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六、激震 16
六、激震
その時は突然やってきた。
心の臓を一突き。
大王狗呼は目を大きく開き、その者を見やる。
「貴様!」
把流は握りしめた剣に力を入れ、ねじ込んだ。
「ぐぐぐぐぐぐぐ」
断末魔の叫びをあげる狗呼、前のめりに倒れる。
「もう、あなたでは、このクニをどうする事も出来ない」
骸と化した王に把流は冷たく言い放った。
自らの正義の鉄槌に陶酔する。
「見事です。新しき邪馬台国の王よ」
闇より影が現れた。
呉の高官李惟と狗奴国副官那仁の二人。
「ああ、俺が王だ」
声荒く、肩をいからせ把流は言った。
「この呉国」
と、李惟。
「そして狗奴国」
と、那仁。
「新しき王とともに、この邪馬台国を支えましょうぞ」
二人は示し合わせたかのように同時に言った。
把流は満足そうに頷く。
「ああ、頼むぞ」
高揚と喜び。
把流に野望という、どす黒い雲がさしこめる。




