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【ライブ感】地味令嬢、無能扱いされたので自由に生きます。【イケメン】  作者: 雪見クレープ
第1部 地味令嬢、無能扱いされたので自由に生きます。
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第2話 騎士団長は、護りたい

 冷たい夜風。緊迫した空気があたりを支配した。


 え? ちょっと待って。


 私はただ追放された令嬢で、偶然王太子に拾われたにすぎないはず。

 なのに、どうして目の前で 王国最強の騎士と王太子が睨み合っている の!?


「……ライナス、お前は私に刃向かうのか?」


 エドワウ王太子は静かにそう言った。

 その表情は相変わらず涼しげで冷静。でも、その金色の瞳は微かに鋭さを増していた。


 対するライナスも、黒曜石のような瞳に揺るぎない決意を宿している。


「刃向かうわけではない。ただ、俺は彼女を守りたいだけだ」

「守る?」


 エドワウの口元がわずかに持ち上がる。


「彼女はアシュフォード家から追放された令嬢だ。今まで散々冷遇されてきた。守るべきものなど、何もないのでは?」

「そう思うのは、お前が彼女を知らないからだ」


 そう言い切るライナスの声が、夜の静寂を切り裂く。


 私は無意識に彼を見つめていた。

 ライナスはじっと私を見つめ返し、優しく、しかし強く言葉を紡いだ。


「お前が知らなくても、俺は知っている。ミレーユはずっと、あの家を支えていた。領地の財政管理、教育、補佐……すべて陰で彼女がやっていた」

「……!」


 私は驚いた。


 なぜ、彼がそんなことを知っているの?


「俺は、お前の弟に剣を教えていた」


 ライナスは続ける。


「何度か屋敷に通ううちに、お前が書斎で一人、膨大な書類を整理しているのを見た。何も知らない子供のような領主の代わりに、屋敷を動かしていたのはお前だったんだろう?」


 そう言われて、私は言葉を失った。

 誰にも気づかれていないと思っていた。

 でも——ライナスは、見ていたの?


「……けれど、そんなこと関係ないわ。私はもう、アシュフォード家とは無関係なのだから」

「それでも、俺はお前を放っておけない」


 ライナスの声は、どこまでも真っ直ぐだった。


「ミレーユ、お前はあの家を守るために、自分を犠牲にしすぎた。今度は、俺がお前を守る番だ」

「……!」


 心臓が、どくん、と跳ねる。

 彼の言葉は、まっすぐ胸に突き刺さった。


 誰かに「守られる」なんて、思ってもみなかった。

 ましてや、それを言うのが、騎士団長の彼だなんて。


 だけど——


「悪いが、彼女はもう私のものだ」


 エドワウが静かに、しかし確固たる声で言った。


「ミレーユは私の妃候補になる」

「……妃候補?」


 ライナスが目を細める。


「お前は彼女を王妃にするとでも?」

「当然だ」


 エドワードは、さらりと言い放つ。


「君が私の妃になることで、君の価値は正式に証明される。陰の功労者としてではなく、王国の未来を担う存在として」

「………………」


 私が黙ると、ライナスが低く息を吐いた。


「お前は本当に、彼女を愛しているのか?」

「……それは、君が知る必要はない」


 エドワードが静かにそう答えた時だった。


「やれやれ、二人とも随分と情熱的ですね」


 別の声が割って入った。


 馬車の後方から、優雅な足取りで現れたのは——


「セバスティアン・ハワード!?」

「お久しぶりですね、ミレーユ」


 落ち着いた微笑みを浮かべる彼の姿は、月光の下でさえ堂々としていた。

 深紅の外套を翻しながら、商会長の彼は涼やかに言う。


「彼女を巡って争うのは結構ですが、私も正式に彼女を求婚するつもりですので」


「……なんだと?」


 ライナスとエドワードが同時に低く呟いた。


「ミレーユは、私の妻にふさわしい女性ですからね」


 さらりと言い切るセバスティアン。


 え、ちょっと待ってください。


 この短時間で三人の貴公子が求婚してきたんですけど!?


「………………」


 もう、思考が追いつかない。


「さて、ミレーユ」


 セバスティアンは微笑みながら、すっと手を差し出してくる。


「君は、誰を選びますか?」

「…………」


 待って。心の準備ができてない。


 私の自由な人生は、追放された瞬間に始まったはずだった。

 なのに、なんで こんなにも選択肢が増えているの!?


 ——混乱する私をよそに、三人の貴公子の視線が交錯する。


 そして、夜空の下、私の人生はまた大きく動き始めたのだった——。

読んでいただきありがとうございます!


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