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◆少年の独白◆


 おれには姉がいる。


 一ノ瀬空(いちのせそら)というその名の通り、空のように自由奔放な姉だった。


 姉はヒーローに憧れていた。

 空を駆け抜け、悪を倒し、弱きを助け、笑顔をつくるそんなヒーローに。

 だから、姉はヒーローになろうとした。


 空を飛ぼうとした。自分にとっての悪を倒そうとした。自分より弱いものを救おうとした。沢山の人を笑わせようとした。


 今になって思うと馬鹿げたことばかり。自分もそのヒーロー活動に巻き込まれたりして酷い目にあうことはしょっちゅうあった。

 そして、おれ以外にもう一人、姉のヒーロー活動に巻き込まれた人がいた。


 姉の幼馴染である野原詩音(のはらしおん)


 彼女はおれと似ていた。

 ビビリで、泣き虫で、自分の意見を強く言えない。

 だから、いつもおれと彼女は姉に振り回されて、二人で一緒に泣いていた。

 だけど、別に嫌だったわけではない。

 泣いたりもしたけど、楽しいこともあった。

 姉の突飛なヒーロー活動や、秘密基地である小さな神社で遊んだり。


 正直、三人で過ごした時間はおれにとっては宝物だった。


 一緒に巻き込まれながらも頑張ろうねと言い合った詩音ちゃん。そして、ヒーローになるためにおれたちの前を走っていた姉。

 あの時間は永遠に続くと思っていた。


 だけど、それは姉が小学校を卒業するまでだった。


 小学校を卒業したと同時に詩音ちゃんは何も言わずおれたちの前から消えていった。

 受験で私立の中学校に行ったのだと風の噂で聞いた。

 姉は相変わらず中学生になってもヒーロー活動を続けていたらしい。


 でも、そのあたりからか、ヒーローについて語る姉は前ほどの輝きはないような気がした。




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