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第72章 が憎い

 

 このクエストの任務は、長引くことはなさそうだ。むしろ、ほぼ終わりに近いと言っても過言ではない。


 我々の今のミッションは、幽霊と三度会話し、その後この場から脱出する——ただそれだけのことだ。


 しかし、聞こえは単純だが、実行に移すのは遥かに難しい。


 直人の本部が通信を回復させてから、多くの支援が届いている。彼らの位置を追跡することに成功すれば、たとえこの空間が依然として混乱していても、危険に直面した後、すぐに十分な脱出ルートを見つけ出すことができた。


 だが、あの幽霊は二度と現れない。


 もちろん、最大の問題は、我々がもう二度と幽霊の名前を呼ぶ勇気がないことだ。さもなければ、あの幽霊の狩りの手法は極めて強力で、対抗手段は銅貨と物理的な抵抗だけという、まったくあてにならない方法しかない。


 だから今は、ゆっくりと探索しながら、何が間違っているのかを探り、それから計画を立てるしかない。


 ついでに言っておくと、探索過程で、レナは一つのことに気がついた——


『リオンが、少し様子が違う。』


「……」

『どう説明すればいい? 彼、急にすごく勇敢になったみたいなんだ。』

『単なる強がりじゃない。』

『これほどの短期間で、人は本当に変われるものなのか?』


 レナは疑念を抱いた。


 むしろ彼女は、リオンが何らかの刺激の影響を受けて、どこかおかしくなってしまったのではないかと心配していた。


 考えてみれば、リオンは幽霊が怖いのに、「彼女」が傍にいるから、弱みを見せられないのかもしれない。


 この二つが重なって、氷と炎の二重性の均衡を生み出しているのだろう。「あーあ……」


 正直なところ、レナはなぜあの時システムのアドバイスに従って、リオンの彼女役として接することを選んだのか、非常に後悔している。

『たとえ彼が女の子に変わっても……親友になれたはずなのに……』

『あの時、私はいったい何を考えていたんだろう?』


 ――今回は、リオンの関心が彼女自身よりも、むしろクエストそのものに向けられていた。


 幽霊を刺激することなくその居場所を見つけ、狩猟モードに入る前に会話を成立させなければならない。そんなことは、虎の口に飛び込むようなものだ——どう見ても死のフラグを探るような行為に思える。


 その上、幽霊の居場所を特定する手がかりも極めて謎めいている——気温、懐中電灯の点滅など。こうした不明瞭な任務は、常に膨大なエネルギーと注意力を消耗させる。


 しかし今、彼の心の中の恐怖は、ほとんど消えかけていた。


 彼がしたいことといえば、レナの前で自分を証明することだけだった。


 はっきり言うなら、彼は自分の弱点——幽霊恐怖症——を一時間もかからずに克服しようとしていた。聞こえは不可能に思えるが、それが現実だ。心の奥底では、その恐怖はまだ残っている。しかし今、レナはその何よりも大切な存在だった。


 だからこそ、彼は今、自分が大きく優位に立っていると感じていた。


 しかし、それを真っ先に察知したのは団長だった。「おい、ここの温度が急に下がったぞ。なんかヤバい気配がするぜ。」


「確認する…………1階の客間だ。心霊装置を使って名前を呼んでみてくれ」とナオが答える。


 団長は早速、霊界通信機を取り出し、心の準備のために深く息を吸い込み、無表情な顔で叫んだ。「バーバラ・ジョンソン! そこにいるのか?! 出てきて俺たちと少し話をしろ!」


 今回は、現実世界と霊界との通信が順調で、すぐに反応があった——


「……お前達は、間違っている」



 男の声だった。


 団長「……」


 しまった、もう終わりだ。


「早く! 心霊反応が10まで上がった! 気をつけろ!」無線からナオの焦った声が聞こえ、その瞬間、リオンは団長とルイの悲鳴を聞いた。


 彼らのパニックを鎮めるのに、ほぼ1分もかかってしまった。


 ようやく、ナオがためらいがちに尋ねた。「お、お前たち……生きてる? 全滅しなかったのか?」


「おい……」ルイの声はまだ恐怖で震えている。「確認してくれ、俺たちのお札、燃えてないか?」


「ああ! 一枚、焦げてる。どうした? 銅貨が足りなかったのか?」


「足りてるよ! 絶対足りてる! なのに燃えるなんておかしいだろ! 銅貨があれば攻撃を防げるって言ったじゃないか! なんでまだ死ぬ可能性があるんだよ?!」団長はすぐに甲高い声で抗議した。


 彼は確かにこれまで最も多くやられてきた——この幽霊、もしかして怖がりな奴を狙ってるのか?!


『こんな状況、誰が耐えられっってんだ!』団長の心の叫び。


「わ、俺にもわからないよ、俺のせいじゃ……」ナオは慌ててしばらく書類をめくった後、自信なさげに答えた。


「えっと……、どうやら銅貨には幽霊の攻撃を『防ぐ可能性』があるだけで、幽霊の力が強い場所に居続けると、効果がどんどん弱まり、最終的には完全に無効化されてしまう」


「なんだって?!」団長は心底驚いた。「幽霊がどこにいるのかすら正確にわからないのに、それじゃあただ死ぬだけじゃないか——ダメだ、リオン、お前たちはすぐにこの場所を見つけて俺たちを助けに来い、マジで死にそうだ。」


 リオンはこの状況がまったく面白いとは思っていなかった。「やってみよう。もし見つからなければ、どうしようもない。」


「もうどうでもいいや、俺はここで動かずにじってるから、もう切るぞ」そう言って団長はマイクをオフにした。


 するとナオが再び話し始めた。「ねえ、二階のキッチンで活動の痕跡を検知したんだけど、そこに行ってみてもらえないかな?」


 ちょうどその時、リオンが目の前のドアを開けた——そのすぐ脇が、二階のキッチンだった。


 冷たい風の一陣が、顔をかすめるように吹き抜けた。


「危ない」リオンはすぐにレナを自分の背後に引き寄せ、ドアの前に立ちながら警戒して中を観察し、同時に銅貨を二枚取り出して備えた。


 レナはますます困惑した。


『――この人、本当にまったく怖がっていないの?』

『少しのためらいもないの?』


「……」

『それとも、彼に自信を与えるふりをすべきなのか?』


「反応はあるか?」リオンはレナの表情には気づいていない。今、彼の注意力のすべては前方に集中しており、口調は真剣そのものだった。


「ああ、レベル4だ」ナオが素早く応答した。


「つまり、ここには確かに何かがあるんだな」リオンはごく自然にレナの手を握り、真剣な表情で言った。「俺の後ろについてきて、背後にも注意を向けてくれ。俺が守る」


 レナは握られた手の力強さを感じた。


 彼はしっかりと握っていた。


『えええ!もうこういう行動に慣れてしまったのか?』


『……っていうか、これ、ちょっと早すぎない?』


 レナの想像とはかけ離れすぎていた。


「……」

『これはクエストの影響に違いない――そう、プレッシャーによるアドレナリンの効果だ。』

『ゲームから出れば、すべて元に戻る。』


 そう考えて、彼女はリオンの異常な行動について考えるのを無理にやめた。考えが乱れれば、クエストの達成に悪影響を及ぼすだけだ。


 リオンはちょうど、厨房の角まで移動していた。そこからは部屋全体が見渡せる。ドアからそう遠くない位置――なかなか戦略的な場所だ。


 少し考えた後、彼は霊界通信機を取り出し、周波数を合わせて呼びかけた。「ジェイソン?」


 さっき団長がやらかしたような失敗を避けるためだ。もしあの男の幽霊がまだここにいるなら、この呼びかけは彼らにとって雑音でしかない。


 だが、この場所の幽霊を欺くのは、そう簡単ではなさそうだ。


 十秒ほど待ったが、装置からは何の反応もなく、周囲の状況にも変化はなかった。


 リオンは再び通信機のスイッチを入れて確認した。「反応レベルはまだここにあるか?」


「ああ、まだレベル4を維持している。」


「了解。」リオンは深く息を吸い込み、声を突然重くして呼びかけた。「こんにちは、バーバラ・ジョンソン。」


 その言葉が発せられた瞬間、霊界通信機からの音声は突然途切れた。


 すぐその後、通信機から、感情を廃した平坦な女性の声が聞こえてきた――


「お前が、憎い。」


PS: ご参考までに、この家には実は幽霊が二体います:ジェイソン(男性)とバーバラ(女性)です。

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