◆少女の特別◆
最近よく昔の思い出を夢で見るようになった。
友だちと遊んでいた頃の思い出。
夢の中で必ず現れる自分の手を引く女の子。
朝日に照らされたお花畑で遊んだり、夕暮れのオレンジ色に染まった放課後の教室で内緒話をしたり。
大切な大切な記憶の一ページ。
今日はその子との特別な思い出を見た。
色とりどりのお花に囲まれた場所は夜に飲み込まれて色を失い、雑木林は大きな影の怪物になってわたしを襲おうとする。
いつもの景色とは全然違う。まるで別の世界に紛れ込んでしまったみたい。
迷子になりそうで怖いけれど、あなたがいるから大丈夫。
ギュッとあの子の手を握る。
小さくて、温もりのある手。
あの子の手を握っていればわたしは俯いていた顔を上げられる。
「ねえ、上を見て! お花が咲くよ!」
ドン! 暗い世界を引き裂いて、大きな光の花が咲く。
ああ、来れてよかった。あなたと見れてよかった。
だけど、あなたはもうわたしの隣にはいない。わたしの手を握ってくれない。
わたしはまた独り。
ねえ、あなたはどこにいるの? あなたは約束を覚えているの?
わたしの言葉は届かない。