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第18章 狂ったゲームの日常

 確固たる迎撃作戦により、二人は残る二つの補給地点をその後突破した。


 リオンの討伐数は十六、レナは五。


 特に最初の迎撃成功後、男としてのリオンの自信と闘志に火がついた。


 彼の思考は「倒す」こと一点に集中し、他は眼中になかった。


 何より、レナの前で腕前を見せつけられるという点が大きい。


 レナも認めざるを得なかった。リオンの射撃はかなりの精度で、基本的に外れたのは数発のみ。この経験自体が貴重な財産だ。


 レナは後方から付いていき、あたかもAIアシスタントのように褒め言葉を捧げ続けた。


 リオンのあらゆる分野における潜在能力は侮れない、と彼女は認めていた。高い学習能力も相まって、適切な指導さえあれば短期間で急成長する。


 今がまさにその例だ。最初の迎撃を終えた後、次の二地点ではもはやレナの指示は不要だった。むしろ、リオンは徐々に独自のスタイルを確立しつつある。


 レナも気楽になれた。ただ傍らでリオンの動きを見守り、時折一言二言の褒め言葉を投げかける──それだけで十分だった。


 そしてリオンは全てを完璧に、問題なくこなしていく。


 今のレナの目には、これはすでに「非常に満足のいく水準」と映っている。


『……これってチートじゃない?』


『まあいいわ。どうせ昔の私だし。たまにはズルしても許されるでしょ』


 三つの補給地点を制圧した後、ほぼ一時間が経過していた。平らな山頂まではまだかなりの距離があったが、疎らな灌木越しに頂上の状況は把握できた。


 主な理由は、空に突然現れた飛行機のエンジン音があまりにも騒がしく、無視するのが不可能だったからだ。


 大型輸送機一機。


 平らな山頂の真上に到達すると、飛行機はホバリングし、ゆっくりと高度を下げ始めた。


 リオンは一瞥し、レナを振り返った。「今どうする?」


 彼はレナが「このクエストは簡単じゃないかも」と言っていたのを覚えていた。ゲームに詳しいレナに従うのが賢明だろう。


 レナは一瞬考え、足を止めた。「ここで待機するわ」

「ここで?」リオンも立ち止まり、思わず周囲を見渡した。


 この場所は灌木や木々に囲まれ、確かに隠蔽性は高い。しかし、短時間で山頂に到達しようとすれば、逆に障害となる。


「もしあの飛行機が本当に脱出手段なら、俺たち取り残されちゃうんじゃ…」


 リオンの言い分はもっともだった。「置いて行かれたら、つまり負けってことか?」彼は疑問を抑えきれなかった。


「違うわ」レナが首を振る。「システムが絶対クリア不可能なクエストを出すはずがない」


「仮に飛行機が離陸しても、プレイヤーが生存している限り、システムは必ず代替の脱出手段を用意する」


 リオンは一瞬考え込み、それ以上問い詰めるのをやめた。


 レナは飛行機を見つめながら、思考を巡らせる。


 この飛行機は本当に安全なのか?


 保護協会はその存在に気づいていないのか?


 彼らの目的が全参加者の抹殺なら、獲物を罠にかける絶好の機会を逃すはずがない――


 もしかすると考えすぎかもしれないが、レナは終盤ゲームで常に最悪のシナリオを想定してしまう性分だった。


 何より、このクエストに残っているプレイヤー数を彼女は知らない。

 これがクエストの難易度を左右する。生存プレイヤーが多いほどクエスト難度は上がり、少ないほど下がる。

 このルールは、生き残りが1~2人になった時点でクエストクリアの曙光を与える仕組みだ。


 故に今の最善策は少し待つこと。仮に飛行機で事件が起きても、直接的な被害を免れることができる。


 ――そして彼女の読みは的中した。


 飛行機が着陸態勢に入ったまさにその時、横の森から白い閃光が噴出!機体を直撃し、そして――


「ドカン!!!」


 大爆発が尾部を吹き飛ばした。機体は制御を失って横転し、連鎖爆発を引き起こす。遠く離れた二人の足元さえ、地響きを立てて揺れた。


 同時にシステム音が響き渡る――


 >【緊急】脱出用航空機は保護協会により破壊されました。主催者は代替脱出艇を手配します。至急指定地点へ向かってください。

 >【警告】保護協会の武装が大幅強化されました。島全域への全面攻撃を開始します。

 >【現在のクエスト】脱出地点へ急行し、艇へ搭乗せよ


 瞬く間に、山頂から耳を劈く砲撃音が轟き――一つ、二つ、やがて島全体へと拡散していく。


 状況を目にしたリオンが瞬時に硬直した。「行くか?」


「逃げるわよ!」


 レナは迷わなかった。レーダーを一瞥すると、指定座標へ向け一直線に走り出した。「急いで!一秒でも早く!」


 この手のハプニングはミッション終盤の定番――追い詰められた状態で最終課題を強制クリアさせるための仕掛けだった。


 これがゲームの常套手段だ。


 いずれにせよ、移動は必須だった。島に残れば保護協会の標的となる――そしてレナは確信していた。彼らの戦闘能力は以前より遥かに致命的に強化されていると。


 リオンの動きは機敏だった。レナが走り出すや否や、彼は即座に後を追いながら周囲を警戒深く見渡した。いつでもレナを庇えるよう、手は構えを解かない。


 このゲームの展開が完全に予測可能とは言わないが、この流れは明らかに最終局面だ。難易度は急上昇するに違いない。


 リオンはレナを守ると誓った約束を果たす決意だった。たとえ死ですら、それを阻むことは許されない。


 しかし死を覚悟したにも関わらず、彼らの進撃は驚くほど順調だった。おそらく初期位置が山から十分離れていたためだろう。迅速な避難行動が保護協会の追跡を不可能にした――予想外の吉報だ。


 だが、ゲームが全てを容易には済ませるはずがない。


「ドドドドド――ッ!!」


 まさに目的地の浜辺目前、森の陰から銃撃の爆音が轟いた!弾丸がレナの直前に砂浜を叩き、土煙の壁を噴き上げる。


「伏せ!」 レナは即座に身をかがめ、大木の幹へ飛び込むと同時に敵陣へ応射を放った。


 リオンも反応した。草むらへ飛び込むと、銃身を鋭く脅威の方向へ向ける。


 レナは素早くマガジンを交換。木陰から身を乗り出すと、森の縁を鋭く見据えた。「伏兵に注意。挟撃される可能性がある」


「了解」リオンが力強くうなずく。「ゆっくり這って進もう。船にさえ乗り込めれば、セーフだよな?」


「ええ、行きましょう」


 レナはリオンの背後に位置し、拳銃を構えて周囲を警戒しながら、彼と共にゆっくりと浜辺へ向かって前進した。


 砂地を踏む直前、彼女は突然動きを捉えた――ピンク色の服を着た集団が森の縁に溢れ出し、一斉にこちらへ迫っている!


 圧倒的な敵数だ。反撃で対処できる規模ではない。


 ためらう余地などなかった。レナはリオンの腕を掴み、地面へ引きずり倒した!「伏せ続けろ!」


「バババババーン!!」


 ほぼ同時に、遠方から銃撃が轟き、彼らの周囲の砂塵を跳ね上げた。


 弾丸の咆哮の中、リオンはすぐ横でレナがかすかにうめく声を聞きつけた。


 胸が締め付けられた。「大丈夫か⁉」


「…………くっ」


「…………」


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