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異なる世界で見つけた○○!  作者: 珈琲に砂糖は二杯
第一章《歩けば道となる》
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第7話 『○○→難敵!』

 

(ふぅ……、なんか調子でないな)


 昨夜考えていた事をくすぶらせているのだろう。

 だが飯時にそういう鬱屈とした雰囲気を出されるのは、人間では無い小動物せんぱいでも嫌うのだろう。


「キュゥ~……」


「あ、ごめん先輩、ずっと黙ってたか。ちょいと考え事しててさ、けどソレはどっちもどっちな気がするんだよな」


(考え過ぎ……それも悪い方向へって感じに思えるけど。今回に限ってはソレで間違っていない気もするんだよなぁ)


「それにキノコの事で……。何事も楽観視しすぎるのは危ないって、先輩が気付かせてくれた事だろ?」


「キュキュ」


(そう、今まで運が良すぎたんだよな? だってここは森もあって、何より広大な水場がある。大型の動物がいても不思議じゃないんだ)


「怖い生き物がいたとしてさ、それから身を護るにはどうしたらいいと思う? 出来る事なんてハッキリ言って逃げることだけだと思うんだ。けど俺はあの廃屋を見て、一つスグに思い浮かんだんだ……」


「キュウ~」


「怖い生き物を倒せる強者に、それが出来る人間に護ってもらえばいい……って」


 彼のこの考えは軟弱と言えるものだろうか、そうかもしれない。

 以前、彼は強くなりたいと言ったにも関わらず、彼は他人に頼ると言うのだから。


「でもさ、人間……、うん。異世界の人に会ったとしたら? それが同じくらいに怖くてさ……」


(あっちの世界は理想の世界だった。だからこその問題も生まれてたけど、同時にそれ以上の問題が解決されていた。けどこっちは? 仮に人間と同じ感じだったとしても、同じだからこそある問題っていうのがあるはずなんだ……)


「ハッキリ言ってどっちも怖い……。動物も人間もさ? そう考えるとやっぱり先輩は先輩だよ……。よく俺と一緒に来れたよなぁ、なぁ……怖くなかったのか?」


 それは加藤の本心からの言葉であろう。しかし小動物せんぱいはただ首を傾げるだけである。それは何の意味も無いのかもしれない、だが加藤はそれを意味あるものとして受け取った。


「キュク?」


「ははっ、そういえば俺今までだって先輩に護られてたようなもんかっ。ありがとな?」


「キュキュ~」


(そうだとしても先輩じゃライオンとかには勝てない……。逃げる事は出来るかもしれないけど、今までの事を考えると先輩は俺に懐いてる《やさしい》。きっと逃げないで一緒に戦おうとしてくれるって信頼たよっちゃうできる……)


 彼がそんな『強くなりたい』という考えとは逆方向の考えに至ったのには同じ時に痛感した事が関係していた。

 彼は小動物せんぱい迷惑りゆうを掛けているのだ。自分が小動物まもってくれるひと迷惑なみだながさせけないために。

 そう、以前の世界で彼は悲しくなるほどに虚勢を張っていた。それは一種の強さなのかもしれない。だが親はそれに涙を流した。それが加藤には普通の涙よりも重いものだと今では分かる。

 だからだろうか、彼は思った事を素直に口にするようになっていた、そしてそれは小動物せんぱいとの意思疎通に大いに役立っているのだろう。


(今の俺の考えってだっさいなぁ、何が先輩のためだってな? 全部俺のため俺のため、けどいいんだ……。今はこれが俺の精一杯、誰かに寄り掛らないと強がりも言えない、それが今の俺なんだ)


「うん……人を探そう! そしてお願いするんだっ! 助けてくれ、いや……、助けて下さいってな!」


「キュク……?」


「いやいや、違う違う。先輩が頼りないからとかじゃねーって。寧ろ逆だよ。頼りになりすぎるからなんだって!」


「キュー?」


「あーうん、正直に言いましょうかね……。俺がダメだからです……、ほんと弱くてすいません……」


(あっちじゃそれなりに身体鍛えてたから妄想で『俺最強!』とか思ってた俺って……、イタいっイタすぎる! 実際になってみたら先輩みたいな小さなのにでさえビビりまくり。戦い方の『た』の字も知りはしないっていうな)


「キュウ……」


 小動物せんぱいは残念そうに、しかし加藤の思いを肯定するように、軽く頷いた。


「……まぁ、ほら? けど俺も武器があれば? やっぱり最強? なんてったって俺はほら、あれだよあれ。ニンジンいっぱい食って育ったし?」


「キュウ?」


「うっせ! どうせ弱いですよ~、すいませんね! ヘタレで! いいの、俺はこれから強くなっていくんだってっ! 成長期……だって、信じてるの!」


「キュッキュ~」


 小動物せんぱいはどんな言葉であろうとも、その根底にあるものを喜ぶかのような、それに向おうとする彼を励ますかのように、嬉しそうに鳴いた。


「ったく、本当に先輩は頼りになりすぎてて……。俺は自分の小ささを痛感しすぎて嬉しさ通り越して空しくなってくるわ」


「キュ~!」


「はいはい、さて人を探しに……」


「……は、まだ行きません! まず、それなりに動かないと人となんて会えるわけもないしな?」


(そうそう、ちゃんと食い物も持っていかないと、水は……。幸いこの湖は広いからな、まずはこの湖をグルって回ってみよう)


「そうと決まれば食い物をいっぱい採ってこないとな!」


「キュ~キュ」


「よーし、根こそぎ採ってくる感じで行くとしますか!」


 ――

 ――――

 ――――――――


 彼と小動物せんぱいは一緒になって森へと入っていき、何日かは保つだろう量の木の実などを採取した。


 ――――――――

 ――――

 ――


「冷静に考えたら俺、カバンとか持ってないんだった……。危ない危ない、持っていけない量を採ってくる所だったよ」


(草? とかで編むカバンとかもあるらしいけど、どうやるのか分からないんだよな。やってみたけど、千切れちゃうし……草の種類なのかね?)


「……まぁ、水と同じで多分食べ物も湖の周りの森にあるだろうしな! そう、これは最低限ってのだよ!」


「キュッキュ~」


「テントは~、無理だけど……んーまぁ、いいか! ちょっと森に入って大きな木とかに寄り掛れば十分だろうしさ?」


「キュキュ~……キュ?」


「明日になったら動くとして……どっち周りで湖を回ろうかな? いや、やっぱり時計回りが王道か? いやいや、その逆もまたアリかもしれない」


「…………?」


 加藤が今後の事を、声に出して、まるで小動物せんぱいと相談するかのように言う。


「あーでも、山にも行ってみたいなぁ。流石に山は陰くらいしか見えないし、もしかすると?」


 しかし、その相手は彼の話を聞いていないような素振りだ。


「うん、まずは湖を時計回りに回って、あの廃墟みたいに人が遺したっぽいのを探して……。出来たらカバンとか鉄のなんかとか……、贅沢を言って武器とか? 火を点けれるものとか?」


(家があったんだし、そういうのも案外あったりして? 武器は、まぁ……無いよか合った方がいい、のかな。それでなくても、火を点けれるのは欲しいよなぁ、やっぱり)


「って先輩……さっきから見事にスルーしてない? せめて相槌的な何かは欲しいです、と後輩はお願いしますよ?」


「キュ……」


(なんかすっげぇ投げやりじゃね?)


「まぁ、それはいいとしてさ? 明日からまた冒険的な感じなんだから、ちょっと早いけど寝とこうよ」


「…………ッキュ!!」


 その時、彼らの立っている位置からテント側。

 つまり森から彼より小さな影が、しかし小動物せんぱいよりはるかに大きな影が1つ飛び出してきた。


「ルルルルルッ」


「……キュウー!!!」


「……は?」


(え? あれ? これって犬っていう奴か?)


 彼が混乱している間にも大きな影。

 犬のような動物は低い唸りを上げ、小動物せんぱいは彼の前に立つかのように移動して毛を逆立てていた。


「いやいや、先輩落ち着けって。これは犬っていうのだろ? 確か人に懐きやすい優しい動物だったと思うから安心していいって……。そんなに威嚇しちゃったら、ほら。あっちも威嚇してるだろ?」


「ルルルルルッ」


「キュー!」


(あれ? 俺蚊帳の外?)


 彼は知らない。犬種は確かに人間の歴史に措いて素晴らしい友人パートナーだっただろう。

 しかし同時に恐るべき敵としても登場していたことを。


「ルルル……ルァアアォ!!」


 唸り声が地に響くような低いものから、何かへとぶつけるようなモノへと変化していく。

 そのぶつけられた何か、それは加藤を背後に背負う小動物せんぱいへと向う。

 いや、本来は加藤へと行くはずのもだったものだろう。それを小さな身体で一身に受ける。


「キュ……キュウー!」


 堪らず、小動物せんぱいは逃げる前兆のように、身体を縮こませようとしたが、すぐにまた誰かを守るための威嚇を、小さな、しかし確かな咆哮を上げる。


「え? あれ? 犬だよな?」


 彼の認識はまだまだ甘い。

 動物は怖いモノという事を分かったつもりでいても、知っている動物が出てきた事でコレは安全なモノだと勘違いしていたのだ。


(だって犬ってアレだろ? ワンコとかポチとか……え?)


「ルァアアアアアッ!」


 彼が徐々に感じ始めた恐怖も相まって混乱の極みに達する頃。犬のようなモノは遂に一歩、足を前に進めた。


「ちょ……もしかして、こいつって犬なのに、まじか? いやでも……って先輩!?」


「キュッ……キュー!」


 小動物せんぱいもまた、歩幅が違うとは言え、確かに一歩進んだ。そして。


「ルァオアアッ!」


「キュ……キュウー!!!」


 二匹がお互いに飛び掛ろうとしたその瞬間だった。

 この世界では未だ見ていなかった、銀色の煌きが暗くなり始めた湖畔に駆けた。


「……へ?」


「キュー! ……キュッ、……キュク?」


『○×▽? ××■◇●◎△○……』


 ソレは大きな壁を切り裂いたかのような、灯り始めた月明かりを反射した銀色の煌きの一閃と共に現れた。

 彼は遂に邂逅したのだ、求めていた存在と。

次回から異世界人の言語を『』で囲み、普通に言葉を入れますが、通じていないモノだとお考え下さい。


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