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第24章 睡眠の問題

 その言葉は、彼の心配を拭い去ったかのようだった。


 率直に言えば、彼にはまだ自覚があった。心の中には様々な期待と疑念が渦巻いていた。親友ナオが放った言葉は、確かに彼を見下したものではなかった。


 ごく普通の――極めて凡庸な――人間である自分に、アイリスフィールド家が注目するような要素など、本当に何一つないのだ。


 以前は、殺されるかもしれないという考えが頭をよぎった。しかし今、ナオに叩き起こされ、彼は正気を取り戻した。


 自分は平均的な、取るに足らない人間だ。二人でこの問題について話していた時でさえ、リオンは一時それを信じかけた。なぜなら、彼の体内の臓器以外に、アイリスフィールド家の興味を引く要素などありえないからだ。


 過去を振り返れば、もしアイリスフィールド家が本当に彼の適合する臓器だけを求めていたのなら、レナが囮になる必要などなかった。


 数千万円を払うだけで済んだはずだ。リオンは、自分ならきっと承諾したと確信している。


 死なない限り、そしてその巨額のお金――彼にとっては、おそらく天文学的数字だった。


 しかしアイリスフィールド・グループの目には、その程度の金額は数時間で稼げる小銭に過ぎない。


 彼らほどの大企業が、たかが臓器のために、令嬢を一介の凡人への囮に差し出すだろうか?


 彼らが正気を失っていない限り、ありえない話だ。


 だから、その可能性はひとまず除外できる。


 果たしてレナは本当に自分のことを好きなのだろうか?


 彼はゲーム内での二人の交流を思い返した。レナの気遣いや指導、育まれた親密さ。


 レナは彼の前で決して令嬢気取りを見せなかった。まるで本当に彼を受け入れ、友として……いや、恋人として見ているかのように。


 その言葉が頭をよぎるたび、奇妙な違和感がリオンの心を掻きむしった。


 二十数年も女性とまともに関わってこなかったせいかもしれない。突然こんな事態に巻き込まれ、彼は少し居心地の悪さを感じていた。


『ああ、そしてあの最後のキス……』


『これがキスというものの感覚か……』


「……おい! 黙ってんじゃねえよ! 笑えよ! マジで、オイ、聞いてるかこのバカ!」

 ヘッドホンから響くナオの声が、ようやく彼を現実に引き戻した。


「てめえ、全くゲームに集中してねえだろ。もういい、バカめ。切るわ。自分の問題、しっかり考えとけよ」


「……悪い、確かに上の空だった。それじゃ、おやすみ」


「オウイ」

 相手が電撃のようにゲームから消えるのを見て、リオンの笑みは一瞬で消えた。


『でも…抑えきれなかったな。あれを考えたら、急に世界がこんなにも美しく感じられるなんて』


 ゲームを終了し、パソコンの電源を落とす。部屋を見渡した後、リオンの視線はようやく隣の壁に定まった。


 この壁の向こうには、レナの部屋がある。さっきまで彼を苛んでいた疑念は、本来なら悲しみをもたらすべきものだったのに…


『彼女は…もう眠ったか?』


 そろそろ休む時間だ。


 レナとの同居初日、悪い印象を残すわけにはいかない。ゲーム中にあんなバカな真似をした分は、明日から挽回しよう。


 ―――その夜、リオンはぐっすりと眠りについた。


 しかも、心地良い夢まで見たのだ。


 奇妙な偶然か、レナも似たような夢を見ていた。だが彼女の夢の中で彼らの位置が違っただったことだ。


 サキュバスと化したレナはベッドの下で追い詰められ、レナは無抵抗に押さえつけられる。リオンは執拗に彼女の尻尾を弄び、レナは脱力して抗う力を失い、その身下に囚われてしまったのだった。



 そしてレナは恐怖で目を覚ました。


【ホストの感情変動が非常に激しいことを検知しました。悪夢をご覧になりましたか?】


「黙れ!!」


 横たわりながら息を整えようとし、レナは腕時計を手に取り時刻を確認した。


『午前3時か』


 明らかに睡眠に最適な時間だが、彼女はまぶたを閉じることができない。夢の残像が消えないのだ。


 夢の中のリオンは強引すぎた。レナの抵抗や拒否を一切無視し、ついには哀願するほど追い詰めても、決して止めようとしなかった。


『悪夢だ』

『でも何故、こんな夢を見た?昨日のキスのせいか?』

『違う…ありえない。ゲーム内のキスは本物じゃない。あれはデータ上のもの。単なる画像だ』


 あのキスをしたのは、他に手段を思いつかなかったからだ。


 むしろゲーム内だったからこそ、迷いなくリオンにキスをできたのだ。そうでなければ、転生した経験があろうとも、あそこまでの行動を起こす度胸はなかっただろう。


『まさか…本当に追い詰められることはないよな?』


『いやいや…アイツ、リオンは強引なことなんてしないだろ? 妄想はするくせに行動はビビリなんだ。絶対…ありえないよな?』


『落ち着け。リオンの自制心はなかなかのものだ。』


『今はこっちがリオンを手のひらで転がしている立場だ。リオンが本当の力を自覚した後でも、リオンが私を抑えきれる…はずだよな?』


『まさか私に手を出すことなんて…ないよな?』


『…リオンは筋を通す男だ…はずだ?』


『ダメだダメだ…何よりリオンは、ちゃんと自分のホントの彼女や伴侶を探すに決まってる…』


「………」


 もはや、まったく眠れそうにない。


『ふと気づいた――私、この問題を甘く見過ぎていた。今はリオンの彼女として彼の世界に入り込んだ以上、いずれリオンがこの立場を利用して私に対抗してくる可能性が高い。』


『もし私が本当にリオンを愛しているならまだしも、問題は、レナである私にとってこれは単なる信用欺瞞の手段に過ぎないってことだ!』


『まさか自分の『元の自分』に処女を奪われるなんてことがあるのか? ありえねえ!』


『いや、そうなる前に手を打たなければ…』


 その夜、レナはまさに苦悩の時を過ごしたのだった。


 いつの間にか眠りに落ち、目を覚ました時には時計の針は午前8時を指していた。


 久しぶりの心地よい朝――自然な眠りと目覚め――だったが、転生したばかりのこのレナの心は、まだ完全には安らげていなかった。


 しばらくベッドに横たわって頭をすっきりさせた後、レナはごろんと寝返りを打って起き上がった。髪をそっと整え、ようやく寝室を出た。


 その時、ちょうど彼女を起こしに来たリオンと、ぶつかりそうになった。


 これはまったくの偶然だった。


 今のレナはだぶだぶのトップスだけを着ていた――もちろんパジャマの上下は着ているが、大きすぎる丈が無防備でどこか挑発的な印象を作り出していた。


 言うなれば、飾らない姿こそが最も魅惑的である、と。


 この光景は、リオンにとって、昨日ゲーム内でビキニ姿のレナを見た時の衝撃に劣らなかった。


 そして……本当に美しかった。


 起きたばかりで身だしなみも整えず、化粧もしていないのに、髪が少し乱れている以外は完璧で非の打ちどころがなかった。


 リオンは幻覚かどうか確信が持てなかったが、レナの美しさは確かに数段階上がっているように感じられた。その美貌の輝きは以前よりも強まっていたのだ。


 なぜならレナは、常時最大レベルの見た目BUFFを維持するシステム恩恵と、魅了スキルのパッシブ効果を帯びていた。この二つが相まって、誰に対しても陶酔させるような吸引力を生み出していたのだ。


 リオンにとってはなおさらである。


 並外れた自制心がなければ、彼は普段なら絶対にしない行動――飛びかかるような衝動に駆られていたかもしれない。


 それでも、鼓動が早くなり、頬がほんのり赤らんだのを抑えられなかった。


「わっ!ご、ごめん!」レナの視線に気づき、リオンは慌てて顔を背けた。「えっと…朝食、用意しといたよ。着替えてから…食べてくれ」


「…ああ」レナやっと目覚めた


ステータス画面

(大状態変化時に随時更新)

________________________________________

レナ・アイリスフィールド

■ 個人情報

•名前:レナ・アイリスフィールド

•年齢:20歳

•性別:女性

•身体状態:正常

■ 能力値

属性=成長=潜在値=初期値 → 現在値

STR(筋力)C+18 → 30

VIT(耐久)C16 → 28

INT(知性)A15 → 27

AGI(敏捷)A+18 → 31

DEX(器用)A+15 → 28

MIND(精神)C+10 → 22

FOR(体力)A+15 → 27

■ ユニークスキル

1.【変身】獣化:黒猫ビースト

2.【変身】悪魔化:サキュバス

3.融合形態:魔猫サキュバス

■ 習得スキル

【常時発動】

1.夜視(変身時)

2.初級魅了

3.知覚強化(変身時)

4.スタミナ向上(変身時)

【主動スキル】

5.初級治癒

6.精神魅惑

7.熱感知視覚

8.潜伏

■ 所持ポイント:80 ※累計獲得:9,000

________________________________________

リオン・リヒト

■ 個人情報

•名前:リオン・リヒト

•年齢:21歳

•性別:男性

•身体状態:正常

■ 能力値

属性=成長=潜在値=初期値 → 現在値

STR(筋力)B+18 → 37

VIT(耐久)C+16 → 34

INT(知性)A15 → 33

AGI(敏捷)B+18 → 36

DEX(器用)A15 → 34

MIND(精神)B10 → 28c

FOR(体力)B15 → 33

■ ユニークスキル:封印中

■ 習得スキル:封印中

■ 所持ポイント:0 ※累計獲得:14,000

________________________________________

▼ ステータスシステム解説

1.身体状態:

o身体コンディションを示す(正常・眠気・飢餓・中毒・出血・骨折 等)

2.属性記号の定義:

oSTR:物理的筋力

oVIT:ダメージ耐性

oINT:知力・魔力適性

oAGI:身体反応速度

oDEX:精密動作性能

oMIND:精神防御力

oFOR:スタミナ持続力

3.成長潜在値の仕様:

o記号(例:A+)は成長率を表す

o能力値倍率計算式:

E(×1.0)| E+(×1.1)

D(×1.2)| D+(×1.3)

C(×1.4)| C+(×1.5)

B(×1.6)| B+(×1.7)

A(×1.8)| A+(×1.9)

S(×2.0)

4.能力値強化ルール:

o初期コスト:100ポイント/1強化

o各属性10Lv昇格毎に+20ポイント増加

o→記号後の数値は強化適用後の現在値

5.プレイヤー基礎指標:

oリオン&レナの初期総合値:105

o全プレイヤーの上位35%に相当

o一般プレイヤー平均値:60~80


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