ダスプレト・リザードロード
青い炎が灯り、ボスの姿が照らし出される。見たところ、二本足で立つデカいトカゲだ。斧と楯で武装している。【ダスプレト】要素はどこにあるんだ?
「来る」
俺は短く呟き、斧の一撃を避ける。まともに食らったら死んでいたな。とはいえ、現状では紙装甲なので仕方ない。今の防具なんて、鎖かたびらだ。鎧ですらない。
かたやデュランティは、高そうな金の鎧で全身を覆っている。こいつの心配はするだけ無駄だな。
なら、自分の心配だけしてるか。
「スキル【竜王の鱗】」
俺はドラゴンロード固有のスキルを発動させる。9999以下の攻撃を通さない、強力な防御スキルだ。
ダスプレト・リザードロードは何度も斧を振り下ろし続けるが、俺の纏う障壁に弾き返された。尻尾を叩き込つけたり、楯で殴りつけたりしてくるが、全て無意味。徒労に終わった。
「ま、10000以上の攻撃なんて、こいつに出せるわけないか」
俺はすかさず手持ちの双剣で連撃を浴びせかける。ここからは一方的な殺戮になるだろう。
だが、一方的な殺戮は二十分経っても終わらなかった。
このエリアボス、討伐推奨レベルは30。推奨人数5人だ。なかなかHpが削れない。まだ半分だ。
デュランティがイライラしているのが、兜越しにも伝わってくる。
「もう、経験値は折半でいいでしょ。半分削ったんだから、残りの半分は私がやる」
デュランティは鎧を脱ぎ捨てた。
「スキル【八岐の顎】」
デュランティがスキルを発動すると、巨大な龍の首が背中から生え、あっという間にボスを丸呑みした。
それほどにデカい首だった。
「これは……」
東方を支配するドラゴンロード、【ヤマタノオロチ】の頭部だ。こいつは二代目ヤマタノオロチだったのか。
「そ。私が討伐したのは【ヤマタノオロチ】。龍の首なら八本まで出せる」
「それ、もはやドラゴン形態に変身しているようなもんじゃないか」
「いいでしょ? 八段階で威力も調節可能だしね」
なんだかあっちのスキルの方が使い勝手良さそうだな。まぁこれも、隣の芝生は青く見えるというやつだろうか。