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異なる世界で見つけた○○!  作者: 珈琲に砂糖は二杯
第一章《歩けば道となる》
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第8話 『○○→異人!』

 

 銀色の煌きが駆け抜けた後、何かが落ちる音がした。


『大丈夫か? まったく野犬がお前を警戒していたからこそ良かったものの……』


 何かが落ちた音の後、静寂の最中 銀色の主が何かを言う。

 声色からして人間とすれば、それなりに歳を取った年代の男性と思われるヒトが加藤には分からない言語で最初に音を発した。


「えっと……、ありがとうございます? その、貴方は人間……ですよね?」


『ん? ……何と言ったんだ? 悪いがもう一度言ってくれないか?』


「えっと? 多分人間っぽいし、言葉っぽいの話してるし……」


『ふむ、さっぱり分からんな? むぅ、このような場所だ。もしや捨て子か? 確かに普通じゃない言語を話すこともあるらしいが……いや、しかしアレは』


「そっ、その貴方は……っ!? っっ!?」


 彼は落ちたであろうそのモノを見てしまった。

 そう野犬の首だ。あまりに綺麗に斬られたためか、その顔は襲いかかろうとした恐ろしい形相のまま固まっている。痛みすら感じさせなかったのだろうか。

 そんな首を見てしまった彼は、声にならない悲鳴を上げる。


『……合のはず。って!? 落ち着け! 大丈夫だ! もうコイツは死んでいる!』


「キュッキュキュ~!」


 この男性をも警戒しているのだろうか、小動物せんぱいは彼に近づこうとした男性を威嚇する。


『おぉ? 気が付かなかったが、跳ねリスじゃないか……。お前がこいつの親代わりなのか? 安心してくれ、誓って危害は加えないと君に約束しよう』


「キュ~……」


 男性の言葉が通じたのかわからないが、少々不満そうに小動物せんぱいは道を譲る。


『……どうもすまないな。しかしなんともまぁ……、こいつは知能は高い、人の言う事は聞く生き物だが人を護るなんて聞いたことないんだがな。お前、随分とこいつと仲が良いようだな? っとほら水だ、ゆっくりと飲むんだぞ……そうだ……、大丈夫か?』


「っはぁっはぁ……んく、はぁ……」


「キュウ~」


 先ほど、男性に道を譲り、男性が彼の傍にいる間はじっとしていた小動物せんぱい

 彼が落ち着いたとみたのか、彼の傍へと駆け寄った。


「はぁ……げほっげほっ、すいませんでした……ありがとうございます。それに、先輩もありがとうな?」


 水をゆっくり飲んだとは言え、やはり咽てしまったようだ。しかし確かに動揺は収まってきているようだ。

 男性には通じないながらも、謝罪と感謝の言葉を述べる。


「キュッキュ!」


 小動物せんぱいが嬉しそうな鳴き声を漏らし、その本来の名の如く小さく跳ねて喜びを表現する。

 それは、この世界でも見られる行動なのだろう。そして跳ねリスという動物のこの動作の意味もまた知られているのだろう。男性はそれを見て、加藤の言葉に篭められた意味を察したようだった。


『なんて言ってるのかは分からないが、跳ねリスの様子を見る限り感謝ってところか。まぁ、落ち着いたならいいんだがな?』


 ――

 ――――

 ――――――――

 ――――

 ――


「えっと、詰まらないものですが……」


『ほぉ、こいつは木の実か? 出してくれたということは、食べてくれって事でいいのか。……それでは、ありがたく頂くとしよう』


 彼等は加藤が一応の落ち着きを取り戻した後、テントへと向かってきていた。

 正確にはテントの前の地面というべきなのだが。


『それにしても……気を悪くしないで欲しいんだが。捨て子だから頭は悪いのかと思えば……なんだコレは? この穴倉、いや住処は簡易ながら雨風は凌げそうだな?』


「そっ、その! 俺は加藤かとう ひろって言います!」


『うぉ!? いきなり大声を出すもんじゃないぞ……驚いたじゃないか。ふむ? ァトーヒル? 悪いがそんな言葉は聞いた事が……』


「キュウ?」


 そんな言葉は聞いた事は無いと言おうとした時、跳ねリスという総称名を持つ動物が軽く鳴いた。


『……あぁ、そうか。名前だな? ァトーヒル…でいいのか? オレの名前はルクーツァ。ルクーツァ・シィっと言う、よろしく頼むぞ?』


 加藤の言った言葉、それを発音自体は異なっているが自分に向って返した男性。その意味は色々と考えられるだろう。しかし加藤に取ってそれは自分の名を呼んでくれているとしか思えないものだった。


「通じた!? ルウカさん? ルウカさんでいいんですか!?」


『だから大声はよせ、と……、それとルゥカじゃない。ルークツァ…ル・ク・ー・ツァ、だ』


 男性、ルクーツァと名乗る者は、ゆっくりと、聞き取りやすいように話す。

 それを聞き取った加藤は、ようやくこの世界でまともな単語を話したのだ。


「ルクゥタ? ルクゥタ……ルクータさん?」


『若干、違うが……まぁ十分だろう。そうだ、オレはルクーツァだ、ァトーヒル?』


「ルクータさんか……。あ、あと俺は加藤ひ……、いや簡単な方がいいかもしれない。かとーです。か・とー」


 ルクーツァと言う名は通じた、しかし以前として加藤の呼び方が違うのだ。それを正すために、男性と同じ手法を用いて加藤は伝えようとする。


『ん? ははっ、これは悪い事をしたな。クァ…トォ…、お前さんはカァトー……、カトーでいいのか?』


「っ! そうです! カトーです! 俺はカトーです!」


 同じ手法、ゆっくりと同じ言葉を繰り返していた加藤。それに気が付いたルクーツァは加藤の望んだ反応を返し、そして加藤はやはり大きな喜びを表す。


『まったく大声は……まぁいいか。それでカトー? さっきはなんで逃げなかった? それか応戦しなかった? いくら野生児とは言え、いやだからこそ。あいつの怖さは知っているはずだろう?』


 先ほどまでの、何かを確かめるようなゆっくりとした話し方ではなく、矢継ぎ早に言われる。

 そうなると当然だが、加藤には想像すら出来ないのだ。表情によって察する事も出来なければ、言葉の強弱を聞き分けるのも難しい。


「…………」


(やばいな、なにか質問してくれてるってのは分かるけど。さっぱりだ……)


『何も言わない……か。って…はっはっはっ! オレとした事が言葉が通じないのをすっかり忘れていたな。名前が分かったために……ついつい、すまんな!』


「うぁ! びっ、びっくりした……」


「キュー!」


『おっと……いかんいかん。跳びリスよ、悪かったからそんなに怒らないでくれないか……。カトーも、すまなかったな? 驚かせてしまったな』


「え、あ、いやすいません。なんか俺悪い事でも言いましたか? ……もしかして怒ってたりしてます?」


『ふむ、これは失敗だったか。そうだ……オレはお前達を襲わない、襲わないぞ? そうだな……、どうだ。剣を外そう、分かるか?』


(っ!? あれって……刀!? いや、違う剣か? ってなんで今そんなものを!?)


「キュッキュ!!」


 男性としては武器を地面に置いて危害を加えない事をアピールしたかったのだろう。

 しかし加藤はそれがどういうモノかを知っていた、そして余裕が無かった。小動物せんぱいは先ほどソレで己の天敵を倒したのを覚えていた、危ないモノだと。


『あぁ! 落ち着けっ! これはそういう意味じゃないっ……えぇい! 仕方無いっ! ………どうだ? ほら、もう無いだろう。だから落ち着くんだ、な?』


 男性は武器――剣を遠くに投げた。腰から抜いて地面に置くだけでは足り無いと思ったのだろう。


「あっ……、そっそのすいません! 俺そのっ……」


『ん? 落ち着いてくれた……とは言えないかもしれないが、意味は分かってくれたのか?』


「……キュウ?」


「すぅ……ふぅ、いえ、すいませんでした。そういう事をするような人なら、そもそも助けてなんてくれていませんよね……」


(この世界の人間ってのを悪く考えすぎてたな……。少なくともこの人は俺達をあの犬から助けてくれたんだ……、そこだけは信用していいはず)


『やはり何を言ってるのかは分からないが、落ち着いてくれたみたいだな』


「それで……あの変な質問なんですが、ルクータさんはどうして……。えっと、ここに……いたんですか?」


(ボディランゲージって言うのかな? 確かこれはやったらダメな場合もあるらしいけど……、この際仕方無いだろ)


『お? ふむ、頭を傾げ、地面を指して、そっそこを指すのか!? っと……それに歩く真似か、なるほどな』


 男性は彼の言いたい事が分かったのかしきりに頷いている。

 ちなみに男性が驚いたのは彼が悩んだ時に手を腰に当てたからだ。


(おぉ!? 流石世界共通なボディランゲージ! すげぇっ!?異世界でも使えるなんてっ!)


『……あぁ、その通りだ。オレはトイレに行きたいと思っていたんところだ……。こんな雰囲気なものだからな、行くに行けなかったんだが、な。流石野生児、我慢してたのがバレていたか……。悪いが森で少々、穴を掘って用を足させてもらうよ』


「ってあれ? どこ行くんですか? ボディーランゲージで返してくれるんじゃ?」


『はっはっは、心配してくれてるのか? 安心してくれ、漏らしはしない……まぁ、違うだろうがな。まぁ、オレは剣が無くともあの程度の野犬に遅れは取らん。それじゃあ、行って来る』


(いや、何良い笑顔で言ってるんだ? 意味は分からないけど絶対に勘違いしてるだろ)


「キュウ?」


「……うん、まぁ悪い人じゃないと思う。それどころか多分かなりのお人好しなんじゃないかな?」


(なんとかしてあの人に、何かしらを教えてもらわないと。多分こんなチャンスは二度と来ない……。この森にもあんなのがいるって分かったなら尚更だ、出来れば付いて行きたいところだけど。言葉が通じないのがこんなに辛い事だなんて、どうにかなるなんて楽観視はやっぱり過ぎるとダメだな……)


「着いていかせてもらうためにはまず意思疎通……。そのためには、やっぱりボディランゲージか? けどなぁ、分かってるのか? 他になんかあったか? この世界のイエスノーくらい分かればまた違うんだろうけど……」


 加藤かとう ひろが頭を捻っている考えは、こんな状況であれば誰もが悩む事だろう。

 そしてこの時、もう一人のヒトがいたのだ。


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