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邪馬台国は狗奴国の拠点へと迫る。
しかし、軍を率いる難升米は苛立ちと不安を抱えていた。
懸念すべき理由として、
一、戦が長期化していることによる食料の不安と士気の低下。
二、軍の規律、統制の不安、戦いが長期化し間延びしている軍勢に指揮が通りにくくなっている。
三、呉の存在があった。
眼前にはためく呉軍の旗。
邪馬台国側も張政を介し援軍を要請しているものの、色よい返事は貰えず実現は難しいと難升米は諦めている。
「・・・それにしても」
彼は思わず呟いてしまった。
(戦況は厳しい・・・)
にもかかわらず、新王狗呼はすでに勝利は確定したかのような口ぶりで、甘い言葉を軍勢に声掛け鼓舞している。
その旗頭にされたのは壱与。
(なんとしてもお守りせねば)
難升米は固く心に誓った。
壱与はまだ幼く、戦況も分からない為、自軍の勝利を疑っていなかった。
狗呼には憤りを感じるが・・・。
ただ戦は望むものではなかった。
戦は多くの人が悲しむ。
しかし、戦場の独特とした空間、高揚感に、壱与はすっかり自分を見失ってしまっていた。




