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エピローグ


 黒龍教の襲撃から一夜が明けた。

 ボロボロの都市を見て、多くの市民が絶望的な表情を浮かべるが、それをギルドの職員たちが励まし、復興が始まった。

 幸い、人的被害はほとんどない。

 ただ。


「何一つ証拠がないのは大したものだな」


 リネアたちと合流した俺は、再度、リネアたちと離れた。

 淵王としてやるべきことがあったからだ。


「は、離せ! 私はギルド長補佐だぞ!? こんなことをしていいと思っているのか!? 淵王!!」


 俺がいるのは都市の外周部。

 復興は内側から始まっているから、人の気配はない。

 そこで俺は影によってギルド長補佐のベルナールを捕縛していた。


「証拠がない以上、お前はこれからもギルド長補佐だろう。だが、内密のはずの聖龍姫の予定が漏れた。怪しいのはお前とギルド長だ」

「わ、私じゃない! 信じてくれ!」

「信じてやってもいいが、これについて答えろ」


 そう言って俺はバジルから押収した瓶を見せる。

 それを見て、ベルナールの顔つきが変わった。


「し、知らない!」

「知ってそうな顔つきだが?」

「し、知らないんだ! 頼む! 私は何もしていない!!」

「では、死ね。運悪くギルド長補佐は死亡ということになるだろう。別に不思議な話じゃない」


 俺の影がベルナールの首へと迫る。

 怪しいということでギルドはベルナールとギルド長を調査するだろう。

 しかし、証拠らしい証拠はどこにもなかった。

 つまり、こいつは処罰されない。

 ならば始末するしかない。


「ま、待ってくれ! 言う! 言えばいいんだろう!」

「やはりお前が犯人か」

「……それは龍皇の血を元にして作られた劇薬だ。適合する者が飲めば、黒龍騎士に準じる力を手に入れられる」

「ほう? 面白い試みをするものだ」


 人間を侮っているはずの龍皇が自分の血まで提供するということは、俺と戦ったことで多少は警戒したということか。

 厄介なものだ。


「言った! だから解放してくれ!」

「最後に一つ聞かせろ。間者はお前だけか?」

「私は黒龍教じゃない……結婚を約束した女性がいた……その人が黒龍教で……情報を流していただけだ……ギルド内にはいないはずだ……」

「ハニートラップに引っかかるとは情けないものだ」

「私は本当に彼女を愛していて!」

「お前の事情なんてどうでもいい。それで人が死んだ。お前が管理する都市がめちゃくちゃになった。それが事実だ」


 言いながら俺は影の刃を出現させる。

 それを見て、ベルナールは慌てる。


「や、約束と違うぞ!?」

「信じてやると言っただけだ。助けると言った覚えはない」

「そんな……卑怯だぞ!?」

「卑怯で結構。俺は聖者じゃないんでな」


 そう言って俺はベルナールの首を刎ね、その死体を影に取り込む。

 これでしばらくは安心だろう。

 黒龍教もすぐには次の情報源を作れないはずだ。

 まぁ、これも所詮イタチごっこだが、やらないよりやった方がマシだ。

 そう思いながら、俺は復興作業へと戻ったのだった。




■■■




 襲撃から数日が経った。


「それでは皆様、お世話になりました。この御恩は忘れませんわ」


 聖龍騎士が到着し、ティーエが帰ることになった。

 あの後、めちゃくちゃになった都市を冒険者たちは総出で復興している。

 まだまだ途中だが、聖龍教団が損害の一切を負担すると申し出ているらしい。

 結構な額だが、聖龍姫が無事だったなら安いものと思ってそうだ。


「私たちはやるべきと思ったことをやっただけよ。気にしないで」

「そういうわけにはまいりませんわ。いつか、皆様のお力になってみせます。どうか楽しみにしておいてくださいな」

「そこまで言うなら……楽しみにしておくわ」


 リネアとティーエはそんな会話をした後、別れを告げた。

 後ろではジャンが半泣きで手を伸ばしている。

 放っておくと駆け寄りそうなので、ガロンががっしりと抑えていた。

 そんな二人をミシェルが呆れた表情で見ている。

 騒がしい俺たちのパーティー。

 それを見て、ティーエは馬車の中からクスリと笑う。

 そして小さく手を振りながら、デビュタントを後にしたのだった。


「ああぁぁぁぁ……俺の天使が行っちまったぁ……」

「ジャンのものではないけどね」

「うるせぇな! 落ち込むくらいさせろよ!」

「私たちに落ち込んでいる暇はありませんよ」


 ミシェルの言葉を受けて、ジャンはミシェルを睨むが、冷たい目で睨み返されて、すぐに目をそらす。

 そんな三人に苦笑していると、リネアが近くによってきた。


「寂しい?」

「別に寂しくはないさ。無事に帰れることは願ってるけど」

「聖龍姫様よ? ジャンみたいに惜しむのが普通じゃない?」

「別れを惜しんでどうする? もっと仲良くなって、聖龍騎士にしてくれって頼むのか?」


 聖龍騎士は十二名と定員が決まっている。

 それ以上、増えることはない。

 黒龍騎士と聖龍騎士。

 同じ龍から力を授かっているのに、実力に差が出るのはそのせいだ。

 黒龍騎士は百の力を五人で分け合い、聖龍騎士はそれを二人で分け合う。

 もちろん、ときたま黒龍騎士でも聖龍騎士に迫るくらい強い奴もいるが、基本的に聖龍騎士のほうが強いのはそのせいだ。


「そういうわけじゃないけど、美人だったでしょ? しかも聖龍教のお姫様よ?」

「関係ない。彼女がどれだけ尊い存在だったとしても、俺たちの目的を叶えてくれるわけじゃない。たとえ聖龍騎士を全員動員しても、龍皇には勝てない。なら、俺たちがするべきことは一つだ」


 俺は歩き出す。

 それにガロンたちも続く。

 そして後ろで止まっているリネアへ視線を移す。


「強くなろう。目的ははっきりしている。足りないのは強さだ。聖龍姫も、淵王も、まだ誰も成したことのないことをやるんだ。幸い、この大陸には強くなれる迷宮があるしな」

「うん!」


 リネアが返事をして俺たちの傍までやってくる。

 まずは一つ。

 目の前の迷宮で固有魔法を手に入れよう。




■■■




 さらに数日後。

 迷宮の扉が開く時が来た。

 前回の反省は何度もした。

 今回は一味違う。

 しかし。


「最有力はリネアのパーティーか……」

「とはいえ、あの呪印憑きが足を引っ張るぞ?」

「さすがにリネアたちでも無理だろ」


 周りには突入するパーティーを見に来た野次馬がおり、彼らの声が俺たちの耳に入る。

 だが。


「はっ、言いたい奴には言わせといてやるぜ」

「攻略したら手の平を返すだろうしね」

「そうですね」


 イラついた様子は見せているが、野次馬にかみついたりはしない。

 それなりに集中できている証拠だろう。

 ダークネス・ドラゴンに深手を負わせることができた以上、パーティーの練度はこの前より上がっている。

 しっかりと集中していれば、攻略はできるはずだ。


「準備はいい? テオ」

「もちろん」

「それじゃあ行きましょ。頼りにしてるわよ?」

「任せておけ。道案内は得意なんでな」


 そう言って俺はリネアの後に続いて迷宮へと入っていったのだった。


というわけで、これにて、『十年で最強魔導師になった俺の、影から幼馴染育成計画』は一旦終わりですm(__)m

もうちょっと書きたかったんですが、出涸らし皇子の書籍化作業もあるので、この辺で終わりにしたいと思います。


今回はカジュアルな暗躍というのがテーマだったんですが、とにかく難しかった(-_-;)

そのうちリベンジしたいところ!


ただ、書籍化作業優先なんで、今回はここまでです。



これからの予定ですが、書籍化作業を終わらせたら、12月にもう一回新作書こうかなと思います。

年間スケジュール的にそこしか空きがないので(;^ω^)

それが終わって、一月になったら出涸らし皇子の更新を再開しようかなと思いますので、そちらも含めて、よろしくお願いしますm(__)m


では、お付き合いくださりありがとうございました。


タンバでした。

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― 新着の感想 ―
[良い点] とても面白かったので続きを読みたいです
[一言] お疲れ様でした
[一言] この話の続きも出涸らし皇子の書籍版・続きも12月の新作も全て楽しみです。
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