02 名前
真剣顔のアイネさんからの突然のお願い、
「私だけ呼び捨てじゃないのって、ちょっと悲しいな」
そしてなぜか照れる、私。
「これで良いのか……アイネ」
たぶん今の私はこの異世界に召喚されてから誰にも見せたことが無いほどに顔が真っ赤だ。
「ありがとう……モノカ」
いかん、ギルドの歴史始まって以来の完璧美少女との誉れも高いアイネの恥じらいに染まる顔は私のような無骨者には凶器そのものだ。
「ササエさんに見せてあげたい光景ですね」
なぜノルシェが王宮暮らしだった頃の私専属メイドの名を出したのかは分かり難いが、聞いた途端に頬の血流が増したのを感じる。
「ササエさんて誰なの?」
聞くなマクラ。 私も良くは理解出来ていないが、それ以上の深追いは危険だ。
「以前王宮でモノカがお世話になっていた素敵なメイドのお姉さんです」
「今度王都に戻る機会があったら一緒に会いに行きましょう」
ノルシェめ。 人が踏み外してはいけない道もあると言うのに、よりにもよってマクラをそっちへ引きずり込もうと画策するのか。
「楽しみだねっ」
もう駄目だ、私のぼっち脳ではマクラも自分もこのアレな空間から救出も離脱も不可能だ。
誰でも良い、今すぐにこの地獄のような天国から我を救い給えっ。