地道なレベル上げ
と意気込んだはいいものの、今の俺たちはレベル1。デュランティの甲冑も初期装備だ。俺も麻の貫頭衣という質素すぎる出で立ちで、もはや中世の貧農のようだ。
「まずはレベル上げ、しないとですね」
俺が言うと、デュランティはため息をついた。
「ドラゴンロードのスキルを使えば簡単ですが、ハッカーどもに手の内がバレるのはまずいですしね」
まぁ、ゲーム攻略のコツや身体の動かし方は覚えているから、そこまで苦労はしないだろうが。
「にしても、こんな真似するくらいなら全員にドラゴンロードのスキル付与してハッカーを狩らせればいいのに……」
デュランティはそんな不平をこぼした。
「それこそ相手にすぐ対策されちゃいますよ。初心者のふりして俺たちが出張るから効果的なんです。それに……」
「それに?」
「苦労して手に入れたドラゴンロードの能力を、他の連中に渡したくはありません」
それこそ俺の本心だった。
「そうですね。よく考えたらこれだけのスキル、大安売りされたらたまったもんじゃないですよね」
その通りだ。【二代目ニズヘグ】の称号には、あらゆるものが詰まっている。膨大なプレイ時間と努力の結晶なのだ。
「ん? あれは……」
向こうを見ると、中規模の砂竜、【サンドサウルス】が地面から這い出してきていた。確か推奨討伐レベルは12。今のレベル的には無謀な挑戦。
だが、俺たちはあのドラゴンロードをも狩ったプレイヤー。11程度のレベル差、大したことはない。
俺が先陣を切り、初期装備の短剣で斬りつける。首の下が弱点なのは分かりきっている。あとは連撃をたたきこむだけだ。
10分ほどかかったが、やがてサンドサウルスのHPゲージは、瀕死を示す赤色になった。
確か、瀕死だと動きが俊敏になるんだよな。今のアジリティで躱しきれるか?
そう思いつつ、迫る尻尾を避けようとすると、デュランティが長剣で尻尾を弾いた。
「助かりました!」
「どうも。それともう敬語はなしで! 戦闘中は意志疎通しづらいから!」
「了解!」
ラストアタックを二人同時に叩き込み、サンドサウルスは霧消した。
レベルは4まで上がったが、ハッカーどもはステータスをカンストさせているらしい。このままでは心もとないだろう。
「初心者に化けられるのはいいが……」
「かなり苦労しそうね」
ハッカーどもの手がかりもない。先は長そうだ