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異なる世界で見つけた○○!  作者: 珈琲に砂糖は二杯
第二章《右折と左折と直進と》
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第6話 『○○→分別!』


「次に話すのは、大戦争終了後の事で人口差などとはまた違った面でのヒト達の違いのことだ」


「うん、それはモンスターとの戦いで嫌々でも協力してきた中で解決してきた事じゃないんだろ?」


「そうだね、まぁコレも300年という時の流れで、それなりに緩和してきてはいる。

だが、それでも中々な?」


「まぁ、それはいいから、結局のとこ何なんだ?」


「あぁ、それは食べ物……生きるための糧にしているモノだ」


「食い物?あー、だから今朝がどうのって言ってたのか?コメとかパンとかだろ?」


「うん、そういう事だな。

だが、コメやパン……小麦など穀物はそう大きな問題ではないんだ」


「っというと、肉?」


「その通りだ!昨日、斡旋所で食べたパン包み焼きを覚えているか?

あの時、オレは肉や野菜を入れて……と言ったな?

その肉はヒト族によって大きく変わるんだよ、人間を除いてな?」


「へぇ、ってか人間を除いて?」


「そうだ、人間は食えるものは何でも食う、言い方は悪いがな。

獣人は、動物の多くを食べない。共に生きてきた友人という扱いだからだ。

竜人は、水に生きるモノを崇める性質があってな?それ故に魚を始めとした魚介類は食べない。

有翼人は、そのままかな?同じく空を翔るモノ、鳥だな。

自分達よりも空を長く飛べる鳥を尊敬し、それを食べる事は無い」


「えっと、つまり?」


「つまり、人間は動物でも魚でも鳥だろうと食べるから論外として。

獣人は動物を食べる他のヒトを嫌がるし、それ以外もそうだ。

それもまた最初期の頃は酷かったらしいんだよ」


「あー、食べられる物は食べないと生きていけない時代か……」


「そうだ、さっき人間が一定の期間、他のヒトの生活を助けていた、と。

そう言ったな?この時もこれによる問題が起きているんだよ。

そして起こったのが、食に関する問題さ」


「ふむ、人間は食える物がそうないから、食える物は何でも採って来てた。

そしてソレを他のヒトにどうぞって渡したら、ふざけてんのか!って怒られたと?」


「そうだね、人間の認識では牛などを始めとした動物類の肉はご馳走だし、栄養価も高く喜ばれるモノという考えで、獣人に食べさせようとした。

だけど獣人に取っては、それは友人なんだ。どうしてそんな事を、そう糾弾したんだろうね」


「他のヒトでもそんなのがあったわけか……」


「そう、最初は人間がそれを行い、他のヒト達も回復していくと、それぞれ違うヒト族同士でそういった衝突が起きたわけだね」


「なるほどね、一種の掟……。

竜人や有翼人なら、宗教で言うところの神様みたいなもんを食うって事だし、そりゃ怒るどころの話じゃないか。

あー、だから斡旋所を女将さんは進めてくれたのか?」


「時間帯の事もあっただろうが、それも多分にあるだろうな?

ここは最前線と言ってもいいほど、国から離れている街だ。

そういった事を気にしないヒトが多いから、獣人にも気にせず肉を出す可能性があるし、ここで生活していればある程度は許容する人が多いのも事実。

だが来たばかりでは、それに怒ってしまうヒトも少なくないのかもしれない」


「今は獣人でも肉を食べたりするのか?」


「あぁ、あるぞ。一部の例外を除いてはだけどな?それは他のヒトにも共通している事だ」


「まぁ、それでも好んで食べるってヒトは多くないって感じか……。

朝食にも肉は無かったしさ」


「そうだね、まぁ今は他のヒトが自分達に取っては大事な存在を食べていようが、殺害に至る事は無くなってる分マシと言えるだろうよ」


「殺害!?昔はソレでそこまで争いがあったの?」


「あったぞ?寧ろ戦死者の時とは比べ物にならないくらいの騒動だったらしいからな?」


「食べ物の恨みは恐ろしいってか?……なんか違うな」


「まぁ、そういう訳だ。

食い物が何も無い、っていう状況じゃない限りは他のヒト族が食べたく無いものを勧めるなどはよした方がいいだろうな。

あぁ、別に自分が食べるには問題はない。特にこの街でならな?」


「なるほどなるほど、これは確かに大事な事だわ」


「ま、そういう大きく分けて2つの事があったから、そしてソレが長い間解決に至っていないために、未だヒト族間ではギスギスとしたモノが流れている。

街によってはソレが強くなって、差別という形になっているという事だな」


「差別ね……ラルが名前を呼べ呼べ煩いのはソレに関係してるのか……」


「恐らくはそうなんだろうな?

街によって、獣人がひどく差別されたり、他のヒト族が差別されたりと様々なんだが、一番の問題は子供がソレを行っている点にある」


「子供が……差別というよりは、いじめって感じか。

しかも大人がそれを静観してるから、止めるヒトがいない。

だから成長して大人になれば差別に繋がっていく……ってことかぁ」


「そうだね、差別といかなくても、個人として嫌な奴ではなく、あいつは獣人だから嫌な奴という枠で決め付けてしまう癖、習慣が出来てしまっているんだ」


「色々あるんだなぁ、大変だわ」


「まぁ、カトーはそういった事をしないとオレは信じられるけどな?」


「そりゃね?ってか俺は別に差別食らって生きてきたわけじゃないし、その時点でちょっと違うからなぁ。

差別とか下らない、なんてはいえないんだよな。そのヒトに取っては重要な事だったんだろうし……」


「そうだな、差別なんて下らない事はするな。

そう、言えればいいんだが、この世界に生きるヒトは多かれ少なかれそういった事を経験しているんだ。

だから、言えない、言いたくない。子どもの小さな諍い程度は見て見ぬ振りをしたくなる。

これもまた悪循環、覚えておくといい」


「はいはい、まぁ分かったよ。

つまり、差別ってのがあるから、色々気をつけとけよ?でいいんだろ?」


「カトー……、その色々の部分が大事なんじゃないか?

まったく、お前はオレが丁寧に教えてやってるというのに……」


~ルクーツァはこめかみを指で押しながら、目を瞑る~


「ははっ、怒らないでよ。

大事な事だってのは十分に分かったし、ざっとだけどそうなった訳も分かったからさ」


「ふぅ、別に怒ってはいない、悩んでただけさ。

どうやったらお前を立派なヒトに出来るんだろうとね」


「…………それはどういった意味で?」


「人の話を真面目に聞けたり……諸々だな」


「……それを言うなら先輩に言ってくれ!見ろよ!先輩は寝てるんだぞ!」


かとうの言う通り、小動物せんぱいは説明が始まったかなり始めの方で寝息を立てていた~


「…………言いたい事はそれだけか?」


「…………ごめんなさい、ちょっとしたジョークなんです」


「まぁ、いいがな?

こういった問題を軽く扱うというのは止めておけ。

カトーに取っては下らない事でも当事者は本当に悩んでいる事なんだぞ?

それを目の前で、そんな事で悩んでるのか?とか聖人ぶって言ってみろ、力の弱いカトーはボコボコにされてしまうぞ?」


「言ワナイ、言イマセン。私ハソンナ事言イマセン」


かとうはいつにも増してカタコトの言葉を話す、まるで悪戯がバレタ時のように焦っているようにも見える~


「まったく、嘘は付くな。

お前、さっきからソワソワしてたじゃないか、ラルの所へ行って、気にするなとでも言うつもりだったか?」


「うっ……、それは、だってさ?いや……うん」


「止めておけ、少なくともそういう形ではな?

ただ、女将さんが言っていただろう?友達となればいいんだ。

もし万が一、差別を行われそうになった時にお前がそれを防げばいい、守ってやればいいんだ」


「まぁ、うん。

そう出来るように頑張るよ」


「ふふっ、そうだな。

そのためには身体を鍛えなければならんし、この世界の事をより知らなければなるまいよ。

なに、オレがいるんだ。心配するな、段々と強い男になればいい。

オレと一緒に強くなっていこうじゃないか?」


「……あぁ!強くなろう!差別もそうだし、どんな時でも強く在れる大人に……俺はなりたいんだ!」


(そう、あの時、俺のために無駄だと分かっていても必死に足掻くことを止めなかった父さん達みたいに、いや普通は出来ない事でも出来るくらいに強くっ)


「はっは、良い目をしているじゃないか……。

どんな時でも強く在れる、か。難しいなんてものじゃないが、だからこそ目標に相応しいと言えるだろう。

だが、その前にしなければならない事がある」


「……それは?」


「腹が減った。昼食を食べに行こうじゃないか!」


「……確かに、腹減ったな。

もう結構経ってるもんな……でもなんだろ?この虚しさは」


「それが大人へ近づいたということさ!」


「絶対に違うね!ったく、ちゃかすなよなー。

ルクータが言ったんだろ、ヒトの大事なもんは~ってさ?」


「はっは、そうだったな。だがそれでもオレは腹が減ってるんだ。

だから言う!」


「くぅ、悔しい!でも腹が減っちゃった!だから許しちゃう!」


「さて、そろそろ行くとしようか?

斡旋所でいいだろう、ほら、跳びリス君を起こしてくれ」


「はいはい、先輩~、飯食いに行くぞー。起きろー」


「……キュゥ?」


「さて、行くか。もたもたするな!オレは腹が減ってるんだ、……置いていくぞ?」


「その台詞何度言えば気が済むんだよ!待ってって!行くから!」



かとうはこの世界での差別というモノを知った。

この問題は彼がこの世界で生きていく過程で無視できないもの、一体どのように彼はそれと接していくのか。

この時はまだ、何も見えてはいなかった~

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