあいつが姿を現す。

煤けてはいるが炭にはなっていないし、何より今喋った!









なんで生きてんだろう、俺。

あいつが噴いたオレンジジュースが顔に思い切りかかった。


「な、ななななななななんで生きてんのぉぉぉぉぉ!?」


「俺が……知るか……」


一歩。

一歩踏み出すだけで意識が吹っ飛びそうになる。が、堪える。


また一歩。


もう、一歩。


「な、なななっ……」


両手を伸ばす。

慌てるばかりで何もできないくそったれの幼女の後頭部を引っ掴む。


すぅ、と深呼吸。喉が痛い。もう何かするたびに全身が悲鳴を上げやがる。


「にゃにゃにゃにゃにぃお、お、お、お、お!!」


ぐいっと腕を引き思い切り抱きしめてやる。


「こ、焦げ臭い!離してぇぇぇ!!」


「絶対……離さない……」


「ぐぐぐぐぐっ!!はぁーなぁーせぇー!!」


「ぬぅぅぅぅ……!!」


これでもかってぐらい腕に力を込める。


「うぐーーーっ……」


「ふぬぬぬぬ……」


少しずつ抵抗が弱まってきた。


「お、覚えて……な……さ……」


完全に無抵抗になった。

執事が焦ったように言う。


「お、お嬢様を離してください!もう勝負はつきました!!」


もしかすると気絶したフリかもしれない。

そうなったら死んでしまう。


「離すもんかよ……」


「いや、なんでですか!お願いですから!早く!」


「絶対……」


あぁ……眠い……くそ……


死にたくない……



















「目が覚めたら俺全裸+腕の中に幼女が寝ている件について」


「あなたが離さなかったんでしょうに……」


俺は保健室で三日間眠っていたらしい。

腕の中にいる幼女は別に看病とかじゃなく、

俺が気絶した後もずっと腕を離さなかったもんだから仕方なくこうなっていたらしい。

色々大変だったのだろう……執事の顔が若干やつれている。

まだうまく体が動かせないが、なんとか腕だけ動かして幼女を解放する。


「とにかく、失礼しますよ。 お嬢様、起きてください……」


「んぅ……後10分……」


「あーもう……背負って行こう……」


「あ、お疲れ……」


「誰のせいだと……失礼します……」


静かに引き戸を閉め、執事は去って行った。

ふと、朝の出来事を思い出す。


「そういやあの幼女なんであんな草だらけになってたんだろ」


「いやぁ凄かったわぁ」


執事と入れ替わるように保健室の先生が入ってきた。


「見たわぁあなたの決闘ぉ……最後、よく耐えられたわねぇ」


消し炭になっててもおかしくなかったと思うんだが、なんで生きてるんだろうね?

今も疑問だ。

隣で寝息を立てている雪火。ひょっとしてこいつが……?


「私のぉ魔法を使ってもぉ後三日くらいはぁ、寝ててもらうわよぉ」


「あ、うっす……」


視線を保健室の先生に戻す。よく見たらこの先生結構いいおっ……


「ふふふ、おやすみぃ……」


先生が指を弾くと、途端に眠気が襲ってきてすぐに眠ってしまった。

もう少し、見ていたかった。

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