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「待て」
夜邪狗は先へ進む難升米を制した。
「これより先は慎重に進もう」
「・・・ああ」
難升米は頷いた。
馬を降りると、先頭をゆっくりと歩いた。
「!」
彼は後ろに続く三人を手で制した。
「どうしましたか?」
壱与は尋ねた。
「・・・大軍が!」
「なんだと」
皆は木陰に隠れて様子を伺う。
武装された兵士が大軍を成していた。
兵士の装備から邪馬台国でも狗奴国でもない。
遠方にはたなびく呉軍の軍旗が見えた。
「・・・・・・」
夜邪狗は黙考した。
「これは一体・・・」
難升米は呟いた。
「恐らく、この波乱の首謀者は王の側近である把流であろう、その後ろ盾に呉・・・そしてその同盟国の狗奴国といったところか」
夜邪狗は分析した。
それは揺るぎないものと確信している。
「我らはどうすれば」
難升米は虚空を睨んだ。
「捲土重来・・・が本来、我らがとるべき道だが、それが難しいとしたら」
夜邪狗は重く言葉を言った。
「では・・・」
壱与が続く。
「これより即座に行動に移り、壱与様の元に王座を奪還する」
「えっ!」
驚愕する三人。
「事が公になる前に、我らが正しき道を示す」
「それは・・・」
難升米には躊躇がみえる。
「そうだ。現状は難しい。だが、このまま手をこまねいていても一歩も前に進むことは叶わぬ」
「しかし、勝算がなければ無駄死にとなるだろう」
「・・・勝算がない訳ではない」
夜邪狗は言った。
「真か」
難升米は夜邪狗の言に笑みを浮かべる。
「ああだが、少しの奇跡と壱与様の力が必要だが」
夜邪狗は壱与に向き直ると、改めて恭しく礼をする。
「壱与様、何卒」
壱与は大きく頷いた。
「はい。壱与の心は決まっています」
かくして王位奪還策は決した。




