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第2章 自分自身への告白

突然の登場に、バスケットコート全体が凍りついた。


リオンはボールを拾い上げ、目の前に立つ少女を戸惑いながら見つめた。まるで、この女性が今、自分に話しかけたとは信じられないかのようだった。


しかし少女は水を差し出した。リオンは、悪くない気分を否定できなかった。


彼の純真さゆえに、異性の関心を引くことは稀だった。堅物でストレートな性格は彼の目立たなさの原因となり、多くの潜在的な求婚者を遠ざけていた。とはいえ、リオンは誠実な真実の愛を追い求めていたため、後悔が心に絡みつくこともほとんどなかった。


だが、レナは明らかに例外だった。


一体レナとは何者なのか?


彼女の大学入学の噂は、事前に学校全体の期待をかき立てていた。


スターゲイザー大学に着くなり、彼女は学園の女神ランキングの頂点に立った。その美貌は今を時めく人気アイドルにも引けを取らず、加えて彼女たちが真似できない独特の純粋なオーラを放っていた。


それだけではない。彼女はアイリスフィールド・グループの令嬢なのだ。言わば、女神の祝福を帯びて生まれてきたような存在で——働かずとも一生贅沢を享受できる。


噂では、彼女の求婚に成功した者は誰であれ、裕福な義両親から主人公扱いを受け、人生の頂点に達するとさえ囁かれていた。


しかし、そんな完璧な存在が、なぜ普通の男に話しかけるのか?


リオンは、レナが自分に自ら近づいてくる日が来るなど、夢にも思っていなかった。まるでありえない夢を見ているようだった。


少女の声が彼を現実に引き戻すまで。「だめ…なのか?」


リオンがぼんやりしていると、少女はわずかに眉をひそめた。その表情には、言い表しがたいかすかな罪悪感が浮かんでいた。


ちょうどリオンが答えようとした時、周りの友人たちがせかし始めた。


「いいに決まってるです、こいつは! アイリスフィールド令嬢に誘われてるんだ、こいつ夢から覚めるのが怖いだけさ、断るわけないです!」

「おい、バカ! 喋れよ! 令嬢を待たせるな!」

「試合中だけどさ、早く行けよ! まだやりたい奴いるんだから!」

「…」


野次馬たちの囃し立てに押されるように、リオンはためらいながらボールを渡し、レナから水を受け取った。「あ、ああ…わかった。どこに?」


「湖畔を散歩しながら」レナはかすかに微笑んだ。「お喋りしよう…とかね。」


「……うん」


二人が立ち去ると、コートは一気に燃え上がる噂話に包まれた。


「ちっ! 後で寮に待ち伏せして、白状させてやるからな!」


「うわああ!! なんで令嬢があいつを選んだんだよ!? イケメンって以外に取り柄あんのかよ!?」


「でもリオンのがお前よりイケてるだろ。てか、お前、具体的に何か行動したことあんの? 多分令嬢ってああいう純真なタイプ好きなんじゃね? お前も近づいてみろよ、勇気あるか?」


「マジでむかつく、死にたい」


一方、学園の端にある人工湖には木々の影が揺れていた。


二人は並んで歩きながらも沈黙が続く。リオンはどう話しかければいいか困惑し、レナは…かつての自分(俺)の愚かさに内心で呆れていた。


『さあ! 見ろよお前を! 学園のアイドル! 名門企業の令嬢だぞ! これは夢物語の始まりじゃないか!』


『なんでお前、一言も気があるそぶりを見せないんだ?』


『先に告白するなんて絶対にさせるなよ!』


『そのイケメン顔が誰もをメロメロにできると思ってんのか?』


『現実を見ろ、バカ! チャンスは二度と来ないんだぞ…』


『…』


『自分(俺)をディスってると逆に腹が立ってくる』


リオンの性格を熟知しているレナは推測した:

今、リオンの顔が真剣な表情をしていても、心の中では将来の二人目の子供の名前を考えている可能性すらある、と。


しかし、たとえ心の中が大嵐でも、こいつは…絶対に自らは踏み出さない。結果、前世ではリオンは死ぬまで彼女ができなかった。


『女性と手をつなぐことすら経験したことがなかったんだ』


それこそが、彼が死ぬ前に抱いた最大の後悔だった。転生した今でも、その悔いは心の奥底に淀んでいた。


『転生したんだから、前世の後悔を償い、めちゃくちゃだった人生を書き換えられるはずだ』


『だが、どうやって昔の自分に説明すればいい? 今の俺が『第三者』だなんて!?』


『この物語を、一体誰のために書き直すんだ?』


『目の前のこのバカのためか?』


『こいつに自分で彼女を探させて、俺はドアの陰から見てるだけか?』


冗談じゃない。


レナはこれは倫理の領域に踏み込んでいると感じた――今のリオンは、果たして完全な『かつての自分』なのか?


【ハロー、説明:理論上、ホストと身体本来の所有者の魂は同一です。霊的に、あなたたちは双子以上に近く――血縁関係はないため、交配は依然可能です】


【システム警告:魂の一致率が高いほど、交配時の快感は増大します】


「……」


レナは微かに笑みを浮かべた。

今この場でリオンを殺したら、何が起きるだろうか、と。


【推奨しません。本来の身体所有者への致死的損傷は、システムの永久機能停止を招きます】


前世でもお前は機能停止してただろ?


【超自然的エネルギー源は本来の身体にあります。理論上、現在のホストの力は前世のレベルには到達不可能です】


「……」


「君…?」


レナの声にリオンは我に返った。「え?」


「このままずっと歩いてるだけ?」 レナは優しく言った。「何もしな

いの?」


リオンは固まった。「僕ら…何をすべき?」


『クソッ…!』 心の中でレナは呪った。


こいつのコミュ力、普通の人間の十分の一にも満たない!

未来の姿である俺が、こいつを恋愛マスターにしなきゃならん。


いつも女の子からアプローチさせてる――そんな男、受け入れるわけないだろ!?


深く息を吸い込むと、レナは微笑んだ。「寮を出てアパートを借りたいって聞いたけど?」


「いい場所、もう見つけた?」


「……まだなら」


「一緒に…住まない?」


大学生の頃、リオンは確かに度々寮を出たいと思っていた。ルームメイトの騒がしさに悩まされていたからだ。

残念ながら、彼はぴったりの場所を見つけられず——卒業まで一度も引っ越せなかった。


自分自身以上に自分を理解する者など…いない。

過去の自分を前にして、レナはリオンを掌中の人形のように容易く操れた。


次の反応すら予測できた——


「え?わ、わざわざ?なぜ令嬢が僕とルームシェアなんて?」

レナは即座に切り返した。「だって、君のことが好きだから」


純真な男を攻略する最速の方法? 弱点を直撃することだ。


予想通り、リオンは完全に動揺した。

だが、これだけでは不十分。レナには決定的な一手が必要だった。


一歩踏み出し、彼を抱き寄せる。


レナの腕が優しく彼の首に回り、二人の体が近づいて吐息が触れ合う。

一見甘い仕草だが、リオンはすでに石像のように硬直していた。


レナの囁きは相変わらず甘く、「ずっと前から気づいてたの。私の理想のパートナーはまさに君みたいな人…善良で、誠実で、優しくて、思いやりがあって…」

「…」これ以上、長所が思いつかない。


哀れだ。前世の自分は、本当にこれっぽっちも取り柄がなかったのだ。


心の中でレナが呪う間、リオンはまだ呆然としていた。

女性に褒められたことすらなく、ましてやこんなに抱きしめられたことはない。


『これが…女性を抱く感覚か。香水の香りが…』


放心状態でも、彼の論理は完全には消えていなかった。


「僕…とても光栄です。でも…まだお互いを知らないのに」

「…まずは友達から始めませんか? 深く知り合ってから決めるために」

「軽率な僕の決断で、女性に一生の後悔をさせたくないんです」


レナ、「……」


まさに予想通りだった。

バカだ。救いようのないバカ。


彼女は抱擁を解き、苦笑いを浮かべた。「それなら…まずはルームメイトとして、一緒に住むことから試してみない?」


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