課金勢
翌朝ログインすると、前回と同じ荒野に降り立った。デュランティは先に来てレベル上げをしていたらしい。かなり装備が豪華になっていた。ドロップアイテムではなさそうだ。
「課金したのか」
「そう。もう地道なレベル上げはご免なんで、装備に課金したわ。おかげで雑魚モンスターをサクサク狩れる」
俺は無課金勢だからな。その心理は理解できるが共感はできない。ニズヘグを討伐できたのも、膨大なプレイ時間と情報収集のおかげだ。そのプロセスを楽しんでこそのゲームだと思うのだが、まぁプレイスタイルは人それぞれだろう。
「俺はそろそろエリアボス戦に挑戦してくるよ」
「その装備で?」
デュランティには驚かれたが、別に無謀だとは思っていない。このゲームで鍛えた勘と反射神経があれば、十分勝ち目はあるはずだ。
「自信はある。それに、道中でレベル上げもできるだろうしな」
「じゃ、私もついて行く。私だって経験値は欲しいし」
「そうか。じゃあよろしく」
エリアボスは【ダスプレト・リザードロード】というらしい。ダスプレトの意味は知らんが、リザードロードなんてドラゴンロードに比べたら大したことはないだろう。
「デュランティはこのエリアに来たことあるのか?」
「いや。私は東の果てを拠点に活動してたから、こっちには来たことない」
ここは南寄りの荒野。ドラゴンロード【ヨルムンガンド】の支配する領域だ。俺もデュランティも情報を持っていないので、若干苦労しそうだな。
「やっと着いたか」
「何時間かかってるのよ」
ボス部屋の前に車でで、3時間くらいかかってしまった。デュランティは俺のレベル上げのため手を出さずに見守ってくれたので、中級モンスター相手に時間を取られてしまった。
「でもこの部屋、密室なのよね?」
「まぁ、エリアボスの部屋は大体そうだな。パーティごとに交代制だし。中の様子は分からない」
「そう。じゃあドラゴンロードのスキル、使い放題ね」
デュランティの言う通りだ。ようやく出し惜しみせずに戦える。
「あぁ、人目を気にする必要はない。全力で行けるな!」
そうして、俺たちはボス部屋に足を踏み入れた。