第6話《選定》
街の教会に行く。
教会は印象に残るが、よく観察すると、豪華ではなく、質素‥‥‥と言える見た目だ。
‥‥‥割と好印象を持てる。こういうところの教会は悪役がいるイメージがあるからな。
「ようこそいらっしゃいました。目的は選定ですかな?それとも、お布施ですか?」
「ああ、選定を頼む。こちらが選定してもらうものだ」
「ど、どうも‥‥‥フィーレン・エイプレイです今日はよろしくお願いします」
「うむ。では始めよう。《選定》━━━世界よ、彼の者に祝福を。そして可能性を示したまえ」
俺に光が降り注ぐ。俺の体が作り変えられるような気がする。いや、実際に作り変えられているんだろう。頭のなかに響く声がある。
━━━この転生に祝福を、未来を。《転生の魔法剣士》━━━
そして、やっと光が収まる。正面を向くと、神父が驚いた顔をしていた。
「こっ、これは!━━━おお、神よ。このような時に遭遇したことを感謝します。貴方の職業は《魔法剣士》です」
「魔法剣士━━━俺にぴったりだな。ありがとうございました」
そういって俺は去ろうとするが‥‥‥
「いや、待ってくだされ。まだステータスを確認させていただいておりません」
「あっ、すみません。なら、お願いします」
ステータスが開かれる。
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Nフィーレン・エイプレイ
LV1
J《転生の魔法剣士》(魔法剣士)
ステータス
HP(250)【600】
MP(300)【3200】
STR(40)【60】
INT(50)【80】
VIT(30)【50】
MIND(40)【80】
DEX(40)【60】
AGI(40)【60】
《スキル》
《真理の魔眼》(隠蔽)
《剣製》
《模倣》(隠蔽)
《成長限界突破》(隠蔽)
《百重詠唱》(隠蔽)
《独創魔法》(隠蔽)
《魔力操作・改LV1》(魔力操作LV3)
《痛覚耐性LV5》(隠蔽)
《精神耐性・改》(隠蔽)
《剣術LV5》(剣術LV3)
《魔刃LV7》(魔刃LV2)
《刃界LV2》(隠蔽)
《火魔法LV3》(火魔法LV1)
《水魔法LV5》(水魔法LV2)
《風魔法LV5》(風魔法LV2)
《氷魔法LV5》(氷魔法LV1)
《雷魔法LV6》(雷魔法LV2)
《思考加速・改LV5》(隠蔽)
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‥‥‥隠蔽したのは俺じゃねえ。きっと神様とかがやったんだ!だから‥‥‥俺は悪くねえ。
まあ、バレてはなさそうだな。
「なんと言うことだ‥‥‥数年に一人の逸材だ。逸材が現れたぞ!」
「えっ‥‥‥えっ!?俺が逸材?」
嘘だろ?俺的にはこの程度‥‥‥という印象が強いんだが。あっ、もちろん隠蔽済みのステータスの話だ。本当のステータスはヤバいのはわかってるよ。
「フィーレン、よかったじゃないか!我が家の誇りだ!」
「そうよ、フィーちゃん、このステータスは子供のステータスじゃないわよ」
ここまで言われると凄いのだろう。おかげで、無自覚俺TUEEEをやらかさずにすんだ。もしやったとしたら‥‥‥どっかで気付く筈だから恥ずかしさで身を悶えていただろ。
その事を想像すると、顔が青くなった。
「神父さん、今日はありがとうね。それじゃあ、帰ろっか!」
「うむ。神父よ、世話になったな」
「ええ。あなた方に神のご加護が有らんことを」
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ふぅ━、やっと十歳になった実感が出てきたかな。ここまでの毎日、ゲーム以外はずっっと修行して‥‥‥父さんも母さんも容赦なかったなあ。妹の応援が俺の癒しだったよ。
「フィーレン、少ししたいことがある。今から庭に来い」
「え?うん‥‥‥わかった」
本当に何があったんだ?父さんが俺を呼ぶのは滅多にないことだが‥‥‥あっ父さんが離れていってる。急がないと!
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庭についたその瞬間━━━
「よし、来たなフィーレン。早速ではあるが‥‥‥私と戦闘をするんだ」
いや俺に決定権ねぇ言い方!?
‥‥‥これ、あの絶対的強者の父さん(化け物)と闘わないといけないのか‥‥‥もうやだ死ぬ。
「逃げてもいい?って言いたかったけど‥‥‥無理だったね、全力でやらせてもらうよ」
はい、諦めました。今のうちに対抗策を考えておかないと。
「━━━では始めるぞ。そちらから攻撃してこい」
うげ、俺からか。
ふぅ━、はぁー。よしっ、いくぞ!
「(瞬間加速)、(天駆)、(レールガン)ッッ!!」
開幕速攻は常識ィ!だが、あまり上空に逃げりゃ隙が出来る。なら━━━正面で不意を付く!
「ふむ、予想とは外れるな。いい判断だが、私はそれに対応出来るぞ?」
父さんは軽く身体を捻り、レールガンを避ける‥‥‥いや、マジかよ。俺の最速でも反応されるのか!
しかも危なげな様子はないってことは余裕があるってことだ。こりゃますます厄介になってきたな‥‥‥
「どうした?もう終わりか?終わりなら━━━私の番だ」
「ッッ!?(瞬間加速)、(天駆)!」
天駆は上下左右の判定は自由!だから━━━俺は横の空間を蹴り、その場から離脱する。
「くッッ━━━はァ!なっ、なんとか、避けたァ!」
マジあぶねぇ!このままじゃジリ貧どころじゃなくて一方的な虐殺になるんだが!?
‥‥‥なにか、なにかこの現状を打開出来る一手が欲しい。そのためには━━━まずは時間を稼ぐ。
「《百重詠唱》━━━アイスマシンガン、起動!」
「時間稼ぎか。いいだろう、その思惑、乗ってやろう」
バレテーラ。だが、そこが、そこだけが隙になる!
よし、考えろ俺。圧倒的ステータス差を覆せる方法を!その鍵はきっと俺が持っているはずだから。
アプローチは、俺がいままで一切使わなかったスキル、《模倣》だ。模倣というのは、真似、再現などのことだと考えている。
なら、何を模倣するかはもちろん他人か何かのステータス、スキルだろう。
候補は、父さん、母さん。
‥‥‥まず、父さんだ。父さんを模倣した場合、父さんとの差は、主に技術、経験だろう。つか、それが最も大きな差だ。ハリボテの技じゃ本物に勝てん。却下。
母さんの模倣は‥‥‥勝てる可能性はあるが、一方的な遠距離攻撃でチクチク攻撃すんのは俺の趣味じゃねえ。あと、魔法職の対策があればどうせ負ける。却下。
‥‥‥もう何もねえな。一か八か母さんを模倣するか?俺が誰よりも詳しいステータスがないか━━━ッ!
いや、あった!俺だけが知ってる、俺だけのステータスが!
さあ、逆転劇を見せてやろうじゃないか。
「《模倣》━━━ブレイバー・レイン」
その宣言をし、俺の身体中から光が溢れだす。これはさっきも味わった身体を作り変えられる感覚だ━━━が、あの時よりもはっきりと変化することがわかる。
俺の髪が伸び、輝くような銀髪から、青みがかかった白髪に変わる。
それだけでは変化は留まらず、胸が大きくなり、男性の象徴が喪われる感覚。つまりは女体化だ。
服はスカートの上にロングコート。蒼と黒に彩られたその姿があらわになる。
「《剣製》━━━打刀【雪花白夜】。さあ、いこう」
━━━刀術・連断縮地。ロールスタート。
‥‥‥私は一瞬にて背後に回る。この技は超加速による抜刀術。
「ハァッッ!!」
間合いを詰めきった私は刀を抜き放つ。防御出来ない一撃、さあ、どう対処する━━━
「なぁ!?くっ、(ブレイドガード)ッ!」
嘘、超速の抜刀とほぼ同じスピードで剣を盾にした!?こっちは肉体限界を振り切る速度のはずなのに!?
‥‥‥いえ、きっと私と同じように、スキル内包の技なら出来るでしょうね。
なら‥‥‥抜刀した体勢から切り返しをし、納刀して離脱。
キィン!と、音がなり、私はステップで距離をとる。
「お前は‥‥‥本当にフィーレンなの‥‥‥か?」
「そう。正真正銘、私がフィーレン。今は『レイン』のほうがしっくりくるかな?見た目の変化は副作用ってところね」
そんな事をいいつつ、警戒は解かない。今は戦闘中だから、いつ襲われてもおかしくないのだ。
‥‥‥そのまま数十秒、お互い静止する。さっきみたいな単発技じゃまた防がれるのがオチ。なら、防御しきれない程の連続攻撃を撃てばいいはず!
ゲームの動きを再現出来るかは運任せだけど、私は模倣の可能性を信じる。
《刀術・桜花乱華》で距離を詰め、その勢いに任せて抜刀、無刃の刃を展開した瞬間━━━ステップでキャンセル、そこから繋げて《刀術・紅蓮幻想》を発動し、前と横からの連撃を生み出す。これは避けるしかないでしょ━━ッ!
ダッ━━ッ。
よし、予想通り、父さんはバックステップで見事に回避してみせた。ここがやっと巡ったチャンス!
《刀術・桜花乱華》、接続━《刀術・連断縮地》ッ!!
正面に無刃を生み出し、背後で超速の抜刀!これなら━━━
「なめるなァ!!(千断界)!」
私の無刃が消え、抜刀に合わせられる。そして、つばぜり合いまでに押さえ込まれた。
これが父としての意地みたいなものなのだろう、自分の奥義であろう技をだし、私に勝たんとしている。
それでこそ父さん。私はこの十年、そんな父さんをみていたんだ。だから━━━今は、負けられない!
「《模倣》ッッ!!デュアライザー・レイン、《剣製》、【アルレイザー】、【デュクスリアム】!」
容姿の変化はないが、私の刀が黒の剣に変質し、左手に白の剣が生まれる。今度は二刀流を使う超攻撃型。さっきより筋力がある今の身体なら━━。
「クッッ、ハァァァ!!あと、少し‥‥‥ッッ!」
左の剣を押し付け、さらにこちらの有利にさせる。父さんから、尋常ではない気迫を感じた。
━━━これこそが━━父さんの━━本気━━。
そんな時間は持たない。私が押しきり、父さんの身体を無防備にする。
「これでッッ!!最後ッ!《双剣術・インフィード・ザ・レイン》!」
その剣は、一撃で十撃を成り立たせる剣技。無限に至る刃!
その一撃は無防備となった父さんの身体を斬り付け━━━、その寸前で止まる。
私━━、俺の模倣も終わり、それが合図のように、終わりを告げる。
「父さん、俺の全力、どうだった?合格かな」
「もちろん、合格だ。よく頑張ったな、フィーレン。私はここまで成長してくれて、本当に感謝しているよ」
そんな事を言っている父さんに、
「ははっ、それこそ俺の台詞だよ。父さん、俺をここまで育ててくれてありがとう。おかげで、父さんを越えることができたよ」
と、言った。そして、俺達は笑いあう。きっと今日のことは、一生忘れないだろう。そんな思い出だったと、言えるだろう。
「それじゃあ、母さんもリサも待ってるし、早く家に戻ろっか!」
今日1日、疲れることがたくさんあった。けど、それを越える素晴らしいことが起きた1日だったと言えるだろう。俺の《模倣》の可能性にも気付けた。
‥‥‥きっとこれはチュートリアルみたいなものなのだろうか。俺が今後の人生を楽しむために必要だったことなのだろうかと、俺は思う。
どうにしろ、まずは母さんの飯だ!そろそろ昼だし、父さんと戦ったから、腹が減ったな。
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Nレイン
LV90
J【ブレイバー】
ステータス
HP【60000】
MP【200000】
STR【8000】
INT【5000】
VIT【3000】
MIND【3000】
DEX【4000】
AGI【6000】
《スキル》
《刀術・異界》
《剣術・異界》
《弓術・異界》
《異界魔法》
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Nレイン
LV150
J【デュアライザー】
ステータス
HP【80000】
MP【550000】
STR【15000】
INT【10000】
VIT【3000】
MIND【1500】
DEX【7000】
AGI【6000】
《スキル》
《剣術・異界》
《双剣術・異界》
《体術・異界》
《異界魔法》
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フィーレンの《模倣》
フィーレンが今回扱った模倣。本質は、ありとあらゆるものをMP(魔力)が足りれば模倣できる技。
他人の真似という特性上、消費魔力が高いが、今回は他人の真似ではなく、過去、もしくは別の自分を再現したため、そこまで消費はしていなかった。そのため、父に勝てるステータス、スキルを扱えた。
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