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第21話 予定外の街歩き


 午後の授業を上の空でやり過ごし、授業が終わるとすぐにクララベルの教室へと足を運んだ。

 クララベルの姿を探していると、クララベルの友人のポーリンが、おずおずと昼休み後に早退して帰ったと告げた。


「きみはたしか、ベルトラン伯爵令嬢だったね」


 はじめてエルネストに名を呼ばれたポーリンは、緊張で表情が引きつってしまっていた。


「はい、さようでございます。ベルトラン伯爵の娘ポーリンでございます」

「固い挨拶はいいよ。それより、クララベル嬢の様子はどうだったろうか。少しショックな話をしてしまったのだ」

「そうでございましたか。クララベル様は泣いていらしたのか、目が潤んでいました。体調がすぐれないので今日はもう帰ると仰られて、教室に戻られてすぐにお帰りになりました」

「なるほど。よくわかった。これからもクララベル嬢を支えてやってくれ」

「かしこまりました」


 エルネストは侯爵家へ訪問することにしたらしく、側近のアドンに一言、二言指示を出し立ち去った。

 アドンも侯爵家への前触れや手土産の準備等をするため、駆けて行った。

 エルネストがいなくなると、ポーリンはホッと肩の力を抜いた。


(クララベル様、愛されていますわね。そうだわ、このことをシャール様にお伝えしなくっちゃ)


 実は、シャールにもクララベルを頼むと、入学早々に声を掛けられているのだった。

 シャールの方は、かなり切実に、何かあったら知らせてくれと。

 ポーリンは自分のカバンを持って、シャールのいる教室へと急ぎ向かった。



 一方その頃。

 泣きながら侯爵家へ帰ったはずのクララベルは、片手に何かの肉の串焼きを持って、口をもぐもぐさせながら王都の繁華街を歩いていた。


「うまーっ。やっぱり食べ歩きと言えば肉だよね!」


 エルネストの前から、はかなげに走り去った面影は、一切ない。

 学校を早退して侯爵家へ向かう馬車の途中、泣き疲れてウトウトしたが最後、あっというまにマリアベルの登場である。

 せっかく早帰りをしたのに屋敷に帰ってもつまらない、と繁華街へやって来たのだった。

 昼時は街中の店は昼休憩を取っていることが多く、田舎から出て来た観光客が入れる店が見つからず右往左往している。

 マリアベルが串焼きを食べながら歩いていると、見知らぬ女性に話しかけられた。


「あの~、その串焼きはどこで売っているのでしょうか。飲食店が見つからなくて困っているのですが・・・」

「ん?あ~、王都では昼の時間帯はお店がしまっちゃうんですよ。あっちの市場の方に行くといっぱい屋台が出てますよ!」

「そうですか!ありがとうございます」

「いえいえ、楽しんでくださいね!」


 観光客と思われる女性たちは、ペコペコとマリアベルにお辞儀をして市場の方へと歩いて行った。

 マリアベルは肉のうまみを堪能しながら、街の中央にある国立庭園を目指して歩いた。

 クララベルが侯爵令嬢となってから、こんな風に一人で街歩きをしたことなどなかった。

 いや、正確に言えば今も一人ではない。

 馬車に控えていた護衛騎士が、マリアベルの後ろから付いて歩いている。

 護衛騎士は心なしか表情が硬い。

 予定外の街歩き、護衛は自分一人。

 屋敷に知らせを走らせたが、いまのところ他の護衛は到着していない。

 知らず知らず緊張して、表情も硬くなろうという物だ。

 貴族の令嬢と言うだけで、身代金目的に誘拐される危険があるのだ。


(しかし、クララベルお嬢様は庶民のふりをするのがうまいな。ごく自然に振舞っておられる。そういえばシャール坊ちゃまも大変お上手に変装されていたな)


 などと考えながら歩いていると、ひょいと人並みにマリアベルの姿がまぎれ見失ってしまった。


「お嬢様?あれ、クララベルお嬢様?!」


 きょろきょろと辺りを見回す物の見当たらず、護衛騎士はざっと血の気が引いた。


(まずい!見失ってしまった!)


 護衛騎士は行ったり来たり、辺りを探し回ることになった。


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