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第81章 良い印象を残したい


 学生生活において、連休である建国記念日は貴重なものだ。例年なら、リオンはこの連休を実家で過ごすことを選んでいた。


 彼は家族思いで、特に就職を控えた今、家に帰れる機会も減っていくのだから、この時間を大切にしたいと考えていた。


 しかし、今年は違った。


 建国記念日の二日前の夜、レナが彼に尋ねた。

「あなた、建国記念日は実家に帰るの?」


 リオンは一瞬沈黙し、それから少し躊躇いながら頷いた。

「ああ、二日間ほど帰るつもりだ」


「それじゃあ、私も一緒に帰るわ」レナは微笑んだ。


 ――その一言で、リオンの眠りは一夜にして飛んでしまった。


 実際、レナに聞かれた時、リオンは帰省をキャンセルしようかとも考えた。


 ただつい先ほど、家族にチケットを取ったと電話したばかりだ。今さら行かないと言い出すのは、あまりに失礼にあたる。


 そこで取った策は、帰省期間の短縮だった。当初4日間を予定していた休みを、2日間に圧縮する。


 だが……まさかレナがあんなことを言い出すとは、夢にも思わなかった。


『自分と一緒に帰る?』


『これって……つまり、親への挨拽ってことか?』


 ――実際、それに近いものではあった。


 ただ、かつて自身の親に会う時とは、心境が異なっていた。

 前世、レナとして死を迎える際、最大の後悔は家族に別れを告げられなかったことだった。


 だから、転生した今、彼らに会いたい……たとえ、彼らがもう自分の家族ではなくなっていても。


 それに、今の彼女の家族もなかなか興味深い――アイリスフィールド系は巨大企業一族だ。この手のビジネスファミリーでは、兄弟間の権力争いも珍しくない。


 多くの同族企業がそんな問題で潰れていく中、アイリスフィールド系はそこをうまく切り抜け、むしろ結束を強めた。


 そして、試練を乗り越えた後のアイリスフィールド系のビジネス手法は、国を築くほどのスピードで成長を遂げるモンスター軍団の如し。


 もちろん、これはレナ自身とは直接関係ない話だ。


 ここで言いたいのは、アイリスフィールド系の内部事情である。レナの実の父親は、家族内で最も若くして要職を担う人物であり、レナ自身はその一家の唯一の令嬢……。


「お嬢様」と呼ばれてはいるものの、実はレナには何人かの兄と姉がいて…彼女は兄弟の中で最年少だった。


 つまり、よく言われるあの言葉——「過保護すぎる愛」こそが、アイリスフィールド系がレナに注ぐものだった。


 それに加え、現在のアイリスフィールド系には後継者として娘を担ぎ出す必要もなく、彼らはレナを家業の後継者としてまったく想定していなかった。


 これがかえって、彼女に最大限の自由を与えていた。レナが破滅的な行動をとらない限り、家族は基本的に彼女の活動に干渉しない。


「…」まあ、レナはこの状況も、システムの影響が一部分あるのではないかと推測していた。


 とにかく、その自由を享受してはいるが、彼女は新しい家族と親密だと感じてはいなかった。だからこそ、以前の家族に会いに行きたいと思っていた。


 心の奥では、かつて感じたような愛情は二度と戻らないと分かってはいたが。


 翌日、彼女は目の下に濃いクマを浮かべたリオンを見た。


「…一晩中寝てないの?」


「別に眠くないよ」リオンは軽く咳払いをし、「昨日、俺と一緒に実家に帰るって話…本当なのか?」


 レナは笑いながらうなずいた。「ええ、何と言っても…もっとあなたのことを知りたいから」


 実際には、恋人という口実を使ってリオンを騙そうとしていただけだったが、一瞬考えて言葉を選び直した。


 最近のリオンの態度を考慮すると、この「恋人」という肩書のプレッシャーを少しずつ和らげていく必要があると感じた。


 リオンにプレッシャーを与え続ければ、逆に自分がリオンの罠にはまってしまう恐れがあった。


 リオンはレナの心の葛藤に気づかず、ただ誠実にうなずいた。「わかった、明日の俺のチケットだけど…君の分も予約しようか?」


 一晩中悩み抜いた末、ついに彼は答えを見出した。


 もちろん、もしレナが何か目的を持って近づいてきているのなら、彼女はすでにリオンの背景を調査しているはずだ。だから、実際の状況を隠しても意味がなく、むしろレナに「リオンが自分の家柄を軽視している」と思わせてしまうだけだ。


 それは彼がまったく望んでいないことだ。彼はレナの心を勝ち取りたい。誤解が生じるなら、むしろ潔く率直に説明したほうがいい。結局のところ、リオンは田舎出身なのだから——それを恥じる必要はまったくない。


「…」あの恐怖の体験以来、彼の決意はむしろ強まっているようだった。


『あのキスのせいかな?』


『自分がレナの魅力に少しずつ気づいていく…それはむしろ、自分に少しばかりの自信を与えてくれるのかもしれない。』


『キスさえできたなら、他のことだって…きっと大丈夫だよね?』


「ちっ、一度やっちゃうと、次はあんまり気にならなくなっちゃうんだな」


「明日もう祝日か…チケット確かに取りづらいよな…」


「んー、いいよ。車もう手配しといたから、一緒に帰ろ。あなたのチケットはキャンセルで」レナは軽く首を振った。


 リオン:「…」


『そうか…レなは事前に準備済ましていた。』


 あっという間に祝日。Uターンラッシュを避けて、二人は朝早く出発することに。リオンは早起きして朝食の準備を済ませ、レナを起こしに。


 このところ一緒に暮らしてて、もうこの流れには慣れたみたい。リオンの授業がない日は、朝食ができたらレナを起こすのがお決まりになってた。


 最初はレナの部屋に入るのにもちょっと気後れしてたリオンだけど…レナはいつも「別に普通じゃない?」って感じで。


 その態度に、リオンは…なんか複雑な気分。


「なあなあ、レナって…こういうの結構うっかりさんなのかな?」


「恥ずかしさとかないのか?」


「自覚足りなくない?」


「レナ自分が女の子ってこと忘れてない?」


「表面上?… 俺がまだはっきり答えていないからね…とにかく、表面上カップルってことにはなってるけどさ…」


「でもマジで今まで誰とも同居したことなかったの?」


「俺が初めて?」


 そんな考えが頭をよぎって、リオンの心はちょっと嬉しそうに騒いだ。


 そして、シンプルなジャケット付きのトレーニングウェアを着てぼんやり立っているレナを見つめた。「リオン、私の格好、どう?」


 リオン:「…」


『なんだか変な感じだ』


 確かに以前のレナはあまり可愛らしい服は着ていなかったが、少なくとも同年代の女の子が普通に着る服ではあった。


 トレーニングウェアが普通じゃないわけじゃないけど、普段はミニショートパンツばかりの彼女が、今回は実家に帰るということで、特別な日にこんな格好を選んだんだ。


 それでも彼はうなずいた。「きれいだよ」


『本当にきれいなんだ』


 確かに馬子にも衣装というが、衣装もそれを着る人に合っていなければならない。レナのように、何を着てもいつも完璧に似合う人もいる。


 彼女は生まれながらにして完璧なんだ。


「よかった」レナはうなずくと、同じような服を何着かリュックに詰め、リオンの手を取った。「さあ、帰りましょう」


 彼女の機嫌はとても良さそうだった。


『家に帰るんだ』


 そう、彼女の心の中では、あの家がやっぱり自分の家で、ずっと変わらない。だからこそ、彼女はわざわざ服装のスタイルまで変えたんだ。


 以前ミニショートパンツを履いていたのは、確かに楽だからだ——スカートの方が実際は楽なのに、まだ慣れていない。


 でも今回は違う——おじいちゃんとおばあちゃんに会いに帰るんだ。彼女にとってこれは初めての対面だから、悪い印象を与えてはいけない。


 年配の人はわりと保守的だし、ミニショートパンツのような服装をどう思うかわからない。万一に備えて、より普通の服を着た方がいい。


 リオンはもちろんこれを理解していた。


 だからこそ、彼は嬉しくなった。


『レナはおじいちゃんとおばあちゃんに良い印象を与えたいんだ…俺のために?』


 突然、リオンの胸が温かくなった。


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