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【ライブ感】地味令嬢、無能扱いされたので自由に生きます。【イケメン】  作者: 雪見クレープ
第1部 地味令嬢、無能扱いされたので自由に生きます。
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第18話 逃亡の決断

「姉さま、早く!!」


 ルイスの叫びが、地下牢の冷たい空気を震わせた。


「騎士団が王宮の門を閉じちゃうよ!」

「……っ!」


 王宮の門が閉じる?

 つまり、 王妃が私の逃亡を阻止しようとしている?


「ミレーユ、お前はもう自由ではいられない」


 エドワウが低く囁く。

 彼の金色の瞳は、まるで私を捉えた獲物のように静かに光っていた。


「ここに残れば、王妃に取り込まれる」


 アレクセイが、鉄格子の向こうから声を上げる。


「だが、俺と行けば——」

「黙れ、アレクセイ」


 エドワウが鋭く言い放つ。


「ミレーユは俺の妃だ。何があろうと、ここで生きる」

「違う!」


 私は思わず叫んでいた。


「私は……私は、まだ何も決めていない!」


 エドワウの腕の力が、僅かに緩む。


「……何?」

「私は、誰かの道具にはならない!」


 私はその場に立ち、震える手でエドワウの腕を押し返した。


 彼の瞳が、ほんの一瞬揺らぐ。


「エドワウ、あなたは私を守ってくれる」

「……っ」

「アレクセイ、あなたは自由をくれる」

「……ミレーユ」


 二人とも、 私のために動いてくれている。


 でも、どちらについていくのかを決めるのは、私自身の意志でなければならない。


「僕は……姉さまと一緒にいたい」


 ルイスが私のドレスの裾を強く握る。


「姉さまが王宮に残るなら、僕も残る。でも、出るなら、僕も一緒に行く!」

「………………」


 彼はまだ幼い。

 それなのに、自分でしっかりと選ぼうとしている。


(だったら……私も決めなきゃ)


 私は 深く息を吸い、そして、決断した。


「……私は、王宮を出る」

「っ……!」


 エドワウの腕が、再び私を掴もうとする。

 けれど、それを振り払うように私は後ろへ下がった。


「私は、ここに囚われたくない」

「ミレーユ……お前……!」

「エドワウ、あなたがどれだけ私を求めても、私は 私の意志で道を決める」


 彼の表情が歪む。


 私にとって彼の腕の中にいることが心地よかったことは事実だ。

 けれど、それは自分で選んだものではない。


「……いいだろう」


 エドワウが、静かに息を吐いた。


「だが、忘れるな。お前はどこに行こうと、最終的に私のものになるということを」


 その言葉に、心臓がひどく跳ねる。


(この人は……本気でそう思っているのね)


「それは……私が決めることよ」


 私はそう言い残し、アレクセイに目を向けた。


「行くわ」


 アレクセイは静かに微笑むと、隠し持っていた鍵で鉄格子を開けた。


「ここから脱出する」

「ルイス、私の手を握って!」

「うん!」


 弟の小さな手を握りしめ、私は王宮からの逃亡を決意した。


「お前を逃がすわけにはいかない」


 エドワウが剣を抜く。


 それは王太子としての立場ではなく、一人の男としての執着に満ちた目だった。


「……っ」

「ミレーユ、行くぞ!」


 アレクセイが手を引く。


「兵士が来る前に、抜け出すんだ!」


 王宮の闇の中、私はただ前へ走った。


 エドワウの瞳が背中を貫くのを感じながら——。

読んでいただきありがとうございます!


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