プロローグ
「……ねぇ黒夜」
陽が傾き始めた空の下、ひとりの少女が呟く。
「あたし普通科にしようかな?」
「……なに言ってるの?だとしたら俺は入学すら許されない地位になるけど」
「やだな。あたしは、あえて一般人を装おうと――」
「……無理でしょそりゃ」
切り捨てられた少女は、む、と口を噤む。
「特殊科でも隠すことは出来ると思うけど?コントロール・アンド・アシスタンスプレートの能力が、校内で使用できる能力の限界」
「アシスタンスか…。それだけなら、あたしは普通科だよ」
「う…。でも、駄目。姫妃の能力が普通科にいちゃ駄目」
「逆に、アシスタンスで言うなら黒夜は特殊科以外ないね」
「…」
なんとも言い難い表情をする黒夜を、少女はニヤニヤ笑って見つめる。
「でも、学院長のことだから、黒夜が普通科であたしが特殊科にするんだろうね」
「それが妥当だからね」
二人は少し悲しげな表情をしているが、そこには諦めの色があった。
何十年も前から、何百年も前から、そこは存在していた。
異世界であり異空間であるもの。
世界の重要機関で密書として語り継がれ、今や存在すら認識されていないように見えるもの。
しかし、それは確実にあって、最近の数十年でやっとメジャーになってきたもの。
ここに、異空間がある。