表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
70/72

◇彼らは、彼女たちは、沢山の想いがこもった言の花々を咲かせた◇


 詩音(しおん)は絵本を読み終える。


 先ほど十分と言えるくらい泣いたはずなのに、視界が涙で滲んでいた。

 初めてあの絵本を読んでもらった時の同じワクワクやドキドキが蘇って嬉しいに決まっている。だけど、涙が止まらなかった。


 真っ先にこの気持ちを伝えたい人はもういないのだから。


 顔を上げると紫苑の花々が目に映る。母が遺した思い出のひと欠片。

 思わず詩音は笑った。思い出が詩音の涙を拭ってくれた。

 そして、温かな手が詩音の手を握った。今も一緒に時を刻む人。

 まだ悲しい気持ちは消えないけれど、もう、大丈夫だった。


 夜空のカーテンが少しずつ閉じてゆき、太陽が姿を現す。

 詩音は母に、忘れようとした過去に、過去もそしてこれからの未来も一緒に過ごす大切な人たちに向けて呟く。






「ただいま」






 想いが込められた言花の花束を抱え、自身の言花を、過去の花を咲かせて、詩音は微笑んだ。













 日が昇る。秋の風が暑さをさらっていく。

 ……もうすぐ思い出を詰め込んだ夏が終わる。

 言花の猫と再会した少年少女たちは、自分たちの力で言の花を咲かせることができる。

 もう、自分たちの力で想いを伝えることができる。

 だから、今日もまた彼らは、彼女たちは、沢山の想いがこもった言の花々を咲かせた。










評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ