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異なる世界で見つけた○○!  作者: 珈琲に砂糖は二杯
第一章《歩けば道となる》
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第6話 『○○→認識!』

 

「ふぅ、今日の所はこんな所でいいかな?」


 この湖を発見し、早1週間ほど経過していた。現在、彼はテントの改修らしきものを行っている。


「しかし、水草っていうのか? こう葉っぱが大きくて、水に浮いてるっていうか……。ともかく、これはいいっ! 新たな屋根の素材だよ!」


 水草と言っているのは、スイレンの葉のようなものなのだ。

 それは手のひらよりも一回り程度広いという丁度いい大きさで、葉からは細く長い茎が伸びており、骨組みにくくり易いという利点もある。


「だけどまだアレに勝つには程遠いか……、やっぱり木材を使わないとだめかな? いや石造りとかも昔はあったみたいだしソレでもいいか?」


 彼の言うテントにも一応木材は使われている。

 だが彼が言っているのは現在使っている太めの枝では無く、板など樹木の幹を加工したものだろう。


「キュク~」


「お、先輩。飯食ってきたのか? なんか良さ気なドングリとか木の実とかあった?」


 そう、余裕を持って探してみれば食料になり得るものはそこら中に落ちていた。そもそもが雑草でも食べようと思えば食べられる類のものはあるのだから。水という大切なものを手に入れた加藤はそれらに目を向ける余裕が生まれたのだろう。


「キュッキュウ~」


「ふむ、流石に分からんな……。まぁ、けど先輩が食ってたのが俺が食べても大丈夫ってのが分かって良かったよ、ちょいと俺には渋いけどな」


 彼はそういった食材問題をやはり小動物せんぱいを頼りに解決した。

 その判断は間違いではないだろう。少なくともこの森を、異世界をより知っている存在の行動の方が、彼の曖昧な知識を元に食材を選定するよりかは余程信頼が置けるだろう。


「そう言えばさ、この前先輩の友達だか知らないけど動物が齧ってた葉っぱ。っていうか俺が食ってるのはその球根? ソレだけども……食べてみたら、ちょっと辛かったなぁ、まぁ、食えたけど」


 球根のようなモノは地球で言うならばノビルを想像すると分かりやすいだろうか。彼は、これを生で食べても腹を下す事は無かった。そして大根のような根菜の一種であるために、歯ごたえがあり、少量とは言えども腹を満たす役割を担っていた。


「それはそうと……先輩! 今日の晩飯は豪華だぞ! 今朝の食材探しで新たな食材を発見しました!! なんと~キノコです!」


「キュウ?」


「ほら、コレだよ! んでさ……確かキノコって生食出来たと思うんだよ! ただ毒キノコって言う言葉があるくらいに、害のあるモノも多かったらしいんだけど俺の発見した『先輩方式』によって一応の安全は確認できてるっ!」


 彼の言う『先輩方式』は、つまるところ他の生き物が食べた形跡の有無、そしてその近くにその死骸などが無いのか、というものだ。

 蛇足だが後者はキノコを発見した時に追加された項目である。


「キュッ! キュ~!!」


「うんうん、きっと美味しいぞ! なんてったって、ようやく辛くなくて、歯応えのありそうな、腹に溜まりそうなものだからなぁ」


 彼の採ってきたキノコは色合いは地味である。彼の持つ一般的な毒キノコのイメージとは離れてはいる、だが。


「キュー!」


「なんだよ? そんなに何度も……。安心しろって摘み食いはしていないよ。晩飯だけは一緒に食うって感じになってるしな」


「キュ~、キュッキュウ!」


「どうしたんだよ先輩? もしかしてこれってダメなの?」


「キュクゥ!」


 まるで、己を狙う獰猛な敵を前にしたかのように小動物せんぱいは、彼と始めて会った時ですら見せなかった毛を逆立てての威嚇を繰り返していた。


「わ、分かったよ。これは食わない。……これでいいんだろ?」


 彼は小動物せんぱいの威嚇行動に従うように、手に持っていたキノコを捨てた。しかし目は地面に落とした、捨てたソレを見ている。そう簡単には諦めたくはないのだろう。


「何か勿体無いな、もしかしたら先輩が嫌いなモノってだけかもしれないし。今日も木の実と丸い根っこだけかぁ……」


「キュウ~」


「ん? あぁ、別に責めてるわけじゃないよ。確かにキノコ……、というか食べなれた物を食べたい気持ちはあったけど、うん」


 加藤は、ひとつ頷くとブツブツと小声で今までを振り返るように呟いた。自分にはそんな事を言っていられる余裕はないはずだと。

 確かにその通りだろう、つい先日まで彼は今にも倒れそうなほどだったのだから。水と少しばかりとは言え食料を手にしている今。なにがなんでも食料を求めなければならないわけではないのだから。


「そうだな……俺はこう言っちゃアレだけど命を捨ててでも種のために進化が必要な動物じゃない。……闇雲に食べてってのはするべきじゃないな? うん、俺がするべきなのは……、進歩だ」


 人は調子に乗る、水を得て、食料を得て、彼はそうなっていたのだろう。だが廃墟を見た時は実に慎重であった、それは恐れがあったためだろう。小動物せんぱいの声のおかげで、食料に対してもそれが芽生えた。


「……今は一応とは言え、大丈夫って言える範囲だ。キノコが食べたい? この状況で贅沢とか馬鹿か、まったく」


(何事もポジティブすぎるのもアレなんだな。大丈夫大丈夫ってのも考え物だ。その考えのお陰でここまで来れたんだ、なら今また少し悩む時期に来たって事)


「んー、どうすべきかなぁ……。さっきはあぁ言ったけど、多分今の食い物だけじゃいずれ色々問題がありそうだし、何か別の食料を見つける必要があるよな」


(森で食べられそうなもの……毒を持たないだろう木の実とかは先輩のお陰で粗方把握してるし、実際食べて大丈夫だった。けど、キノコは今回の事で分かったけどまだ危険すぎる。……となるとどうするか、だ。キノコとか小さな植物みたいなモノには毒を持つのが多かった気がする。逆に大きなモノにはそれが少ないって事か? 木の実とかは大きな木のモノだしそれに合ってる気もするし……)


 彼はこの一週間で見つけた食料となりそうなモノ、そして以前の世界で身に着けた知識を掘り起こして今後の事を日が暮れて食事をしている最中でさえ考え込んでいた。


「うーん、まぁそう簡単に解決する問題じゃないよな。何せ俺等、人類ですら俺には想像も出来ない時間を掛けてそれを一歩づつ解決していったんだろうし」


(そう考えると俺ってたったの1週間程度であれだけ食えるモノを見つけてるのか……天才じゃね!?)


 その食べられるモノは全てに措いてほぼ小動物せんぱいのおかげである。その事を咎めているような色の音では無かったが、しばし無言であった加藤へと小動物せんぱいが鳴いた。

 しかし彼にはそう感じてしまったのだろう、謝罪の意を含む言葉を掛けた。


「キュウ~」


「あー、うん悪い。ってかなんで先輩いつも俺の考えてる事を、読んでるみたいなタイミングなんだ?」


 別に小動物せんぱいが超能力とかを持っているわけでは無いだろう。ただ彼は顔に考えが出やすいのだ。


「キュ~……」


「って俺話してるよ? 先輩スルーしすぎじゃないですか!?」


 既に食事も済んでいた所でこの長話が始まりそうだったのだ。動物でもそれは嫌うらしい。

 小動物せんぱいは寝ることを選択したのだろう、一人いっぴき先にテントへと歩いていった。


「行っちゃったよ……、けど食い物、いや今後の事を考えないとな」


(となると……だ。やっぱり気になるのはあの廃墟。異世界人って言っていいのか分からないけど、少なくとも『家』を作れるくらいには人と似ているはず)


「そういえば先輩も知能が高いよな? ただの偶然かと思ったりもしたけど、今回の事や湖までの事、結果で考えれば確かに俺に教えてくれていたって思えるし」


(あっちの世界でもそういう知能の高い動物ってのはいたらしいし。危険なモノを教えてくれる、助けを呼びに行ってくれる……、先輩もそういう類の動物って事か?)


「っと、また脱線しちゃった……いくら先輩の知能が高くてもアレは作れない。もっと大きい生き物で手先が発達していないと、それもあの廃墟の大きさから考えれば俺と同じくらいの大きさ」


 そう、あの廃墟は加藤が見た限り、いや一目見ただけで加藤と同じような体格の生物が生活できるようにと作られているのが分かった。

 なによりも、加藤という人間と同じような思考を持っているのだろう。なぜなら加藤が見ただけで『家』だと感じてしまったのだから。


「だけどアレは廃墟……ってことはもう人はここにはいないのか? いや、そうだとしても見た感じ何百年も経ってるって感じじゃなかった」


(そうだ石造りならまだしも、アレは木造でしかも造りは簡素。手入れなしにそう長い間保つモノじゃないハズ)


「んー、今度は人を探すためにまた動くべきなのか?いや……でもなぁ」


(キノコは直接関係無いけど、キノコでの事で分かった事がある。人がいるかもしれないなら食べられる物、それにこの世界の事が分かるはず……。でも多分きっと……いや、絶対に言葉が通じない)


「そもそも俺達みたいな猿から進化した人間じゃないかもしれない……。確か爬虫類も古代の地球環境が少し違えば有り得たってニュースで。そうなると容姿から違うだろうから、普通に敵に見做されて殺される可能性も……いやいや、仮にそうだとしてもスグには無いだろ」


(そう思いたいけど……殺される可能性か、考えてなかったな。怪我とかは有り得ると思ってたけど、思えばそうだよな。これまで見つけた生き物は先輩とかみたいな小動物や虫だけだったけど)


「動物ならライオンだっけ? あと魚ならサメっていうデカイのもいたらしいし、それと似たようなのがこの世界にもいるかもしれないのか?」 


 彼はようやく己を容易く狩れるだろう存在に気が付いたのだった。

 それが彼に一つの大きな決断の選択の決定を早める要因になるのだった。

途中に出てきたキノコはクリタケ、ニガクリダケに近いものを想定しています。

前者は多少の毒素はあるものの食用に耐えられるもの、後者は毒素が強く死亡もありえるものだそうで、見た目が良く似ていて同じ所に生える事もあるそうです。

彼が採ってきたのは後者のほうですね。


ちなみにニガクリダケを食べる虫というのが実際にいるそうです。

が、今回はクリタケは食べられていたので似たようなニガクリダケを持ってきてしまっていたとお考え下さい。

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