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冷蔵庫の女  作者: 第六感
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どうやら僕は存外疲れていたらしい。正体なく泥のように眠りこけたようだ。まあ重労働だったからね、仕方ない。それにこれを読んでいる君に対しては気丈に振る舞ってはいるが、自分が「法を犯した」という事実にはその実結構参ってしまっているらしい。なんというか、案外自分が普通のやつでがっかりするな。

そうじゃないか。自分はいつか人を殺すだろうなんて息巻いておいていざその現場に直面してみたら覚悟ができていなかった。がっかりもするさ。

自分は特別なやつだと思いたいじゃないか。そんなことはないわけあるか。嘘をつけ、嘘を。

今日の日付は十一月二十四日で曜日はわからない。しばらく大学にも行ってないから時間割を見ても感覚は帰ってこなかった。

この文章を僕以外の人が読めるときにはもうだれが書いた文章かなんて当然ご存じだろうから多く語ることはしないけれど、できることならば、僕のすべてをここに置いていきたいと思う。

さて、彼女の名前は安斎籐子。以下籐子と呼称することが多いだろう。僕は自分を僕と呼ぶが今井なつめとも言う。二人とも大学の近くに下宿する3年生でうれしい仲というやつだ。

前置きが長くなった。最初の話は昨日の朝だ。夢見の悪さに全身から汗を吹きだして心臓はバックバクではね起きた。悪い夢でも見たような気持だった。悪い夢の中で僕は人を殺しちゃったらしい。

で、その死体処理をしながら

『ああ、どうしてこんなつまらないミスを犯してしまったのだろう』

『親に申し訳が立たない』

『殺してすぐなら救急車呼んで救命活動を全力でやった方が罪は軽くなるのに』

『でも完全に抹殺することができたなら重い軽いどころかおとがめなしだぜ』

『どっちかなんだ、なにも隠さないで情状を期待するか、全力で隠滅するか』

『もう、着手した以上は全力になるしかない』

とかなんとか考えて、いくらやっても進まない処理を脳内会話主体でやっているという、夢。

これが本当にリアルな夢だった。『ああ神様、もう二度と人を殺そうと考えません』と祈りをささげるほど。


それは夢だったけども。


死体はリアルだったのさ。



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