伍、失意 14
伍、失意
身も心もぼろぼろとなりながらも、壱与はどうにか生きて邪馬台国に戻ることが出来た。
とにもかくにも生きて帰れた、ただそれだけだった。
彼女の姿に驚き、駆け寄る十六夜。
「壱与様!」
「はは」
壱与は意味もなく笑った。
「なんというお姿」
目は落ちくぼみ、顔は泥まみれ、腕や足は擦り傷、打撲。
服はボロボロおまけに異臭までする。
「はは、生きているから大丈夫」
壱与は短く息災を伝えた。
「大丈夫じゃありません!」
十六夜は壱与を強く抱きしめた。
「でも、良かった。ご無事で」
十六夜は目に涙を浮かべ、噛みしめるように言った。
「うん」
壱与は頷いた。
壱与と十六夜が自分達の宮に戻ろうとすると、目の前に把流が立っていた。
しかし、その様子は尊大で蔑み見下した表情を見せている。
「なにか!」
十六夜は思わず、怒りを露わにして叫ぶ。
「巫女壱与よ。大王様よりお達しがあるついて参れ」
「なんですって!今、ここに帰って来たばかりなのに」
十六夜は驚き、把流を睨みつけた。
それは、壱与に女王の名がついていなかった事。
察しはつくが、この敗戦の中、新王狗呼が大王になった事。
側近の把流の態度、それに敗戦の責任を人の少女に追わせようとしている事。
十六夜はなにもかもが許せなかった。
「黙れ!従者は下がっておれ」
「くっ!」
十六夜はさらに、憎しみに満ちた瞳を把流にむける。
「やめなさい」
「・・・壱与様」
十六夜は憤りを表に見せ隠そうともしない。
「わかりました」
壱与は静かにそう言うと、ぼろぼろの身体を引きずりながら把流に従った。
十六夜は数歩下がり、壱与の後についていく。




