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異なる世界で見つけた○○!  作者: 珈琲に砂糖は二杯
第二章《右折と左折と直進と》
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第13話 『○○→本物!』


「デ、デイリー!?」


「ほっほ、お嬢様。ご無事のようで何より」


~小柄な男、いやデイリーはロイオンの目の前だと言うのに、暢気に語る。

しかし、常の間延びした声、油断は一切見られない~


「デイリー様、助かりましたっ」


「っすまねぇ、嬢ちゃん」


~エリアスールがレイラ達の傍へ駆け寄った、ルクーツァはその反対方向で機を伺っている。

ロイオンは今まで以上に痛手を食らい、そしてそれを自分に与えただろうヒトを警戒して、動かない。

お互いに緊張した、静かな、時間が流れる~


「でも、どうしてデイリーが?」


「なに……一人の男に頼まれただけのこと……」


「一人の男?……ヒロ!?」


「ほっほ、彼はヒロと言う名でしたか……えぇ、その青年でしょう」


――――――――

――――――

――――

――


『ワタシは、皆の帰りを門前で待っていました、えぇえぇ、いつものように』


「うぅーむ、少々遅いなぁ……カルガンの群れならばぁ、あの人数がいればぁ……。

それにぃ、レイラ様にエリアスールもいるぅ、そしてあの男ぉ、カルガンならば問題は万に一つもないはずなのだがぁ……」


『まぁ、いつものように色々と心配でしてな、門の外……遠い森を見ていたのです』


「んん?なぁんだぁ?……あれはぁ、っ!!」


『遠い場所を見つめていた時、ワタシの眼に写ったのは一つの影でした。

かなりの速度で森から出てきたのです、そしてカルガンに襲われていた……、ワタシは馬を駆ってそこへ急ぎましたとも』


「アレはいかんっ!誰かおるかっ!?ワシの馬を用意せぃ!」


「デイリー様?……どうかなされたのですか?」


「いいから、馬をっ。えぇい!それを貸せぃ!」


「あっ!?デイリー様!?」


『馬を駆って走るにつれて顔が分かりましたわ、驚いたのぅ。

なにせお嬢様と同じ組の青年でしたからの』


「あれは!?……なにがあったのだ!?お嬢様やエリアスールは何をっ、いやあの男ほどの武人がいてどうして!?」


「はぁっはぁっ、くっ!?」


「どけぃ!小僧っ!!!」


~デイリーは加藤と交差するように駆けた時に、ランスを振るった、軽々と~


「へぁ!?っうぁ!?」


「どぅどぅ…!ふぅ、小僧。一体なにがあった?お前さんの組にはお嬢様……いや、レイラにエリアスールがおっただろう?

あれは中々に腕が立つ、カルガン程度になにかあると思えんが、現にお前は一人でここに……」


「おっさん!助けてくれ!中型がっ、ロイオンが出たんだ!!」


『あの青年はボロボロになっておった、恐らく、カルガンから逃げるためにがむしゃらに森を走ったのだろうの。

カルガンから単機で逃げ切った事も驚いたが、それ以上に彼の言った言葉に驚きましたな』


「なんと!?ロイオンがっ!なんという事だっ……お前さんが一人でここに来たという事は」


「ルクータ達は足止め、いや他の組を助けにいってる!俺は応援を呼びに行こうとっ」


「だからと言って小僧のようなっ、いやそれはいい!ロイオンだな?それは何処に!?」


「森に入れば、笛の音が聞こえるはずだ……そこにいる!」


「笛か……分かったっ、小僧は傷ついた身でつらいだろうが、そのまま街に駆けよ!そしてワシの……これを持っていけ、そして伝えるのだ」


「これは……短剣?」


「そう、そして万が一に備えさせよ、いいな?」


「分かった……街に伝える!………御武運をっ!」


「ほっほっ、生意気に言うわ!うむ!任されたっ!」


――――――――

――――――

――――

――


「そうしてワタシはここへ駆けた次第ですな、いや間に合ってなによりですわ」


「な!?カルガンに?どうして呼ばなかったの!?もし大怪我を負っていたとしたらっ!」


「エリ、落ち着いて?……というか、わたしも結構危なかったんだけど?」


「貴女の場合は油断でしょう!まったく、今回はデイリー様が着て下さったから良かったものの!」


「ほっほ、それは今は措いておけ、よいな?

さて、そろそろあやつも痺れを切らしたようです。

お話はここいらで仕舞いと致しましょう。

お嬢様はお下がりください、エリアスール、そしてそこの男……傍に仕えておれ」


~デイリーが言うように、ロイオンは後ろに立つルクーツァ、そして前に立つデイリーを警戒して僅かに足を動かしていた~


「ですがっ、デイリー様でも単独では!?」


「ほっほ、若い時ならまだしも今の老いぼれたワタシでは流石に単機では遣り合えるとは思わんよ、だが、のぅ?

そこの男、周りに気を使わずとも良い、本気で行くぞ?」


「流石だな、この街にはあの武器屋の店主といい、貴方といい、驚かされっぱなしだな?」


「ルク?本気でって?」


「やはり……どこか、私に気を使っているフシがありましたが」


「すまないな、だが別に本気じゃなかった訳ではない。

少々戦い方を変えていただけで、十分本気だったさ。

それに、良い具合に奴も弱らせた……もういい頃合だろうな」


「うむ、一応小僧に応援を呼ばせてはいるが、どうせじゃ。

ここで終わらせるとしよう、ほっほ、久々に血肉が踊るのぅ」


「あー、デイリーがお爺ちゃんっぽくなっちゃった……。

いつも変な話し方とか出来るだけ若い感じを意識して話してたのに……」


「デイリー様も本気という事でしょう、さぁ下がりますよ。

今の私達ではお二人の邪魔になりかねません……今は、後ろで見ていましょう」


「かぁー、なっさけねぇな。おれっちもそれなりに腕ぇ磨いたつもりでいたが、まだまだってとこかぃ」


「むぅ……ヒロに格好良く言ってきたのに、これかぁ……」


~女性2人にギョッセはそう言いつつも下がる。

そして、この広場には一匹の脅威と二人の狩人が立つ……~


「さて、ロイオン、仕切りなおしと行こう」


「グルゥウアアアアアアアアアア!」


「このワシが久々に遣るのだから、それなり以上に楽しませとくれよ?」


~ルクーツァは今までのエリアスールの補助的な構えから、体勢を低くした攻撃的なものに変化する。

逆に、先ほどの突貫とは違い、盾を前面に押し出した防御的な構えをデイリーは取る~


「ルクーツァ、と言ったか。先はお主に譲る。

存分に振るうがいいわ、後ろは気にするな……ワシがいる」


「ありがたい……いかせてもらうっ!」


~そう言うと、消えた。消えたように、ではなく本当に消えたとしか思えない。

それほどに速い……そしてロイオンから赤い液体が流れた~


「キィグァアアア!?」


「ふむ……、やはりここではこんなものか……思うように走れないな?」


「ほっほ、よう言う。

手数で攻めるか、中型にそれとは恐れ入るわぃ」


「いや、手数とかいう次元か?速すぎてさっぱり分からないんだがよ?」


「わたしは、ちょこっとだけ見えたよ?

でも凄いねぇ、ルクってばデイリーやお父様みたいに強かったんだ」


「確かに、私もそれなりと自負していましたが……。

上には上がいるものです」


~冒険者、いや武人と言われるヒトの中には達人と言われるヒトがいる。

本来、ヒトとはモンスターに劣るものだ、どうしようもなく差があるのだ。

だが、彼らはその差をほぼ無くす、肉体的に優れているのは勿論だが、それ以上に心が強い、だからこそモンスターと対等なのだ~


「っしぃゃ!」


~声を奔らせ、ルクーツァは尚も切りつける、小さな傷が徐々に大きな傷へと変わる。

ロイオンも反撃をするが、それは当たらない。

ルクーツァの場を離れようにも、デイリーがそれを許さない~


「ほっほ、どれ……いい具合だの、後は……」


「……デイリー殿!次で決めるぞ!」


「合い分かった!ふぅんん!」


~今までの盾を構えた形から微妙に変わる、ランスを後ろに引き絞った姿。

デイリーが纏う鎧が軋む音が森の広場に静かに響く~


「……っぇい!」


~そして最後に後ろからロイオンを斬りつけ、デイリーの後ろで動きを止めた。

そのルクーツァを追うようにロイオンが振り向いた時だった~


「っかぁあああああ!」


~先ほど、レイラを助けた時のようにデイリーが跳んだ、いや飛んだ。

そしてランスを一直線に叩き込んだ、そう牙に……~


「ギィイイオオオォンアア!」


~ロイオンの牙は見事に折られた、それどころかロイオンの頭部に甚大なダメージが与えられたのだろう。

ロイオンは雄たけびを上げると、地響きをあげながら地に倒れ付した~


「……なんだろぅねぇ?おれっち達って一体なんなのかと、考えさせられる光景だぜぇ……」


「そういうものです、私達もまたそうなるように努力するだけですよ」


「あははっ、やっぱりデイリーは凄いや!ルクも格好良かったよ!」


「ほっほ、お嬢様はまったく……いやしかし、久々に動いたモノだから明日は腰が怖いですなぁ」


「はっは、いや。実に動きやすかった、礼を言うよ、デイリー殿。

さて……怪我を負ってる者達は無事だろうか?

それに、カトーも……」


~そうルクーツァが零した時だ。

先ほどの地響きとは違ったものが響く……大勢の何かがこちらへ向ってきている音のようだ~


「ほっほ、短剣はちと効果がありすぎだったかのぅ?」



~小柄な男がそう呟いた時、ヒトの声が聞こえてきたのだった。

一つの戦いの終わりだった~


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