表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アイデンティティ・シンクロニシティ  作者: 伊藤沃雪
function Empathy(){ var files=
24/40

scene(6,Ⅰ). getFilesByName("反撃の狼煙"); 

 次の日、早朝と呼ばれる時刻から少しだけ経ったころ。下層階の地の底から、地震とともに爆発音が響いた。突然の出来事に住民たちは混乱し、下層階内にも警報音が鳴り響く。

『火災発生 地下エリア西にて火災発生 住民の皆様は、ロストラ地域に避難してください 住民の皆様は──』

 無機質な女性の声で、避難警報が知らされる。ただでさえ人口の多い下層階の中で、ロストラだけに住人が集中して、ごった返すことになった。


 部下からの通信を取る。ベルヌーイは変わらず、ロストラエリア南端部のタワー屋上に居た。

『少佐、住民たちが邪魔でロストラは身動きが……くそっ!』

『仕方ねえ、スラムエリアに退避するぞ。北西側な』

『承知しました!』


「ボスのやつ、謀ったな?」

 通信機器を切って、笑いながらぼそり、と零した。住人を巻き込まないようにロストラへ逃がして、戦闘をスラム側で行うための爆発だろう。咥えていた煙草を吐いて捨て、のんびりと歩き出した。






 そのころ、【塔】外側。本来であればデッキ部分の展望台程度でしか、【塔】の外に出る機会はない。メンテナンスは管理ロボットが自動で行うものだが、万が一のために備え付けられた緊急用階段は存在する。冷たい風が吹きつける中、クロエ達は緊急用階段を足が棒のようになりながら登っていた。


「ねえ、さっき廃墟層の爆発があったでしょ? もう飛んでいいんじゃない?」

「ヘレン、お前分かってて言ってるだろ。下層階のヤツが本チャンだからま~だ!」

「耐えてください、ヘレン様」

 言い伏せられたヘレンが特大の舌打ちを鳴らしながらも、懸命に足を進める。クロエとサティに挟まれている事もあり、文句は言っても立ち止まりはしない。1層につき8000段あまり。早朝から昇り始めて、今は下層階の天井付近だった。



 クロエは階段を登りながら、昨夜のうちにヴァンテ達と交わしたやり取りを思い返す。


────上層階に軟禁されている、ヴァンテの研究仲間は8人。彼らがいるのは、上層階の3分の1を占める軍部支配地域、〈フォロ・ディ・スクラノ〉の中だ。軍施設、生活施設、武器保管庫、訓練所などのほか、研究機関や商業・教育機関などを包括した巨大基地。〈フォロ・ディ・スクラノ〉から出る事を許されずに、日夜兵器開発に勤しんでいるのだという。


「ハッキリ言って無謀じゃないの? いくらクロエが一般人だからって、I№がスキャンされたらバレるでしょ」

 ヘレンは腕を組んでから、ヴァンテを睨んだ。


「そうだね。クロエ君には〈フォロ・ディ・スクラノ〉に入る前に、別の換装身体を準備してもらうつもりだ。I№偽造用のチップを渡しておくから、それとともに換装してもらう」

「換装身体の準備ってどうやって……」

「あ~、ヘレン。そっちは大丈夫、うん」

 詰め寄るヘレンを、引き攣った笑顔を浮かべてクロエが止めた。全く納得がいっていない様子のヘレンだったが、ひとまず矛を収める。


「上層階には、クロエ君と13号、ヘレン君で先行する。偽造I№で〈フォロ・ディ・スクラノ〉に潜り込み、研究所に向かう。仲間の中には『自殺病』や人体強制睡眠保管(クリオスリープ)を発明した人間もいてね。助け出せれば、ヘレン君の症状の対処法が見つかるかもしれない」

「へぇ……それは何て人なの?」

「リザ、という名だ。変人で通ってるけどね」

 ヴァンテは苦笑いする。


「彼らにもクロエ君と同じように、偽造I№の換装身体に着替えてもらってくれ。逃げる手筈が整ったら合図を送ってもらい、僕も動き出す」────



「はぁ、アンタいつも走ると息が上がってるくせに、何で今日は平気なのよ……」

 作戦について振り返っていたところで、後ろのヘレンから不満そうな声が投げられた。


「んー、階段はペース守ってれば持つぜ。お前は不正換装身体(パーボディ)だから、体力ないんじゃねえ?」

「誰が、不正換装身体よ! この見栄っ張り野郎!」

「待て、殴るな殴るな! こんなとこで体力使うなって!」


 ヘレンが激怒して、後ろからクロエに殴りかかろうとした時。下層階からも爆発。衝撃で【塔】全体がビリビリと振動し、揺れ動いた。吹き飛ばされそうになりつつも、三人は階段にしがみ付いた。少しずつ揺れが収まっていく。


「始まったようですね。飛べますか? クロエ様」

「ああ、もちろん。いつでもいけるぜ」

 サティが聞くと、クロエはブーツを背中から外してブラブラと振ってみせた。勢いのまま投げて、エアブーツを起動させる。先日とは違ってサティが背中におぶさり、ヘレンを横抱きに抱えるようにして、浮上した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ