6:驚愕
「これは……本当に、高校生たちが作り上げたというのか?」
国会議員の野村誠は、タブレットに映し出されたニュース記事を眺めながら、思わず呟いた。政府与党が掲げる「地方創生」とは名ばかりで、具体的な成果をほとんど出せていない現状に、国民の不満は募るばかりだ。そんな中、この高校生たちが始めたというプロジェクトが、各方面で注目を集めている。
「この着眼点と実行力は並々ならぬものがある。我々、野党が手をこまねいている間に、彼らは着実に実績を積み上げている」
そして、その後の開発とボランティアの活用方法もまた、実に戦略的だ。「地域再生ボランティア」という名目で、若者から定年後の熟練者まで、幅広い層を巻き込んでいる。彼らは単なる労働力としてだけでなく、プロジェクトの理念に共感し、自発的に貢献しているという。
私は資料を読み進めながら、感心と同時に焦りを感じていた。若者たちの間で広がる閉塞感、既存の政治への不信感は、我々野党にとっても大きな課題だ。彼らが既存の枠組みに囚われず、自らの手で「新しい形」を模索していることは、ある意味で希望の光とも言える。
テレビのニュース番組で彼らの活動が取り上げられ、「地方創生の成功事例」として評価する声が上がっているのも、当然と言えば当然だろう。彼らは、過疎化に悩む地方に新たな活力を吹き込み、若者たちの新たな可能性を示している。まさに、我が国が今、最も必要としている「起爆剤」になるかもしれない。
「視察か……。良い機会かもしれない。彼らの活動をこの目で確かめ、その真意を探る必要がある。そしてもし、彼らの目指すものが、本当に日本の未来に資するものであるならば、我々もその可能性を真剣に検討しなければならない。」
野村は秘書に顔を向け、指示を出した。
「南房総の視察の件、具体的に調整を進めてくれ。先方にも、我々の関心を伝え、積極的に情報提供を求めていくように。これは、我々野党にとっても、日本の未来にとっても、重要な一歩となるだろう。」
国会議員としての直感が、この「次世代型コミュニティ創設プロジェクト」が、単なる若者の遊びではないことを告げていた。彼らの動きは、良くも悪くも、日本の未来を大きく左右する可能性を秘めている。私は、その可能性を、慎重に、しかし大胆に見極める必要があるだろう。