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◆特別を失った少女◆
一番になれないわたしは一華という名前が嫌いだった。
名前に相応しくない自分が嫌いだった。
名前を見る度、名前を呼ばれる度、一番という呪いがわたしを苦しめるんだ。
一番のハナになれ。
そんな願いをわたしに込めないでほしかった。
……だから、詩音に出会った時、あの言葉を言われた時、心が軽くなったんだ。涙が出ちゃうくらい嬉しかったんだ。
『たった一つの花なんて素敵だね。いつも頑張ってる一華はきっと一華にしか咲けないキレイな花を咲かせるよ!』
わたしの名前に呪い以外の意味を教えてくれたから。
大嫌いなわたしを、少しだけ好きになれることができたから。
わたしはあなたと一緒にいたいと思えたんだ。
あなたにとっての唯一になりたかったんだ。
でも、どうして、
「突然、いなくなっちゃったの……?」
なりたかった唯一さえも失って、一番すらも求められなくなって、もう、何も残ってなくて、このまま、いっそ、枯れてしまいたかった。




