参、大戦 6
参、大戦
壱与と十六夜は新しい世界と生活に足を踏み込んだ。
今まで世間とは隔絶された神殿から人々の暮らしの中へ。
神殿からここに来るまでの間、多くの民がいた。
壱与は卑弥呼が斃れたあの日に、クニの中へ来たが、夕夜の中で民人達は卑弥呼が詔を告げた神殿魂座のある楼閣に集まっていた。
その時はクニ中が閑散としていたのを壱与は覚えている。
今日のこの場は活気あふれる場であった。
十六夜は初めて見る世界を驚きの目で見ている。
逆に邪馬台国の人々は、巫女装束の二人を見て、何事かと好奇の目をむけている。
クニの政事が行われる宮殿の横の邸宅が、二人の仮住まいとなった。
ほどなくして付き従った把流を含む従者たちが下がると、十六夜はその場に倒れうつ伏した。
壱与は静かに腰をおろした。
「・・・凄いですね。外の世界は」
驚き、目を輝かせて十六夜は言う。
「まあね」
実際、壱与はクニの中に入るのは、二度目だが、多少の強がりを見せ、知った風で余裕の表情を見せた。
「・・・男の人があんなにいるなんて」
十六夜は思わず、口にする。
「そうね」
壱与は頷いた。
十六夜は真顔になり、不安を口にする。
「壱与様、これからどうなるのでしょうか」
壱与は溜息をつく。
「・・・なるようにしかならないわ」
彼女はそう言うと、深く目を閉じた。