表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【ライブ感】地味令嬢、無能扱いされたので自由に生きます。【イケメン】  作者: 雪見クレープ
第1部 地味令嬢、無能扱いされたので自由に生きます。
7/22

第7話 奪われた手紙と忍び寄る影

「ミレーユ、君は本当に逃げるつもりか?」


 馬上のセバスティアンが、穏やかな微笑を浮かべながら問いかける。

 朝焼けに照らされた彼の赤い外套が、まるで絹のようになびいていた。


 私は逃げるつもりだった。


 エドワウ・トールギス(王太子)、ライナス・グレイ(騎士団長)、セバスティアン・ハワード(商会長)、そしてルーカス・グレイ(財務監査官)。

 四人の貴公子が、私の行く先を塞ぐように現れるたび、私は自由を求めて逃げた。


 ……でも、逃げるだけでは何も解決しない。


「もう逃げないわ」


 そう宣言すると、セバスティアンが軽く片眉を上げた。


「ほう?」

「……私は、自分の生き方を決めるために、一度アシュフォード家と向き合うべきだと思うの」

「お前、本気か?」


 低く響く声に振り向けば、そこには追いかけてきていたライナス・グレイ。

 彼の黒曜石の瞳が、まるで私の覚悟を試すように揺らめいていた。


「お前を追放した奴らのもとへ戻るなんて……俺は賛成できない」

「分かってる。でも、私は“もう関係ない”って言うだけじゃ、前に進めない気がするの」


 ライナスは短く息を吐き、腕を組んだ。


「……だったら、俺も行く」

「え?」

「お前を一人で行かせるわけにはいかない」

「私もだ」


 今度はどこからともなく現れたエドワウ・トールギスが言った。


「私はお前を妃にするつもりだ。その未来の王妃を、好き勝手に連れ戻されるのは困る」


 相変わらず、断言するのが早すぎる……!


「なら、私も同行しましょうか?」


 と、楽しそうに微笑んだのはルーカス・グレイ。


 なぜみんな私の居場所がわかるのか……まあ、今はそんなことを考えても仕方ない。


「アシュフォード家の財務状況を直に確認するのは、なかなか興味深い案件ですからね」


 そして、4人が当然のように私の同行者になろうとしている。


 ……なんなの、この強制的な護衛体制!?


 ◆◇◆


 宿へ戻ると、思わぬ出来事が待っていた。


「……え?」


 家を出るときに渡された私宛の手紙が消えていたのだ。


「何かあったのか?」


 ライナスが警戒した声を出す。


「机の上に置いていた手紙がない……」


 手紙の封には、アシュフォード家の紋章が刻まれていた。

 もういらないと思って置いていったはいいものの、家に帰るなら読んでおこうと思っていたのに……。


「誰かが盗った可能性があるな」


 セバスティアンが冷静に状況を分析する。


「この宿に泊まっている者の中に、君の動向を探っている者がいるのかもしれない」

「……!」


 背筋が冷たくなる。

 つまり、私はただ求婚者に追われているだけじゃなく、何者かに監視されているということ?


「誰の仕業かは分からないが……」


 エドワウがゆっくりと歩み寄り、私の顎を持ち上げた。


「ミレーユ、お前は思っている以上に価値のある存在だ」

「……エドワウ?」


 彼の金色の瞳が、鋭く光る。


「敵がいるなら、そいつを炙り出すのも悪くない。どうする? このままアシュフォード家へ向かうのか?」


 私はぎゅっと拳を握った。


 自由を求めるだけじゃ、だめだ。

 このまま逃げるだけの人生は終わりにしよう。


「……ええ、行くわ」


 私ははっきりと頷いた。


 そして、この旅の先に待つ真実と決断に向かって、一歩踏み出したのだった——。

読んでいただきありがとうございます!


この作品が面白いと感じたら、下の☆☆☆☆☆の評価、ブックマークや作者のフォローにて応援していただけると励みになります。


今後ともよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ