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第十四話 白銀の少女


「まぁ、迷宮都市というのは複雑なんですのね」

「感心してないで走って!」

「申し訳ありませんわ。滅多に外へ出ることがないので、珍しくて、つい」


 迷宮都市デビュタントの路地裏。

 そこを俺は一人の美しい少女を連れて走っていた。

 真っ白な服に白銀の髪、真っ白な肌。

 アメジストのように透き通る紫色の瞳は、良いアクセントになっている。

 リネアやアリスとは違ったタイプの美しさ。どちらかといえば、芸術品に近い。生き生きしてるとか、愛嬌があるとか、そういう美しさじゃない。そのまま付加価値などなく、美しいのだ。

 清楚で高貴。

 立ち振る舞いや言動から育ちの良さが窺える。

 ただの貴族の娘じゃない。

 なぜなら。

 この少女は追われている。

 どういうわけか知らないが、多数の人間がこの少女を探しているのだ。

 訳もわからず、とにかく連れて逃げている。

 さすがに放っておけなかったから。


「こういうとき、自分の性格が嫌になるな……」




■■■




 時間は少し遡る。

 リネアが攫われてから三日。

 表向きはリネアが黒龍教の拠点を壊滅させたとして伝わっている。

 一晩泣いて、リネアも落ち着きを取り戻した。

 あれから剣の稽古に励んでいる。

 迷宮が再び開くまで時間があるし、今日はパーティーでの任務予定もない。

 一応、憩いの泉亭にお世話になっているという体になっているため、俺は買い出しに出ていた。

 アリスはそんなことさせられないと言っていたが、そういうことをしていないと不自然さも出てくる。

 そんなわけで、特に善意でもなんでもなく、周りからの視線だけを意識したパフォーマンスとしての買い出しをしていた俺は、遠くで戦闘を感知した。


「……どういう状況だ?」


 都市からかなり離れたところで、突然、戦闘が始まった。

 しかもかなり強いやつらが戦っている。

 おそらく人間同士の戦闘。

 俺は買い物袋を持ったまま、路地裏に入る。


「ウォルター」

「ここに」


 リネアが攫われてからというもの、ウォルターには憩いの泉亭にいるより、外に出ていてもらうほうが増えた。

 いざというとき、すぐに動けるようにだ。

 正直、憩いの泉亭はアリスさえいれば人気は保てるし、冒険者からの情報収集より都市内の情報をウォルターが調べたほうが役に立つ。


「戦闘が起きている」

「そのようですな。かなり離れていますが」

「様子を見に行ってくれ。助太刀が必要なら助けてもいい」

「どちらを助けるべきですかな?」

「襲われているほうだな」


 ルート的に、襲われているのはこの都市を目指している者たちだ。

 わざわざ道中に襲う奴らは碌な奴じゃないだろう。

 ウォルターは一礼して、その場をあとにする。

 これで外の戦闘はどうにかなるだろう。

 最悪、情報だけは手に入る。

 そんなことを思っていると。


「おい! 馬車が来るぞ!!??」

「速すぎるぞ!?」

「何考えてやがる!?」


 門の近くで騒ぎが起きていた。

 急いで見に行くと、砂煙を上げながら馬車が都市のほうに突っ込んで来ようとしていた。

 その後ろには馬に乗った追手らしき者たち。

 とにかく速い。都市に入るならもう少しスピードを落とすはずだが、全くそんな素振りは見えない。


「まずいぞ!?」

「おい! 道を開けろ!」


 まずそうだと判断した野次馬たちが、門の傍から離れていく。

 少しして、スピードを緩めず馬車が都市に突入してきた。

 かなり性能の良い馬車だ。装飾も派手だし、よほどの要人が乗っているんだろう。

 その馬車に対して、追手は躊躇わず魔法を放った。

 都市内で、だ。


「なんだ!?」

「攻撃しやがったぞ!?」


 冒険者たちは突然の暴挙に慌てる。

 魔法を受けた馬車はそのまま横転し、勢いよく建物へ突っ込んだ。

 それを気にした様子もなく、追手たちは馬車のほうへ近づいていく。

 あまりにも常識外れな行動に冒険者たちは固まってしまう。

 そして、一つの答えが冒険者たちの中で導き出された。


「あいつら……黒龍教なんじゃないか?」

「いや、でも……服装が……」


 常識外れな行動は黒龍教の特徴だ。

 しかし、黒龍教は基本的に黒いローブを着て行動する。

 追手の者たちはローブを纏ってはいない。

 統一された装備もなく、どこかの冒険者のように見えた。

 だから冒険者たちは判断に迷う。

 そして追手が横転した馬車へと近づいたとき。

 突然、馬車が光りはじめた。

 眩しい光に全員の目がやられた。

 間近で受けた追手は目を押さえて悶絶している。

 だが、俺は見逃さなかった。

 その光の最中、馬車から別の光が飛んだ。

 見たことない魔法だが、転移する魔法だろう。

 その光を追い、俺はその場を後にしたのだった。




■■■




 そしてその光の着地地点にいたのが、この少女だった。

 どうすればいいかわからず、その場で思案しているのを見て、思わず手を引いて走り出してしまった。

 このままでは追いつかれるからだ。

 少女も知らない顔の俺を見て、一瞬だけ警戒した風だったが、敵ではないと判断してくれたのか素直についてきてくれている。


「なんで追われてるの!?」

「それは……なぜでしょう?」


 少し考えたあと、自分にもわからないと言った様子で少女は小首をかしげた。

 それを見て、俺は詳しい説明を少女から受けることを諦めた。

 とりあえず、この子は狙われている。

 しかも、探しているのは追手だけじゃない。

 どうも冒険者ギルドのほうでも、秘密裏に動いているようだ。

 何かを探しているような者が複数人、感知できた。

 ギルドもこの子を探していると見るべきだろう。


「とりあえず、名前だけ教えてくれる?」

「わたくしの名前ですか? そうですね、ティーエとお呼びください」

「なるほど。じゃあティーエ。これからしなくちゃいけないことってある?」

「わたくしは……死ぬわけにはまいりません。絶対に。ですので、お強い方の傍にいるのが最善と考えますわ」

「それはそれは……」


 ティーエの手を引きながら、俺はため息を吐く。

 強い奴の傍ということであるならば、俺の傍が一番安全だからだ。

 さて、どうしたものか。


二回更新途切れてすみませんでしたm(__)m


情けない( ノД`)シクシク…

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