翔ぶ日に――Old goggles tell anymore…
「翔ぶ日に――」
ある漫画のタイトル
軍装品の骨董品屋からか
手にいれた古い防塵眼鏡
ゴムバンドは歴史を語る
罅われ、固く縮んでいる
戦いの証、こびりついた黒い染み
血痕を思わせる悲しみ
持ち主の男が聞いた
発動機の逞しい音が
閉め切られた操縦席は
さながら鉄製の棺桶
男は四肢を縦横無尽に操り
空を駆け、引鉄を引く、引鉄を引く
敵機は炎と煙に包まれる
男は何度も死線をくぐった
そして死神が囁いた
「つぎはお前の番だ」
男は四肢を縦横無尽に操り
空を駆け、引鉄を引き、力尽きた
その最期が
意味ある死だと
想うから
物語は生まれる
復讐の悪魔に魂を売り渡してさえ
愛する人の名を叫んで死んだのだと